ユーラシアリサーチ 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心に旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 ウクライナのウニアン通信のこちらの記事が、議会選挙を受けた内閣の人事刷新についての観測を伝えているので、要旨を以下のとおりまとめておく。

 法律上は、新しい議会を選出したからといって、政府を刷新する必要はないのだが、その話題はこのところ専門家たちによって盛んに取沙汰されていた。その際に、人事の最終的な決定権がV.ヤヌコーヴィチ大統領にあることは、周知の事実である。ただ、議会選挙後の政権内部の闘争の行方は、選挙そのものに劣らず重要である。なぜなら、内部対立が激しくなるほど、大統領選の時期が近まってしまうからである。ヤヌコーヴィチは頻繁に政権内部の火消を余儀なくされており、その一環として人事を使っている。来たるべき内閣改造も、その一環となる。

 その点で、最も興味深いのは、社会政策担当副首相のS.チヒプコの立場である。彼は、内閣のメンバーを半分入れ替えるというような失言をしている。専門家のV.ネボジェンコによれば、議会の議長になったりするよりも、現職に留まることを望んでいる。チヒプコは、結局のところ政治家というよりも銀行家であり、副首相の方が資金面で恵まれた立場にある。チヒプコが議会議長に意欲を見せたのは、冗談にすぎない。チヒプコはドニプロペトロウシクのオリガルヒであり、地域党は彼をドネツィク有権者の利益の表現者にするつもりは決してない。2010年の大統領選の時と同じように、首相になる野心を持っているチヒプコにとって、議長ではなく一議員の座に甘んじることは、受け入れられない。ゆえに、チヒプコは閣内に残留することに全力を尽くすだろう。危機の時代には、ビッグビジネスは財政の周りに群がると、ネボジェンコは言う。

 他方、M.アザロフ現首相は、事情が違う。官房での仕事の経験が豊富で、政治的野心を持たないことは、首相の美徳だが、それは政治家というよりも官僚としての美徳だ。現状ではアザロフは、地域党にとっても、大統領にとっても、支持率の足を引っ張る存在になっている。アザロフが地域党の広告塔の役割を外されたのも、無理はない。ただし、アザロフ首相の退陣をもたらす可能性があるのは、むしろ別の問題である。前出のネボジェンコの指摘によれば、ロシアとの対立が抜き差しならない状態になっている。ウクライナの首相の最も大事な仕事は、次の年のガス価格につきロシア・ガスプロム社と合意することであり、歴代の首相はすべてそれをしてきたが、一人アザロフだけがそれを成し遂げていない。ゆえに、ヤヌコーヴィチはアザロフを年金生活入りさせざるをえない。誰もアザロフを血祭りに上げようというわけではないが、アザロフが2年間で問題を、とりわけロシアとの関係を解決できなかったことは重いと、ネボジェンコは言う。

 問題は、いつアザロフ首相が退任するかだが、多くの専門家は年内はないだろうとしている。ただ、すでに候補者は多数挙がっており、上述のチヒプコ、V.ホロシコウシキー第一副首相などもいるが、最も有力視されているのがS.アルブゾフ中銀総裁だ。ヤヌコーヴィチ大統領との関係が良いことに加えて、アルブゾフは中銀総裁の職務を大過なく果たしており、何より選挙まで為替を安定させるという至上命題を果たした。一方、A.クリュエフ国家安全保障・国防が首相になるという説もあるし、またクリュエフがアルブゾフ首相の下で第一副首相を務めるという説もある。

 閣僚の中で、退任が確実視されているのは、V.バローハ非常事態相、P.ポロシェンコ経済発展・商業相、A.ブリズニューク地域発展・建設・住宅公営事業相である。このうちポロシェンコは、小選挙区から議会選に出馬しており、議員への転身が有力視される。前出のネボジェンコによれば、小選挙区の情勢次第であり、もしも同志たちが多く当選したら彼らとともにすぐに議会に移るし、芳しくないようであればもうしばらく閣内に留まる可能性もある。ポロシェンコの後任候補としては、I.アキモヴァ大統領府第一副長官の名が挙がっている。

 D.タバチニク教育相、O.ラヴリノヴィチ法相も退陣説があるが、彼らに関しては、自ら退任を申し出ない限り、残る公算が大きい。

 一方、留任が確実視される閣僚としては、M.プリシャジニューク農相、B.コレスニコフ副首相・インフラ相、V.ホロシコウシキー第一副首相、V.ザハレンコ内相、E.スタヴィツィキー環境・天然資源相、Yu.ボイコ・エネルギー相、D.サラマチン国防相、Yu.コロボフ蔵相らがいる。

 R.ボガティリョヴァ副首相・保健相に関しては、R.アフメトフの派閥であり、ヤヌコーヴィチが彼女を解任し政権内のバランスを崩そうとするとは思えない。ボガティリョヴァは保健改革に手腕を発揮しておらず、先日の経済改革会議で大統領から咎められる一幕もあったが、それは解任の予兆というよりは、警告だったと考えられる。

 K.フリシチェンコ外相の立場は、より微妙だ。ティモシェンコ事件に関し諸外国に政権の立場をPRすることに失敗し、EUとのサミットがお流れになった責任を問われている。地域党の比例名簿9位という高い順位で外交官のL.コジャルィが選挙に出ていたことが注目され、あるいは同氏がフリシチェンコに取って代わるかもしれない。


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 私のブログ/HPでは、ロシアのナノテクノロジー関連の国策会社「ロスナノ」のことを、何度か取り上げている。そのロスナノが、米大統領選の共和党候補であるミット・ロムニー氏がかかわる会社に、新たな戦略の策定を発注したことが明らかになった。ロスナノのA.チュバイス社長が明らかにした。こちらの記事が伝えている。

 記事によると、発注先は国際的なコンサルタント会社であるBain & Company(ベイン&カンパニー)であり、ロスナノが実施した入札においてベイン社のモスクワ事務所が落札を果たした。ロムニーは1977年(78年?)にベイン社に迎えられたが、現在どれだけの株式を保有しているかは不明ということである。ロスナノは戦略策定作業に対しベイン社に4,640万ルーブルを支払う(現在、1ルーブル=2.54円)。今回の入札に当たっては、Boston Consulting Groupが3,750万ルーブルというより低い価格を提示したが、ベイン社の示した納期および実績が買われ、ベイン社に白羽の矢が立ったという。


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 先日、季節の風物詩のようになったApple社の新商品発表があった。今回の目玉は、かねてから予想されていたように、7インチのiPad miniの登場。しかし、個人的にはこの春に第3世代のiPadを買ったばかりで、それを持っていれば少なくとも1年くらいは最新鋭モデルのオーナーという優越感に浸れるはずだし、「画面大きい方がいいもんねー。7インチなんか興味なし」という気持ちでいた。

 そんなわけで、10月23日の発表は、自分とは関係のない話だと思っていて、大して情報もチェックしていなかったのだけど。しかし、AV Watchというサイトで、西田宗千佳さんのこちらのコラムを眺めていたら、予想外のことが書かれていた。今回、iPad miniだけでなく、「第4世代iPad」も発表されたというのだ。一般のニュースはほとんどミニの方の話題に費やされていたので、そんな話は寝耳に水だった。コラムによると、新型は処理能力が高速化し、しかもLTEに対応するらしい。

 西田氏のコメント、「第3世代iPadの(製品として展開された)寿命の短さには、色々切ないものを感じる」というのを読んで、自分が負け組になったらしいことを悟った。まあ、私としては、そんなに高速処理を要するような使い方はしていないので、現状それほど不便を感じていないのは事実なのだが。しかし、あれだけもてはやされた第3世代を買って、わずか半年あまりで陳腐化するとは、思いもよらなかった。


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 10月28日に投票が行われたウクライナ最高会議(議会)選挙に関し、10月29日付のロシア『ヴラースチ』誌(No.43)が、読み応えのある論評を掲げている。投票結果が判明する直前に書かれた記事のはずだが、V.クリチコのUDARの位置付け、ロシアのプーチン政権の対応など、興味深い内容を含んでいるので、主なくだりを以下のとおり抄訳しておく。

 今回の最高会議選挙を、比例区・小選挙区の並立制で実施することは、約1年前の選挙法改正で決まり、改正には野党側も賛成していた。その結果、比例区での地域党の得票が30%程度であっても、小選挙区と合わせれば、状況が異なってくる。民主イニシアティブ基金のI.ベケシキナ代表は、「L.クチマ大統領の時代に、野党が政権党よりも多く得票しても、結局のところ親大統領の議会が成立したのと同じように、今回も親ヤヌコーヴィチの議会が成立するだろう。政権側が小選挙区候補の忠誠を調達するのはたやすいことであり、彼らの有権者に対する饗応に目をつむってやったり、潰そうと思えばできる彼らのビジネスを自由にしてやったりすれば充分だ。並立制への復帰により、比例制と小選挙区制の欠陥を併せ持つ選挙制度となってしまった」と指摘する。

 共産党も、来たる議会における地域党の有力パートナーである。ブルジョア批判の表向き過激なスローガンも、その妨げにはならない。今回の選挙では、国家安全保障・国防評議会のA.クリュエフ書記が暗躍し、共産党を陰で支援していたと言われている。

 議会選を前にして、ヤヌコーヴィチ大統領の状況は厳しいものとなっていた。問題はV.クリチコのUDARがオレンジ派の野党政治家たちの「祖国」に支持率で肉薄してきたということではない。予期せぬ事態だったのは、政治家の支持率において、クリチコがティモシェンコを抜いて、ヤヌコーヴィチに次ぐ2番手に躍り出たことである。ある世論調査結果によれば、現在の政治家ランキングは、1.V.ヤヌコーヴィチ:23%、2.V.クリチコ:19%、3.Yu.ティモシェンコ:16%、4.P.シモネンコ:9%、4.A.ヤツェニューク:9%、であるという。

 政権側は、クリチコの危険性をかなり前から察知していた。たとえば、クリチコはボクシングの防衛戦をキエフで戦うことを当局から阻まれ、9月にモスクワで開催することを余儀なくされた。しかし、祖国から離れた地で防衛したことにより、政治家としてのクリチコの人気は一層上がったが。

 ただ、クリチコの人気が急上昇しているのはボクシングの成功だけではなく、政権に入ったことも、現政権と陰で交渉したこともなく、まだ政治家として汚れていないことにもよる。クリチコはまた既成野党からも距離を置いており、選挙前に「祖国」「自由」の両派が新議会において連立を形成する協定に調印したのに対し、クリチコはそれを断っている。「民主連立は選挙直後に形成する方が合理的だ。野党パートナーの提案は尊重するが、まず肝心なのは野党が選挙に勝ち、その結果を擁護することである」と、クリチコは唱えていた。

 評論家たちは、この判断は賢明だったと考えている。V.カラショフの分析は、以下のとおり。今さらティモシェンコと組むことは野党政治家たちにとって得策でなく、現にヤツェニュークは「祖国」と組むことで損をしている。地域党は一昨日の政党だが、「祖国」は昨日の政党だ。今日ではまさにクリチコこそが、ギャング政党たる地域党にうんざりしている多くの人々の、希望の星となっている。クリチコの政治スタイルは、ボクシングのそれと同じで単調だが、外連味がない分、他の与野党政治家よりも効果的に点数を稼いでいる。人々は、汚職やギャングと戦う闘士は、ティモシェンコよりもクリチコであると見るようになっている。ティモシェンコにとってもクリチコは邪魔者になっており、クリチコが現れたがゆえに、今回の選挙は革命ではなく普通の選挙になってしまった。ティモシェンコのブランドは古びており、人々は古い政治家たち、街頭の示威運動への呼びかけに飽きている。クリチコは「ギャングを監獄に!」というスローガンを掲げており、それはオレンジ派の人々ができなかったことで、人々はその実現を待ちわびている。

 クリチコの人気が上昇し、本人は出馬を表明していないものの、2015年の大統領選におけるヤヌコーヴィチへの対抗馬の一番手と見なされるようになった。それに関し前出のカラショフは、クリチコに対してはウクライナのオリガルヒたちが支援・出資しているという。具体的には、D.フィルタシとI.コロモイシキーで、政権には近いが、ドネツィク閥には属していない2人だ。カラショフによると、ヤヌコーヴィチを脅かさないよう、クリチコは2015年の大統領選には出馬しないことが、暗黙の了解であるという。しかし、ここに来てクリチコにも野心が頭をもたげてきた。

 前出のベケシキナも、クリチコに野心が芽生えてきたことを指摘し、もしもヤヌコーヴィチの再選に少しでも不透明感が生じたら、そのとたんに小選挙区議員や大手資本は別のより強力な候補者になびいていくだろうと予想する。一方、リサーチ&ブランディング・グループのYe.コパチコは、まだ大統領選までかなり時間があることから、これからも色々政治家が出てくるかもしれず、早計に判断してはならないと指摘する。

 野党側は、来たる新議会では、まさに大統領選をめぐる駆け引きが最大の焦点になると考えている。ヤツェニュークは、以下のように述べている。ヤヌコーヴィチにとっては、国民の直接投票は、権力を失うことに直結する。そこで、彼は300議席を押さえて、憲法を変えようとしている。大統領制自体を廃止するか、議会で大統領を選出するか、象徴大統領制にするか、色々と策を練っている、と。

 いずれにしても、大統領就任後2年強を経て、ヤヌコーヴィチはきわめて困難な状況に置かれている。2011年にティモシェンコに実刑判決を下したことで、EUとの関係を駄目にした。他方では、ロシア主導の関税同盟入りと、ナフトガス社をガスプロムに供出することに抵抗し、モスクワとの関係も険悪化した。

 ロシアは、ヤヌコーヴィチを支援し、彼が2010年の大統領選に勝ったことを自らの勝利と見なしていたが、最近になってヤヌコーヴィチとの関係を冷却化させている。ウクライナのある政府関係者によると、8月25日にソチでの首脳会談が終わり、プーチン大統領がヤヌコーヴィチ大統領を車まで送っていった際に、プーチンは最後に「貴方はあの女と同じ場所に行くことになるかもしれませんよ(注:ティモシェンコと同じように収監されることになる危険があるという意味)」と警告したという。ヤヌコーヴィチ自身、最近身の危険を感じている。自らに近い富豪たちがクリチコに金を出していることに、大統領が気が付かないはずはない。ソチからの帰国後、ヤヌコーヴィチは身辺の警護を強化したという。別の現地情報筋によれば、最近ヤヌコーヴィチ大統領は、地域党の全議員のSMS通信記録を自らに提出することを、特務機関に命じているとのことだ。大統領がそれをすべて読む時間があるのかという疑問もあるが、その情報筋は「権力を保持したければ、時間は見付けるものだ」と答えた。

 ロシアの政権関係者も、我々はヤヌコーヴィチに対する不快感を募らせており、クレムリンとしてはウクライナの指導者交代もやむなしと考えていることを、認めている。しかも、プーチン大統領もメドヴェージェフ首相も、本件に関しては完全に一致しているという。最初プーチンはヤヌコーヴィチを出し抜いたりカネで動かせたりすると考えていたが、実際にはヤヌコーヴィチはテコでも動かない男だった。

 こうした状況ゆえ、ロシアにしても欧米にしても、ウクライナの政権交代を促さないまでも、少なくともそれを阻むことはしない。その際に、ボクサーとしては百戦錬磨だが、政治家としてはウブなクリチコは、悪い選択肢ではない。


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 2012年10月30日付の『RBCデイリー』紙で、ロシアの首都モスクワ市のA.シャロノフ経済問題担当副市長が、インタビューに応じている。私の研究分野に関する発言がいくつか見られるので、主な発言要旨を以下のとおりまとめておく。

 工業地区の開発は、思うようなテンポでは進んでいない。我々は工業地区を活性化し、職場・商業・教育を含む混合利用地区としたい。

 工業地区のうち、旧AZLK自動車工場の敷地に関して言えば、そこはもうすぐテクノポリス「モスクワ」になる。すでに15ほどの入居企業があり、科学関連資機材の通関のための税関も開設された。主な入居企業としては、9,000万ドルを投資し、マイクロエレクトロニクス・コンポーネント生産のためのクリーンルームを設置する予定のCrocus社などがある。

 ゼレノグラード経済特区の開発が進まないことに関しては、管理当局と、入居企業の双方に、お互いに対する不満があり、鶏と卵の議論になっている。入居企業はインフラの整備が遅れていると言う。他方、まったく不活発な入居企業があり、我々としては入居企業の義務不履行に対する責任を厳格化して、残りの入居企業に履行を促すよう、連邦当局に働きかけたいと思っている。優遇措置が受けられるのは、実際に活動を始めてからである。問題のある入居企業については、資格の剥奪も念頭に置いている。すでに、特区資格を転売しようとする輩が出てきている。もう入居の場所がないのをいいことに、特区資格とともに活動実態のない会社を他者に売ろうというのだ。これは明らかに、国が特区制度を開始した趣旨には合わない。

 (モスクワを国際金融センターにするという遠大な構想がありながら、本年に関しては、連邦予算から資金が出ていないようだが?)国際金融センターは、当時のD.メドヴェージェフ大統領と、A.ヴォロシンを長とする委員会が提唱したもの。国の投資環境、金融機関の質、生活水準など、いくつかのテーマに関する作業グループが設けられている。モスクワ市が責任を負っているのは、運輸・エンジニアリング関連インフラの発展、エコロジーの改善など。取引所、金融サービス、金融取引への課税といった金融面のインフラは、完全に連邦の管轄であるが、その整備はそれなりに進んでいる。

 現在、モスクワ市では、2025年までの発展戦略の策定を進めている。

 (モスクワ市の拡張により、イノベーションセンター「スコルコヴォ」もモスクワ市の管轄範囲に入ったが、連邦はそのインフラ整備を支援してくれるのか?)然り、そのような合意がある。本年、モスクワ市は主にエンジニアリング・インフラ向けに、一部は交通にも、資金を受けている。そのエリアはモスクワ市の領域になり、我々としても同プロジェクトに関心を抱いている。他方、プロジェクトは多額の資金を要し、連邦の拠出なしでは成立しない。拠出の一つのトランシュとして、財務省から45億ルーブルが割り当てられ、年末までに受け取ることになっている。2013年についても受け取れるはずである。


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 前のエントリーに引き続き、またまたロシアの経済特区の話題である。こちらのニュースで、ウリヤノフスク州に設けられた港湾特区の近況が伝えられているので、その要旨を整理しておく。「港湾」とは言っても、海港ではなく、空港に設けられた特区であり、そこに「インテルアヴィオニカ」社という5つ目の入居企業が現れたということを報じている。

 記事によると、ウリヤノフスクの機器設計局と、公開型株式会社「アヴィアプロボール・ホールディング」の子会社である「インテルアヴィオニカ」は11月1日、ウリヤノフスク・ヴォストーチヌィ空港をベースに創設されている港湾経済特区の入居企業の認定証を受領した。このほどウリヤノフスクで始まった国際会議で、A.ピンコフ・ウリヤノフスク州第一副首相から授与された。ウリヤノフスクの機器設計局と公開型株式会社「アヴィアプロボール・ホールディング」は、ともに国家コーポレーション「ロステフノロギー」の傘下にある。インテルアヴィオニカは特区において生産・サービスセンターを開設し、航空機器用の基礎要素の生産、外国および国産の航空機向けのハイテク無線通信機器の生産に従事する。プロジェクトは7月20日に連邦経済発展省で開かれた専門家評議会で承認されていた。もう一つ、米国の航空関連会社「AAR」と、ロシア人の個人投資家M.アウシェフ氏によるロジスティクス・センター創設の共同プロジェクト「AAR-Rus」も承認されていた。かくして、現時点でウリヤノフスク特区には5件の企業が入居企業として認定されている。初期の入居企業は近いうちに土地区画を受け取り、活動を開始する。これまで認定された入居企業は、航空機の技術サービスセンターを開設するヴォルガ・ドニエプル・テフニクス・ウリヤノフスク、同じくFLテフニクス・ウリヤノフスク、そして小型航空機の組立を行う工場「ヴィチャジ」であった。


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 こちらのニュースによると、ロシアのD.メドヴェージェフ首相はこのほど、タタルスタン共和国に経済特区「イノポリス」を創設する政府決定に署名した。タタルスタン共和国にはすでに工業生産特区「エラブガ(アラブガ)」が設けられているが、今回新たに創設されることになった「イノポリス」は技術導入特区である。9月にタタルスタン側が首都カザン市の近郊に技術導入特区を創設したい旨の申請をロシア連邦経済発展省に提出していた。特区はヴェルフネウスロンシキー、ライシェフスキーという2つの区画に設けられる。


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 しばらく前に、「岐路に立つロシアの在外通商代表部」というエントリーを書いたが、その続報である。こちらの記事が、ロシア連邦経済発展省が、いよいよ在外通商代表部の改革に本腰を入れようとしている旨を伝えているので、記事の要点を整理しておく。

 ロシア経済発展省で10月31日、同省が管轄する在外通商代表部の問題に関する幹部会合が開かれた。会合後、A.ベロウソフ経済発展相は記者団に対し、在外通商代表部の体系を向こう2年ほどで改革していくことになると言明した。大臣によると、現在の通商代表部はロシアの対外経済的国益に完全に資するものにはなっていない。ロシアは現在、アジア市場を志向しているが、通商代表部が多く置かれているのは欧州地域である(注:やはり、大使館などと同じで、どうしても駐在員が生活するのに快適なところに公館が増えるということだろう)。近日中に、ベトナムに開設することを計画中である。また、ロシアはアフリカにも権益があるが、アフリカに置かれた通商代表部は1箇所しかない。ラテンアメリカにも利害があるが、通商代表部はニカラグアとアルゼンチンの2箇所だけとなっており、差し当たりキューバに開設する必要がある。今後の2年間程度でこれらを改め、不要なところは閉鎖するし、必要なところでは新設する。また、通商代表部の機能面に関しても、現状では通商代表部は駐在国の現地情勢を分析する役割しか果たしておらず、それは大使館に移管しうる。他方、具体的なプロジェクトを、具体的なパートナー企業との間で推進しようという時には、大使館の手には負えず、そこに通商代表部の役割がある。現在、通商代表部の仕事には20億ルーブルの歳出が費やされているが、その体系の改革にはそれほどの巨額を要さない。今回の会合に先立ち経済発展省は、一連の大企業およびタタルスタン共和国、カルーガ州、ニジェゴロド州、スヴェルドロフスク州、ウリヤノフスク州と、協力協定を結んでいた。今後、明確な対外経済関係利害を有する大企業15~20社、そして一連の地域と、さらに協定を結ぶ予定である。現行の協定は枠組み的なものであり、今後は企業および地域は自らの具体的なプロジェクトを推進するために通商代表部のインフラを活用でき、そのプロジェクトのリストは追加的な協定で取り決められる。各通商代表部が企業・地域の共同プロジェクトを実施する実績指標を、職員の昇進や、通商代表部の再編に連動させることが計画されている。


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20121101med

 10月31日、ロシアで「オープン・イノベーション」というフォーラムが開催され、D.メドヴェージェフ首相が報告を行ったということである。ノーヴォスチ通信のこちらの記事にもとづき、メドヴェージェフ首相の発言要旨を以下のとおり紹介しておく。

 私は常に、国が経済に介入しすぎるのはよくないということを言っているが、イノベーション経済への支援、科学研究および教育プロジェクトへの支援に関して言えば、やや話が異なる。どの国においても、国家政府、地域行政府の参加なくして、いかなるイノベーション的発展もありえない。ロシア政府も、この原則に立脚すべきである。一連の事例において、国はイノベーションプロジェクト、プログラムに直接的に参加すべきである。この点は、まったく恥ずべきことではない。他方、国家は「引き際」をわきまえ、適切なタイミングで事業から引き揚げ、プロジェクトが自立できるようにすべきである。ロシア経済の最も重要な優先的ハイテク分野は、省エネ、情報、宇宙、バイオ・医療、原子力である。ただし、資源セクターも、イノベーション発展と無縁というわけではない。もしも資源セクターが、単なる石油の輸出ではなく、ロシアに豊富にある炭化水素資源を利用した新技術の導入を伴うならば、それはイノベーション的だと評価しうる。したがって、我が国には資源セクターにおけるテクノロジーが必要である。ロシアにおいて、イノベーションは大都市のみで発展すべきではない。才能ある人々は様々な場所にいる。我々の課題は、資源を的確に配分し、何らかの理由で首都に移りたくなく、地元に残ってイノベーション・ビジネスに携わりたいと思っている人々を、支援することである。


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 ウクライナ最高会議(議会)選挙があったので、ここ10日間ほど、本ブログはウクライナ関係のエントリーばかりでした。で、たまにロシア関係の記事があっても、マニアックな地域情勢の話題だったりして。まあ、実はそれも仕事上の都合によるもので、今年度は特にそういう情報を重点的にフォローしなければならない事情があるわけです。で、今回もそんなエントリー。

 『RBCデイリー』のこちらの記事によると、ロシアの地域発展省は、ロシアに8つ設けられている連邦管区のすべてについて、国家プログラムを採択することを求めているということである。記事の要旨は以下のとおり。

 地域発展省は、国家プログラムに関し、部門別のプログラムを、地域的なそれと整合させることが必要と考えている。すでに北カフカス連邦管区と極東連邦管区についてなされているように、それぞれの連邦管区ごとに、個別の国家プログラムが採択されてしかるべきである。I.スリュニャエフ地域発展省は、国家予算がプログラム方式に完全に移行する2014年に向けて、このような提案を行う意向である。この新機軸は、現在のところ他の省庁から賛同は得られておらず、特に経済発展省が難色を示している。

 地域発展省では、現行の国家計画化の体系は、大幅な見直しを要すると確信している。たとえば、現時点では、83の連邦構成主体(地域)のうち、70の構成主体が地域発展戦略を策定している。しばらく前にV.ガエフスキー地域発展次官は、以下のように指摘していた。連邦管区ごとの戦略は、利害を調整するための素晴らしい場である。しかし、現実にはそうなっていない。その原因の多くは、大半の省庁が部門別の計画化にこだわり、地域的なそれを認めないか、圧迫していることにある。我が省は、計画化は地域原則で、実施は部門原則でという形であるべきだと確信する、と。

 現在、地域的な計画化のメカニズムが実施されているのは、北カフカス連邦管区と極東連邦管区(ザバイカルを含む)の2つの国家プログラムである。ガエフスキー次官によれば、すべての連邦管区につき個別のプログラムを採択することが、より効果的なアプローチとなる。しかし、議論は始まったばかりだ。最大の障害は、「黄金の保有」の不足にある(注:意味不明)。極東のように、現実の要請があれば、追加的なメカニズムやツールも見付かるのだが。

 地域発展省によると、もう一つの障害は、多くの省庁が現行の方式を見直したくない点にある。実際、経済発展省は、地域発展省の構想に慎重姿勢を見せている。同省のA.ソコロフ地域経済発展プロジェクト局長によれば、北カフカス、極東、そしてカリーニングラード州(同州についても個別の連邦プログラムが存在する)は特別であり、国家指導部がとりわけ戦略的に重要であると見なし、個別の資金拠出や特別な施策が決定されているからこそである、ということである。

 たとえば、観光地区の開発のために、「北カフカスの保養地」という特別な会社が創設され、対外経済銀行にはそのための特別な子会社である「北カフカス開発コーポレーション」が設置されている。北カフカスについて国家プログラムが必要とされたのは、これらのツールを相互に連携させるためである。極東についても、ツールの数は少ないが、原理は同様である。それに対し、その他の地域については、特別な措置は講じられていないと、ソコロフは説明する。

 ただし、地域発展省の提案は将来的な構想であり、これを正式に提案するのは、国家予算の計画化がプログラム原則に移行する2014年に向けてであるという。国家予算の方向性、とりわけその透明性に 関しては、計画化が部門別になるか、地域別になるかによって、大きな影響は生じないであろうと、財政政策センターのA.デリュギンは予想する。問題は国家プログラムがいかに策定され、いかに実施されるか。原則的に地域アプローチはより正しいが、多くの省庁の協力を要するので、実施はより困難。部門別アプローチの方が、分かりにくいこともあるが、出口は見つけやすいと、デリュギンは指摘する。

 社会政策独立研究所のN.ズバレヴィチ地域プログラム部長は、国家プログラムは単に資金を取り付けやすいと、批判的な見方を示す。「戦略」では、国家プログラムと異なり、措置に対する資金は必要とされない。全体として、どちらのタイプのプログラムも、上手く機能はしておらず、単に資金の確保にすぎない。もはやそれを繰り返す必要はないと、ズバレヴィチは指摘する。たとえば、北カフカス開発国家プログラムの草案は2015年までに連邦財政から2.1兆ルーブルを拠出することを想定しており、極東・ザバイカルについては2020年までに2兆ルーブルを想定している。


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 ウクライナの『コレスポンデント』誌の2012年9月7日号(No.35)を眺めていたら、ウクライナの大口納税企業20社ランキングというものが出ていた。何はともあれ、20社の顔ぶれは、以下のとおりとなっている。(数字は2011年の納税額で、単位は10億フリヴニャ、だいたい10倍すると日本円に換算できる)。

1.ナフトガス・ウクライナ:37.0
2.メトインヴェスト:9.8
3.フィリップモリス・ウクライナ:7.6
4.DTEK:5.6
5.ウクライナ鉄道:5.4
6.JTIウクライナ:5.2
7.ウクルタトナフタ:5.1
8.キエフスター:4.5
9.エネルゴアトム:3.8
10.インペリアル・タバコ・プロダクション・ウクライナ:3.8
11.プリティッシュアメリカンタバコ・プリルキ:3.8
12.アルセロールミタル・クリヴィーリフ:3.2
13.フォジー・フード:3.2
14.リシチャンスク石油投資会社:3.2
15.南選鉱・採鉱コンビナート:2.5
16.スラヴーティチ・ビール・アルコール・コンビナート:1.5
17.ポルタヴァ・ガス石油会社:1.0
18.ネミロフ・ウォッカ会社:1.0
19.クラフトフーズ・ウクライナ:0.8
20.モトル・シチ:0.8

 全体として、国営企業が優位に立ち、エネルギー企業が多く、民間ではSCM財閥傘下の企業が目立つ。また、タバコ会社が日系のJTIも含めて4社も入っているのが特徴的であり、これはタバコの価格には大幅な間接税が乗っているので必然的に納税額が大きくなるからだろう(むろん、ウクライナ人がタバコを吸いすぎるという問題もあるが)。

 さて、この資料でさらに興味深いのは、地域(州のレベル)ごとの大口納税企業ベスト5というものも載っていることである。これを見ると、ベスト5の顔ぶれ云々というよりも、そもそも納税額が圧倒的に東高西低であり、ウクライナの地域経済構造を如実に物語っている。これについては、本ブログ記事をHPに転載する際に、改めて紹介したい。


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 2012年10月30日付『ファクティ』紙が、28日投票のウクライナ最高会議(議会)選挙に関し、出口調査で比例区の大勢が判明したことを受けた各党幹部の反応を要領良くまとめているので、それを抄訳しておく。

 なお、この記事で指摘されていて、初めて気が付いたが、ウクライナの最高会議選挙で与党が第一党の座を占めたのは、今回が初めてということである。1998年には共産党が、2002年には「我らがウクライナ」が、2006年と2007年には地域党が第一党になっており、確かに今回ヤヌコーヴィチ/地域党政権の下で地域党が「勝利」したのは(各種出口調査はいずれも地域党が比例区で30%前後を得票し第一党となったことを示している)、前例のない事態と言える。小選挙区の結果はまだ流動的だが、トータルでも地域党が勝つのはまず間違いないだろう。

 この結果に関し、地域党の比例名簿筆頭で戦ったM.アザロフ首相のコメントは概要以下のとおり。我々が負けてほしいと願っていた向きもあっただろうが、我々は勝利した。完全に公正な戦いで、勝利した。我が国民が、与党の功績を評価して、我々を支持してくれたことは明白である。この選挙結果は、政府がその実施を担っている大統領の路線への信認である。

 一方、地域党の選挙キャンペーンのトップを務めたS.チヒプコ副首相は、以下のように語った。地域党は小選挙区で50%以上の票を獲得することを期待している。それにより、議会ではかなり迅速に多数派が形成されるだろう。国益を擁護するという点において、イデオロギーの違いにもかかわらず、皆が建設的な精神を持てば、すべての会派は足並みを揃えることが可能である。議会多数派の形成に当たっては、政党間で正式な協定を結ぶ必要があり、そこに今後の行動計画を明記すべきである。(「自由」との関係について記者団から尋ねられ)多くの問題では協力できないが、経済問題や社会問題では共通の立場を見出すことも可能である。(共産党との関係について尋ねられ)共産党は選挙戦ではかなり過激な公約を掲げていたが、議会多数派形成の交渉の中で、彼らの立場がより穏健になることを期待している。多数派を形成する際に、100%を得ることは不可能で、妥協が肝心である。

 これに対し、野党陣営は出口調査の結果を逆に、国民の野党への支持を裏付けるものだと捉えている。「祖国」、UDAR、「自由」の得票を合計すれば、地域党と共産党の合計を上回るからである。「祖国」の選対本部長のO.トゥルチノフは、以下のようにコメントした。地域党政権は、国のあらゆる力を自らのために利用でき、扇動や政治的締め付けがあったにもかかわらず、それでも国を統治する能力がないことをさらけ出し、自らの政策への国民の支持を取り付けられなかった。

 また、野党連合「祖国」評議会議長のA.ヤツェニュークは、次のようにコメントした。選挙は、野党が団結でき、望外の結果を得ることができるということを示した。選挙の結果を改竄しようとする試みには、厳しい対応をとる。

 一方、UDARのV.クリチコは、大勢判明を受け、次のように述べた。我々は来たる議会において「祖国」、「自由」と連携する用意があるが、過激主義は支持しない。我が党は地域党、共産党とは協力するつもりはない。

 「自由」のについては、5%の足切りラインを超えられるか五分五分という事前の予想が直前まであったが、出口調査での数字は11~12%程度となっており、専門家は本件が今回の選挙における最大のセンセーションだと評価している。評論家のV.フェセンコは、どこに投票するか決めかねていた政権に批判的な有権者が、投票当日になって「自由」を選択したと評している。「自由」のO..チャフニボクは、我々は自分たちの最終的な得票率が共産党より上だったら上々だと見なすが、多くの出口調査はそれを上回っているとして、ひとまず満足の意を表した。

 共産党のP.シモネンコは、出口調査の数字について、以下のように不満を表明した。出口調査は富豪が資金を出して実施されている。来る議会において、共産党は独自の政治勢力として活動することになる。もっとも、専門家筋では、地域党を中心とした政権多数派に共産党が加わる可能性について、排除していないが。さらに、小選挙区議員も巻き込めば、憲法を改正できる300議席の多数派を形成することも夢ではない。そうなれば、議会で大統領を選出することも、ウクライナがいかなる国際機構や経済空間に加わることも、思いのままである。


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 2012年10月26日付(No.42)の『コレスポンデント』誌は、今般のウクライナ最高会議(議会)選挙において、各党が莫大な宣伝広告費を費やしていることを伝えている。

 記事によると、今回の議会選挙でウクライナ各党は、比例区だけで、2億2,500万ドルの広告宣伝費を費やした。これは最近の諸外国の議会選挙の例、たとえばドイツの8,000万ドル、ロシアの7,740万ドル、英国の5,050万ドルなどと比べて、飛び抜けて多い。有権者1人当たりに換算すると、ウクライナは6.1ドルであり、セルビアの7.6ドルやチェコの6.3ドルの方が上になるが、ウクライナの経済水準が低いことを考えれば、異常な規模の政党広告が溢れていることは間違いない。なお、ウクライナでは政党の広告宣伝費の上限が設けられていない。

 ウクライナ議会選における広告宣伝費が肥大化している原因について、ある専門家は、議員たちにとって選挙は、単に権力のシステムを決めるだけでなく、自分たちが裕福かつ安全に存在するための方策であり、大々的なキャンペーンを張ることが議会に進出できる唯一の方法だからだ、と指摘する。ウクライナでは議員になりたい人が年々増加しており、今回の選挙には小選挙区に3,000人の候補が、比例区に2,000人の候補が登録された。これは、同じように小選挙区・比例制で選挙が行われた2002年の、2倍の候補者数である。

 テレビCMの出稿は、10月17日の時点で4,600万ドルを超え、2007年の2,700万ドルをはるかに上回っている。多い順に、地域党の1,300万ドル、進めウクライナ900万ドル、野党連合「祖国」800万ドルなどとなっている。

 ある専門家の指摘によると、効果的な宣伝のためには、大都市に80程度の屋外広告を設置するのが最適であり、それを超えると有権者の不快感を誘って逆効果だという。ところが、地域党はキエフに500~600の屋外広告を、進めウクライナは400を、UDARは300を設置、単に有権者を白けさせてカネをドブに捨てた形だという。ただ、今回の場合は、たとえば進めウクライナなどは新党なので、名前を浸透させるために広告が肥大化したという面もあった。


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 これも選挙前の情報の後追いになるが、2012年10月26日付(No.43)の『フォークス』誌が、ウクライナ最高会議(議会)選挙が終了した後のシナリオに関する記事を掲載しているので、要旨をまとめておく。シナリオは、1.地域党が共産党(または小選挙区議員)と組んで過半数をわずかに上回る多数派を形成する、2.地域党が共産党(または小選挙区議員)と組んで過半数を大きく上回り憲法改正が可能な300議席を確保する、3.野党連合「祖国」、UDAR、「自由」が過半数を超えて多数派を形成する、4.政権派が多数を制するが、野党がその結果に異を唱え、選挙結果が無効とされる、という4つに分かれる。

 第1のシナリオは、地域党が共産党(または小選挙区議員)と組んで過半数をわずかに上回る多数派を形成する場合である。地域党が比例区で75議席、小選挙区で115議席をとり、共産党の40議席と合わせて、多数派となる。この最も現実味を帯びたシナリオが実現した場合、ウクライナ情勢にはほとんど変化がない。議会多数派は、完全に大統領に依存することになる。地域党は、野党議員を少しずつ一本釣りしていき、憲法改正が可能な300議席の達成を目指すことになる。IMFからの融資を取り付けるため、政権は社会保障歳出を抑制しようと試み、年明けには旧議会が採択した予算に修正を加えるだろう。賃金・年金引き上げの公約を取り下げ、チヒプコ副首相が尽力していた生活保護受給者も削減される。他方、地域党が準備していた贅沢税は、棚上げになる。その代り、春に財務省が発表していた2.2%の取引税が導入され、アルコール飲料の販売価格が引き上げられる。350の品目に対して輸入関税を引き上げるとされており、これが物価の上昇に繋がる。共産党は、最近まで地域党を批判していたが、政府のいくつかのポストと引き換えに、政権側の法案に賛成する(ただしこれまでどおり時折審議をボイコットしたりする)。野党は様々に抵抗しようとし、「自由」がロシア海軍はクリミアから出ていけとぶち上げたりするが、野党側も議会の解散や前倒し選挙にまでは踏み切れない。「自由」とUDARの提携交渉は不調に終わり、「祖国」のヤツェニュークは両者の仲介を何度か試みた末に、自らの2015年大統領選出馬に専念することになる。ヤツェニュークがそれに勝利するチャンスは大きいが、野党にとって脅威なのは憲法が与党多数派によって改正され、大統領が議会によって選出されるようになることで、そうなったらヤヌコーヴィチの再選は保証されたも同然である。

 第2のシナリオは、地域党が共産党(または小選挙区議員)と組んで過半数を大きく上回り憲法改正が可能な300議席を確保するというもの。チヒプコが表明しているように、地域党が比例区で100議席、小選挙区で150議席をとり、これに共産党比例区の35議席が加わって、さらに小選挙区の共産党議員や無所属、野党からの鞍替えなどで15名を加えて、300議席越えを達成する。このシナリオが実現すれば、地域党は憲法改正を目指し、特に大統領任期の1年延長、議会による大統領選出を実現しようとする。野党はこれに対抗できず、地域言語法の廃止法案、議員特権の廃止法案などを虚しく提出するに留まる。社会経済状況は悪化し、通貨も1ドル=10フリヴニャに近づき、社会は過激化する。その結果、「自由」の支持率が15%まで高まり、チャフニボクが野党からの大統領候補の主役の一人に躍り出る。

 第3のシナリオは、野党連合「祖国」、UDAR、「自由」が過半数を超えて多数派を形成するというもの。難航した交渉の末、3勢力が多数派を形成し、クリチコを議長に据える。ヤツェニュークとしては、多数派を形成できる上に、大統領選でライバルとなるクリチコを閑職の議長に追いやれるという点で、一挙両得である。野党勢力は、大統領弾劾法を可決し、ティモシェンコの罪状となった条項を刑法から外すことによってティモシェンコ釈放を実現し、内閣不信任案を出して、野党の影の首相であるS.ソボレフを首相に提案する。しかし、野党の法案は大統領によってことごとく拒否権を発動され、それをオーバーライドする議席は野党にはないので、頓挫する。ヤヌコーヴィチは新たな首相候補を最高会議に提示せず、ホロシコウシキー第一副首相が首相代行を務めることが予想される。これに対し議会は急進派の「自由」を中心に審議拒否で対抗、大統領は危機を回避するために妥協案としてP.ポロシェンコあたりの中立的な人物を首相に指名し、健康上の理由と称してティモシェンコを釈放する。それで野党が浮かれている間に、地域党は小選挙区の野党議員を1人ずつ一本釣りしていく。まずはUDARの小選挙区議員あたりがターゲットになる。地域行政は引き続き地域党の支配下にあり、それとの協力なしには議員は選挙区で活動もできないので。野党多数派は崩壊し、あとは第1のシナリオのとおりになる。

 第4のシナリオは、政権派が多数を制するが、野党がその結果に異を唱え、選挙結果が無効とされるというもの。欧米が、大統領とその家族・側近の口座を凍結するとして圧力をかけ、国内で抗議運動が起き、政権が譲歩を迫られるというもの。


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 2012年10月26日付のウクライナ版『コメルサント』紙によれば、ウクライナでは28日投票の最高会議(議会)選挙後に、大掛かりな政権人事が行われる見通しであるという。

 記事によると、最高会議における地域党会派のO.エフレモフ会長が25日にその可能性について言及した。具体的なことは語れないが、人事異動があることは確実であると、同会長は述べた。専門家筋では、新議会の議員が正式に就任する前に、M.アザロフ首相が退陣するであろうとささやかれている。なお、内閣法によれば、政府の中でその任命に対し議会多数派(226人)の同意が必要なのは、首相職だけである。首相は、大統領の指名により、議会の多数派の承認を受け就任する。その他の閣僚は、首相の指名にもとづき、大統領令で任命される。専門家筋によれば、アザロフ首相の交代はすでに決まっており、後任の首相には現中銀総裁のS.アルブゾフが就くことになっていて、政府は大幅に入れ替わって若返るという。その際に、古い議会の方が政権に依存しており、首相人事への同意を取り付けやすいので、新議会招集の前にそれを済ませてしまうと、グローバル戦略研究所のV.カラショフ所長は指摘した。ただ、首相候補としては、Yu.コロボフ蔵相の名も挙がっていた。カラショフの説によれば、アルブゾフが首相に承認されたあかつきには、S.チヒプコ副首相・社会政策相、P.ポロシェンコ経済発展・商業相は、議会に活動の場を移す。V.ホロシコウシキー第一副首相の処遇は明らかでないが、M.プリシャジニューク農相はジトーミル州知事への転身が有力視される。政権人事には、EUが内閣の刷新を求めていることもその背景の一つにあり、内閣刷新が2013年にウクライナ・EUサミットを開催する条件の一つになっているという。地域党会派のV.ルィバク副会長は、アザロフ首相退陣の可能性についてはノーコメントとする一方で、UDARや「祖国」といった野党からの入閣もありうるとコメントした。現閣僚18名のうち、8名が議会選挙に出馬しており、その点からも大幅な政権人事は不可避と考えられている。


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 ウクライナ最高会議(議会)選挙は28日に投票が終了し、比例区の大勢は判明しつつあるが、当方は事前の情報をまだ消化しきれていないので、できる限りやっておきたい。『エクスペルト・ウクライナ』誌の2012年10月22-28日号(No.40)に、今般の議会選の選挙戦における主要政党の基本戦略に関する論評が出ているので、以下のとおり抄訳しておく。

 地域党の選挙キャンペーンは、オレンジ政権との対比に重点を置いたものとなっている。政敵であるオレンジ派が政権に就いていた時期に経済が混迷しスキャンダルが多発したのに対し、地域党政権はユーロ2012を成功させ「安定」をもたらした、という具合である。Betra CommunicationsのP.クルフリャコウシキーは、地域党の選挙戦略はいかにも政権与党らしいものだったと指摘する。野党の動きが鈍い中で、的確な国家管理者という立ち位置は、理に適ったものだった。政治コンサルタントのD.バトゥリンも同意見で、すべての責任を前政権に押し付けても問題は何ら解決しないが、自分たち替えの利かない存在であるという雰囲気を作ることはできると指摘する。分析センター「第3セクター」のA.ゾロタリョフも、地域党は自分たちの実際の、あるいは想像上の業績をアピールし、前政権を批判しており、これはありふれた方法ではあるが地域党の基礎的な支持層には効果を発揮する、としている。これは防衛的な戦略であり、新たな支持層は発掘できないものの、第一党の確保は可能である、という。クルフリャコウシキーによれば、1年ほど前にはウクライナ南・東部の中核的な支持層が地域党離れを起こす難しい時期があったものの、地域レベルでロシア語を国家言語化する法律を可決したことで支持を取り戻した、という。

 野党連合「祖国」も、与党側の「白か黒か」と同様の、反国民的な政権VS民主勢力という構図に訴えた。しかし、10年前の2002年の議会選でそうした構図により「我らがウクライナ」、ティモシェンコ・ブロック、社会党、共産党が得たような成果は、もはや期待できない。当時は、数年間かけて反国民的で犯罪的なクチマ政権というイメージを作り上げ、それと戦う民主勢力というだけで支持率が高まった。しかし、その後の10年間で野党も政権に就き、有権者はそれにも失望した。世論は変わったのに、「祖国」は「クチマなきウクライナ運動」と同じような街頭での示威活動に訴え、代案も示さずに政権批判だけをやった。しかも、多くの国民は現野党を、2008年の経済危機と結び付けてイメージしている。1990年代なら「我々は勝利する」「ティモシェンコに自由を」といったスローガンでも勝てただろうが、今日では有権者は、「それで私個人にはどういうメリットがあるのか?」という醒めた目で見るようになっている、という。

 共産党のスローガンは、悪いのはすべてオリガルヒであり、国を国民の手に取り戻そうというものだった。興味深いことに、共産党は過去に郷愁を覚える人々と、輝かしい未来を夢見る若者(1991年以前の現実を知らない)という、両極端な支持層にアピールした。専門家のS.ヴァシリチェンコによれば、共産党の支持層は過去数年、共産党と同様の社会政策を訴えながら、より政権の座に近いかすでにそれに加わっている党に票を入れる傾向にあったが、それらの党に失望した結果、共産党に支持が戻ってきた、という。今回の選挙で共産党は、特に東部・南部・クリミアにおいて、地域党支持から離れてきた有権者の票の獲得に成功しつつある。

 V.クリチコのUDARの成功は、社会が新たな政治家の登場を求めていたことによる。最後にそのような現象が生じたのは、1998年に緑の党が「我々は政治家ではない」というメッセージを掲げて5.4%を獲得した時だった。クリチコは2002~2004年のV.ユーシチェンコのように、有権者が希望を託す存在になっている。その候補者名簿には何度か副首相を務めたV.ピンゼヌィクや、クリミア自治共和国における元大統領代表のS.クニツィンなどの名前があり、これといった新顔は見当たらないにもかかわらず、支持率は落ちていない。UDARが、1990年代初頭に旧社会主義諸国で行われたような、かつての共産党員やKGB活動家を公職から追放すると唱えていることも(UDARはなぜかそれを反汚職闘争と解釈している)、有権者離れには繋がっていない。前出のクルフリャコウシキーによれば、社会が野党勢力を求めているのに、「祖国」の活動が鈍い中で、UDARはほぼ自動的に支持を拡大しているという。そして、UDARの名簿にたまたま入った人々は、来たる新議会で親大統領多数派に大挙して流れていくだろう、とのことである。

 O.チャフニボクの「自由」は、民族主義的な有権者が支持層であり、その層の票固めを続けている。もしも議会に進出できるとしたら、政権与党が言語法を採択したお陰でもある。ウクライナ語にこだわる「自由」の言語政策は、やはり言語問題を重視する「我らがウクライナ」とダブるが、「自由」の場合には選挙向けにそれを打ち出したわけではなく、すでに長らくその問題に取り組んでいるという違いがある。また、「自由」は言語問題に加え、社会・経済政策も掲げた。「自由」のマニフェストは、民族主義的な文化政策に、社会主義的な経済アプローチ(民営化の見直しなど)を折衷したものとなっている。

 N.コロレウシカの「進めウクライナ」は、清新な政治家を求める有権者を狙っているが、その動きはぎくしゃくしている。P.オレシチュークの指摘によると、同党の最大の問題は、最初の戦略は悪くなかったのに、練られていない戦術でそれを損なってしまったことだという。たとえば、候補者名簿にスポーツ選手や俳優を入れることで、新たなリーダーという理念を自ら否定してしまい、結局新しい政治家と呼べるような人間は登場しなかったと、オレシチュークは指摘する。もっとも、コロレウシカは選挙戦で、もう長らくウクライナにとっての課題となっている政策を提起したほとんど唯一のリーダーだったことも事実である。特に、輸出を主眼とした現在の経済モデルを、内需主導に転換し、輸入代替工業化を提唱した。

 これまでの選挙と同様、今回の選挙でも、ウクライナでは選挙の技術的な戦略とイデオロギーがバラバラに存在している。西側では、政党が発展戦略を競い合い、経済的イデオロギーがその基準点になるのに対し、ウクライナではイデオロギーにもとづいて選挙戦を戦おうとしているのは共産党、「自由」、部分的に「我らがウクライナ」くらいである。他の政党は、イデオロギーの代わりに、社会的ポピュリズムに訴えていると、選挙コンサルタントのM.ナホトは指摘する。


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 本日は、ウクライナ最高会議(議会)選挙の投票日である。個人的に、もっと念入りにフォローしたかったが、思うようにできなかった。ただ、考えてみれば、選挙について語る前に、2007年11月~2012年7月の前回議会(正式には「第6回最高会議」と呼ぶ)の活動について総括しておくべきなのだろう。そうした観点から、こちらの記事が、前回議会において良い意味/悪い意味で活動が目立った議員についてまとめているので、やや変わり種の記事ではあるが、その骨子を紹介したい。

 第6回最高会議では、553回の会議が開かれた(注:本会議のことであろう)。議員のうち、最も出席率が高かったのはM.チェチェトフ(地域党)で、同議員は7回しか欠席しなかった。このほか、A.マルティニューク(共産党)、V.キセリオーフ(地域党)、R.クニャゼヴィチ(我らがウクライナ・国民自衛)などの出席率が高かった。

 逆に、ほとんど登院しなかった議員を見ると、筆頭はR.アフメトフ(地域党)とO.レシチンシキー(地域党)であり、両議員はわずか1回しか出席しなかった。Yu.チェルトコフ(地域党)、S.キー(地域党)の出席も4回にとどまった。(注:ウクライナでは、実業家/富豪が、議員の特権と、自らのビジネス上の権益を守るために、名目的に議員になり、自らは実際の議員活動にはほとんど従事しないという現象があり、ここで名前の挙がっている議員たちはそうしたパターンであろう。)

 第6回最高会議で、最も多く発言したのは(登壇したケースに加え、議席からの発言も含む)、Yu.カルマジン(我らがウクライナ・国民自衛)で、3,659回の発言が議事録に残っている。O.ザルビンシキー(リトヴィン・ブロック/人民党)の1,028回、M.チェチェトフ(地域党)の1,017回が、それに次ぐ。他方、一度も発言しなかった議員が、21名いた。

 マスコミの関係者に、最も多くの受け答えをしてくれたのはどの議員だったかというアンケートをとったところ、最もマスコミにオープンな議員という評価を得たのは、A.フリツェンコ(我らがウクライナ・国民自衛)だった。M.トメンコ(祖国)、L.オロベツィ(我らがウクライナ・国民自衛)がそれに次いだ。

 議会における素行で騒動を引き起こした議員につきマスコミ関係者の声を募ったところ、1位となったのはO.リャシコ(祖国)であり、2011年5月のA.マルティニューク第一副議長との掴み合いや、多くのスキャンダラスな発言があった。2位はV.コレスニコフ(地域党)で、地域言語法の一幕、FEMENとの揉め事、NGOの資金監視法案などがあった。3位はI.ボホスロウシカ(地域党)で、ティモシェンコ事件での言動が問題視された。

 第6回最高会議の期間中に、最も数多く所属政党を変えたのは、「未来のための改革」議員団の副議長であるV.カプリエンコの3回であった。ただ、300名の議員は、一度も所属を変えなかった。

 第6回最高会議で、成立した法案の起草に最も多く参加したのは、S.キーの253回であった(注:上述のように、ほとんど登院はしていないのだが…)。2位はV.シヴェツィ(祖国)の179回、3位はN.コロレウシカ(祖国)の120回であった。


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 先週行われたUEFAチャンピオンズリーグの試合のうち、とりあえずロシア関係の2試合を観てみた。ロシアからはゼニト・サンクトペテルブルグとスパルタク・モスクワが出場しているが、ともにグループステージの出だしで2連敗しており、後がない状況で迎えたホームゲームだった。

 日付順に言うと、まず火曜日のスパルタク・モスクワVSベンフィカ(ポルトガル)戦。この試合、スパルタクがホームの意地を見せて2:1でなんとか勝利したものの、内容的に完勝という感じではなかった。開始わずか3分、速攻から中央でタメを作ったところに、ファラエル・カリオカが猛スピードで駆け上がってパスを受け、ベンフィカのゴールにたたき込む。相手がまだ試合に入り込めていない時間帯に先制できたのは、ラッキーだった。しかし、その後スパルタクは相手のパス回しに手こずり、やや守勢に回る。そして、33分、コーナーキックの流れから、敵に同点ゴールを許してしまう。コーナーをいったん跳ね返して安心してしまったのか、こぼれ球を追うのが遅かったし、その間にラインを上げることもなく、右からのクロスで敵のマティッチにニアの至近距離に入られ、頭で決められた。それでも、嫌な流れの中で、前半のうちに突き放すことができたのは、これまたラッキーだった。43分、スパルタクが右サイドから入れた低めのクロスに対し、ベンフィカのDFがオウンゴールを犯してしまったものである。スパルタクの中央はアリ1人で、ベンフィカの守備陣は上手くコントロールしていただけに、先方としては痛恨だっただろう。結局、後半には両者得点なく、2:1のまま試合終了。全体的な印象としては、ベンフィカの方が明らかに質は上だなというところ。スパルタクは、前節のセルティック戦で中央のパスをカットされて何度かピンチを招いた反省からか、ベンフィカ戦ではボールを奪ったらまずサイドに預けるという意識が強かったように思う。しかし、それによって攻撃がワンテンポ遅れ、FWに当てるクサビのパスが減り、チャンスを多く作れなかった。それでも勝てたのは、地の利ゆえであろう。この日はルジニキ・スタジアムに5万人の観衆が詰めかけたそうだが、ベンフィカのサポーターの姿は、ほぼ皆無だったように思う。あれだけ圧倒的なホームの雰囲気というのは、そうそうお目にかかれるものではあるまい。

 もう一つ、こちらも悩めるチームのゼニト・サンクトペテルブルグは、水曜日にホームのペトロフスキー・スタジアムにアンデルリヒト(ベルギー)を迎えた。まあ、ゼニトの場合は、国内では最強の地位を築きつつあり、CLの常連にもなってグループステージを突破できるくらいの力は付けてきている。そこで、CLの決勝トーナメントでも充分に勝負できるような1ランク上のステージに上がり、欧州レベルのビッグクラブに脱皮するというのが、課題になっているのだと思う。これまでゼニトは、ロシア圏の大クラブにしては珍しく、自国選手中心のチーム編成をしてきた(監督はイタリア人だが)。私がロシアの中ではゼニトが一番好きなのは、プレースタイルもあるが、何よりロシア人の良い選手が揃っておりロシアらしいチームだからである(同様のことは、ウクライナ人プレーヤーを主体とするディナモ・キエフについても言える)。むろんこれまでのゼニトにも外国人プレーヤーはいたが、むやみにビッグネームを獲るというよりは、適材適所の方針が貫かれていた。しかし、今のままでは欧州の強豪にはのし上がれないという判断だったのだろう、今季開幕直前にゼニトは大型補強に踏み切った。その目玉が、ポルトガルを経てやって来た、超人ハルクことフッキである。ただ、今季これまでの試合を観ていると、従来の良い時のゼニトに見られた美しいハーモニーが、フッキという不協和音によって、完全に乱されてしまっている(ついでに言えば、ロシア人プレーヤーがフッキの高額の報酬に不満を訴える場面もあり、チームの和という点でも不協和音を醸している)。フッキがボールを持つと、相手ディフェンダー3人くらいに囲まれても強引にドリブル突破するような場面が目立つ。まあ、さすがに周りを使う意識も芽生え始めたのか、水曜日のアンデルリヒト戦では、フッキがドリブルで相手をある程度引き付けてから、「ここぞ」というタイミングで味方にラストパスを試みる場面が何度かあったが、いかんせん敵DFに囲まれているのでことごとくパスがカットされてしまい、フッキのところで攻撃が途絶えるシーンが目立った。残念ながら、今のところゼニトの中のフッキは大いなる異物感を漂わせており、クラブを1ランク上げるための大型補強は現在のところ逆の目に出ている。そんなわけで、アンデルリヒト戦でも攻撃が機能したとは言いがたかったが、後半にブィストロフを投入したあたりからチャンスの数は増えていった。そして、ペナルティ・エリア手前でフリーキックのチャンスを得ると、右SBだったかな? まだ相手がバタバタしている段階で裏に走り込み、慌てた相手がそれを倒してしまって、PKをゲット、これをゼニトの播戸竜二ことケルジャコフがきっちりと決めて、ゼニトが辛くも1:0で勝利したのだった。


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 ロシア・バシコルトスタン共和国のR.ハミトフ大統領は10月22日、共和国政府を退陣させ、自らが共和国首相を兼務して政府を率いる旨の決定を下した。本件に関する10月23日付『コメルサント』紙の報道振りを、以下のとおり抄訳しておく。

 ハミトフ・バシコルトスタン大統領は22日、共和国政府を退陣させ、首相職を自らが担う旨の共和国大統領令に署名した。公式ウェブサイトでは、本件が8月に開始された共和国行政システム改革の新たな段階であると説明されている。政府と大統領府間で生じていた権限の重複、責任の曖昧さを正すことが目的であるという。政府機構と大統領府機構を統合し、その職員数を3分の1削減する計画である。政府の陣容は、近いうちに発表するとされている。

 A.ガリャモフ大統領府副長官は、以下のようにコメントした。政府の退陣は技術的なものであり、8月にすでに大統領が追加的な決定があるかもしれないと言明していた。2ヵ月半経って、大統領は改革の継続が必要であると判断した。大統領が実質的に政府を指揮すると決めた以上、それを法的にも定式化する必要があった。新たな政府では、投資・経済担当副首相、IT担当副首相が置かれる可能性がある。別の関係者によれば、政府のメンバーの大多数はポストを保持することになる見通しだという。

 ハミトフ大統領は、2010年5月に就任した時点では首相の機能を兼務していたが、2011年5月にA.イリンベトフ首相が起用されたという経緯がある。しかし、本年8月、ハミトフは再び大統領職と首相職を兼務することを決めた。その時点では形式的にはイリンベトフ首相がポストを保持していたものの、その権限は料金問題委員会、産業・イノベーション省の管理に限定された。その際にはハミトフ大統領は決定の理由として、政府は決定の機動性に欠けており、人事においても派閥主義・縁故主義が再びはびこり出したことを挙げていた。ちなみに、「政治・経済コミュニケーション・エージェンシー」の評価によれば、地域首長のランキングにおいて、8月の数字でハミトフは12位から7位に順位を上げていた。

 評論家のS.シケリによれば、2011年にイリンベトフが首相に起用されたのは、M.ラヒモフ前大統領の時代に築かれた政治体制に配慮したものであったという。この2年間、ハミトフは政権には就いていたものの、ようやく今、実際に権力を奮い始めた、ということである。人事面においても、既存の派閥バランスに囚われることなく、自らの方針に沿った決定を打ち出すだろう、とのことだ。

 かつて「公正ロシア」から連邦下院選に出馬した野党政治家のA.ガリンは、ハミトフ大統領が先を見据えた動きを始めたと見ている。2015年に任期が切れるハミトフは、次回選挙に出馬する意向であり、それをにらんで有権者にアピールする行動に出始めた。ハミトフの大統領就任後、官僚機構が肥大化しており、今回その削減を打ち出したことは、有権者の歓心を買うためだと、ガリンは指摘する。

 他方、イリンベトフ首相が解任されたのは、汚職スキャンダル絡みであるという指摘もある。地元テレビ局が追及しているI.クソフ元産業次官の疑獄があり、その黒幕が実はイリンベトフであるとして、野党のA.ムハメジヤロフがイリンベトフを起訴するよう検察に訴えている。この説によれば、こうしてイリンベトフ首相が解任されたわけだが、首相なしで政府は存続できないので、必然的に政府が総辞職となった、ということである。


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 10月22日、プーチン大統領が主宰し、「モノゴーラド」問題に関する政権幹部の会合が開催された。モノゴーラドとは、ロシアに多く見られる企業城下町のことであり、有名な「ピカリョヴォ事件」を筆頭に、2008年の経済危機以降その社会・経済情勢が先鋭化しており、プーチン政権の重要な政策課題となっている。今般の会議に関する10月23日付『RBCデイリー』紙の報道振りを、以下のとおり抄訳しておく。

 A.ベロウソフ経済発展相がV.プーチン大統領に対し、危険ゾーンに陥っている17のモノゴーラドのリストを提示した。同省では、総額200億ルーブルの自らのプログラムの枠内でこれらの都市を支援する構えであるほか、国家コーポレーション「開発銀行」の基金4,000億ルーブルを割り当てることも提案している。専門家たちは、これらの額は新たなピカリョヴォの出現を阻止するのに充分ではあるが、肝心なのは時代遅れの生産にではなく、人的資本に投資することであると指摘している。

 10月1日現在で、ロシア全体の公式失業率は1.3%であり(ILO方式では5.2%)、102.2万人の失業者を数える。失業者の10分の1はモノゴーラドに居住している。また、333存在するモノゴーラドの中で、144のモノゴーラドでは失業率がロシア平均を超え、うち44では平均を2倍以上上回っている。ノヴォオガリョヴォで開かれた会議で、プーチン大統領は状況が深刻であることを率直に認めた。

 経済発展省のデータによれば、現在危険水域にあるのは17のモノゴーラドで、その地理的範囲はウラル、カレリア共和国から中央ロシアまで広範である。産業部門から言うと、危険をはらんでいるのは鉄鋼業、アルミ、ニッケル、紙パルプ、軽工業の企業を中核企業とするモノゴーラドであり、世界的な市況の不安定さがその背景にあるという。

 鉄鋼業、非鉄金属産業の場合には、WTO加盟がモノゴーラドを含め地域経済に好影響を及ぼすという見通しもあったが、それに対し木材加工、紙パルプ、軽工業、機械産業といった分野が実際に厳しいのは事実である。ゆえに、これらの産業分野に特化したモノゴーラドは、「自然淘汰」にさらされる恐れがある。

 経済発展省では、同省の既存の政策ツールにより、モノゴーラド支援のために年間に200億ルーブルを拠出する構えである。ベロウソフ大臣によれば、問題は資金の制約ではなく、資金を使う側にあり、連邦の資金がどれだけ効率的に利用されるかが鍵となる、という。

 それに加えて、経済発展省では、モノゴーラドにおける新規の雇用を創出するため、「開発銀行」の資金をより積極的に活用することを提案している。現在のところ開発銀行の融資は1件当たり20億ルーブル以上のプロジェクト向けに限られるが、経済発展省ではその下限を10億ルーブルに引き下げ、うち5億ルーブル以上を開発銀行の資金とすることを提案している。現在、40のプロジェクトが策定中であり、その総額は4,000億ルーブルに上るということだ。

 2010年には35のモノゴーラドに国家支援が適用され、2011年にはさらに15都市が追加された。連邦による歳出は、241億ルーブルに及んだ。プロジェクトのおかげで、労働市場の深刻さが緩和され、6万の恒常的な雇用が創出された。プーチン大統領は、「手動統治(注:国家の最高指導部が個々の具体的問題の解決に直接的に介入すること)について誰が批判しようが、これはまさに個々の事例について精査すべきケースだ」と発言した。

 ロシア経済スクールのN.ヴォルチコヴァの見解によれば、17のモノゴーラドに200億ルーブルという額は充分な規模である。「しかし、肝心なのはその資金を何に向けるかだ。もしも企業支援に充てるなら、役には立たない。人々を的確に支援すること、再訓練を施し職を見付けられるようにしてあげることが大事なのである。中核企業およびその関連会社が将来操業を停止する時のために、中小企業の育成に資金を使うことも可能だ」と、ヴォルチコヴァは指摘した。


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 2012年10月23日付の『RBCデイリー』紙に、ロシアの地域ごとの発展戦略に関する記事が出ているので、以下のとおり抄訳しておく。

 ロシアの83の地域のうち、発展戦略が策定されているのは、70地域だけである。しかしながら、専門家は、現状では地域行政府がその発展を完全に戦略的に計画するのは難しいということを認めている。それは、第1に、連邦レベルで必要な法基盤が欠如しているため。第2に、財政資金が恒常的に不足し、主に当座の目的に投下されるので、戦略的な目的に充てる財源が足りないためである。

 10月22日、フォーラム「ロシアの地域と都市における戦略的計画化」において、ロシア諸地域の社会経済発展戦略のコンクール結果が発表された。地域の行政府の活動振りが、①イノベーションの振興、②中小企業発展の条件整備、③地域の投資魅力の確保、④住民の社会的保護と地域労働市場の支援、⑤戦略的・地域的計画化の制度の整備という5つの項目ごとに評価された。その結果、1位:ニジェゴロド州、2位:クラスノダル地方、3位:ヴォロネジ州という順位となった。

 しかしながら、コンクールの専門家グループ長であるV.クリモフは、これらの結果は大まかなものにすぎず、どこが優秀でどこが優秀でないと一概には言えないと認めている。たとえば、タタルスタン共和国はイノベーションの指標では断トツだが、同共和国では「戦略」が採択されていないので、順位が落ちる。だからと言って、タタルスタンが遅れているというわけではないと、クリモフは語る。

 地域発展省も、同様の見解を示している。地域発展省のYe.チュグエフスカヤ戦略計画化局長は、多くの地域では戦略が2006年を起点としているのに対し、大統領令が出たのは2009年であるし、地域ごとの戦略はまちまちであり横並びで比較するのは不可能であるとしている。

 上述のように、現時点で戦略を採択しているのは、全国83地域のうち70だけである。V.ガエフスキー地域発展次官によれば、策定作業は2012年末までに完了しなければならない。しかし、地域からは策定の難しさを訴える声が上がっている。A.クラスノフ・ヤロスラヴリ州副知事によれば、特に困難な点は、しかるべき連邦レベルの法的文書が整備されていない点にあるという。しばしば地域側がそうした文書を用意することを迫られている。しかも、地域の戦略が、地域の管理過程と整合されていない場合が多い。もう一つの困難は、財政資金の不足で、地域予算の70%は当座の支出で消えてしまうと、クラスノフは述べる。


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 昨日のエントリーの続き。『エクスペルト・ウクライナ』誌に掲載された、ウクライナ議会選で戦っている主要政党の経済政策を比較する記事抄訳の、後半をお届けする。

 共産党の選挙綱領の策定に当たっては、国家関税局のI.カレトニク長官が主導的役割を果たした。同氏は共産党の比例名簿で7位に掲載されている。党の選挙キャンペーンで、古臭いP.シモネンコ第一書記やA.マルティニューク副議長のビジュアルイメージを使用して有権者を幻滅させないように訴えたのは、まさに彼である。彼の尽力の結果、共産党の政策は原点に戻った。具体的には、無料の医療と教育、ロシア語、ロシアとの統合、民営化の見直し、経済的に活発な市民に対する抑圧などである。数千に上る屋外広告は、つい25年前までビジネスは投機として厳罰の対象になっていたということを暗にほのめかす内容となっている。

 UDARのV.クリチコは、選挙への準備の過程で何度かチームを入れ替えており、誰が最終的なマニフェストを取りまとめたのかを明確に言うのは難しい。その中身は、比例名簿に名を連ねる人物たちの考えを寄せ集めたものとなっている。具体的には、V.ピンゼニクのマネタリズム、O.プロダンの新自由主義、P.ロゼンコの社会主義をブレンドしている。それらを、旧共産党員・秘密警察職員の公職追放、全現役官僚の刑事訴追と実質的な就業禁止という主張で上手い具合にまぶしている。

 N.コロレウシカの進めウクライナの政策は、M.ガステロ、M.ドロニンというロシアの2人の政治コンサルタントの作品である。このチームは3年前にはS.チヒプコのプログラムも書いており、今回のコロレウシカの選挙戦はビジュアル戦略に至るまで2009年のチヒプコそっくりである。進めウクライナの綱領は、世論調査の国民の回答をそのままなぞったものになっている。人々は職を失うことを恐れており、1万フリヴニャの賃金を欲しており、年金は少なくとも5,000フリヴニャ受け取りたいと願っている。こうした回答がそのまま進めウクライナのプログラムになっており、それゆえに1,000ユーロの賃金、500ユーロの年金といったことを掲げているのである。土地売買の停止や、新たな工業化のプログラムといったことも同様だ。

 一方、「自由」の政策の経済部分は、1930年代のウクライナ・ナショナリストの主張と相通じ、「土地を農民に!」「工場を労働者に!」といったスローガンは共産党のそれと符合する。不正蓄財を暴露するとしているが、その際に役人だけでなく、近隣諸国のエージェント、とりわけロシアのそれも追及するとしている。これを文字通り実施したら国を統治するエリートがいなくなってしまう。旧共産党党員、ソ連の特務機関に勤務していた者を公職から追放するというのだが、ウクライナの政治家の90%、中央省庁職員の80%、地方自治体職員の60~70%はそれに該当する。バルト三国ではかつて同様の政策を実施したが、バルトでは国外のディアスポラが人材を補充し、米国市民がリトアニア大統領に、カナダ市民がラトビア大統領になった。ウクライナでそれが可能かというと、大いに疑問だ。党首のチャフニボクは、議会に進出することが最大限の望みで、政府に入ることは想定外だろうから、本人は実際にどうするかなど考えてもいないのだろうが。

 各党は、経済危機対策につき、明確な方針を示していない。それも道理で、地域党と「祖国」以外は、政府やその政策形成に参加できるチャンスはないからである。「祖国」は、この国ではすべてが大統領選で決まるということを身に染みて知っており、そしてその大統領選はまだ先だ。

 地域党に関して言えば、同党の政権で戦略的な問題を決めているのは党活動家ではなく、政府ですらなく、大統領府である。アザロフ内閣は経済プログラムもなしに活動しており、すべての省庁および地方自治体にとって最重要な評価基準は、ヤヌコーヴィチ大統領の改革プログラムをどれだけ実施したかである。議会選挙の結果がどうあろうと、地域党政権の内部で、危機対策戦略が形成されることになる。その際に影響力があるのがアルブゾフ・コロボフ・クリメンコのグループで、彼らは最近訪米して自分たち流の危機対策をプレゼンしていた。その本質は、オリガルヒとの闘争、言い換えれば大企業への課税を増やして危機を乗り切るというものである。リオーヴォチキン・ホロシコウシキー・ボイコのグループは戦略をまったく異にし、石油ガス分野の大規模プロジェクトの早期実現、欧米との関係改善に賭けようとしている。M.アザロフ首相とA.クリュエフ国家安全保障・国防会議書記は、より保守的な価値観を有している。実際に実施されるのは、この第3の、穏健なアプローチであろう。そして、アザロフはまだしばらく首相に留まる。経済情勢が急激に悪化し、たとえば通貨が大幅下落したような場合だけ、よりラディカルな戦略が実施されるだろう。

 いずれにしても、各党の政策は、それほど重大に受け止める必要がない。選挙が終われば、来たる政府が、IMF、EU、ロシアとの交渉の中で、経済プログラムを策定していくことになるからである。


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 『エクスペルト・ウクライナ』誌のこちらの記事が、ウクライナ議会選で戦っている主要政党の経済政策を比較することを試みているので、以下のとおり抄訳しておく。やや長いので、2回に分けてお届けする。

 今回の議会選挙戦で特徴的なのは、各党が政策に関して議論を戦わせる共通の情報面での土俵が形成されていないことである。政治家たちは自分たちの政策を宣伝するだけで、一方マスコミは政治家の人物像やスキャンダルばかりに焦点をあてている。政治家が選挙を前に有権者と建設的な対話をすることは不可能になっている。彼らの政治的な立場は知られていても、その社会・経済政策は国民に知られないままとなっている。ただ、各党のマニフェストを注意深く読んでみれば、多くの興味深い点が見付かる。

 今日では、右派・左派という伝統的な区分に加えて、孤立主義・国際主義(近隣との統合)という新たな区分が生じている。しかも、ウクライナには親欧州と親ロシアという2つの国際主義的潮流がある。この尺度からすると、きわめて孤立主義的なのはO.チャフニボク氏の「自由」であり、同党のマニフェストではこの問題に一言も触れられていない。逆に明確に国際主義的なのは、ロシアとの統合を主張する共産党と、EU加入を掲げる野党連合「祖国」である。地域党、進めウクライナ、UDARは中間的である。

 右派・左派という区分で言えば、来たる議会には明確に右と明確に左の党が進出する見込みである。明確に左なのが経済における国家の役割強化を唱える「自由」と共産党、右がUDARと進めウクライナ、中間が地域党と「祖国」ということになる。V.クリチコのUDARは、不正蓄財の暴露や民営化の見直しを強く主張していることから見て、条件付きでリベラルと言える。地域党と「祖国」の綱領には、二面性が見られる。一方では、所有権の保護、中小企業の振興、減税、民営化をうたっている。他方では、社会保障、医療支出の増大を主張している。しかし、鉱工業生産が4ヵ月連続で落ち込み、財政赤字も予算を上回るという状況下で、いかにして社会保障を拡充するのかは、不明であるが。

 地域党にしても、「祖国」にしても、綱領が矛盾を含んでいるのは、毛色の違う複数のグループがそれを起草しているからである。「祖国」の綱領は、A.ヤツェニュークのリベラルな政策と、Yu.ティモシェンコの社民主義の折衷である。プログラムには、年金改革の中止(社会保障歳出の増大を意味する)と、税負担の軽減(年金受給開始年齢の引き上げなしには不可能)が同居している。

 同様の矛盾は地域党のマニフェストにもあって、同党は平均賃金を8,000フリヴニャに引き上げることを公約する一方(これは現状3,000フリヴニャを下回っている公務員賃金を2.5倍も引き上げることを含意する)、一層の規制緩和、行政のビジネス圧迫の軽減を約束しているのである。この二重性は、地域党のプログラムが4つの影響力グループの妥協の産物であることに起因している。まず、V.ルィバコフ、V.デミトコを筆頭とする古参党員が、プログラムに社会主義的な規定を盛り込んだ。次に、大統領府長官のS.リオーヴォチキン、Yu.ボイコ・エネルギー相らのグループが、エネルギー依存の脱却、石油ガス採掘への投資増というテーゼを盛り込んだ。さらに、D.タバチニク教育相をはじめとする親ロシア的な文化政策担当者がおり、彼らは地域ごとにロシア語を国家言語とすることを可能とする法律を推進している。最後に、副首相・社会政策相のS.チヒプコ、I.アキモヴァ大統領府第一副長官らのリベラル派が、規制緩和の推進、税負担の軽減、電子政府の導入、新たな雇用の創出といったリベラル政策を盛り込んだ。しかし、驚くべきは、V.ホロシコウシキー第一副首相も、P.ポロシェンコ経済発展・商業相も、S.アルブゾフ中銀総裁も、プログラムの策定に参加していないとされる点である。64歳のM.アザロフ首相が退任したあかつきには、一体誰がこのプログラムの実施を担うのであろうか?

 続きは、また明日。


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 ウクライナ最高会議(議会)選挙の投票が10月28日に迫るなか、こちらの記事で「状況モデル化エージェンシー」のV.バラ所長が、誕生する新議会についての持論を披露している。ウクライナでは、オレンジ革命直後の2004年12月8日に憲法改正が行われ(発効は2006年1月1日)、政体が大統領・議会制から議会・大統領制に移行した。しかし、2010年にヤヌコーヴィチ政権が誕生すると、同年10月1日に憲法裁判所が上記の憲法改正を審議・採択の手続き違反を理由に無効とし、結局大統領権限の強いオリジナルの1996年憲法に逆戻りしたという経緯がある。これに関し今回バラ所長は、新議会は召集から1ヵ月以内に自らの権限を拡大し、かつての権限を取り戻すべきだと唱えたものである。

 バラ所長は、以下のように述べた。もしも新議会が最初の1ヵ月間で権限の回復に関する法案の1本も提案・採択しなければ(とりわけ財政分野など)、我々はウクライナにおいて主な決定がどこで下されるのか、思い知ることになるだろう。議会は、単に公式的なスタンプを押すだけの機関になってしまう。ウクライナがどのような議会を持つことになるのか、最初の1ヵ月で明らかになるだろう。

 バラ社長はさらに、新議会における野党連立の成立は、小選挙区にかかっている、ただ野党連合「祖国」はここに来て支持を失っており、それはリーダーのティモシェンコを外そうとしていることから来ていると指摘した。


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 こちらの記事によると、ウクライナの世界政治研究所が最高会議(議会)選挙後の対EU関係に関し3つのシナリオを占った調査報告をまとめ、このほど発表したということである。研究所のS.ソロトキー第一副所長が記者会見で明らかにした。

 それによると、研究所は、議会選挙後のウクライナ・EU関係の展望につき、EUの外交官・関係者30名に聞き取り調査を行った。その結果、3分の2の回答者が、選挙後も関係はまったく変わらず現状維持となるという見解を示した。両者間で連合協定が調印される見通しは、現時点では半々と見られる。ただし、仮に調印されたとしても、EU側がウクライナに出している3つの条件、すなわち司法の選別性の問題の解決、民主的な選挙の実施、国家の一層の改革という条件が満たされなければ、EUによる批准は期待できない。ティモシェンコが調印を望むということを明言していることからも、調印自体はありうる。だが、EU側は圧力のテコを残しておきたいので、現時点で調印するという言質は与えようとしない。EUの関係者たちは、ウクライナはベラルーシではないので、協力を全否定することはないとしている。選挙が全面的に民主的などということは誰も信じないので、最低限の民主的な選挙のレベルに達しているとEUが認めれば、協定は調印されうる。EUは、投票だけでなく、投票後の動き、特に議会における多数派の形成過程も注視することになる。EUは2010年のウクライナ議会の醜態、すなわち議員たちが多数派に逃げ込んでしまったことに、狼狽してしまった過去があるので。EUの専門家たちは、ウクライナ議会選のあとウクライナをどうしていいか態度を決めかねており、困惑している様子が見られるという。


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 こちらの記事に、ウクライナ議会選について何人かの専門家が示した展望がまとめられている。社会学者による座談会のようなものが開かれたらしく、各参加者の主な発言を記事にしたもののようだ。以下でその要旨を紹介しよう。

 M.チュリロフ(TNSウクライナ副所長):野党連合「祖国」は、農村の有権者が活発化することによって、票を伸ばすかもしれない。選挙の投票率は50~60%になると予想されるが、都市では50%を超えないのに対し、農村では80%を上回る可能性がある。「祖国」の支持者は主に農村に居住しており、したがってその得票率は世論調査を上回るかもしれない。

 V.フメリコ(キエフ国際社会学研究所所長):農村では、現政権の支持勢力である地域党および共産党に投票する用意のある有権者が、27%しかいない。逆に、野党への支持は、41%に上る。したがって、野党の得票が多少増えるかもしれないという見方に、自分も賛成する。

 I.ベケシキナ(民主イニシアティブ基金所長):「祖国」とUDARが2位争いを繰り広げる中で、おそらく2位になるのは祖国だろう。というのも、UDARの支持者のかなりの部分は青年で、彼らの多くは大都市では住民登録をした場所以外のところに住んでおり、今回の選挙では投票場所を変更できるのは1つの選挙区内に限られるからである。「自由」は、ウクライナ東部・南部に一部の隠れ支持者がいるので、一定のチャンスがある。

 Ye.コパチコ(リサーチ&ブランディング・グループ社長):現時点で、かなりの勢いで有権者の支持獲得が進んでおり、すでに70%の有権者が態度を決めた。比例区ではそれほどの番狂わせが起きるとは予想されず、せいぜい「祖国」とUDARの2位争いや、「自由」が足切りラインを突破できるかが注目される程度である。一方、小選挙区ではまだ形勢が固まっていない選挙区が多く、主なドラマは小選挙区で生じるであろう。


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 私はこれまで認識していなかったが、「グローバル・イノベーション・インデックス」というものがあるらしい。最新の2012年版の報告書は、こちらで閲覧・ダウンロードできる。また、稚拙な翻訳ながら、こちらのサイトでその概要が日本語で紹介されている。

 最新の2012年版から、上位10ヵ国と、その他重要国、私の関係国の順位を示してみる。

1.スイス
2.スウェーデン
3.シンガポール
4.フィンランド
5.英国
6.オランダ
7.デンマーク
8.香港
9.アイルランド
10.米国
15.ドイツ
21.韓国
24.フランス
25.日本
34.中国
50.モルドバ
51.ロシア
63.ウクライナ
64.インド
68.モンゴル
69.アルメニア
71.グルジア
78.ベラルーシ
83.カザフスタン
89.アゼルバイジャン
108.タジキスタン
109.キルギス
127.ウズベキスタン

 こういうランキングには付き物だが、だいぶ合点の行かない面がある。モルドバみたいな果樹園しかなくて出稼ぎで生きていくしかない国がなぜロシアより上なんだよとか、モンゴルのイノベーションって何?(放射性廃棄物埋設施設の建設構想が評価でもされたか?)とか。まあ、評価基準とか突っ込んで調べているヒマはないので、何とも言えないが、こういうランキングがあり、一目置かれているらしいということは、押さえておくべきなのだろう。

 ロシアの順位の推移を見ると、2009年:68位、2010年:64位、2011年:56位、そして2012年:51位と、年々上昇はしている。そして、こちらのニュースによると、ロシア政府は2015年までにはこのランキングにおける順位で40位以内に入ることを目標としているとのことだ(というか、このニュースで、ランキングの存在を知ったのだが)。


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 やや古い情報だが、10月28日に投票が行われるウクライナ最高会議(議会)選挙に関し、こちらの記事で、ウクライナ科学アカデミー付属全ウクライナ社会調査局のB.サハラコフ研究部長が、同調査局が行った世論調査結果を踏まえながら展望を語っているので、その要旨をまとめておく。なお、世論調査は全国の2,500名の回答者を対象に、10月5~7日に実施された。

 投票に参加するつもりかどうかを回答者に問うたところ、必ず参加する:44.5%、おそらく参加する:35.6%、おそらく参加しない:9.0%、絶対に参加しない:4.1%、回答困難:5.6%、だった(注:合計が100%にならないが?)。

 投票に参加するつもりの有権者に(注:44.5%+35.6%のことだろう)、どの党に入れるつもりかを尋ねたところ、地域党:23.6%、祖国:18.5%、UDAR:16.7%、共産党:11.4%、自由:7.3%、進めウクライナ:5.4%、我らがウクライナ:5.4%、だった。

 サハラコフによれば、下3つの党のうち、議席獲得の可能性が一番大きいのは「自由」であり、それは安定的な支持者の比率が大きいから。共産党、自由という極端な立場の党は、安定的な支持者の比率が大きい。安定した支持者の比率は、共産党:58.1%、祖国:54.2%、地域党:50.5%、UDAR:38.6%、我らがウクライナ:38.6%となっている。

 サハラコフによれば、民族・民主主義の陣営では、3つのかなり強力な勢力がせめぎ合う状況が長らく続いている。以前はティモシェンコの存在ゆえに祖国が優勢だったが、現在は我らがウクライナや「自由」が勢力を伸ばしており、一部の有権者はUDARが奪っていて、祖国は同勢力のリーダーの役割を果たせなくなっている。最近になって我らがウクライナが伸びてきているのは、ノスタルジア効果によるもので、専門家は予想していた。リーダー(ユーシチェンコ)の名前とともに、インテリは言論の自由を、企業家は企業活動の自由を懐かしく思い出している。2004年の大統領選で地域党が敗北し、立ち直るのは不可能と思われたのに、2006年の議会選で巻き返したという例もある。

 サハラコフによると、祖国や地域党が2~3%得票を増減させるといったことは、議会の勢力図において大きな意味はない。むしろ、新たな勢力が議会に進出すると、新たな提携を迫られる。以前は社会党が、最近ではリトヴィン氏の人民党がキャスティングボートを握っていたことを想起すべきである。

 サハラコフによれば、選挙戦で主要勢力は政敵への批判に重点を置いている。地域党も、オレンジ派も、敵方の政権下ではいかに酷かったかということを語っている。具体的な争点は欠如している。こうした状況では、一定の流れを作ることはできても、結果が決まるのは最後の3週間である。


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20121022rosnano

 私は以前、ロスナノ社に関するレポートを執筆したことがある。同社はロシアのナノテクノロジー分野の国策企業であり、当初は国家コーポレーションだったものがその後2011年3月に株式会社に転換された。

 ロスナノの機能として重要と思われるものの一つに、「ナノテクノロジー・センター」のネットワーク構築が挙げられる。これは、自力では大規模な設備導入が難しい中小企業の利用などを想定して、ナノテク関連の共同利用施設をロシア各地に設置するというもので、ロシア政府の方針に則ってロスナノが推進している。ロスナノでは、総額で約190億ルーブルの拠出を予定している。その設立地は公開入札で選定されることになっており、2010年3月以降順次選考が実施されてきている。

 それで、こちらのニュースで、ロスナノの支援する「ナノテクノロジー・センター」のネットワーク構築に関する続報が伝えられている。これによれば、ロシア全土に12箇所のセンターが設立される予定である。2009~2011年に4次にわたる選考が実施された。すでにナノテクと大多数のセンターとの間で投資契約が調印された。今般、レニングラード州ガッチナに設立される「北西ナノテクノロジー・センター」とロスナノの間で、投資契約が結ばれた。ガッチナのナノテク・センターは、放射線技術、ナノエレクトロニクス、ナノ素材の3分野を専門とする。


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 こちらのニュースによると、バルト海に面したロシアの飛び地であるカリーニングラード州では、州都カリーニングラード市の海沿いの郊外に、腫瘍療養センターを建設することを州行政府が計画しているということである。温泉療養地であるバーデンバーデン(独)やドルスキニンカイ(リトアニア)などにならったプロジェクトであり、そのマスタープランが3ヵ月後に提案される予定である。N.ツカノフ・カリーニングラード州知事が発表した。

 10月17日にD.メドヴェージェフ首相がカリーニングラードを訪問した際に、腫瘍療養センター建設費を2014年予算案に算入することを提案するよう、ツカノフ知事に指示していた。ツカノフ知事によると、計画されているセンターは、バルト海沿岸に整備予定のメディカルタウンの中核となるプロジェクトであるという。2.5万~3万人が滞在できる保養地型のコンパクトなメディカルタウンが想定されている。


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