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 ウクライナでは、既存の重化学工業が斜陽化する中で、穀物およびひまわり油を中心とする農業、農産物輸出が、経済を支えてきた。実際、上のグラフに見るとおり、耕種農業(農作物の生産)は2019年までほぼ順調な成長を続けてきた。一方、畜産は養鶏が多少活況を呈しているものの、ほぼ成長が見られなかった。

 ちなみに、2019年には、ウクライナが米国に次いで世界第2位の穀物輸出国となっている。

 ところが、2020年に異変が生じる。今のところ2020年1~11月の前年同期比の数字しか出ていないが、1~11月の農業生産は前年同期比12.4%減を記録し、特に耕種農業は14.8%減となっている。逆に、畜産は2.5%減と、落ち込みが軽微だった。

 2020年に農業生産が落ち込んだのはコロナとは関係なく、天候によるものである。夏季に南部を中心に干ばつと猛暑に見舞われ、主にとうもろこしの収穫に打撃が生じた。先日の「ウクライナの穀物輸出が過去最高を記録」でお伝えしたとおり、穀物輸出は2019/20年度までは好調だったが、2020年の不作の影響で、2020/21年度に落ち込むことは必至である。

 2020年の干ばつと猛暑が一時的なものなら、短期的な問題と言える。上のグラフを見ても、これまでもその時々の天候に左右されて、農業生産の好不調はあった。

 しかし、グローバルな気候変動によって、ウクライナの気候が今後も趨勢的に厳しくなっていくとしたら、話が違ってくる。実際、「エジプトのような条件下での穀物の育て方をウクライナ人に教えるには」と銘打った記事では、2020年の異常気象は決して偶然ではなく、ウクライナの気候は今後10年で150~200km北に移動する可能性があることも指摘されている。


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