毎度お馴染み、「政治工学センター」のA.マカルキン第一副所長が、こちらのサイトで、大統領選後のロシアの行方について占った論考を披露しているので、その要旨をまとめておく。少々長いので、2~3回に分けて紹介したいと思う。なお、どうも当該の記事はサイトから削除されてしまったようで、現時点では閲覧不能となっているようだが、悪しからず。
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プーチンが第1回投票で勝利を収めたというのはすでに政治的現実であり、各種の調査機関によってもプーチンが過半数を獲ったことは確認されている。下院選挙の時よりは、イメージは改善した。問題は2つあり、第1にVTsIOMやFOMの予想では58%とされていたプーチンの得票率が、公式結果では63%と過大なものとなったこと。第2に、反体制野党だけでなく、ジュガノフ氏の共産党のような体制内野党までが、不公正な選挙について批判していること。従来もそうした批判はあったが、政治情勢の変化により、重みが違ってきている。ジュガノフが選挙結果を承認していないこと、プロホロフが多数の選挙違反を指摘していることなどは、政権にとって無視できない問題である。
だが、もっと深刻なのは、プーチンの勝利が、現政権の前に立ちふさがる問題を何一つ解決せず、むしろ問題が増大しているという点だ。政権の今後は、それらにどれだけ効果的に対応できるかにかかっている。
現時点では、反政府勢力の活発さが低下し始めているような印象も受ける。実際、3月の反政府集会は、2月4日ほどの盛り上がりはなかった。3月5日、10日が示したのは、反政府勢力は新たな課題に直面しているということである。一気にすべてのことを成し遂げてしまおうという衝動は、冷静な認識に取って代わられた。これからは短距離走ではなく長距離走になり、そこには問題も山積しているが、利点もあるということが、悟られるようになった。
まず、街頭活動の効果について疑問視する意見がありながらも、モスクワには街頭に繰り出す用意のある人々が1.5万~2万人いるということである。人々は一体性を重視しており、それが彼らの交流、関係の維持・再構築の鍵になっている。1980年代の末と異なり、彼らは奇跡を起こしてくれる単一のリーダーには期待していない。
反政府活動家の多くは、ユニークな政治的経験を積んでいる。選挙監視員、選挙管理委員、議員候補などとしてである。過去10年ほど、政治の世界には基本的に、体制に従順な人間しか参入しておらず、彼らはその時点の風向きに応じて政治的信条も簡単に変えるような節操のない人々であったが、現在は非従順的な新人類が政治に加わっている。
特徴的なのは、反政府運動の平和的な性格が堅持されていることであり、これはコンセンサスとなっている。活動家らは、政権側が酷い弾圧を行った場合のみ、過激な行動も辞さないという方針で団結している。
3月の集会の参加者は減ったが、以前の集会に参加していた人々は、自分たちが必要とされていると判断すれば、いつでも再び繰り出す用意がある。今後も抗議運動の波は続くことになると思われる。5月には一定の高まりがあるかもしれない。夏には、住民が郊外の別荘の農作業に出かけてしまい、下火になる可能性もあり、実際1991年の時ですら、クーデターの企てを受けて、ようやく人々が別荘からモスクワに駆け付けた。抗議行動の新たな波は、政治的な不満よりも、社会的な不満が引き起こす可能性の方が高いかもしれない。その一因となりうるのが、7月の公共料金引き上げである。この値上げ以外にも、反政府側が対応せざるをえない問題が色々と出てくるかもしれない。
反政府勢力の間で線引きがなされていくことは不可避であり、それはすでに生じているが、政党法の改正で新党の登録が始まればさらに加速する。これは別に悲劇ではなく、自然なプロセスであり、将来において特定の課題解決のために反政府派が団結することを妨げはしない。と同時に、線引きが進むことで、各政党が現政権の路線に取って代わる政治および社会・経済路線を提示することが可能になる(今の反政府勢力のなかで、たとえばネムツォフとウダリツォフの経済プログラムを両立させることは不可能である)。
そして、向こう数ヵ月は、政党の形成だけでなく、市民のイニシアティブの局面にもなる。派手な演説の集会は、地道な仕事、新たな形態の積極性の模索に取って代わられる。反政府勢力がこうした活動でどれだけ実を挙げられるかによって、彼らの未来が大きく左右される。
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