ウクライナで重要な閣僚人事があったので、まとめておく。
こちらのニュースによると、2月14日、ヤヌコーヴィチ大統領はクリュエフ第一副首相兼経済発展・商業相をその職から解き、国家安全保障・防衛評議会の書記に任命した。なお、クリュエフ氏はこれまで、EUとの連合協定および自由貿易協定の締結交渉も担当していた。また、これまで国家安全保障・防衛評議会の書記を務めてきたR.ボハティリオヴァ女史を、新たに副首相・保健相に起用した。この人事につきヤヌコーヴィチ大統領は18日、クリュエフには書記としてウクライナの安全保障強化という重要な課題が課せられる、重要課題の一つはエネルギー安全所掌、省エネ、有利な価格での、少なくとも欧州向け並みの価格でのエネルギー確保であると述べた。他方、ボハティリオヴァ女史に関しては、医療改革、社会政策戦略の策定に取り組むことになると述べた。
一方、こちらの記事は、誰がクリュエフの後任の第一副首相になったとしても、その人物がアザロフに取って代わる首相候補の一番手になるとしている。記事によると、アザロフにとってみれば、クリュエフは首相就任の野心こそあったものの、それを急ごうとはせず、ナンバー2として都合の良い存在であった。しかし、誰がクリュエフの後任になったとしても、後継の首相候補の一番手となる。「いつ、誰が」というのが、現下ウクライナ政治の最大の焦点となっている。6月に地域党の党大会があり、そこで議会選挙の候補者名簿が決まるはずなので、新しい第一副首相がその名簿を率いることになろう。時間が限られているので、すでに有力な政治家でなければならず、しかも改革者というイメージが必要。現実的な候補となるのは3人しかおらず、絶対的な本命はいない。
まず、最近蔵相に就任したV.ホロシコウシキーがおり、同氏がややリードしている。最近、「大統領の側近」というイメージができており、リオーヴォチキン大統領府長官も現在は同氏を押している。かつてヤヌコーヴィチ内閣でアザロフが第一副首相・蔵相として働いたように、蔵相が第一副首相になるというのは座りが良い。ホロシコウシキーは地域党での仕事を望んでいないのは事実だが、それはこれからの4ヵ月で何とかなる。ただ、ホロシコウシキーが蔵相になって1ヵ月にすぎず、まだ実績を示すには至っていないのがマイナスで、それゆえに第一副首相が4月まで決まらないということもありうる。
また、B.コレスニコフ副首相・インフラ相がいる。ホロシコウシキーと異なりすでに副首相であり、ユーロ2012の準備という実績もある。第一副首相・インフラ相というパターンも、役所を代えて第一副首相・経済相というパターンも、両方ありうる。マイナスは、コレスニコフがアフメトフ派であり、最近ヤヌコーヴィチ大統領が自派以外の人物を要職に据えようとしないことである。ただし、大統領がリオーヴォチキン派の影響力を削ごうと考えた場合には、コレスニコフ起用もありうる。
最後に、S.チヒプコが考えられる。副首相・社会政策相というステータスが彼の野心にも、改革派というイメージにも見合っていないことは明らか。マイナスは、地域党のなかで外様であることだが、ヤヌコーヴィチはそのことを問題視しておらず、リオーヴォチキンもホロシコウシキー擁立が上手く行かなかった場合にはチヒプコを押すかもしれない。
その他、第一副首相候補としては、アキモヴァ大統領府第一副長官も挙げられているが、大統領は経済問題で同女史に頼っており、内閣による経済改革も同女史の補助によりコントロールしているので、大統領としては失いたくないはず。また、アキモヴァは省や地方で働いたことはないし、他の第一副首相候補を抑えるのには相当な権威が必要。S.アルブゾフ中銀総裁などは、将来的にはありうるかもしれないが、2012年ということはない。O.ヴィルクル・ドニプロペトロウシク州知事など、州知事からの抜擢なら、ありえないこともない。、