ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

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 こちらのページで、しばらく前に1月のロシアの消費者物価が発表されていたのだが、最近ロシア統計局のサイトが(VPN云々は関係なく)アクセスが困難になっていたりして、何となく紹介しそびれていた。とはいえ、他に手頃なブログネタもないので、遅れ馳せながら、いつものグラフを更新してお目にかける。なお、このグラフは2022年2月の全面軍事侵攻以降の動きを見るのが目的なので、だいぶ横に長くなってきた。そのままでは見づらいと思うので、よかったらクリック・タップして拡大しご利用いただければ幸い。

 前置きが長くなったが、2025年1月のロシアの消費者物価は、前月比1.23%増、前年同月比9.92%増だった。相変わらずインフレ率は高い。

 下の図は、物価のカテゴリー別に、戦争後の物価の動きを示したものである。1月は食品に加えて、サービスがかなり値上がりしたが、特に住宅分野での値上げが目立ったようである。

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 Wedge Onlineに、「火事場泥棒トランプが狙うウクライナのレアアース、ゼレンスキー訪米で協定でも、噂の資源はどこまで有望か」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 少々風変わりな話題だが、こちらの記事が、ロシア語圏のネットで使われるヤンデックス・ブラウザで翻訳される動画の言語について伝えている。

 私は使っていないから知らないのだが、記事によると、ヤンデックス・ブラウザには、ニューラルネットワークという技術を使って、Bilibili、YouTube、Coursera、VK Видео、Rutube、Дзенで流れる外国語の動画をロシア語に翻訳してくれる機能があるらしい。記事によれば、翻訳される元の言語としてはやはり英語がトップだが、それ以外の言語として、2025年1月に中国語がトップになったということである。中国語は非英語言語で27.6%のシェアを占め、1年前から7.2%ポイント増となった。1年前はスペイン語が非英語言語でトップだったが、1年間で7.3%ポイント低下し、シェア22.7%となった。中国語・日本語・韓国語という東アジア系3言語で48.6%を占めており、1年間で5.6%ポイント増加した。


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 EUはこのほど発表した第16次対ロシア制裁パッケージの一環として、ロシア産アルミニウムに対する制裁を取り決めた。こちらの記事によると、12ヵ月間で27.5万tという輸入割当を導入したものであり、これはEUが2024年にロシアから輸入した量の80%に相当するということである。

 この措置の影響に関し、こちらの記事の中で、ロシアの専門家2名がコメントしている。まず、A.アリエフ氏。EUが2024年にロシアから輸入したアルミニウム地金は34万tで、前年比34%減であった。この数量はルサールの総販売量の約8~9%に相当する。長期的には、金属需要が毎年2~5%増加し、品薄が予想される中国を含むアジア市場に振り向けることが可能。ただ、短期的には、販売市場の再編はルサールにとってコスト増に繋がるかもしれない。アリエフ氏はこうした見方を示した。

 次に、M.フダロフ氏。ロシアからEUへのアルミニウム輸出量は、2024年は34万tだったが、数年前には100万tを超えていた。34万tはわずかな量で、他の市場に振り向けることは充分に可能。リスクにさらされる量が多くないため、今回の規制に対する市場の反応はないだろう。欧州勢は、気候変動への懸念が依然として存在する中で、炭素の観点で最もクリーンな金属を市場から排除することで、偽善者の正体をさらすことになる。フダロフ氏はこのように述べた。


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 先日、「2024年に北極海航路は好調だったとの報告」との話題をお伝えしたが、もっと良い情報を見付けたので、追加でお届けする。こちらの記事には、上掲のように、2011年から2024年までの北極海航路の貨物輸送量の推移を示した有難い表が掲載されている。表の左の列が総量、真ん中の列がロシアの北極海港湾を利用した輸送、右の列がトランジット(つまりロシアの北極海港湾での積み下ろしが目的でないアジア⇔ヨーロッパ間の輸送)を示している。もしかしたら割とありふれたデータなのかもしれないが、個人的にこういう網羅的なデータは始めて見たので、取り上げた次第。


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 こちらの記事がロシアのリチウム資源について伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 ロシア天然資源省によれば、ロシアにはリチウムの大規模な原料基盤があり、国内の酸化リチウムの埋蔵量は約350万tで、これは国内経済のニーズを満たすのに充分な量だという。

 同省によると、現在ロシアでリチウムが採掘されているのは、スヴェルドロフスク州のマリシェフスコエ鉱床にあるマリインスキー鉱山の1社である。2023年には27tのリチウムが採掘された。

 さらに、ムルマンスク州のポルモストロフスコエ(アークティック・リチウム社が開発中)とコルモゼルスコエ(ノリリスクニッケルとロスアトムの合弁ポーラー・リチウム社が開発中)の2つの鉱床でのリチウム生産が段階的に拡大し、2030年にフル稼働に達する予定である。ポルモストロフスコエ鉱床では、2025年にリチウム濃縮のためのスポジュメン鉱石の試験採掘を開始する予定。この期間中に、100万tの鉱石(1万2,400tの酸化リチウム、平均酸化リチウム含有率1.24%)が採掘される。一方、ポーラー・リチウム社は、2028年までに最初の製品を生産し、2031年までに採掘・加工工場の建設と試運転を完了する予定。

 ロシア天然資源省は、リチウムのような経済にとって戦略的な原材料の採掘と加工のための強力な生産施設をできるだけ早く立ち上げることが重要であると指摘した。同省は、この課題に積極的に取り組んでいることを強調した。レアメタルの採掘税は10分の1に引き下げられ、支払い開始の方法は更新され、ロシア大統領の個別指示により希少原料の支払い開始を引き下げるメカニズムが法制化された。リチウムは、2050年までのロシア連邦の鉱物資源基盤開発戦略の優先希少金属の一つであるという。

 以前、プーチン大統領は、ロシアは自力でリチウムを生産すべきであり、そのためのすべての能力を持っている、10~15年前にリチウム生産を開始して然るべきだった、と述べたことがある。


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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日、17日の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催しました。私は「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」という報告を行いました。なお、6本すべての講演動画が、こちらでアーカイブ視聴できますので、ぜひご利用ください。

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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 大変だ、マルコムXが1965年2月21日に暗殺されてしまった! そこで、映画「マルコムX」の中で印象的に使われていたSam Cooke - A Change Is Gonna Comeに耳を傾けてみたい。チャート上では、今週33位に位置している。サム・クックは、自身が1964年12月11日に殺されてしまい、本シリーズではその追悼としてSam Cooke - Shakeを取り上げたばかりだったが、A Change Is Gonna ComeはそのB面曲で、両面ヒットということになる(今日ではむしろB面の方が歴史的名曲とされている)。個人的に、映画でイメージは重なってはいたが、マルコムXが殺害された時、実際にこの曲がチャート上にいたというのは、今回初めて知った。

その頃ソ連では
1965年2月27日:ウクライナ共和国キーウのアントノフ設計局が開発した世界初のワイドボディ輸送機AN-22(アンテイ)が初飛行。

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 当ブログではこれまで、ロシアの自然独占問題研究所というところの資料に基づきロシアの港湾における取扱貨物量の動向を取り上げてきたのだが、今回はどうも2024年通年のデータが出るのが遅い。もしかしたら、情報開示・発信の方針が変わったのかもしれない。ただ、2024年のロシア港湾貨物量自体は、ロシア港湾協会のこちらのページに出ていたので、以下でそれをまとめておく。

  • 2024年のロシアの港湾における取扱貨物量は8億8,630万tで、前年比2.3%減少した。
  • ドライカーゴは4億4,110万t(▲1.9%)、うち石炭は1億8,810万t(▲9.8%)、穀物は7,480万t(+6.0%)、コンテナ貨物は5,550万t(+10.8%)、肥料は4,250万t(+15.7%)、鉄鋼は1,900万t(▲10.8%)、鉱石は1,230万t(+26.3%)だった。
  • 液体貨物は4億4,520万t(▲2.6%)、うち原油は2億6,750万t(▲1.7%)、石油製品は1億3,110万t(▲7.1%)、液化ガスは3,630万t(+5.9%)、液体の食品は640万t(+14.0%)だった。
  • 貨物のカテゴリー別では、輸出が6億9,970万t(▲1.9%)、輸入が4,290万t(+11.0%)、トランジットが6,490万t(▲0.5%)、内貿が7,870万t(▲12.1%)だった。(毎度申し上げるとおり、このように重量ベースでは輸出貨物が圧倒的に多いのがロシアの港の特徴)
  • 海域別では、黒海が2億7,570万t(▲5.4%)、バルト海が2億7,300万t(+0.6%)、極東が2億3,650万t(▲2.3%)、北極海が9,290万t(▲5.2%)、カスピ海が810万t(+4.9%)だった。

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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、東大先端研ROLESと共催で、3月6日に日米緊急対話「トランプ復活とロシア・ウクライナの行方」を開催することになりました。オンライン・現地のハイブリッド開催となります。米国を代表するロシア政治研究者のマイケル・キメッジさんと、軍事分野を中心に日本のロシア研究をリードする小泉悠さんが、札幌の地で激突。ぜひご期待ください。

(オンライン・現地参加とも事前登録が必要で、現地参加には人数に限りがあるので、ご注意ください)


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年3月号のご案内。3月号は、「ロシア・NISビジネスとROTOBOの活動」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「軍需以外は停滞感が出てきたロシアの鉱工業生産」、「独自航路で活路を開いたウクライナの海運」を執筆しています。


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 ブルームバーグのこちらの記事が、G7がロシアの石油輸出に対する価格上限制をより厳しくすることを検討していると報じている。上掲図も同記事から拝借したもの。

 記事によると、G7はロシアの戦費を削ぐため、共同で価格上限制をより厳しくすることを検討している。ブルームバーグが入手した声明文の草案によると、G7は各財務相に対し、現在1バレル60ドルとなっているロシア原油価格の上限を、一斉に引き下げ直すよう指示する可能性があるという。

 現段階では、すべてのG7諸国がこの文書をどの程度支持しているかは不明であり、交渉を続ける中で修正される可能性が高い。

 2022年12月に石油価格の上限が導入された当初は、ロシアにとって回避が容易であり、ロシア国内の石油と燃料の流れを維持することを主目的としているとして、大きな批判を浴びた。その認識は今年1月、退任するバイデン政権が161隻のタンカー、ロシアの大手石油生産者2社、トレーダー数社、そして国内のタンカーの主要な保険会社を制裁指定したことで変わった。スコット・ベッセント新財務長官は、そうすることでウクライナ紛争の解決を早めることができるとワシントンが考えるなら、対策を強化すると話している。

 G7は、ロシアによるウクライナ侵攻から3年となる2月24日に声明を発表することを目指している。


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 こちらの記事が、経済発展省のデータにもとづき、ロシアにおける旅行者数の増大について伝えているので、以下抄訳しておく。

 2024年のロシアにおける観光旅行者数は、外国人観光客数を含め、10%以上増加した。M.レシェトニコフ経済発展大臣が省の理事会で発表した。

 大臣は「我が省は、業界、上院議員、地域と良い相乗効果を生み出してきた。2024年の観光客数は10%以上増加し、そのうち外国人観光客は35%増加した。これは、大統領によって支持された電子ビザ、団体ビザなし渡航に関する決定の直接的な結果だ」と語った。

 経済発展省によると、チェチェン共和国、トゥヴァ州、ウリヤノフスク州、リャザン州は、観光客の増加率において35%以上の増加を示し、増加率という観点で上位であった。客数の上位は、ホテル宿泊者数が前年比7.6%増の1,210万人となったモスクワ市と、14.4%増の1,000万人となったクラスノダル地方が引き続きトップである。第3位はサンクトペテルブルグ市で、23.2%増の640万人の観光客が訪れた。


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 2023~2024年のロシアにおけるブランド別の乗用車販売を示した上表を見ると、中国系ブランドばかりがずらりと並んでおり、壮観である。1位のLadaこそロシア地場メーカーであるAvtoVAZのブランドだが、他は全部中国系と言って差し支えない。2024年のロシア市場における中国ブランド車の比率は、約6割に上ったということだ。初めて知ったが、10位のTankというのも中国Great Wall Motorのオフロード車サブブランドということである。中国メーカーはサブブランドが多く、覚えるのが大変だ。

 さて、問題は9位のBelgeeなのだが、これは中国のGeelyとベラルーシがミンスク郊外に建設した合弁工場である。同合弁は、当初はGeelyブランド車のみを生産していたが、2023年からは独自のBelgeeブランド車の生産も開始され、2024年の生産内訳はBelgeeが約6万台、Geelyが約3万台となった。2024年に生産された9万台のうち、ベラルーシ国内で販売されたのは2.5万台で、残りはすべてロシアに輸出されたということである。ということは、2024年にロシア市場で売られた15万台弱のGeely車のうち、2万台程度がベラルーシ産であり、残り13万台程度がおそらく中国からの輸入といったところだろうか。Belgeeブランド車に関しては、中国車とはカウントしないのが正解なのだろう。


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 先日、「トランプがウクライナのレアアースに触手」という話題をお届けし、その時にウクライナの地下資源地図もお目にかけた。しかし、その時のものはそれほど分かりやすくなかったので、改めてこちらの記事に載っていた資源地図を上掲のとおりお目にかけたい。

 トランプが執拗に要求している「ウクライナのレアアース」というものが、厳密な意味でのレアアースなのか、それとも希少資源全般なのかというのは、良く分からない。私はどちらかというと後者のような気がしている。ともあれ、厳密な意味でのレアアースの埋蔵地は、上掲地図の凡例で赤矢印で示したとおり、パステルグリーンっぽい色の地点となる。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、チャートの上位ではないが、今週30位に位置しているPeter, Paul and Mary - For Lovin' Meを聴いてみよう。今年に入って1月7日、メンバーの一人、ピーター・ヤロー氏(上掲動画で左の男性)が86歳で亡くなったことが伝えられたので、その追悼を込めて。日本語版ウィキペディアによる人物紹介は以下のとおり。

 ピーター・ヤロー (ヤーロウ)(Peter Yarrow, 1938年5月31日 - 2025年1月7日)は、米国の歌手で、1960年代を代表するフォーク音楽トリオ、ピーター・ポール&マリーのメンバー。ヤローは、ピーター・ポール&マリーの代表作の一つ「パフ」をレニー(レナード)・リプトンと共作した。ヤローは政治活動家でもあり、ベトナム戦争への反対運動から、NPO「オペレーション・リスペクト」の創設まで、様々な取り組みに関わってきた。

その頃ソ連では
1965年2月17日:ソ連・キューバ間で通商協定、支払協定、借款協定が調印される。

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 国際情報サイト「Foresight」に、「ロシア・ウクライナ戦争を奇貨に生き延びたベラルーシの独裁者ルカシェンコ」と題する論考を寄稿しました。こちらが上こちらが下となります。なお、全文閲覧には有料購読が必要です。


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 昨日に引き続き、私が把握しているデータと、A.ノヴァク副首相が発表したデータを突き合わせ、ロシア・エネルギー部門の数年間にわたる動向を跡付けてみたい。今日は天然ガスを取り上げる。いわずもがなだが、上図では、生産のグラフと、輸出のグラフでスケールが異なるので、その点だけご注意願いたい。最初はスケールを合わせて作図しようと思ったのだが、そうすると輸出の部分が矮小になりすぎて何だか分からないグラフになってしまうので。逆に言うと、ロシアの天然ガス輸出比率は意外と低いということも言えそうである。

 ウクライナ侵攻後、欧州向けが壊滅し、生産およびパイプライン輸出ともに落ち込んできたロシアの天然ガス部門ながら、上図に見るとおり、2024年には一定の回復を示した。おそらく、生産は前年比7%増、パイプライン輸出は18%増となったと見られる。

 それを支えたのは中国向け輸出であり、「シベリアの力」を通じた対中輸出は、2023年の227億立米から、2024年には310億立米程度に高まったと見られる。年間契約量が300億立米だったから、それを超過達成した。もっとも、2024年には欧州向けも若干回復した模様である。

 ロシアとしては、長期的にパイプラインからLNGにシフトし、2030年頃までに差し当たり50:50にするのが目標である。しかし、既存のサハリン2、ヤマルLNGこそフル稼働しているものの、それに続く存在だったアルクLNG2が米制裁の対象になり、LNG部門の一層の拡大は暗礁に乗り上げた格好である。


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 昨日お伝えしたとおり、ロシアのA.ノヴァク副首相が2024年のエネルギー関連指標を公表したのだが、2024年の数字だけだと好不調が分からないので、上図のとおり、まずは石油の数字を数年分のグラフにしてみた。

 まず、原油の生産は5億1,600万tということだったが、私の把握しているデータによれば、これは前年比3%ほどの減ということになるはずである。原油の輸出量は2億4,000万tで、これは前年比1%増になるはずである。

 問題は石油製品の輸出なのだが、ノヴァク副首相は今回その数字を挙げなかった。ただ、ロイターのこちらの記事で、2024年のロシアの石油製品輸出が不振だったことが伝えられている。ロシアは、近隣諸国に陸路で石油製品を輸出するパターンもあるが、大部分は海路での輸出になるはずである。ロイターによると、2024年のタンカーによる石油製品輸出は前年から9.1%低下し1億1,370万tとなったということである。陸路の分が不明ではあるが、まあだいたいトータルで9%くらい低下したのかなと判断し、上図ではその推計にもとづき2024年の石油製品輸出の数字を補っている。原油の生産・輸出はほぼ想定どおりだったが、製品の輸出がだいぶ下ブレしたということだろう。


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 それにしても、ロシアという国で不思議なのは、公式統計で国家機密とされているデータが、わりとあっさり手に入ることである。そのあたりがどうも徹底していないのだ。石油・ガスなどに関しては、ウクライナ侵攻後、生産量も輸出量も統計が発表されなくなったのに、なぜかエネルギー担当のA.ノヴァク副首相がそのデータを堂々と列挙するという、謎現象が見られる。

 そんなわけで、今般、ノヴァク副首相がこちらの論考で2024年の各種のエネルギー関連指標を列挙しているので、主な点を以下箇条書きでまとめておく。

  • エネルギー産業はロシアのGDPの約20%を占める。
  • 2024年の原油の生産量は5億1,600万t、輸出量は2億4,000万tだった。
  • 2024年の製油所における原油の処理量は2億6,650万tだった。得率は前年を上回り84.4%となった。ガソリンの生産は4,110万tに、軽油の生産は8,160万tに拡大した。
  • 天然ガスの採掘は6,850億立米で、前年比7.6%拡大した。パイプラインガスの輸出は1,190億立米で前年比15.6%増、LNG輸出は472億立米相当で4%増だった。
  • 「シベリアの力」を通じた中国へのガス輸出は、12月1日から、契約にうたわれている最大量である年間380億立米を満たす水準に高まった。結果、2024年の中国向け輸出実績は契約量を超えた。極東ルートのパイプライン建設も進んでおり、2027年稼働予定。
  • 2024年の石炭の生産量は4億4,350万t、輸出は1億9,620万t、国内供給は1億7,800万tだった。
  • 2024年の発電力は1兆1,983億kWhで、前年比2.9%拡大した。2024年には1.7GWの発電能力が新規稼働した。

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 こちらのページに見るとおり、ロシア統計局が2024年のロシアGDPの速報値を発表したので、拝見してみることにしよう。ただし、統計局のページは、たとえVPNを介してもアクセスしづらくなっており、根性で閲覧する他ない。

 統計局によると、2024年のロシアの実質GDP成長率は4.1%だった。なお、いつの間にか2023年の数字も改定されたようで、くしくも2023年も同じ4.1%成長に修正されたようだ。

 上図は、主な生産部門別に、2024年の生産増減を見たものである。先日の鉱工業統計の際にも触れたが、軍需景気で製造業が伸びる一方、鉱業が沈んでいることが、GDP統計からも確認できる。今回特に目を引いたのは、農林水産業の落ち込みが大きかったことで、これは天候不順等による穀物収穫の低下と関係していよう。

 もう一つ目立つのは、2023年には9.5%も伸びていた建設が、2024年には1.7%増へと減速したことで、これは以前もお伝えした国の支援による優遇ローンの打ち切りで新築住宅ブームが一段落したことに起因しているはずである。

 2024年に伸びがきわめて大きかったのは、金融・保険、情報・通信、ホテル・外食などの新興サービス系であり、2023年から引き続く成長であることから、今のロシアで成長産業になっていると考えてよさそうである。たとえば、こちらの記事に見るように、2024年のロシア国内旅行者は前年から25%ほど伸びたということであり、外国旅行に行きにくくなった影響もあってか、国内観光業が栄えているようである。

 一方、保険に関しては、もしかしてだが、影の船団による石油輸出にロシアが独自に付保していることで、事業が拡大しているとか、何らかの特殊事情があるかもしれない。


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 Wedge ONLINEに、「『弾圧のベルトコンベア』で抑圧するルカシェンコ それでも国民がベラルーシに住む理由」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、先日お伝えしたとおり、1964年12月11日にサム・クックが亡くなった時にはサムの曲はチャート上にいなかったのだけど、その後Sam Cooke - Shakeが急上昇し、今週8位まで上がってきた。当然新曲ではなく、旧作のリバイバルだが。シェイクと言っても、あっち系じゃないよ。

その頃ソ連では
1965年2月11日:ソ連と中国の第2回交渉が北京で行われた。A.コスィギンとYu.アンドロポフが、中国の毛沢東、劉少奇、鄧小平と会談。国家・政党間の相違を解消することはできず。

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 今般ロシア統計局から2024年の鉱工業生産統計が発表されたので、主な産業部門に絞り、過去3年間の生産動向を上図のとおりグラフにしてみた。

 2024年のロシアの鉱工業生産は、前年比4.6%拡大した。前年の4.3%増よりも、さらに加速している。しかし、全体が好調というわけではなく、かなりまだら模様である。

 ロシアの本来の基幹産業である鉱業は、2023年の1.0%減に続き、2024年も0.9%減を記録した。

 伸びが大きいのは製造業であり、2023年の8.7%増よりはやや減速したが、2024年も8.5%増と成長を続けた。しかし、今回は割愛するが、それを牽引しているのは軍需産業である。その他の主要部門では、石油精製等、冶金、機械・設備など、2024年に落ち込みを記録している部門もある。


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 シリーズで中国の旧ソ連諸国との輸出入額のグラフをお目にかけてきたが。本日は中央アジアのカザフスタンおよびウズベキスタンとの貿易動向である。

 まず、中国の対カザフスタン輸出入動向が、上図のとおり。カザフ側にとってみれば、自国の輸出が伸び悩み、ここ2年ほどで不均衡が大きく広がった点が気がかりであろう。

 次に、中国とウズベキスタンの輸出入動向が下図だが、カザフ以上に不均衡が目立ち、ウズベク側の赤字が肥大化している。むろん貿易は必ずしも二国間で均衡させる必要はないわけだが、ただ、中国から買うものは多くても売るものがないという状況は、好ましいものではない。

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 私のこのブログが旧来のURLであるhttp://のままになっていて、セキュリティ対策が講じられたhttps://になっていないことが、個人的にも前から気になってはいたのだけど、ライブドアブログがそういう仕様なのかと思って、特に対策していなかった。しかし、昨日、Xで指摘してくれたフォロワーさんがおり、改めてブログの設定を見ると、httpsへの移行はワンタッチで簡単に出来ることが分かった。というわけで、今のところ旧来のブックマークで新しいhttpsに飛べるようではあるけれど、ブックマークしてくださっている方は、念のために再ブックマークしてくださると確実かもしれません。

 ちなみに、私はテレビ出演の告知などはあまりしませんが、本日は東京にお邪魔してNHK総合「クローズアップ現代」に出演予定。飛行機がちゃんと飛ぶのかという若干の不安はありますが、まあたぶん出てロシア経済について解説することになるので、ご興味のある方はどうぞ。

 それで、番組への準備もあり、ロシア経済の情報をアップデートしている中で、住宅ローンのデータを改めて整理してみた。上図は、横にだいぶ長くなってしまったので、ご興味のある方は、拡大してご利用を。

 ロシアは現時点で政策金利が21%という高金利社会なわけだが、政府の補助による各種の優遇住宅ローンが用意されている。昨年6月までは、新築住宅の購入であれば、ほぼすべての市民が8%の優遇金利でローンを借りられた。元々コロナ後の経済・社会危機対策だったのが、いつしかプーチン政権の人気取り政策となり、大統領選もあったので、止めるに止められなくなってしまったのだ。しかし、中銀界隈から、金利政策の整合性を損なうものだというもっともな批判が寄せられ、市民が無条件で借りられる優遇金利は昨年6月で打ち切られた。それでも、幼い子供がいる家庭向けの「家族ローン」(年利6%)、IT技術者向けの「ITローン」(6%)、極東・極北居住者向けのローン(2%)は依然残っている。

 昨年7月以降はこれらの条件付き優遇ローンだけになったので、上図に見るとおり、昨年6月の駆け込み利用を過ぎると、7月以降国の補助による優遇ローン利用は低下し、これに伴い住宅ローン全体も低下した。2024年全体でも、住宅ローンの貸し出しは4.9兆ルーブルに留まり、前年比37%低下した。

 こちらの記事によると、2024年にロシアで建設された住宅は1億700万平米で、前年比2.7%減だったという。当然、下半期に限れば、より大きな落ち込みだろう。


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 それにしてもお下劣だ。こちらの記事によると、

 トランプ米大統領は3日、レアアース(希土類)の供給を確保したいとし、ウクライナが米国に供給することを望んでいると述べた。ウクライナが米国の要請に応じる用意があるとも述べた。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、米国の「3,000億ドル近い」支援に対してウクライナからの「応分の見返り」を望んでいると表明。「われわれは、レアアースなどの提供についてウクライナと取引をしたいと考えている」とした。トランプ氏が「レアアース」という文言を、全種類の重要鉱物を指して使っているのか、それとも希土類だけを指して使っているのかは現時点では不明。レアアースとは31鉱種あるレアメタルの中の17種類の希土類の総称。電気自動車や携帯電話などに使用される。ウクライナにはウラン、リチウム、チタンが大量に埋蔵されているが、いずれも産出量では世界5位には入っていない。一方、米国にはこれら重要鉱物などの未開発埋蔵量があるとみられる。

 それで、トランプがウクライナの資源を欲しいと言い出したので、ウクライナのどこに地下資源があるのかを示した2023年のウクライナ版フォーブスの記事が、再び脚光を浴びたようだ。上掲地図はそれに掲載されていたもので、州別の地下資源埋蔵額を示している。これによると、ウクライナの地下資源の埋蔵額は14.8兆ドルに上るが、ドネツク州が3.8兆ドル、ルハンシク州が3.2兆ドル、ドニプロペトロウシク州が3.5兆ドルと、この3州だけで全体の7割を占めている。ということは、いかにトランプが関心を示そうと、ウクライナが東部領土を維持できなければ、地下資源の大部分も失うことになってしまう。

 PS 追伸だけど、こちらのポストの画像には、資源の内訳も出ていて、なお良し。

Gi4

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cnua

 昨日のロシア・ウクライナに続き、本日は中国の対ウクライナ・モルドバ貿易動向のグラフをお目にかける。ロシアの支配を脱しEU加盟を目指す両国だが、貿易パートナーとしては中国に期待する部分が小さくない。しかし、肝心の対中貿易パフォーマンスは、思うようには発展していない。

 まず、中国の対ウクライナ輸出入動向が上図のとおり。ウクライナは中国にとって飼料用トウモロコシと鉄鉱石の供給国としてそれなりに重要だったのだが、開戦後のロシア軍による黒海封鎖で輸送路が閉ざされ、2023年終盤からはウクライナが独自に開設した航路を通じた輸出が復活はしているものの、貿易水準は戦前から大きく落ち込んだままである。

 次に、中国の対モルドバ輸出入動向が、下図のとおり。2024年には、輸出入とも順調に伸び、過去最高を記録した。ただ、モルドバにとってみれば、中国市場への販売拡大、それを通じた対中貿易赤字の解消が目標であり、その問題は未解決のままである。実はモルドバはそうした目標を念頭に中国とFTA交渉を進めてきたのだが、現政権が従来以上にEUに傾斜しているので、モルドバの交渉熱意は低下している印象である。

cnmd

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 私が研究している旧ソ連諸国にとって、中国との関係の重要性が高まっており、多くの国で中国が最大の貿易相手国という状況となっている。他方、ロシアやベラルーシが統計を出し渋る中で、発表されるのが早い中国の貿易統計は、有難い存在だ。そこで、今般発表された中国の2024年通関統計を利用し、中国と私の関係国との輸出入額を図示してお目にかけたい。本日は、国際的な孤立ゆえに中国に期待するところが大きいロシアとベラルーシを取り上げる。後日、ウクライナ、モルドバ、カザフスタン、ウズベキスタンも取り上げたい。

 まず、中国とロシアの貿易動向が上図のとおり。2024年の中国の対露輸出が1,155億ドルで前年比4.0%増、輸入が1,293億ドルで0.7%増だった。一応は拡大し、過去最高を更新はしたが、明らかに伸びは鈍化している。2024年に米バイデン政権が中国の銀行に二次制裁を適用し、中国の銀行や企業が対露取引を見合わせたことが大きかったと思われる。

 一方、2024年の中国の対ベラルーシ貿易は、輸出こそ65.8億ドルで前年比12.8%増だったが、輸入は18.1億ドルで30.5%減となった。ベラルーシが欧州で売れなくなったカリ肥料をコンテナに詰めてせっせと中国に輸出していると聞いていたので、中国の対ベラルーシ輸入減は少々意外だった。

cnby

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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 このシリーズでつい先日、Marianne Faithfull - As Tears Go Byを取り上げたばかりだったが、今般そのマリアンヌ・フェイスフルの訃報が伝えられた。ご冥福をお祈りいたします。

 さて、今週のチャートでは、You’ve Lost That Lovin’ Feelin’ - Righteous Brothersがトップに。言わずと知れたフィル・スペクター・サウンドの代表曲であり、ガールものが目立つフィレス勢にあって、異色の男性ブルーアイドソウルである。個人的には、昨年暮れ、このレコードのシングル盤を手に入れられたのが嬉しかった(安かった)。

その頃ソ連では
1965年2月5日:ベトナム・ハノイに向かう途上、A.コスイギン・ソ連閣僚会議議長とYu.アンドロポフ中央委員会書記を団長とするソ連代表団が北京に立ち寄る。中華人民共和国国務院総理周恩来と外務大臣陳儀との間で、ソ連・中国の交渉が行われた。

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