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 11月28日にジョージア大統領選の決選投票が行われ、女性候補のズラビシヴィリが59.5%を得票、40.5%に留まったヴァシャーゼに勝利して当選を果たした。投票率は56.2%だった。昨日のアゾフ海をめぐる問題と同様に、本件についても1ヵ月ほど前に講演で取り上げたので、その際にまとめたことをここにリサイクルさせていただく。

 そもそも、理解しておくべき重要な点がある。ジョージアでは2017年に憲法改正があり、新大統領が就任した時点でそれが発効する。大統領は実質的な権限がなくなり、完全な議院内閣制になる(大統領に残される権限で重要なのは恩赦程度)。大統領が国民の直接選挙で選出されるのは今回が最後で、2024年からは間接選挙に移行する。

 10月28日の第1回投票の結果、投票率は46.7%で、①ズラビシヴィリ:38.7%、②ヴァシャーゼ:37.7%、③バクラーゼ:11.0%などとなった。上位2名による決選投票にもつれ込んだ。

 今日のジョージアの政治体制は、2013年11月にサーカシヴィリ大統領が下野し、イヴァニシヴィリ氏率いる「ジョージアの夢」が「民主ジョージア」とともに権力を掌握して成立したもの。急進的すぎるサーカシヴィリ政権の手法への反発が強まった結果だった。イヴァニシヴィリはロシアの銀行業や冶金産業で財を成したジョージア随一の富豪。

 今回の大統領選で、与党の「ジョージアの夢」および「民主ジョージア」は、自前の候補は出さず、「無所属候補のズラビシヴィリを支援する」というスタンス。ただ、ズラビシヴィリは2016年の議会選でも与党の支援を受け小選挙区で勝利した経緯があり、「無所属」とは名ばかり。与党の狙いは、野党「国民運動」の大統領候補を勝たせないという点にある。野党候補(サーカシヴィリ時代の2008~2012年に外相を務めたヴァシャーゼ)が勝ち、2020年の議会選に影響したり、サーカシヴィリ元大統領に恩赦が与えられ同氏がジョージアに帰還したりすることを恐れている。

 新大統領に当選したのは、ズラビシヴィリ女史。1952年生まれの66歳。ジョージアからフランスに移住した移民の2世だったが、駐ジョージア・フランス大使を務めていた2004年、当時のサーカシヴィリ大統領に乞われ、シラク仏大統領の了解を得た上で、ジョージア外相に就任。しかし、サーカシヴィリ大統領と袂を分かち、わずか1年半ほどで解任され、以降は反政府側に回った。2013年の大統領選も出馬の可能性を探ったが、フランスとの二重国籍がネックとなり断念、今回の大統領選にはフランス国籍を放棄して臨んだ。

 ジョージアの主要政治勢力は、いずれも、EUとの連携を軸とした改革を志向している。その意味では、選挙結果によって、国の方向が大きく変わることはない。ただ、ズラビシヴィリが勝利した場合には、「ジョージアの夢」を中心とする権力構造が続いて安定し、ロシアとの一層の関係修復も期待できるのに対し、ヴァシャーゼが勝つと権力闘争が激化し、対ロ関係の改善という期待が遠のく、といった指摘があった。


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