ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 こちらのニュースによると、通信分野の世界的なソリューション企業であるアルカテル・ルーセントがロシアで合弁企業を設立し、研究開発を手掛けることになった。

 ニュースによると、モスクワ州ジューコフスキー市で開催されているフォーラム「機械産業におけるテクノロジー2012」において、アルカテル・ルーセントの近東・CIS支社長と、「ロスエレクトロニカ」のA.ズヴェーレフ社長が、合弁企業設立の契約に調印した。ロスエレクトロニカは、ロシアの国家コーポレーション「ロステフノロギー」の子会社である。合弁は、プリサル社を基盤として、研究開発センターを開設する。センターは2012年末までにオープンし、アルカテル・ルーセント側が運営に当たり、同社のグローバルR&Dネットワークに組み込まれる。センターでは200名程度のエンジニアが働き、双方に雇用を生み出す。センターは、第4世代通信LTE関連の研究開発を手掛ける。合弁は両者の対等出資により設立され、第1段階では3,000万~4,000万ドルの投資を見込んでいる。アルカテル・ルーセントとロステフノロギーが協力するのは今回が初めてではなく、2009年にもIPプロトコールを基盤としたテレコム設備を生産しロシアに導入するための合弁を設立していた。ロスエレクトロニカは2009年初頭に同名の国営持ち株会社を基盤に設立され、現在エレクトロニクス部門の約80社を束ねている。

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 準決勝の1試合目、スペインVSポルトガルは、「メッシなきシャッフル・クラシコ」といった顔触れの試合となったが、120分間戦っても両者得点なく、PK戦の末、スペインが決勝進出を決めた。同じスコアレスでも、先日のイタリアVSイングランド戦は何度も決定的シーンがあったが、このスペインVSポルトガルは決定機や枠内シュートが互いに数えるほどしかなかった。勝ち上がったのはスペインながら、個人的には、無敵艦隊に碇をかけて身動きとれなくしてしまったようなポルトガルの守備が特に印象に残った。

 さて、今回のユーロは旧ソ連圏で開催される初めての大会であり、共催国のウクライナもポーランドも、そしてロシアもすでに敗退してしまったけれど、私個人は引き続き旧ソ連目線にこだわってTV観戦している。先日はスタンドでベラルーシ国旗を振っていた観客がいたということを書いたが、このスペインVSポルトガル戦でも、アルメニア国旗やウズベキスタン国旗が見られた。RUSSIAと書かれたTシャツを着ている客もいた。まあ、この試合が行われたドネツィクは最もソビエト的な都市の一つと言っても差し支えなく、ウクライナ国民だけでなく、他の旧ソ連諸国のサッカーファンにとっても気軽に観戦に訪れることのできるところなのであろう。他方、西欧の人々にとっては、ドネツィクは距離的にも文化的にも遠い街で、訪れるのにはやや壁がありそうだ。こちらのレポートでは、ウクライナ・ポーランドの共催と言っても、両国間の移動すら困難であり(特に地方都市は)、「共催というよりはそれぞれの独自開催」という趣きがあることが指摘されている。

 ウクライナ・ロシアは早々に敗退してしまった今大会だが、ロシアのクラブに所属する選手は1人残っていた。ゼニト・サンクトペテルブルグのDF、ポルトガル代表のブルーノ・アウベスである。しかし、彼は昨日のスペインVSポルトガルのPK戦で蹴る順番を間違えた(?)末、それで動揺したのか、自分の出番ではキックを失敗して戦犯となってしまった。あと、もう1人のゼニト・サンクトペテルブルグ所属選手のDFクリシートも本来であればイタリア代表選手としてまだベスト4に残っているはずだったのだが、八百長疑惑で今回のメンバーから外されている。

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 ロシア財政を取り仕切りながら、メドヴェージェフと対立して2011年9月に副首相・蔵相の座から退いたA.クドリンはその後、政権と距離を置く「市民イニシアティブ委員会」という組織を立ち上げた。そして、6月26日、同組織の初めての本格的な会合が開催された。こちらのニュースの骨子を以下のとおり整理しておく。

 「市民イニシアティブ委員会」は26日、モスクワの国際貿易センターにおいて7時間にわたり、初の大規模な会合を開催した。

 委員会の委員としては、以下の人々がいる。「戦略策定センター」の会長で、ロシアの政治危機に関する報告で物議を醸したM.ドミトリエフ。「現代発展研究所」の幹部であるYe.ゴントマヘル。「情報文化協会」所長のI.ゲクチン。評論家のA.アルハンゲリスキー。「公開ロシア基金」の幹部A.エルモリン。

 冒頭演壇に立ったクドリンは、概要以下のように語った。ロシアは現在、政治的危機にあり、それはかつてない政治不信、権力と社会の乖離、議会与党と社会の乖離に表れている。この危機を克服すべきであり、その可能性はある。委員会は権力を市民の管理下に置き、役人が支配層になるのを防止することを目指す。我々にはそれに必要な専門家がそろっており、さらに連邦・地域を問わず同盟者を模索する構えであり、地域や地方自治体の代表者と私自ら協議する用意もある。委員会は集会の自由に関し代替法案を起草し、すでに下院に提案されている。委員会はマスコミでは影の内閣などとも呼ばれているが、必ずしもそういうわけではなく、というのも委員会は社会との双方向的なコミュニケーションに依拠しており、政府とは異なる形で物事を捉えることができるという点に眼目があるからだ。委員会が政党になることはないが、メンバーの誰かがいずれかの政治組織に参加することはあるかもしれないし、自分自身もその可能性はある。

 これに対し、評論家のM.レミゾフは、以下のように指摘する。すなわち、クドリンには首相の座を射止めるという野心があり、委員会はその踏み台になりうる。クドリンは実利主義者だ。政党を結成する場合に目標とするのは選挙だが、ロシアでは直近の選挙は地域レベルのそれであり、クドリンはそれには関心がない。彼の目的は、白紙委任状を与えられた首相になるという政治的なものである。現段階での政党作りは、その目標に合致せず、むしろ専門家委員会を作り、政府の決定を評価したりすることの方が、情報空間で存在感を誇示できる。経済状況が困難で、政府は若く経験不足であり、他方で連邦レベルの選挙が遠いという状況下では、これは非常に有効な方式である。別の評論家のV.ホミャコフも、クドリンはいずれ政党を作るだろうと予想している。

 一方、与党「統一ロシア」のS.ネヴェロフ(下院副議長)は、次のように指摘している。すなわち、クドリンは、現役の閣僚として具体的な決定を下す立場から、古典的な政権批判者に変わってしまった。政府と「統一ロシア」が、その標的とされている。クドリンは再三にわたって、年金受給開始年齢を引き上げて経済を健全化すると表明しており、そのようにして自らの計画を実現しようとしている。大統領、政府、統一ロシアは、厳しい経済危機の状況においても、社会プログラムの停止という方法をとらなかった。世界経済の不安定化という背景の中でこのような発言をするのは、とりわけ問題である。国民の不安感を煽る方法は、クドリンにとっても、その委員会にとっても、ためにならない。ネヴェロフは以上のようにコメントした。

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 前にも書いたように、個人的にはロンドン・オリンピックでサッカー男子日本代表とベラルーシ代表が同組になり、「ベラルーシ特需」でも起きないかなと、期待していた。残念ながら抽選の結果両国は別組となり、私の夢はかなわなかったのであるが、その代りというか、7月17日に日本とベラルーシの五輪代表チームがトレーニングマッチを戦うことが決まり、先日発表された。テレビ中継があるかどうか知らないが、ちょっと楽しみである。

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 それで、ベラルーシがユーロ2012出場を逃した際に、私はHPで、ベラルーシ・サッカーにとってはロンドン五輪出場決定だけが明るい話題であり、五輪代表のゲオルギー・コンドラチェフ監督(写真)がいずれフル代表の監督になるかもしれない、なんてことをコメントした。ちゃんとチェックしていなかったのだが、実際にコンドラチェフ氏は2011年12月8日にフル代表の監督に就任し、現在はフル代表と五輪の監督を兼務しているということである(トルシエ方式)。コンドラチェフ氏は1960年ベラルーシのヴィテプスク州生まれ。現役時代はFWとして活躍し、ソ連代表として14試合4ゴールという数字を残しているのだから、立派なものである。1999年に現役引退し、指導者の道に入った。国内各クラブの監督を務めたあと、2009年からU21ベラルーシ代表監督、2011年からはオリンピック代表監督、同年12月からフル代表監督を兼務、というキャリアである。

 日本と対戦するということで、ベラルーシ五輪代表に興味を抱いている方もおられるかもしれない。そこで、コンドラチェフ監督が最近のインタビューで述べた発言を、以下紹介してみたい。出所は、複数で、ここここここ

 (近くベラルーシ・リトアニアのフル代表親善試合が行われるが、その試合は五輪の観点からご覧になるのか?)当然そうであり、この試合は五輪への準備の一環である。誰かが強くアピールしてくれればいいのだが。ただ、現在のところ五輪代表が実際に強化されているとは感じていない。現在、セルゲイ・コルニレンコ(クルィリヤ・ソヴェートフ・サマラ所属、FW)が話題になることが多く、ちなみに私自身ディナモ・ミンスク時代に彼を教えたことがあるが、五輪開幕時に彼がどのような状態にあるかは予測できず、コンディションが悪ければ呼ぶつもりはない。

 ユース代表はもう欧州選手権出場は絶望的なので、S.ポリテーヴィチ(ディナモ・ミンスク、DF)やD.バーガ(BATEボリソフ、MF)といった選手は五輪代表に専念させたいが、そういうことを言うと、コンドラチェフはユース代表をないがしろにしているなどと非難されるので、遠慮している。

 (トゥーロン国際大会の前、BATEボリソフのV.ゴンチャレンコ監督は、GKのA.グートルは怪我のためトゥーロンではプレーしないと言っていたが?)グートルは直後に私のところに来て、プレーできるといった。問題はせいぜい、最初の試合に出れるかどうかであった。もしグートルがプレーできない状態なら、私はトゥーロンにA.シチェルバコフ(同じくBATEのGK)を連れて行っただろう。

 (代表チームにはBATEボリソフの選手が多く、BATEのシステムが代表のそれと異なることに関しては、問題はないのか?)昨シーズンBATEは、代表チームと同じ4-2-3-1だった。代表では4-3-3もできる。リトアニアとの親善試合のシステムはまだ決めていないが、アンカー1人、インサイドハーフ2人という陣形も可能。

 (トゥーロン国際大会では、フランスと1:3、モロッコと0:0、メキシコと1:2という成績で、グループ最下位に終わった。オリンピックの本番前に、落ち込んでいないか?)落ち込んでいる。私は負けるのは好きではない。大会ではまったく上手くいかなかった。だが、我々は、自分たちと、オリンピックに出る他のチームの実力を知ることができたので、これが良い方に作用するかもしれない。

 トゥーロン国際大会では、勝敗は二の次で、選手の選考に主眼があった。ただし、準決勝には進みたかった。大会では良い面も悪い面も出た。問題はあらゆるポジションで生じ、GKのグートルから始まって、守備、中盤と課題がある。攻撃も頭が痛く、3試合を通じて良いものを出せなかった。ベラルーシには優秀なFWが欠乏している。ベラルーシ・リーグはレベルが低すぎ、これを言ったら関係者に怒られたが、厳然たる事実である。現状から脱却するには、真実を語ることから始めなくては。

 トゥーロンでは、CBのS.ポリテーヴィチ、I.クジメノク(FCゴメリ)はメキシコ戦では良かった。しかし、初戦のフランス戦で多くのミスを犯し、特にどういうわけか中央に寄りすぎた。O.ヴェレチーロ(ディナモ・ミンスク)、D.ポリャコフ(BATE)のプレーしたサイドの出来は悪くなく、彼らはフル代表に近いかもしれない。

 中盤に関して言えば、たとえば国内リーグでプレーしている時のバーガは落ち着いてボールを持てるが、国際大会ではすぐにプレスをかけられて奪われてしまい、まったくレベルの異なるサッカーである。MF全般に、もっとコンビネーションを期待していたのだが。献身性に関しては、選手たちはよくやってくれた。メキシコ戦の前に私はバーガやS.ドラグン(ディナモ・ミンスク、MF)、M.シヴァコフ(ベルギーのズルテ・ワレヘム、MF)に、「お前たちがリーダーなんだ。中央で繋がなければボールは持てない」と言った。実際にポゼションが悪かったわけだから、テコ入れしなければならない。ワンタッチ、ツータッチでプレーしなければいけないのに、持ちすぎては失っていた。

 FWに関しては、V.フヴァシチンスキー(FCブレスト)が戦っていたのは、評価すべき。彼は残念ながら決定的チャンスで正しくない動きをしてしまったので、私は元FWとしてどうすべきだったかを教えてあげた。M.スカーヴィシ(BATE、ベルシナにレンタル中)は、運動量は多いものの決めることができず、私にとってはまったく動かなくてもいいから点を決めてくれるFWの方がいい。V.ユルチェンコ(シャフチョール・ソリゴルスクからトルペドBelAZにレンタル中)はコンディションが悪く、おっかなびっくりプレーしているように見えた。彼がイタリア戦で決めたゴールは忘れがたいが。

 大会終了時に選手たちには、クラブでの成功を祈る、ボールの保持について特に注意するようにと伝えた。その点が他国のチームに大きく劣る点なので。

 ちなみに、(トゥーロンでベラルーシが戦い、ロンドンで日本が戦う)モロッコが弱いなどと考えたら大間違いで、同国チームは大半の選手がヨーロッパで生まれヨーロッパのクラブでプレーしており、国籍がモロッコであるにすぎない。一方、ベラルーシは国外組はベルギーでプレーしていたシヴァコフ1人だが、彼も無所属になってしまった。ただ、だからと言ってベラルーシがオリンピックで負けることを意味するわけではない。

 (オーバーエージ3人の候補は、ヴェレチーロ、ドラグン、シヴァコフが基本?)シヴァコフが無所属のままだったら、連れて行くわけにはいかない。ヴェレチーロとドラグンは、現在佳境のベラルーシリーグでプレーしているので(注:ベラルーシは春秋制)、素晴らしいコンディションで五輪を迎えられるだろう。(BATEのYe.フィリペンコを入れればディフェンスラインが安定すると思うが?)フィリペンコにも、他の選手にもチャンスはあり、もう少ししてから決めたい。もっとも、現在の2人のCBについて、総じて満足している。

 (OAとして五輪代表にA.フレプを入れる予定だったのを、最近外したのはなぜか?)フレブはこのところずっと代表レベルのプレーを披露していない。クルィリヤ・ソヴェートフ・サマラで、2試合うまくプレーしたからと言って、あてにはならない。その後、彼はまた所属クラブなしになってしまった。そして、オリンピックまでは1ヵ月しかない。もしもフレブの調子が戻れば、当然私は彼を呼ぶ。

 (貴方がサッカーを学んだ故郷ヴォロンツェヴィチ村のスタジアムでは、ジャガイモが植えられてしまったが…)そのスタジアムでは、私は体育の授業を受けただけだ。ただ、サッカーに対するそのような態度は、むろん喜ばしいことではない。インタビューでは常に言っているが、サッカーを発展させなければならない。

 あー、長くなっちゃったなあ。なんか、結構よくしゃべる人だ。それにしても、話を聞いてると、よくこんなチームが五輪出場を決められたなという気がしてくる。日本とはどちらが強いのだろうか。

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 8月下旬にロシアが正式にWTOに加盟する予定になっているが、関税同盟のパートナーであるカザフスタンも本年中のWTO加盟決定が有力視され、これに伴って複雑な問題が出てくる。ノーヴォスチ通信によると、本件につき3国関税同盟の事務局であるユーラシア経済委員会のA.スレプニョフ通商大臣が、以下のように発言したとのことである。

 ユーラシア経済委員会のA.スレプニョフ通商大臣は6月26日、カザフスタンがWTOに加盟すると、3国関税同盟の共通関税率を追加的に引き下げることが必要になり、その引き下げ幅は2週間以内に明らかになると発言した。スレプニョフは、「カザフは本年中にもWTOに加盟する可能性がある。これにより、共通関税率を若干調整する必要が出てくる」と述べた。スレプニョフによると、追加的な引き下げが必要なのは、カザフがロシアよりも早く、また若干異なる条件でWTO加盟交渉を行っていたからだという。カザフの義務を考慮した共通関税率の修正は、関税同盟3国の経済全体に占めるカザフ経済の比率(約10%程度)に応じて行われる。つまり、仮に共通関税率が10%、カザフの合意税率が0%とした場合、共通税率を0%まで引き下げるのではなく、カザフの規模に応じて1%ポイント引き下げる、という。そして、その具体的な引き下げ幅は、2週間以内に明らかになる。「具体的にどれだけの品目につき調整が行われるのかは、何とも言いがたい。カザフが負う義務につき、まだ全面的に把握していないからだ。ロシアの税率の方が、カザフのそれよりも高いまま残るという可能性も否定できない(?)」とスレプニョフは述べた。

 現在、ユーラシア経済委員会の専門家たちは、新たな共通関税率を策定しているところ。それは、ロシアのWTO加盟条件を考慮して、ロシアが提出した案である。同案は、平均税率を現行の約10%から7.5~7.8%に引き下げることを想定している。WTO加盟協定批准の1ヵ月後にロシアは正式な加盟国となり、その時点から新たな共通関税率も発効することとなる。

 一方、ベラルーシのWTO加盟の可能性につきスレプニョフ大臣は、「ベラルーシはカザフが加盟したのと同じ関税率の条件で加盟することになる。あとはベラルーシが国内でWTOの枠内で機能する経済メカニズムを構築することだ。ベラルーシのWTO加盟の最大のネックは、EUとの対立である」と述べた。

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 周知のとおりロシア代表はユーロ2012で不名誉な一次リーグ敗退という結果に終わったが、それを受けこのほど、S.フルセンコ・サッカー協会会長が辞任した。ただし、それに至るには見逃せない底流があったようだ。こちらのサイトに掲載されている記事を、以下抄訳して紹介する。

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 ユーロでの失態により、S.フルセンコ(写真)がロシア・サッカー協会会長の座を失うことになった。フルセンコは、プーチン大統領と面談し、退任を申し出た。フルセンコは同会長職を2年半務めたことになる。ただ、専門家の指摘によれば、フルセンコは拙速な改革を急ぎすぎ、今回のロシア代表の敗退を待つまでもなく、サッカー界では同氏に対する不満が渦巻いていたという。

 プーチン大統領が中東歴訪に旅立つ前のタイミングをとらえ、フルセンコはプーチンと面談し辞任を申し入れた。フルセンコは、ユーロでの失敗がその理由であると、明言した。フルセンコは、「ロシア代表は非常に強かっただけに、この結果は恥ずかしい。こうした結果につき、ファンの皆さんに謝罪したく、それゆえに重い決断を下した」と述べた。

 プーチン大統領は、フルセンコの労をねぎらい、その仕事に謝意を表した。プーチンは、「ロシアのサッカーは急激に発展している。新たなタレントが生まれている。審判の制度が改革されており、これは八百長を防止する上で重要だ。ビーチサッカー代表に至っては、獲れるタイトルはほぼすべて獲っている」と、フルセンコの実績を評価したうえで、フルセンコにUEFA執行委員会での仕事は継続するように要請した。

 今後、ロシア・サッカー協会は3ヵ月以内に臨時総会を開き、新会長を選出することになる。有力候補としては、B.グルィズロフ前下院議長、V.ムトコ・スポーツ相などが取りざたされている。ちなみに、ムトコはサッカー協会の前会長であり、メドヴェージェフ前大統領が公職者がスポーツ団体のトップを兼務することを禁止したためサッカー協会会長から退いていたが、プーチン新大統領がその規則を撤廃する可能性があるという。

 ただし、専門家たちは、フルセンコの辞任理由がユーロでの敗退であることに、違和感を示している。サッカー選手・指導者労組のN.グラマチコフ書記長は、次のように指摘する。「フルセンコ会長は代表監督気取りだが、代表チーム敗退の責任はD.アドヴォカート監督が負うべきだ。フルセンコ会長の業績はむしろ、ユース年代の状況、サッカービジネスの状況全般、ロシア選手の海外での活躍といった基準で評価すべきで、これらの指標のどれ一つとして満足の行くものではない。ロシアには民間のサッカーアカデミーが1つあるだけで、各クラブは、プレミアリーグでさえも、一部の例外を除いて、予算の10~15%しか自前で稼ぐことができず、国からの補助金に依存している。西欧のビッグクラブで活躍しているロシア人プレーヤーは1人もいない。」

 情報筋によれば、フルセンコ会長の退陣を求める動きは、ユーロ本大会の前に始まっていたという。5月半ばに与党「統一ロシア」の議員グループ(A.ヴァシレンコが中心)がプーチン大統領に、照会状を贈った。そこには、協会を揺るがす恒常的なスキャンダルや、2018年W杯の劣悪な準備状況への懸念が示され、協会はロシアの法律で動いておらず、ユース年代は放置されている、と指摘されていた。別の関係者は、W杯の準備作業につき、フルセンコ会長が自らの管轄外の問題にも熱心に介入していたことを指摘する。

 フルセンコは、サッカー協会会長に就任する前は、「ナショナル・メディア・グループ」の経営者だった。サッカーにかかわるようになったのは、2005~2008年にゼニトの球団社長に就任してからであった。同氏が、ロシア・スポーツ界の幹部としては稀に見る活発性を示したのは、事実である。短い在任期間の間に、ロシア・サッカー界にあらゆる改革と新機軸をもたらした。だが、それらはどれ一つとして、今のところ明確な成功を示しておらず、いくつかについては激しい非難を浴びている。

 とりわけ、これまでロシアの気候には合わないとして見送られていた、国内リーグを西欧型の秋春制に移行させる改革を断行した点については、前任の2人の会長であるV.コロスコフもV.ムトコも激しく批判している。また、サッカーに「良心コード」を導入したことも、現場では物笑いの対象となっており、昨年には国内サッカーにおける暴力と人種差別の事件がむしろ増えている。

 サッカー界では、協会会長の交代が、どのような影響をもたらすか、懸念している。2010年の選挙で会長の座をフルセンコと争ったA.アミノフ(サッカー発展基金会長)は、肝心なのは会長を交代させることよりも、組織、サッカーの管理方法を変えることだと指摘する。フルセンコ会長以前も、それらは芳しくなかった。「10年間にわたってロシアのサッカーに巨額のカネをつぎ込んできたが、成果はまったくそれに見合わない」と、アミノフは述べる。

 前出のグラマチコフは、ロシアのサッカーには、民主化、透明性、地域協会の役割向上が求められるという。会長職には、独立し、落ち着きがあり、サッカー経験の豊富な人物、理想を言えば国際的に活躍してきた人物が望ましく、サッカーの改革という難事業、とりわけビジネスとしてのそれを改革できる人物が求められると、グラマチコフは述べた。

 アミノフも、グラマチコフも、クレムリンによって任命される会長では、これらの課題を成し遂げられないと指摘する。政権にとっても、政権主導の会長人事は、タブーだ。なぜなら、今回のユーロのように失敗した時に、協会に責任を押し付けられなくなるからである。

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 先日のエントリーで、キエフ社会学国際研究所がウクライナ国民を対象に行った好きな自国のサッカークラブとサッカー選手に関する調査結果というのをご紹介した。実はこの調査では、ウクライナ全国を西部、中部、南部、東部と4つに分け、その地域別のクラブ支持率という指標も示されている。個人的に、きわめて興味があるところなので、この調査結果を以下のように図にまとめてみた(単位は%。一応、各チームのシンボルカラーで作図してみた)。

 ここで問題となるのは、ウクライナに27ある州などを、具体的にどのようにこれら4つの大地域に区分しているかである。私がよく使うのはラズムコフ・センターの地域区分であるが、明記はされていないものの、キエフ社会学国際研究所の区分はそれとは異なるようである。グレーゾーンに位置する州に関して言うと、ポルタヴァ州は中部、ドニプロペトロウシク州は南部、ザポリージャ州も南部に区分されているようだ。ラズムコフ・センターはドニプロペトロウシク州、ザポリージャ州は東部と区分しており、私自身もその区分を好むが、キエフ社会学国際研究所の方式は異なるようで、まあ仕方がない。

 細かい話は抜きにして、調査結果を概観してみよう。目を引くのは、やはりディナモ・キエフがほぼ全国区の人気を誇っていることである。ご当地の中部はもちろん、西部でも約半分の回答者から支持を受けている。西部の人たちは、もっとディナモが嫌いなのかと思っていた。まあ、カルパティ・リヴィウの存在はあるものの、西部は総じてサッカーが弱いから、国を代表する存在としてディナモ・キエフを応援しているということなのだろう。それに対し、シャフタール・ドネツィク、メタリスト・ハルキウという強豪を擁する東部は、やはり地元チームへの支持が強く、ここではアンチ・ディナモの感情が相当強いと推察される。意外なのは、南部では一応ディナモがトップであるものの、その優位は絶対的でなく、かなり支持が割れていることである。これは、産業・政治・文化的には東部に近いドニプロペトロウシク州やザポリージャ州が上述のように南部に分類されていることにも起因しているだろう。当然、ドニプロペトロウシク州ではドニプロ、オデッサ州ではチョルノモーレツィ、クリミア自治共和国ではタヴリヤと、各地域ではそれぞれの地元チームが支持されているものと考えられる。なお、全体として言えるのは、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグといったUEFAの国際コンペティションに参加すると、全国的に支持率がぐっと上がるということであり、これはまあ当たり前か。

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 先日のエントリーに続き、ロシアの敗退に関する識者の声をお届けする。まあ、だいたいどの人も同じようなことを言っていたり、レトリックばかりであまり中身がなかったりして(読みづらい)、紹介する意欲が薄れてきたが、ロシア『スポルト・エクスプレス』のA.プロスヴェトフ記者が、秋春制への移行に絡めて次のように面白いことを言っている。

 なにゆえに、ユーロが行われる年に、ロシアの国内リーグ戦を秋春制に移行させる必要があったのか? 1年待つことも、できたはずである。確かに西側では選手への負荷はより厳しいと言われるが、これまでロシアの選手たちが秋春制に馴染んでいなかったのに、移行しても大丈夫かどうかなどという実験を施す必要があったのか。ジャゴエフは2011/2012シーズンの最後の方は怪我でプレーしていなかったが、今回のユーロでは彼のパフォーマンスが一番良かった。拙速な秋春制への改革は、少なくともその根拠が怪しくなった。

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 ロシア版シリコンバレーと呼ばれるイノベーションセンター「スコルコヴォ」では、5つの高度技術分野の研究開発が推進されることになっている。1.エネルギー効率・省エネ、2.核技術、3.宇宙技術、とりわけテレコムおよびナビゲーション、4.医薬品・医療機器、5.コンピュータ・プログラム開発。これはそのまま、ロシア現政権が推進しようとしている優先的な高度技術分野と理解していい。1には再生可能エネルギーが含まれ、2は当然原子力エネルギーを推進する趣旨である。つまり、ロシア現政権は、再生可能エネルギーも、原子力も、同時並行的に推進しようとしており、脱原発という意図はない。むしろ、ロシアが豊富な石油ガス資源を有しながら、国内消費が非効率的で、今後石油ガス資源が枯渇に向かう中で貴重な外貨収入源である石油ガスを浪費しないための方策の一環として、新エネルギーの可能性も模索するといったあたりが、ロシアのスタンスである。

 そうしたなか、今般開催されたサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで、「ロシアのグリーン・アジェンダ:持続的成長のためのエコロジー」と題するパネルが開かれ、スコルコヴォ財団のV.ベロフ・エネルギー効率クラスター部長が報告を行った。ベロフ部長の主な発言がこちらのニュースに出ているので、以下要旨を整理しておく。

 再生可能エネルギーの開発は、ロシアで2015~2020年にグリーンエネルギー・ブームを起こす可能性がある。再生可能エネルギーの技術が改善することによって、2015~2020年には代替エネルギーが経済的にペイするようになり、それがロシアにおける再生可能エネルギー開発の活発化に繋がる可能性がある。ロシアでは、地域レベルでは、いくつかグリーンエネルギー発展の方向性が見られる。ロシアでは僻地を中心に約4,000の重油ボイラーが存在するが、少なくともその半分はクリーンな燃料に転換可能で、そうしたプロジェクトは2~3年で元がとれる。全世界での状況に関しては、何年か前に代替エネルギーのブームが予想されたが、今のところそれは生じていない。時が経ち、エネルギー全体に占める再生可能エネルギーの比率は、実際に上昇した。しかし、世界レベルで目立って増えているのは、風力と太陽光だけである。近年は太陽光の増加率の方が高いが、太陽光バッテリーの生産には多大なエネルギーを要するので、それをグリーンエネルギーと呼ぶのには語弊がある。太陽光発電の最初の3年間は、バッテリー生産に要したエネルギーを返却するために行うようなものだ。

 なお、今回のサンクトペテルブルグ経済フォーラムでは、「フクシマから1年後の原子力発電」と題するパネルが、ロシア原子力公社「ロスアトム」との共催により、設置されている。IAEA幹部、S.キリエンコ・ロスアトム総裁、トルコのエネルギー相などがパネリストとして参加しているが、日本人の名前はない。

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 ロシアの経済特区をめぐる新たな動きが報じられている。

 こちらのニュースによると、経済特区を新たに2箇所追加することが検討されているようだ。プスコフ州とリャザン州での設置に向けた準備が進められてるという。サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの場で、株式会社「経済特区」のO.コスチン社長が記者団に語った。プスコフ州の特区は、シンガポールの管理会社と共同で設置することを計画している。リャザン州の特区に関しては、中国の投資家たちと交渉している。このほど新たな政府決定が出され、それによって管理会社が入居企業の半分以上を保証する条件が定められ、リャザン州の特区はその枠組みを活用することになると、コスチン社長は述べた。なお、ロシアの経済特区には工業生産、技術導入、観光リクリエーション、港湾と4つのタイプがあるが、プスコフ州とリャザン州で計画されているものがどれに該当するのか、記事では明記されていない。

 また、こちらのニュースによると、コスチン社長は、株式会社「経済特区」が近日中にガスプロムバンクと、経済特区の入居企業に融資を行うことに関する協定に調印すると発表した。2012年秋のソチ経済フォーラムで調印する可能性があるという。入居企業が資金を調達できるように支援する点に眼目があり、またガスプロムバンクがプロジェクトの有望性を評価する立場に立つという意味でも有意義だと、コスチン社長は指摘した。

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 準々決勝最後の1試合は、イタリアとイングランドが120分の激闘もスコアレスで決着がつかず、PK戦でイタリアが準決勝進出を決めた。ブッフォン、ナイス!

 スコアレスではあったものの、非常に激しく濃密な試合だった。お互いに、ゴール前での決定的なチャンスをいくつか作っていたし。感心したのは、審判がほとんど余計な笛を吹かず、かといってラフプレーで荒れることもなく、両チームともフェアプレーでぶつかり合っていたこと。南米的なずる賢さもサッカーには必要と言われるが、ロスタイムがまったくなく45分きっかりに終わった前半を見て、これがサッカーの本来の姿ではないかと思ってしまった。まあ、イングランドはフェアプレーゆえに、マラドーナに5人抜きを許してしまったり、ロナウジーニョに切り裂かれてしまったりもするのだけれど…。

 このイタリアVSイングランド戦、さすがに時計が進むにつれ、両チーム(特にイングランド)の運動量が落ちていき、それに伴ってゴール前でのチャンスも減っていった。私が日頃見ているJリーグでは、試合終盤に運動量が低下すると、全体が間延びし、ネズミの運動会のようにバタバタとしたカウンターの応酬になることが多い。それに対し、このイタリアVSイングランド戦は、負ければ終わりのノックアウト方式で戦っているだけに、試合が進めば進むほど慎重になって、守備を固めることを重視するため、ますます膠着していくという印象だった。

 ベスト4は、ポルトガル、ドイツ、スペイン、イタリアと、順当な顔触れが揃った。下馬評どおり、ドイツVSスペインの決勝というシナリオに向けて進んでいるのかな?

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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「古都ハリチ途中下車の旅」

 先日旅行に行って、すっかりはまってしまった沖縄についてのエッセイを書こうと思っていたのだけれど、ちょっと書籍を読んだりするのに時間がかかりそうなので、今月はごく簡単に、別のテーマで。

 昨年12月、西ウクライナのイヴァノフランキウシクとリヴィウで現地調査を行った。その際に、両都市を結ぶ適当な公共交通手段が見付からなかったので、イヴァノからリヴィウまで自動車で移動した。せっかくなので、移動の途中で、普段あまり訪れることのできない小都市の様子を視察してみようと思って、道中にある色んな街を下調べしたところ、「ハリチ」という興味深い小都市が目に留まった。資料を読むと、かの「ガリツィア」(ウクライナ語読みでは「ハリチナ」)という地名は、このハリチから来ているということである。出張の下調べをしていて、ちょうどイヴァノフランキウシクからリヴィウへの移動経路に、そのような興味深い古都が存在するということを知り、立ち寄ってみることにしたというわけだ。(続きはHPで)。

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20120624_byflag

 準々決勝も3試合目となり、23日ドネツィクで行われたスペインVSフランス戦ではスペインが2:0で勝利。19分のスペインの先制点は、この大会でもベストに挙げたくなるほどの素晴らしいものだった。イニエスタがドリブルで仕掛け、左サイドを攻め上がったジョルディ・アルバに絶妙のスルーパス、フランスの守備を振り切って上げたセンタリングを、完全にフリーのシャビ・アロンソが豪快に頭で叩き込んだ。ただ、その後も試合はスペインが支配したものの、大きな見せ場は生まれない。得点の場面は流石だし、負ける気はまったくしないのだが、全体に倦怠感が漂うという、今大会のスペインを象徴するような試合になった。まあ、後半ロスタイムの追加点がなくても、スペインがあのまま押し切ったことは間違いなく、強いことは確かなんだけど。

 そんなこんなで、私自身、かなりダレ気味のTV観戦になってしまったのだけれど。そんな中で、個人的に「おやっ?」と思ったのは、スタジアムでベラルーシの国旗を打ち振っている観客がいたことである。写真に見るように、赤・緑のベラルーシの国旗が見られる。超個人的なことだが、私は元々ユーロ2012に関し、ウクライナの地にロシア・ウクライナ・ベラルーシという私の主たる研究対象の東スラヴ3兄弟が揃い踏みするという夢を託していた。そして、できればそれを現地観戦したいと考えていた。しかし、当初予選で健闘していたベラルーシは勝負所で失速し、初のユーロ本大会出場を逃した。ロシアは出場したものの、グループAはポーランドで試合を行ったため、グループリーグ敗退したロシアはウクライナの地に到達できなかった(ロシアは、グループA1位の場合は準決勝まで、2位の場合は決勝まで進まないと、ウクライナでの試合はなかった)。そんなわけで、「ウクライナの地で東スラヴ3兄弟が揃い踏み」などという私の妄想に近い期待は、まったくの幻と消えたわけである。ユーロは、強豪国がしのぎを削る、普通の大会になってしまった。

 そんななか目にしたのが、スペインVSフランス戦で打ち振られていた、ベラルーシ国旗だった。考えてみれば、昨シーズンのチャンピオンズリーグで、BATEボリソフがバルサやミランと戦った時には、ベラルーシ全土から(さらには旧ソ連全域から)、ビッグクラブ見たさにサッカーファンが詰めかけた。ベラルーシの隣国で行われる今回のユーロ2012は、ベラルーシのサッカー好きにとっても、今度は代表チームという形で、強豪国のサッカーに直に触れられるチャンスである。何しろ、西欧諸国がティモシェンコ事件でウクライナをボイコットしているのか、あるいは単にドネツィクが遠いからなのかは分からないが、このスペインVSフランス戦でも少々空席が目立ち、チケットはわりと簡単に手に入りそうなので…。

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20120623_titov

 昨日お伝えしたサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムについての話題の続き。こちらのニュースによると、「実業ロシア」会長のB.チトフ氏が、ロシアで企業家の権利を擁護するビジネス・オンブズマンに正式に任命された。プーチン大統領によれば、国内の企業家だけでなく、外国企業家のそれも擁護する役割を担うという。なお、「実業ロシア」はロシアの64の地域、60の業種別団体に属する企業家を束ねる組織であり、チトフは2004年にその会長に就任している。

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 ロシアみたいな国が、ある程度力はありながら、慢心から敗退したりすると、「お前ら、ゲルマン魂とかないのか?」とか言いたくなるけど。むろん、この場合の「ゲルマン魂」というのは、民族性とは関係なしに、「不屈の精神」という程度の意味合いだが。その不屈の精神が、昨日のギリシャ代表には、はっきりと見て取れた。4:2と、終わってみればドイツが完勝したわけだけど、個人的にはむしろギリシャの健闘が印象に残った。

 前半、押しながら点の取れなかったドイツだったが、39分のラームのミドルで先制。はっきり言って、前半にドイツが先制すれば、もう試合は9割方決まりだろう。あとはドイツ製カウンター殺人機が稼働し、4対0とか5対0で勝つと、相場が決まっている。しかし、最初から押される展開を想定しているギリシャは、そこで必要以上に慌てて反撃に出たりしない。巨額の債務危機に比べれば、1点のデフィシットくらい平気という開き直りすら感じさせた。後半、ある程度前からプレッシャーに行ったことは事実だが、基本的には我慢してカウンターに賭ける作戦を貫いた。そして、55分に実際に鮮やかなカウンターから同点に追い付いてしまうのである。両国の実力差から、あまり白熱した戦いにならないのではないかという予想もあっただけに、きわめて鮮烈な同点弾だった。

 惜しむらくは、同点の状況が6分程度しか続かなかったことである。同点に追い付いたことで、ギリシャはまた当初ののらりくらりとした戦い方に戻し、自陣に引いたのだが、ドイツの攻撃力が上を行った。61分、68分、74分と立て続けに失点を喫し、PKで1点こそ返したものの、ギリシャの抵抗もそこまでだった。結果論だけど、同点に追い付いた場面で、その勢いのまま攻勢に転じて勝ち越し点を奪いに行ったら、どうだったのかな? まあ、それでも結果は同じようなものだったと思うけど、ちょっとその点が惜しまれた。いずれにせよ、一定の時間だけでも、メルケルをやきもきさせることができて、ギリシャ国民の気も多少晴れたか。

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20120622_doingbusiness

 先日のエントリーで、世銀がロシア30地域のビジネス環境に関する報告を発表する予定、ということをお伝えした。予定どおり、昨日6月21日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの席で、この資料『Doing Business in Russia 2012』が発表された。こちらのサイトからダウンロードができる。

 ただ、先の記事では、30の「地域」(すなわち、州とか共和国といったレベル)のランキングが示されるとされていたのだが、今回実際に発表されたものを見たら、主要30都市のランキングだった。まあ、だいたい各地域を代表する都市のビジネス環境が分かれば、当該地域全体が同じような感じであると、想像はできるが。

 本ブログでは、とりあえず、30都市のうち、上位10都市だけ示すことにする。より詳しくは、『ロシアNIS経済速報』(2012年6月25日号)でまとめたので、よかったらそちらをご参照いただきたい。

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 どういうわけかロシア人は国際経済会議の類が大好きである。厳しい見方をすれば、経済を発展させるために現場で地道に努力をするよりも、華やかな国際会議でバラ色の夢や大きな戦略を語り合うことを好むと、私はそんなニュアンスを感じてしまう。で、そんな国際経済会議好きのロシアにあって、その最高峰、会議の中の会議とも言えるのが、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムである。同フォーラムが、昨日21日開幕し、23日まで議論が繰り広げられることになっている。

 本件に関し、6月22日付『RBCデイリー』紙は、ざっと以下のような調子で伝えている。初日のメインイベントとなったのが、プーチン大統領の演説だった。大統領は、メキシコでのG20サミットから直行し、約40分遅刻した。ただ、プーチンの演説に特に新味はなく、ロシアの財政も政府の支出義務も石油価格には左右されず、政府は今後も投資の誘致に努め、投資オンブズマンを設けるといった持論を繰り返した。プーチンによれば、当面の重要課題はロシアへの直接投資の誘致であり、すでにロシアは受入額で世界8位の地位を占めているが、ロシア経済にとってはまだまだ不十分である。一層の誘致のためには投資環境の改善が必要で、財界・官界の代表を巻き込んで国民企業家イニシアティブを実現するための特別委が設置されつつある。それをサポートするため、企業家の権利を擁護する全権代表の制度が形成され、「実業ロシア」のB.チトフ会長が同代表に就任すると、プーチンは述べた。そのチトフがフォーラムで記者団に述べたところによると、まずは企業家に対する刑事訴追を見直す仕事に着手する意向であるという。

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 案の定というべきか、ウクライナがグループステージで消えてしまった敗因について、2戦目・3戦目の開催地であったドネツィクを悪者視するような言説が噴出しているようだ。こちらのサイトに情報が出ている。なお、この記事は6月19日付なので、ウクライナが2戦目でフランスに敗れた時点(まだ3戦目でイングランドに敗れて敗退が決まる前の時点)で書かれたもののはずである。

 これによると、ティモシェンコ派の最高会議副議長であるM.トメンコ氏が、フェイスブックに以下のように書き込んだ。「ウクライナ・フランス戦の結果は、見えていた。なぜなら、アウェーで戦ったからだ。一度としてウクライナを応援したことのない街に、死活的な2試合を割り当てたことには、驚きを禁じ得ない。リヴィウ、キエフ、ハルキウであれば、もっと素晴らしい応援が得られた」。このトメンコ発言はマスコミで議論を巻き起こし、トメンコを問題発言の多かったD.タバチニク教育相になぞらえる向きもあった。もっとも、タバチニクはトメンコとは逆に、自虐史観で西ウクライナを怒らせたのであるが。与党地域党はトメンコ副議長の退任は要求していないものの、地域党内では「これは民族・ファシズムの域だ」として怒り心頭だという。一方、別の野党会派の「我らのウクライナ・国民自衛」派のO.ドニー議員は、同志にはドネツィク州出身者も多いし、ドネツィクの人々の大多数は愛国者であり、問題は単にウクライナ代表はドンバス・アリーナではツキがないということにすぎない、と述べた。システム分析・予測センターのR.イシチェンコ所長も、ドネツィクが愛国的でないという指摘は当たらない、実際にウクライナの多くの街では地元クラブと同様にウクライナ代表も応援している、ウクライナはフランスよりも格下なのでどの街で戦っても負けただろう、と指摘した。

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20120622_customsunion

 昨日21日から、毎年恒例のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムが始まった。で、そのウェブサイトに、ロシア経済の概要を紹介するPDFが掲載されており、その中にロシアがベラルーシおよびカザフスタンと結成している関税同盟/共通経済空間についてのくだりも見られる。そこに掲げられている図を、上に転載しておく。

 ロシアの現政権は、自国の投資魅力を増すためにも、市場拡大を目標としており、3国の統合もそれに向けた取り組みであるとしている。しかし、周知の事実とはいえ、改めてこうやって図示してみると、3国のなかでロシアの経済規模があまりにも突出していて、3国統合を進めたところで市場規模は1割くらいしか拡大しないということが浮き彫りになってしまい、だいぶビミョウな感じがする。

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 ドイツ、オランダ、ポルトガル、デンマークと、どこが勝ち進んでもおかしくない4ヵ国が集まり、「死の組」と言われたグループBだったが、現時点で改めて考えると、有利な組にも思える。というのも、B組を勝ち抜けると、決勝トーナメント1回戦でA組の国と当たる。B組1位とA組2位、B組2位とA組1位という顔合わせが、あらかじめ決まっている。そして、グループAはやや力の落ちる4ヵ国が集まっていたうえに、本命のロシアが消えてしまった。したがって、グループBの国は、一次リーグさえ突破すれば、かなりの確率で準々決勝でA組の国を下し、ベスト4に入れるわけである。

 まあ、口で言うほど、実際には簡単ではないのだろうが、21日に行われたポルトガルVSチェコ戦を観ていて、そんな印象を抱いてしまった。チェコは、グループステージ首位通過の国とは思えないほど、驚くほど攻撃の見せ場を作れなかった。GKチェフの活躍がなければ、もっと一方的に負けていたかもしれない。前半はまだしも互角という感じもしたが、後半は一方的に相手の攻撃を受け続けた。ポルトガルは攻めあぐんでいる印象もあったものの、79分に右サイドの崩し、DFの背後からクロスの瞬間に前に出るロナウドの動き、そして叩きつけるヘディングシュートと、良いプレーが重なってついにGKチェフの牙城を崩した。そのまま1:0でポルトガルが勝利。スラヴ圏で開催された大会だったが、チェコが消え、スラヴ系国家は全滅となった。

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 これは「つぶやき」レベルの話だけれど。

 ロシアのサッカーを見ていると、どうも民族的に純ロシアではなく、カフカス(コーカサス)地域の少数民族系ではないかと思える名字や顔が目立つ。ロシアのことをあまりよくご存じない方であれば、名字に「オフ」とか「エフ」と付く選手が多く、同じようなものだろうと思うかもしれないけれど、我々のようなロシア屋からすると、たとえば「マラフェエフ」という名字はいかにもロシアっぽいなと感じるのに対し、「ジャゴエフ」というのは完全にカフカス系だろうと察しがつく。実際、CSKAで本田の同僚でもあるジャゴエフは、北カフカスの北オセチア共和国の出身であり、ウィキペディアでも民族的にはオセト人であるとされている。ただし、ネット情報をざっと眺めたところ、ジャゴエフのルーツをさらに辿ると、グルジア系という説もあるらしい。

 ロシア代表選手でもう一人、名字や顔立ちからして、私がいかにもカフカス系だなと感じるのが、ケルジャコフである。ただ、ケルジャコフは、レニングラード州の生まれであり、カフカス生まれというわけではない。ルーツをたどるとカフカスに行き着くかもしれないが、ちょっとすぐには情報が出てこなかった。

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20120621_uapresidents

 6月20日、ウクライナで「憲法会議」が開幕した。ヤヌコーヴィチ現大統領をはじめ、独立後の歴代大統領が全員出席するという、豪華な会議となっている(写真)。挨拶に立ったヤヌコーヴィチ大統領は、憲法改正への意欲を示した。

 ヤヌコーヴィチ大統領のスピーチの要旨は、こちらに掲載されている。大統領は、憲法の刷新が、社会・国家発展のイノベーション的モデルの法的な基盤にならなければならないと述べた。

 一方、これについて伝えたロシア・ノーヴォスチ通信のこちらの記事は、ウクライナの憲法改正の動きが、ロシア主導の経済統合に加わるための布石であるという側面を強調している。

 ノーヴォスチの記事いわく。モスクワはキエフに、優遇価格でのエネルギー供給と引き換えに、関税同盟に加わるよう呼びかけている。これに対しウクライナ側は、旧ソ連空間での統合にウクライナが参加するためには憲法を変える必要があるとし、3+1方式で関税同盟と協力することを提案している。ヤヌコーヴィチは憲法会議の初回会合で、「ウクライナが統合に参加する憲法的条項を設けることが最優先課題だと確信している」と述べた。なお、2010年にヤヌコーヴィチが大統領に就任した後、憲法裁判所は、大統領・議会制を議会・大統領制に転換した2004年の憲法改革を非合法と認定した。これによりヤヌコーヴィチはより強大な大統領権限を手にし、議会の承認を得ることなく、個々の閣僚のみならず、内閣全体を解任することが可能になった。野党はこの憲法裁決定を不当な権力奪取であると批判した。ノーヴォスチは以上のように伝えている。

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20120621_bus

 ウクライナの場合は厳しい組だったので、一次リーグで敗退してもある程度選手たちの健闘を称える雰囲気が現地にはあると思う。それに対し、ロシアは明らかに組み合わせに恵まれ、出だしも順調であったため、一時は決勝トーナメント進出は確実というような雰囲気も広がっただけに、一次リーグ敗退は大失態という受け止め方が主流だろう。なぜロシアは負けてしまったのか? 本ブログでもいくつか関係者や専門家の声を紹介していきたい。まず、ロシア『スポルト・エクスプレス』のD.ゼレノフ記者。

 「魂でプレーし、最後まで闘う」というのが今回のロシア代表の公式キャッチフレーズで、その言葉が代表チームのバスのボディにも書かれていた。そのキャッチフレーズを選んだのはサポーターであり、つまり彼らは代表に関して常に理性よりも情熱に重きを置いているということである。しかし、現実はその逆になった。今大会のロシア代表には驚くほど情熱が欠如しており、一部の選手が必死になっても、別の選手たちの熱意のなさの方がかえって目立ってしまった。ロシア代表は、グループステージを楽々と通過しようとしているという印象を、ずっと拭えなかった。グループ最強を自任し、早くグループステージを突破して、準々決勝以降の本物の戦いに備えようという雰囲気があった。退屈なセレモニーは早くやめて、ドイツ、ポルトガル、スペインなどとの本物のパーティーを始めたいという感じだった。大会前のトレーニングマッチではイタリアに3:0で勝っていたし、ユーロ初戦のチェコに4:1で勝ったことも、その気分を強めた。自信は結構だが、情熱に裏打ちされていなければ、それはプラスにはならない。敵を侮っていたという見方は、当たっていないだろう。なぜなら、ポーランドやギリシャが、想定以上の実力を示したわけではないからである。皮肉なのは、プレーの質や中身では、確かにロシアは、ギリシャは言うに及ばず、チェコやポーランドよりも上だったということだ。しかし、ギリシャ代表や、その得点者のカラグニスのような情熱が、我々には欠けていた。ギリシャ戦の失点シーンで、イグナシェヴィチのミスは起きうるものだが、ジルコフにもっとやる気があれば、あのようにGKと1対1の場面は作られなかった。ジルコフは、グルシャコフからのパスを受け損ねたあと、ボールを追うのではなく、止まってしまったのである。そうしたことの罰を受けたのである。むろん、全員がやる気がなかったなどと言うつもりはない。サブの立場で先発出場機会を得たグルシャコフなどは、ボールを失った場面で相手に追いすがっており、試合後には唯一、この結果が恥だということを認めている。それに対しジルコフは不動のレギュラーなのである。かくしてロシア代表の新たな一ページは幕を閉じ、これから新監督が発表されて新しい路線を追い求めることになろうが、どんな代表になろうと、求められるのは「魂でプレーし、最後まで闘う」ことである。

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20120620_ua_setaiatari

 2010年に実施された日本の国勢調査によると、日本の1世帯当たりの平均人数は2.46人だった。これは5年前から0.11人減少したということである。当然のことながら、国が近代化し、大家族中心の社会から、核家族や単身者世帯が増えていくにつれて、1世帯当たりの平均人数は低下していくのが一般的である。

 興味深いことに、2011年現在のウクライナの1世帯当たり平均人数は2.59人であり、日本とほぼ同じレベルである。ちなみに、やや古いが、2002年時点のロシアの当該数値は2.7人。ウクライナやロシアの都市住民はだいたい画一的な集合住宅に住んでおり、家がそれほど広くないので3世代同居といったパターンは多くないはずで、それで世帯当たりの平均人数が少なくなるのではないかと思う。

 ウクライナの1世帯当たりの平均人数を地域別に示した資料を見付けたので、それを掲載する。薄い色が2.45人以下、中間が2.46~2.68人、濃い色が2.69人以上となっている。これを見ると、完全に西高東低の傾向となっている。西ウクライナは農村の比重の高い伝統的社会、東ウクライナは都市型の工業社会という特性を反映したものだと考えられる。不可解なのは、首都キエフ市が2.57人と、全国平均とほとんど変わらないことである。ちなみに、日本の場合は東京都が2.06人で全国で最も低い。

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 6月18日のロシア政府の発表によると、メドヴェージェフ首相は極東開発省の次官4名を任命した。G.コンドラトフ、I.アヴェリン、I.ブラゴドィリ、Yu.オノプリエンコの4名。

 こちらのニュースによると、コンドラトフはハバロフスク地方政府の官房長。アヴェリンは極東連邦管区大統領全権代表(つまりイシャエフ大臣・代表)の補佐官。ブラゴディリは極東の電力会社RAO ES Vostoka社長を経て、この春に「イノベーション・カンパニーSAN」の社長に就いていた。オノプリエンコはハバロフスク地方政府の社会インフラ担当副首相。

 元ハバロフスク地方知事であるイシャエフ大臣・代表の引きによる人選と思われるので、致し方がないが、極東開発省の上層部がハバロフスク地方関係者で固められ、他の地域との関係が上手く行くのか、若干不安を覚える。

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 ベラルーシのルカシェンコ大統領は6月18日、下院選挙の投票を9月23日に実施することを決定した。また、上院についても9月30日までに形成することを決定した(上院は国民の直接投票で選ぶのではない)。

 こちらのサイトで、下院選に関連する事実関係が整理されている。立候補の届け出は7月15日~8月13日、候補者の登録手続きは8月14~23日に行われる。下院選は小選挙区制で、全国110の選挙区が設けられ、その内訳はミンスク市20、ミンスク州17、ゴメリ州17、ブレスト州16、ヴィテプスク州14、モギリョフ州13、グロドノ州13。1選挙区当たりの平均有権者数は64,597人。

 ベラルーシの法律では、各選挙区の有権者数は、この平均人数からプラスマイナス10%以内となるように設定されることになっているようである。この点だけをとれば、日本よりもはるかに全うであり、我が国は欧州最後の独裁国家よりも酷い一票の格差を抱えた恥ずべき国ということになる。

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 こちらのニュースによると、ロシアのメドヴェージェフ首相が19日チェチェン共和国を訪れ、同共和国も属す北カフカス連邦管区の経済発展に関連した仕事をこなした。

 チェチェン共和国の初代大統領であるA.カディロフの墓に花を手向けたあと、グロズヌィに向かったメドヴェージェフ首相は、同市で開かれた連邦政府の北カフカス連邦管区社会・経済発展問題委員会の会合に出席した(同委員会の委員長にはメドヴェージェフ首相自らが先日就任していた)。1月のモスクワ、5月のエッセントゥキの会合では、北カフカス連邦管区に関連するいくつかの連邦特定プログラムを実施する問題、スタヴロポリ地方・ダゲスタン共和国・イングーシ共和国の社会・経済発展の諸問題、「北カフカス開発」国家プログラムの草案が検討されていた。今回のグロズヌィでの会合には、A.フロポニン副首相・北カフカス連邦管区大統領全権代表、V.スルコフ副首相・官房長官、A.ノヴァク・エネルギー相、M.ソコロフ運輸相、M.トピリン労働・社会保護相、O.ゴヴォルン地域発展相、V.スコヴォルツォヴァ保健相、N.フョードロフ農相、V.メジンスキー文化相、V.ドミトリエフ対外経済銀行社長、G.グレフ・ズベルバンク社長、各地域の首長などが参加している。なお、メドヴェージェフが前回チェチェンを訪問したのは大統領在任中の2010年6月であった。

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 こちらのニュースによると、ロシア経済減速の観測が広がっている。

 「上級経済スクール」の最新の機関誌では、主要経済指標の悪化により、2012年の経済成長率が2.7~3.5%に留まると予想されると指摘されている。すでに第1四半期の成長率は発表されているわけだが、年末までにそこからの上積みがなければ、年間の経済成長率は2.7%に留まる。一方、第1四半期と同じ成長率を年末まで維持すれば、年間成長率は3.5%となる、という。投資環境の悪さが、引き続き経済成長のネックとなっていると指摘されている。

 クドリン元副首相・蔵相も5月の末に、ヨーロッパの債務危機の影響で、ロシアがマイナス成長に陥る恐れがあると指摘していた。上級経済スクールの国際評議委員会のE.マスキン委員長も、欧州情勢が悪化すればロシアは本年中に景気後退に突入する恐れがあるとの見方を示していた。

 一方、経済発展省は、2012年の成長率を3.4%と予測しており、8月その予測を見直すことを予定している。世銀は6月12日に2012年のロシアの経済成長見通しを3.5%から3.8%に上方修正したばかりだ。EBRDでは4.2%を、IMFでは4.0%を、OECDでは4.5%を予想している。

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 一次リーグで最後に残されたグループDの2試合が行われ、イングランドVSウクライナは1:0、スウェーデンVSフランスは2:0。結果、表に見るように、1位のイングランドと2位のフランスが決勝トーナメント進出を決めた。イングランドに勝つしかなかったウクライナだったが、出場停止が解けたルーニーの復帰祝い弾に沈み、The End、ロシア語で言えばカネーツ、ウクライナ語で言えばキネーツィとなった。

 ウクライナにとってみれば、なにせ格上相手のイングランドに勝たなければならないという難しい状況。一方、引き分け以上でいいイングランドは無理をせず、自陣ゴール前に堅牢な守備網を敷いた。必然的に、前半のポゼションは6:4くらいでウクライナが上回るものの、イングランド守備陣の壁の前に立ち往生する場面が目立った。ロングシュートも相手GKを脅かすには至らず、前半は私が可能性を感じた惜しいシュートは1本しかなかった。

 それでもスコアレスで折り返して可能性を残したのだが、後半立ち上がりにコーナーキックからの流れだったか、敵のクロスが変な形でゴール前に入り、味方・敵と2人くらい中途半端に触ったのでウクライナGKピヤトフが反応できず、ファーサイドに流れたところをルーニーに押し込まれて先制を許した。この場面だけを見れば不運な失点だったが、イングランドはチャンスの数こそ少ないものの、クロスの上がる場面で必ず2人くらいがゴール前に詰めている点がウクライナと異なり、その意味では必然性に満ちた先制点だった。

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 ただ、ウクライナが同点に追い付くチャンスは充分にあった。左からの正確なクロスをミレウシキーだったかゴール前でフリーでヘディングする場面があったが、あれは決めなくてはダメだろう。また、デヴィチがゴール前でGKと1対1に近い形になり、決定的なシュートを放ったが、敵DFのテリーにクリアされた場面があった。スローで見ると、明らかにゴールラインを割っており、補助審判を置きながらのこの大誤審は重大な物議を醸すことになるだろう。もっとも、この2つの決定的なチャンスは、どちらもオフサイドを見逃されて生まれたもののように、私には見えた。その意味では、プラマイゼロみたいなものか。

 イングランド戦に出れるかどうか、50:50と言われていたシェフチェンコは、70分に途中投入。コーナーキックからダイビングヘッドを見せる場面はあったが、見せ場はそのくらいだった。シェフチェンコの伝説は、初戦のスウェーデン戦で決めた2発で打ち止めとなり、結局ウクライナが今大会で挙げたゴールもその2点だけだった。

 それにしても、ウクライナにとって、勝利した初戦はキエフ開催、負けた2・3戦目はドネツィク開催であった。WOWOWのアナウンサーが語っていたところによると、ウクライナ代表はこれまでドネツィクで7試合くらい戦って、一度も勝ったことがないそうである。アナ氏も言っていたが、ドネツィクの応援の熱狂度はキエフのそれに比べて低いようで、現に私自身、フランス戦やイングランド戦の後半の劣勢な場面で、地元サポの諦めが早すぎるように感じた。そもそも、ホスト国が自国試合の開催都市を自由に選ぶ権利があるのかどうか知らないが、ドネツィクでの開催というのはどうだったのかという点も(現在のウクライナの政治・経済がドネツィク閥によって牛耳られていることと関係はあるのか?)、今後議論の的となるかもしれない。

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20120619ua2

 前のエントリーに引き続き、ウクライナ国民生活の「今」をお届けする記事をもう1本書いておこう。キエフ社会学国際研究所が本年2月にウクライナ全国で成人2,031人を対象に行った世論調査で、回答者が最も憂慮している問題は何かを複数回答で問うている。その結果を示したのが、上図である(単位はパーセント)。出所はこちらだが、欠落があるようなので、こちらからも一部補った。

 なお、たとえば回答者が「ロシアとの協力の問題を憂慮している」と答えた場合に、回答者がロシアとの協力を支持しているのか否かは、不明であるように思われる。支持・不支持にかかわりなく、とにかくその問題に関心を寄せているというのがこの設問の趣旨だと、私は理解している。

 さて、図を見れば一目瞭然のように、国民を何よりも憂慮させているのは、物価の問題だ。それに失業・賃金の問題が続く。旧ソ連各国では、人々は自分に身近な生活・社会の問題に主として関心を寄せると相場が決まっているが、ウクライナもその御多分に漏れない。ウクライナのニュースが我が国で伝えられるとすれば、強権政治、ロシアとの駆け引き、EUやNATOとの関係といったところが主たるテーマになるところだが、そうした高次元の外交・政治・経済の問題に国民が高い関心を示しているとは言えない。もっとも我が国で同じような調査をしても、日米安保やTPPへの一般国民の関心度がそれほど高いとは思えないので、こういうのはだいたい万国共通なのかもしれない。

 注意すべきは、7番目とかなり高い順位となっている「汚職」だろう。我々は汚職というと、ついロッキード事件とかリクルート事件のような政府高官の汚職を想像してしまう。しかし、ロシア圏では、市民がお役所の窓口で、あるいは医療・教育などの公共的なサービスの場で、日常的に汚職に直面してその実害に遭っているのである。つまり、汚職も国民にきわめて身近な生活・社会の問題ということになる。

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