
うちの地元の北千住から羽田空港に直通バスが出ているというのを最近知り、今日初めて利用してみた。速いし快適だし、これはいいや。
ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け
昨日の続きで、3月11日付の『コメルサント』紙に掲載された、来たるプーチン新政権の下で形成される政権幹部の陣容に関する観測記事の、後半部分をお届けする。
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大統領府の新体制に関してはすでに、政府のそれよりもずっと明確になっている。3月7日プーチンは、自分はS.イヴァノフとは旧知の仲で、彼は経験もあるので、大統領府長官に残ることになると言明した。プーチンの選挙戦略の作者の一人と言われるV.ヴォロジンは、大統領府第一副長官のポストを保持し、国内政策局の改革に取り組み続ける可能性が高い。地域政策局には、統一ロシアでプーチンの広報担当を務めたA.ロマノフが起用された。これらの組織では組織改革が予想される。
現在行われている組閣作業の重要な要素が、メドヴェージェフが「公開政府」を作ろうとしていることであり、これが2004年の行政機構改革に匹敵する目玉となっている。想定によれば、公開政府は新しい方式で活動し専門家、市民、団体等との相互関係を組織化する役割を与えられる。他国におけるこうしたシステムの例では(クラウドソーシング)、理念的には納税者の支援により国家行政の効率を高め、官僚主義や汚職を克服するということが想定される。その主たる手段はいわゆる電子政府だが、それは単に市民向けの行政サービスを電子形態で提供するということだけでなく、専門家や市民が国家政策の形成とその実施の管理に参加するということである。
首相が不意に、このようなシステムを自発的に作ることを表明したので、イヴァノフ大統領府長官の下にそれに向けた作業グループが設置された。過去2週間の活動の様子からすると、作業グループ自体がすでに一種の公開政府として機能しているかのようである。広範な参加を得て10設けられた小委員会が、公開政府の制度に向けた提案だけでなく、新首相の政策プログラムも含め、国家管理システム全般の改善に関する提案を示している。
その小委員会の1つに、人材の問題が委ねられているところから見て、プーチンとメドヴェージェフは政府の顔ぶれを大幅に刷新する意向を有していると考えられる。第1に、閣僚のうち何人かは、別のポストに移る用意を示している(V.フリスチェンコはすでに移動した)。第2に、表明されている公開政府の構想を実現すると、新しいメンタリティを持った人々が政府に入ってくる。しかも、上述の人材小委員会が他の小委員会に対し、それぞれの分野にかんがみ、公務員制度のあり方についての提言を提出するよう求めている。すでに電子政府小委員会が当該の提言を提出しており、コンピュータの技能を義務付けるといったことを求めているという。
いずれにせよ、3月14日にメドヴェージェフに人材に関する総合報告が提出されることになっており、それが政府人事に影響する可能性がある。作業グループのメンバーが入閣する可能性もある。
公開政府自体の形成に関しては、その機能メカニズムに関する暫定案が4月15日にメドヴェージェフに提出される。それを準備する「市民の権利擁護小委員会」の3月7日の会合でM.アブィゾフは、公開政府とは単に政府の機能の問題ではなく、権力全体と市民社会の機能の問題であると指摘、これを単にフィードバックのメカニズムではなく、広い意味での共同行動と呼ぶべきだと述べた。公開政府の提唱者であるズベルバンクのA.シトニコフも、それに賛意を表した。
取り上げるのがやや遅れてしまったが、3月11日付の『コメルサント』紙に、来たるプーチン新政権の下で形成される政権幹部の陣容を、過去の事例も参照しながら占った記事が出ている。そこで、記事の要旨を整理しておきたい。ただ、少々長く、今日中にはすべて処理できないので、とりあえず前半だけアップし、続きは明日フォローしたい。
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プーチンとメドヴェージェフが政府の人事について話し合うのは、2008年春に続いて、今回が2度目である。前回の作業は、人事的な観点から言えば、上手く行った。というのも、2008年春に形成された政府および大統領府の陣容は、2011年の下院選まで、ほぼ変更なしで続いたからである。例外的に人事異動があったのは、2008年10月にD.コザク副首相が兼務していた地域発展相のポストを離れ単なる副首相になったこと、2010年1月に北カフカス連邦管区が創設されその全権代表に就任したA.フロポニンが副首相の座にも就いたこと、2010年秋にS.ソビャニン副首相・官房長官がモスクワ市長に転身して、その後任には下院副議長のV.ヴォロジンが就いたこと、程度だった。
2011年12月の下院選後の選挙戦に突入し、ようやく大きな人事が動き出した。プーチンの大統領への復帰とメドヴェージェフの首相就任の方針が発表されたことを受け、後者の下で働くことをよしとしなかったA.クドリン副首相・蔵相が辞任した。下院選後には、人事異動が加速し、12月後半に前大統領府長官のS.ナルィシキンが新たな下院の議長に就任、副首相だったA.ジューコフが下院第一副首相の一人となった。さらに大きい動きとして、前副首相のS.イヴァノフが大統領府長官に就任、前出のV.ヴォロジンが大統領府第一副長官となった。一方、これまで大統領府第一副長官だったV.スルコフが、政府に移って文化・科学分野の近代化問題などを担当する副首相となった。さらに、D.ロゴジン氏が副首相に就任した。
次の人事異動は、5月7日のプーチン大統領就任式の後になると見られる。プーチンもメドヴェージェフも、政府が大幅に刷新されると再三公言している。専門家は、現在の内閣の顔触れが全面的に変わるだけでなく、その構造自体が変わると予想している。ただ、これは選挙前によくある意欲の表明と言っていい。政権人事には2つのパターンがあり、人を目的・機能に当てはめるか、あるいは人に目的・機能を当てはめるかのどちらかである。ロシアでは常にその両者のミックスで、後者の方に傾きがちである。
たとえば、2004年に再選を果たしたプーチン大統領の下で組閣された際には、現在と同じように、国家管理の改革というスローガンがあった。その改革は、①ビジネスへの圧迫を低め腐敗と闘争するための行政改革、②国家歳出の効率を高めるための財政過程改革、に大別された。そのため、下院から政府にA.ジューコフが副首相として送り込まれ、その眼目の一つには歳出の効果を高めるための新たな委員会を率いることがあった。
2008年に首相に転身したプーチン氏は、国家管理に関し特段の新機軸を打ち出さなかった。より重要だったのは、クレムリンのメンバーたちをポストに適宜配置することだったからである。この点は、その後4年間で人事の動きが最小限だったことの一因となった。
今回は、首相と大統領府が入れ替わる形となるので、政府および大統領府を改組する際に、分け与えなければいけないポストが、ずっと多い。ただ、関係筋によると、最も重要な課題は、2008年の時と同じように、安定的なチームを作ることだという。
UEFAのチャンピオンズリーグ(CL)およびヨーロッパリーグ(EL)で、ロシアやウクライナのチームの試合を観るのを楽しみにしているが、両大会のベスト8が決まったところで、私の守備範囲の国々のチームがほぼ姿を消してしまい、落胆している。
だいたい、CLのグループステージからして、いけなかった。ロシアのゼニト・サンクトペテルブルグとCSKAモスクワこそ、かなり幸運な形でグループ2位につけ、決勝トーナメントに進出した。しかし、ウクライナのシャフタール・ドネツィクとベラルーシのBATEボリソフは振るわず、グループ4位(最下位)となって姿を消すことに。グループ3位であれば、ELに回って戦いを続けられるのだが、それすらも逃したのは痛恨と言う他はない。
私が最も愛するディナモ・キエフは、ELのグループステージを戦ったが、あそうことかグループ3位に甘んじ、やはり早々に敗退した。
周知のとおり、CLの決勝トーナメントでは、ゼニト、CSKAともに敗れ、ベスト16止まり。これで、ロシア・ウクライナ勢は今季のCLから完全に姿を消すことに。
ELは大会のレベルがCLよりも落ちるし、決勝トーナメントには32チームもが出場できる。その決勝Tに、ロシアからは、ロコモティヴ・モスクワとルビン・カザンが進出した。しかし、いずれも1回戦で敗れてしまった。日本のスカパー!では、さすがにELの1回戦のロシアのチームの試合まではなかなか放送してくれないから(対戦相手に日本人選手でもいれば別だが)、はっきり言って私などはロコモティヴやルビンが敗退したということに気付かず、いつの間にか負けていなくなっていたという感じだった。
結局、ロシア・ウクライナ勢で、現時点でただ1チーム残っているのは、ELのメタリスト・ハルキウである。ELの決勝T1回戦ではザルツブルクを圧倒し、2回戦ではアウェーゴールの差でオリンピアコスを退け(写真)、ベスト8に駒を進めている。ただ、個人的にはメタリストはそんなに好きなチームじゃないんだけどな。
むろんクラブと代表はまったく別物とはいえ、本年夏にユーロを控え、なかなか意気上がらないロシアおよびウクライナのサッカーであった。
ロシアの「電力機器研究開発設計研究所(Научно-исследовательский и конструкторский институт энерготехники имени Н. А. Доллежаля)」のYe.アダモフ研究部長が、こちらのサイトで、東京電力原発事故1周年を受けたインタビューに応じている。以下、その発言要旨を整理しておく。
東電事故の原子力産業への打撃は大きく、ドイツとスイスが原子力発電全廃を決めただけでなく、原発再開を期待されてたイタリアでも、事故後に実施された国民投票の結果、その希望が葬られた。もしもドイツで推進されている再生可能エネルギーの開発が所期の計画どおりの成功を収めたら、このトレンドが他の国にも広がることは不可避である。
(東電の事故があのような展開を辿った最大の要因は、天災、設計の不備、人為的要因のどれだったのか?)今日使用されているテクノロジーは、こうした事故の危険をはらんでいる。初めて原子炉から電力を得てからの60年間で、6件の過酷事故が発生しており、うち東電では3つの原子炉で同時に起きた。過酷事故が生じる蓋然性は、平均で10年に一度ということになり、あまり勇気付けられるものではない。米国でスリーマイル島事故が起きた際にソ連では国民に対し、こうした事故は利益を優先し住民の安全を軽んじる資本主義国でしか起こりえないと説明された。チェルノブイリが起きた時には、今度は西側が、ソ連の安全文化の欠如を指摘した。東電事故が起きた今となっては、そろそろ原子炉のテクノロジーが問題なのだということを認めるべきではないだろうか。
私の同業者たちは非常に保守的で、明白なことも認めようとせず、東電事故は古い設計や(あらゆるテクノロジーはいずれ古くなるのだが)、日本人の国民性が原因だと主張しようとしている向きもいる。2010年にドイツのシュプリンガー事典は私と、日本人の専門家であるフジヨ教授に対し(注:この人のこと?)、原子力テクノロジーの将来展望について共同で記事を書いてほしいと依頼してきた。だが、共同の記事は一部しか成立しなかった。私は、根本的に新しい性格の安全性を備えた原子力に移行すべきだということを主張したのだが、フジヨ氏がそれに同意しなかったからである。出版社側は、我々を尊重し、両論併記にした上で、どちらが正しいかは時間が証明することになるだろうと序文に記した。その事典が出版されたのは、東電事故の1ヵ月前だった。
(今日とられている安全性向上のための措置は、充分なのか?)それはこれまでも充分だった。事故による死亡率という観点から言えば、原発は電話機の次くらいに低い。尊敬に値する専門家のA.グシコフによれば、チェルノブイリ事故で放射線の直接的な影響により実際に死亡した数は、150人以下だったという。しかし、被爆以外の原因、すなわちストレス、低い民度、社会情勢、誤った政府の決定、移住、マスコミによって煽られた放射能恐怖症などが引き起こした心血管、消化器、または神経疾患の病気で死んだ人々は、数えきれなかった。安全措置は充分だと自分に言い聞かせることはできるが、いかなる電力事業者も、いったんこのような過酷事故が起きれば、稼働しているすべての原発からの利益を合計しても、損害を賄うことはできない。東電はその端的な例で、旧ソ連は広大な国だったのでチェルノブイリの30km圏を放棄できたのに対し、日本は汚染地域の汚染地域からの汚染物質の除去が不可避であり、今度はそれを持っていく先で住民の反対に直面する。事故は不可避であり、いかなる国もそれから自由ではない。
日本は独自の炭化水素資源がなく、水力発電のコストも高いので、原子力を放棄することは難しいだろう。だが、東電事故のショックと、広島・長崎の心の傷が相まって、日本の世論は原子力の積極的な推進に対して長らく抵抗を示すだろう。ただし、住民の避難や電力会社にとって壊滅的な物質的損害を与えるような大事故の可能性を排除するテクノロジーは知られている。日本は、技術的なアプローチを立て直し、原子力の利用に回帰していくだろう。
世界の原子力の安定的な発展のためには、「自然安全」が鍵となる。
以前、ロシアのモノゴーラド(企業城下町)問題についてレポートを書いたことがある。それで、こちらのニュースによると、カザフスタンでもモノゴーラドの問題はあるようで、政府が5月にもその経済振興に向けたプログラムを採択する予定とのことである。個人的に、カザフの研究は始めたばかりであり、こういう自分に馴染のある話題はありがたい。
記事によると、カザフ政府は3月20日の会議で同プログラムの策定問題を討議し、5月にプログラムを採択する予定となっている。アフメトフ首相によると、カザフでは27のモノゴーラドが存在し、そこには人口の17%が居住している。その重要性にかんがみ、大統領が対応策を指示した。なお、この場合のモノゴーラドの定義は、人口の15%以上が単一の企業で働いている都市であるという。
CL決勝トーナメント1回戦のセカンドレグ、レアル・マドリッド対CSKAモスクワが14日マドリッドで行われ、マドリが4対1勝利、2試合合計でも5対2としてベスト8の戦いに駒を進めた。
個人的には、ファーストレグの戦評で、次の試合ではよほど本田が大活躍でもしない限り、ホームのマドリが順当勝ちするだろうと書いていた。その頼みの本田は、先日の国内リーグ戦のゼニト戦で負った腿の傷が癒えず、無念のメンバー外。案の定、14日の試合ではCSKAは散発的な攻撃しか披露できず、マドリに力の差を見せ付けられた。まあ、序盤のビッグチャンスでドゥンビアが決めていればといった「たられば」もあるし、あの展開で1点返すCSKAの攻撃力はやはり侮れないといった評価も可能だろうが、全体として見ればあまりにも順当な結果としか言いようがない。やはりスペイン2強の牙城は、いかんともしがたい。
それにしても本田はここ数カ月、ちょっと出場しては怪我、ちょっと出場しては怪我という、悪いサイクルに陥っている。今回のマドリ戦に関しては、スルツキー監督が、国内リーグ戦のスパルタク・モスクワ戦(18日)に万全の状態で出場してほしかったからメンバーから外したとか、ちょっと意味の分からないことを言っているようだが、真相はどうなのか。そして、6月の代表選は、どうなるのか? 彼のサッカー人生は、まだまだ五合目くらいだと信じたいが。
ロシアでは2010年に「統一社会税」が廃止され、それに代わって企業が各種の社会保障基金に保険料を支払う制度に移行した。保険料の徴収業務は、各基金に委ねられた。保険料率は、2011年1月1日付で、26%から34%へと引き上げられた。その後、税率が修正され30%に引き下げられたが、高賃金の者に対しては追加税率10%が導入された。しかし、この改革の成果は芳しくなく、統一社会税への復帰が提唱されているという。こちらのニュースが伝えている。
これによれば、「2020年までのロシアの社会・経済戦略」に関する討議の過程で、専門家が統一社会税に復帰し、徴税業務も国税局に戻すことを提唱している。年金制度改革の如何にかかわりなく、それが検討されてしかるべきだという。戦略の策定にかかわっている専門家らによれば、先の改革は年金制度の長期的な均衡をもたらさず、税負担を増やし、徴税業務を難しくしただけだった。
こちらのニュースも、先の社会保障改革は企業の競争力を低下させ、闇賃金の比率を増やしただけだったということを伝えている。
こちらのニュースが、ウクライナで関税法典が採択されたことを伝えている。
これによれば、ウクライナ最高会議はこのほど、大統領の修正提案を盛り込んだ新版の関税法典草案を可決した。226名の賛成が必要だったところ、264名の賛成で可決された。
最初の草案では、個人が入国時に手荷物として無税で持ち込める上限を、200ユーロから1,000ユーロに引き上げることになっていた。今回の草案ではそれを、空港では1,000ユーロ、その他の国境ポイントでは500ユーロを上限とすることになっている。その他、大統領の提案に沿って、通関手続きの簡素化、通関価格設定の透明化、関税職員のための優遇措置廃止などが盛り込まれた。
入り組んだ話であり、どこの国の記事に分類したらいいか迷うところだが、こちらのニュースが、ベラルーシへのウクライナ産ステンレス鋼管輸入禁止の問題について報じている。
これによれば、A.グリヤノフ・ベラルーシ外務次官は記者会見で、ウクライナ産ステンレス鋼管のベラルーシへの輸入が禁止されたのは、ベラルーシのイニシアティブによるものではないと表明した。次官によると、ベラルーシ固有の立場というものはなく、あるのは関税同盟の立場である。ベラルーシが何かをブロックしているというのではなく、これはロシアの意志であり、不当な価格競争を抑制するのがその目的である。3ヵ国共同で決定を下したが、その際に主たる役割を果たしたのはベラルーシではなく、ベラルーシが何かをブロックしているというのは受け入れられず正しくない。ウクライナとの関係調整は、現在は関税同盟内で行われている。以上のように次官は指摘した。
こちらのニュースが、カザフスタンが同国における原発建設計画を確固として推進していくということを伝えている。
これによれば、政府閣議でA.イセケシェフ工業・新技術大臣は、以下のように語った。すなわち、カザフは原子力エネルギーを諦めない。長期的に見れば、建設に漕ぎ着ける。ただ、それがどんなタイプの原子炉か、どんな発電所かというのは、国民への安全、最良のテクノロジーを考慮しながら、これから長期にわたり検討いく。2030年までには、発電の4%程度を原子力が占めることになろう。
S.アフメトフ第一副首相は、原発の問題は本年中に明確にする必要がある。現在、工業・新技術省、経済発展・商業省の専門家がその問題に取り組んでいる、と発言した。
半年ほど前、K.サウダバエフ外相は、原発建設は我々の共通の目標、核なき世界への前進に矛盾しないと発言した。非核世界をPRしてきたカザフが原発を建設するのは矛盾しないかという外国人記者の質問に答えたものだった。
カザフが計画している東カザフスタン州クルチャトフにおける原発建設には、約30億ドルを要する。
こちらに、きわめて奇っ怪なニュースが出ていた。ベラルーシ人が騙されて北方領土の色丹島に連れてこられ、そこで奴隷的な搾取労働に従事させられていた、というのである。
記事によると、2011年11月、25~35歳の青年を中心とする(最も若い者は20歳)47名のベラルーシ人のグループが、魚加工工場での出稼ぎ労働のために、北方領土の色丹島にやってきた。70%が男性、30%が女性であり、多くはモギリョフ州、ゴメリ州住民だった。在ロシア・ベラルーシ大使館は本件につき承知していなかった。彼らを島に送ったのはモスクワの人材派遣会社、送られたのは先は閉鎖型株式会社「オストロヴノイ魚コンビナート」だった。しかし、賃金や居住条件は事前の約束とは異なっていた。滞在登録のためにパスポートが回収されると、彼らは自分たちが奴隷状態に陥ったとしてパニックになり、彼らの1人が1月に在ハバロフスク・ベラルーシ領事館に支援を要請、ようやくベラルーシ当局の知るところとなった。ベラルーシ側はロシア外務省のサハリンの出先およびサハリン州知事に連絡、その結果、契約破棄を希望した30名は帰国することとなった。うち17名は自ら旅費を捻出したが、13名は領事館からカネを借りた。ただし、17名は色丹島に残ることを希望、ベラルーシ大使館や検察から警告を受けた魚工場側は労働条件を改善した。もっとも、うち1人の45歳の男は2月にアル中で死亡してしまった。同人は12年前からパスポートもなしにサハリンでぶらぶらしており、死亡後は色丹島に埋葬された。酒浸っている者は他にもいる。すでにベラルーシに帰国した者たちは、モスクワの人材派遣会社を訴えることにしている。
「日本とベラルーシは、間にロシアという1つの国しかないので、近い隣人同士だ」なんてことをよく言ったりするが、それを地で行くようなニュースだ。
EUとの連合協定および自由貿易協定締結に軸足を置くウクライナは、ロシア主導の関税同盟には加入しない方針をとっているわけだが、それに関連した情報を2つほど整理しておく。どちらも、少々フォローが遅くなってしまったが、悪しからず。
まず、こちらのニュースによると、ウクライナのアザロフ首相は1月20の記者会見の席で、ウクライナが関税同盟に加入する可能性があると受け取れるような発言をした。アザロフは、「我が国は、関税同盟がどのように機能しているかをきわめて詳細にフォローしており、関税同盟への参加の可能性を否定するものではない」と述べたとのことである。
一方、こちらのニュースによると、ウクライナ大統領府国際関係局のA.ホンチャルーク局長は2月6日の記者会見で、関税同盟に関し以下のように発言した。いわく、ウクライナが関税同盟に対し3+1の協力枠組みを提案した際に、関税同盟諸国側はその提案を公式に拒否はしなかった。そのような明確な外交的回答は、受け取っていない。また、(ウクライナ政府でロシアおよびCIS諸国との関係を担当する全権役のV.ムンチヤンが先週、ウクライナが関税同盟に入った場合には、その加盟国であるロシア・ベラルーシ・カザフスタンがウクライナがWTOに支払う19億ドル規模の補償金を負担すると発言したが)ウクライナが関税同盟に加入した場合に発生しうるWTOへの補償金の問題に関しても、関税同盟諸国から提案を受けているわけではない。そうした補償金のような問題に関しては、慎重であるべきだ。以上のように局長は発言した。
昨年暮れにロシアのWTO加盟が決定したが、こちらの記事によると、ロシア政府は国家調達の際に国内企業に優遇を適用するセクターを拡大し、WTO加盟による影響を緩和しているという。記事の要旨は以下のとおり。
ロシア経済発展省は、国家調達の際に国内企業を優遇する対象となるセクターのリストを、拡大することになった。WTO加盟による影響が特に大きい企業が、その対象になった。経済界は総じてこの決定を歓迎している。優遇措置に必要となる費用は、年間数百億ルーブルとなると見られる。
経済発展省が起草した省令には、国家調達の際にロシア企業を優遇する一連の措置が盛り込まれている。ナビウリナ大臣はプーチン首相に、これは国際競争力のないロシア企業を保護するために計画している保護措置の一例にすぎないと報告した。これにより、国家調達の際にロシア産品は契約価格の15%分優遇されることになるという。
国家調達で国内企業を優遇する最初の省令が出たのは2009年であり、その際には経済危機対策として広範なセクターに多様な優遇措置が適用された。その後セクターは縮小し、最後は機械、医薬品、繊維、畜産を残すのみとなった。旧省令は2011年一杯で効力を失い、2012年1月1日からは優遇措置がない状態が続いていたので、産業界はそれを待っていた。そして今回は、WTO加盟が決まったことを受け、再びそのリストを拡大し、建設・道路機械、製紙、養豚、砂糖なども含めることが決まったものである。産業・商業省はより広範なリストを主張していたが、経済発展省は最もセンシティブなセクターに絞ることに決めた。新しい省令は1ヵ月以内に発効する見通し。
WTOの枠内で、国家調達の際の国内・外国企業の平等を取り決めた協定もあるが、それはすべてのWTOにとって義務付けられたものではなく任意であり、ロシアは数年間をかけてこの協定に参加するかどうかを決めるとの立場を明らかにしている。
なお、2012年から共通経済空間協定が発効したことに伴い、ロシア企業だけでなくベラルーシ企業も同じ優遇措置の対象となる。カザフ企業については、2014年から対象になる予定である。
私は職業柄、ロシア・ウクライナ・ベラルーシ(以下、便宜的に「ロシア圏」と呼ばせてもらう)の地方都市を訪問する機会が多い。しかし、ロシア圏の地方巡りは、そんなに楽しいものじゃない。その主原因は、ご当地グルメというものが存在しないことではないかと思っている。
むろん、ロシア圏の国々にも良いレストランはあるし、たとえば「ここのボルシチは美味い!」と舌鼓を打ったりすることはある。しかし、ロシア圏どこのレストランに行ってもだいたい同じようなメニューになっており、地方ごとの特色とか名物というものが乏しいのだ。「キエフ風カツレツ」とか「モスクワ風サラダ」とか「シベリア風ペリメニ」とか、地名が付いている料理はあるものの、それらはロシア圏全域で定番化してしまっている。
日本では、だいたいどこの地方に行っても、郷土料理というものがあるものだろう。昨今のB級グルメ・ブームのように、新しい名物を作って街興しにつなげようという涙ぐましい努力も見られる。1軒の店や1人の料理人のレベルですら、どうにかして新しい名物を作れないかと切磋策増したりするのが、日本国民というものだろう。旅行者にとってみれば、別にそれが「創られた伝統」であろう一向に構わず、とにかく、せっかくどこかに出かけた以上は、その場所ならではのものを食べてみたいというのが人情だと思うのだ。その点、地理的にはやたら広大なのに、西のカリーニングラードから東のウラジオストクまで食文化がだいたい似たり寄ったりで、地方ごとの個性が乏しいロシア圏は、どうにもつまらない。
ただ、そんな私が忘れられないベラルーシの郷土料理が、一つだけある。「ポレシエ風カツレツ」という料理である。今回はそれについて語らせていただく。
私は1998年4月から2001年3月までベラルーシのミンスクに駐在したわけだが、当時のベラルーシはまだまだレストランなどは少なかったので、そもそもそんなに美味いものに出会う機会がなかった。ベラルーシに3年間住んで、「これは美味い!」と感動を覚えたのは、ただの2回だけである。
まず、西部の街ブレストを訪問した時、サンタ・インペクス社のA.モシェンスキー氏がベロヴェージ原生林に連れて行ってくれ、そこでやったバーベキューがめちゃめちゃ美味かった。ユネスコの世界自然遺産の中でバーベキューをやっていいのだろうかという疑問はあったが(笑)、さすがベラルーシで最も成功している食品会社の社長が選んだ食材だけあって、ソーセージや魚など、すべてが本当に美味かった。ただ、これは素晴らしい環境の中で、新鮮で優れた素材を食べたから美味しかったということであり、ご当地グルメというのとは違うだろう。
そして、もう一つ、私がベラルーシで出会った食べ物で忘れられないのが、ポレシエ風カツレツという料理なのである。2000年11月、同国南東部のゴメリ市を訪問した際に、現地のNGO活動家カシヤネンコ氏がレストランに連れて行ってくれたのだが、その時にこれを食した。「ポレシエ」というのはベラルーシ南部からウクライナ北部にかけて広がる領域を指す地名なのだが、ゴメリはその中でも東ポレシエというサブリージョンに属している。レストランで、そのポレシエの名を冠した料理を注文したところ、これがすこぶる美味だったものだから、強い印象に残ったというわけだ。ロシア圏の地方に旅行して、そのご当地の料理を食し、美味くて感動したというのは、後にも先にもこの時だけだった気がする。
で、ポレシエ風カツレツがどんな食べ物かというと、見た目は丸いメンチカツのような感じである。たぶん中身は鶏肉で、それにキノコなどをまぜてミンチ状にし、油で揚げてある。和食の鍋で出てくる鶏のつみれを揚げたような感じといったらいいかな。俗にいう「外はカリっと、中はフワフワ」というやつで、味がくどくないので、3つくらいペロリと食べられた。
ポレシエ風カツレツは、ゴメリのレストラン独自の創作料理とかではなく、一応は料理として確立されたものだと思う。というのも、ミンスクのスーパーマーケットの総菜売り場で、同じ名前で売っているのを見たことがあるからだ。ただ、買って食べてみたが、作り置きのなので、ゴメリで食べたそれの足元にも及ばなかった。
その後、自分の食べたあの料理はどんなものだったのだろうと、ネットで調べてみたりもしたのだけれど、ロシア語で「котлеты по-полесски」で入れてみても、ベラルーシ語で(やや自信がないが)「катлеты па-палеску」で入れてみても、まったくヒットしない。「ポレシエ風シュニッツェル(Шницель по-полесски)」なんていうのは見付かったけど、これは明らかに別物。
それで、昨年11月、11年振りにゴメリを訪問する機会があった。かくなる上は、かつて自分がポレシエ風カツレツを食した店を、もう一度訪ねてみるしかあるまい。そう考え、私はあやふやな記憶をたどって、11年前のレストランを探してみた。確かそこは、大通りに面した「ツーリスト」とかいう大型ホテル付属のレストランだったはずである。そして、地図を頼りに、ようやくそれらしきホテルを見付け、はやる気持ちを抑えながら、お目当てのレストランに向かって歩いて行ったところ…。
ショック! モップで床掃除をしていたおばちゃんに、「あなた、どこ行くの? レストランなら、閉鎖されましたよ」と言われた。え? そんな殺生な。まあ、店舗自体はそこにあり、最近まで営業していたような雰囲気で、一時的な改装工事とかなのかもしれないけど、とにかく「あのポレシエ風カツレツをもう一度食べられるかも」と楽しみにしていたので、ガックリ来た。
うーむ。こうなったら、「ミンスクの台所」とコラボして、復元を試みるか。
アップル社のiPadを中心にロシアでも盛り上がりを見せるタブレット端末市場だが、こちらの記事によると、現在ロシアではタブレット端末の輸入に5%の関税が課せられていながら、iPadのみ無関税になっているという。
記事によると、ロシアおよび関税同盟諸国にタブレット端末を輸入する際の関税率は5%だが、2月からアップル社のiPadのみ無関税で輸入できるようになった。連邦関税局の文書No.TF-162に、米アップル社が製造しiPadのブランドで供給されているタブレット・コンピュータは、通関申告の際に「計算機」として記載するとされており、それらを関税同盟の領域に輸入するのは無税である。2011年秋までは、輸入されるタブレットすべてが、そのように分類されていた。しかし、秋以降、iPadやその他の主要端末のようにGPSモジュールを搭載したタブレットは、遠隔操作される無線位置測定・ナビゲーション機器と分類されるようになり、それを輸入する法人には5%の関税が課せられるようになった。多くの関係者はこれを、ロシアが自国技術のGLONASSを推進するための措置と受け取った。しかし2月からは、他のタブレットが引き続き5%の関税を課せられる中で、iPadだけが無税という優遇的な取り扱いを受けることとなった。連邦関税局では今のところ本件の理由につきしかるべき説明をしていない。
こちらの記事によれば、メドヴェージェフとプーチンの両名はここ数日間、ソチの別荘に籠って、来たる新政権における内閣の顔触れにつき協議しているとのことである。この記事で、現地専門家が新内閣の構成がどういったものになるかについての予測を示しているので、その要旨を紹介していきたい。
まずは政治評論家V.スラチノフ氏は、次のようにコメント。ロシアでは内閣の組閣に透明なメカニズムはなく、高度に属人化されているのが特徴。これだけ多くの公約を行い、また社会が変化を望んでいることが明らかになった以上、内閣のかなりの部分が刷新されるのは不可避。ロシアでは、それほど人材が豊富というわけではないが、政治・行政エリートの人材層がある程度は存在しているので、そこから専門家がリクルートされることになろう。
政治評論家のS.マルコフ氏は、次のように見ている。新内閣の閣僚は、これまでの政権の内閣、大統領府、知事層、「統一ロシア」の人材から起用されることになる。たとえば、下院の統一ロシア会派のリーダーで副議長のA.ヴォロビヨフや、下院労働・社会委員会委員長のA.イサエフらの入閣がありうる。
前出のスラチノフによれば、内閣の顔触れはプーチン、メドヴェージェフ、関係派閥のロビー活動のある種の折衷で決まる。とりわけエネルギー相、通信相、産業相、天然資源相などは、派閥にとって大きな関心事となるポストであり、関係派閥や、あるいは大手企業から人が出される可能性もある。また、全ロシア国民戦線には学者、教師、医者の団体などが参加しているので、そこから専門家が入閣する可能性もある。プーチンはこれらの職業団体の支援に報いてやることが必要であり、保健相や教育相のポストはそれら専門家に与えられるかもしれない。
前出のマルコフは、全ロシア国民戦線の綱領を策定した社会・経済・政治研究所のN.フョードロフや、プーチン選対を率いたS.ゴヴォルーヒンの入閣の可能性もあると見る。
政治情報センターのA.ムーヒン所長の予想は以下のとおり。新内閣は双頭となり、主な柱はプーチン人脈、残りがメドヴェージェフ人脈となって、前者の方が多数派となる。新内閣には「拡大政府」形成作業グループのメンバーも入閣することになろう。たとえば、大統領顧問のM.アブィゾフ、大統領補佐官のA.ドヴォルコヴィチであり、元カリーニングラード州知事のG.ボースが地域開発を担当することも充分考えられる。
野党に一定の配慮をする可能性もある。スラチノフは、公正ロシアや自由民主党といった大統領選結果を承認した体制派野党には、何らかの褒章が与えられる可能性があり、連邦局や庁レベルのトップのポストを与えることはありうる、としている。
一方、マルコフは、大統領選で3位に入ったプロホロフの陣営を代表して、A.ポチノク元労働・社会発展相が政府入りする可能性があると見ている。ちなみに、プロホロフ自身はプーチンから何らかのポストを与えられても応じるつもりはないとしているが、プーチンはプロホロフが将来政府に必要となるかもしれないと発言している。いずれにしても、野党の人材を入閣させる場合は、一本釣りとなり、連立という形にはならないと、マルコフは強調する。
ロシア・ベラルーシ・カザフスタン3国の政府は3月11日付で、米国とEUによるベラルーシに対する経済制裁の動きを批判する共同声明を発表した。声明のテキストは、ロシア政府のこちらのサイトで読むことができる。その全文を訳出すると、以下のとおりである。
ベラルーシ共和国・カザフスタン共和国・ロシア連邦政府は、ベラルーシ共和国・カザフスタン共和国・ロシア連邦の国家元首によって合意された共通の歩調の精神に立って行動し、また米国および欧州連合が関税同盟/共通経済空間の加盟国の一国に対し経済制限措置を適用する可能性があることを再三表明していることを考慮して、経済的圧力または強制の措置を利用することは許容できないとの立場を確認する。
そのような措置は、通商における人為的障壁、関税同盟/共通経済空間の領域における経済主体の経済協力に根拠のない障害を作り出し、これらの国々の正当な経済安全保障上の利益を損ない、そのことはユーラシア大陸における生産的な互恵的協力、統合過程の発展に損害を与える危険をはらんでいる。それはまず何よりも庶民にとって否定的な影響を及ぼすことになる。
ベラルーシ共和国・カザフスタン共和国・ロシア連邦政府は、対等で敬意を持った対話のみが国際的不一致の調整を促すことができると強く確信し、そのような対話を阻むいかなる行動にも訴えないことを主張する。
ベラルーシ共和国政府を代表して M.V.ミャスニコヴィチ
カザフスタン共和国政府を代表して K.K.マシモフ
ロシア連邦政府を代表して V.V.プーチン
ロシアでは、12月の下院選から3月の大統領選の間の期間に、4地域の知事が解任された。こちらの記事が、それが大統領選でプーチン候補にとって有利に働いたということを伝えているので、要旨を整理しておく。
更迭された知事は、V.ポズガリョフ・ヴォログダ州知事、A.ブロフコ・ヴォルゴグラード州知事、I.ミハリチューク・アルハンゲリスク州知事、S.ダリキン沿海地方知事である。自らの希望で退任したということになっているが、クレムリンは彼らの仕事に満足していなかったことを示唆している。共通しているのは、下院選で与党「統一ロシア」の得票率が低かったことだが、低かったのはこれらの地域だけでなく、ヤロスラヴリ州、コストロマ州、オレンブルグ州、モスクワ州、モスクワ市、サンクトペテルブルグ市、ノヴォシビルスク州などでも同じく30%前後だった。
ダリキンの退任は大統領選まで1週間という異例のタイミングで生じた。地元では健康問題がその理由に挙げられた。しかし、その後、統一ロシアはダリキンの仕事に問題があった旨の声明を流している。V.イシャエフ極東管区大統領全権代表は、ダリキンの更迭が沿海地方におけるプーチンへのより高い支持率につながったと指摘した。選挙前の支持率はどこよりも悪かったが、本番では57%を得票した。ただし、地方全体では伸びたものの、ダリキンに近い人々の多い中心都市のウラジオストク市では43%だった。専門家のV.ブルラコフは、汚職の蔓延の元凶と考えられているダリキンを選挙直前に解任したことは、プーチンに有利に働いたが、それはせいぜいウラジオストクで態度を決めかねていた有権者がプーチン支持に回った程度で、10%以下だったと指摘した。別の専門家のYe.ミンチェンコは、沿海地方ではダリキンの不支持率が高かったので、知事更迭がイメージ効果を挙げた唯一の地域になった、と分析している。
ヴォログダ州のポズガリョフ知事は、1996年以来の古株だが、「州民の信頼がこれだけ低ければ、州を率いることはできない」とツイッターで言い残して、12月に辞任した。同氏の退陣で、プーチンの支持率が上がっただけでなく、下院選では公正ロシアに全国でも最高レベルの27.2%の票を与えた同州が、大統領選ではS.ミロノフをわずか6.6%しか支持しないという変動が生じた。新知事となったのは、元チェレポヴェツ市長のO.クフシンニコフだったが、同氏は選挙期間中に州内を回り、労組と対面したりした。前出のミンチェンコはヴォログダ州における2つの選挙の状況変化につき、ポズガリョフは自分の役目が長くないことを悟り手を抜いたが、クフシンニコフ新知事はセヴェルスターリの支援も取り付けており、大企業の動員が効いたと指摘している。
同じような効果は、1月にミハリチューク知事からI.オルロフ知事に代わったアルハンゲリスク州についても言える。ただし、当初は新知事もプーチン支援の独自の体制を築こうとしたものの、その後、中央の指令でそれに沿って動くようになったので、知事は選挙戦とは距離を置いたという。
これに対し、プーチン支援の活動に積極的に関与したのが、ブロフコに代わってヴォルゴグラード州知事に就任したS.ボジェノフであった。同州では、下院選の統一ロシア名簿をV.ズプコフ第一副首相が率いながら、政権批判票がきわめて多かった。しかし、2月2日に元アストラハン市長のボジェノフが知事に就任すると、状況が変わった。野党陣営は企業でプーチン支持が動員されていると批判していた。ボジェノフはプーチンの「技術的な」選対を非公式に率い、有権者グループと直接会っていたという。新知事は、2018年W杯に向けたインフラ建設により生活を改善することを唱えた(ヴォルゴグラードは開催地の一つ)。
結局、大統領選でプーチンの得票率が最も低かったのはモスクワ市、オリョール州、コストロマ州、カリーニングラード州などで、知事を代えた4地域はワースト・グループには入らなかった。クレムリンでは、これら地域ではもっと少なかった恐れがあり、交代は正解だった、としている。
こちらのニュースによると、3月9日にコペンハーゲンでEU外相の非公式会合が開かれ、その場でA.アジュバリス・リトアニア外相がベラルーシとロシア・カリーニングラード州における原発建設プロジェクトを「無責任」として批判したということである。ベラルーシの原発は対リトアニア国境から50kmの地点での建設が決まっており、カリーニングラード州もリトアニアと隣接していて、いずれの原発もロシアの技術で建設される。アジュバリス外相によれば、いずれも国際的な原子力安全のルール・標準・憲章に違反した無責任なプロジェクトである。両プロジェクトが環境に及ぼす影響につき、いまだにしかるべき回答がない。したがって、EUの対外政策にもとづいて、EU諸国が共通の立場を打ち出すことが肝要だと、外相は訴えた。
こちらのサイトで、D.アタバエフというエコノミストが、カザフスタン経済の発展の方向性を批判する見解を示しているので、その要旨を整理しておく。
アタバエフによると、1990年の時点ではGDPに占める鉱工業の比率は20.5%だったが、2010年にはそれが32.9%に拡大している。ただ、伸びているのは鉱物資源の採掘だけである。鉱工業の成長はソ連時代に築かれた固定資本によるものであり、それらはすでに旧式化し、革新的な新設備への移行は緩慢にしか進んでいない。
一方、1991年の時点ではGDPの29.5%を占めていた農業が、2010年には4.5%にすぎなくなっている。今日ではカザフは肉や野菜ですらも輸入に依存している。ソ連時代にはアルマトィは「リンゴの街」と呼ばれソ連全域で親しまれていたが、今日では地元アルマトィですら中国産のリンゴに駆逐されてしまった。家畜の飼養頭数も、農作物の播種面積も、縮小している。
こうした発展路線は、つまずきの原因になる可能性がある。20年前に直面していたのと同じ問題に、今日のカザフ経済も直面している。カザフは成長率の高い国だが、発展水準や国民の所得ではいまだに立ち遅れており、この不均衡はいずれカザフが危機に陥ることにつながる恐れがあり、それはあらゆる資源経済が陥るものである。政府は、多くのプログラムを実施しながら、鉱工業の発展、固定資本の更新をどう進めていくかについて、態度を決めかねているように思われる。農業においては、ますますロシアと中国をはじめとする外国市場に依存するようになっている。ロシアではWTO加盟が農業に及ぼす影響への不安が広がっているが、カザフではそのような議論すらない。以上がアタバエフの主張であった。
こちらの記事によると、ロシアでナノテク分野の投資を促進する国策会社「ロスナノ」が、米国のベンチャーファンド「Domain Associates」と共同で7.6億ドルを出資し、ロシア・米国両国における新薬の開発と最新の医療機器生産を促進していくことになった。この目的のためにロシアに合弁企業が設立され、ロスナノ側がRusnanomedinvestを通じて49%を出資、Domain Associates側はDomain Russia Investmentsを通じて51%を出資する。プロジェクトのマネジメントを担当するのは、AFK「システマ」の元社長L.メラメダ氏の「チーム・ドライブ」社である。ロスナノとDomain Associatesによる1年半の交渉が実り、2月末に協定が結ばれ、同ファンドの保有する米国のバイオ企業20社による開発事業に出資をしていくことになった。
医薬品生産の技術がロシア側に移転される。そのなかにはジェネリック医薬品は含まれていない。70%は開発が最終段階にあり、すなわち第2、第3の臨床試験段階にある。医薬品はロシアで特許・登録手続きがとられ、市場に投入される。また、それらを生産するためにロシアでの工場建設も計画されており、その投資額は1.9億ドルとなる。
ロスナノのA.マルィシェフ副社長によると、同社医薬品分野のプロジェクトはこれが初めてではなく、すでに25プロジェクトに320億ルーブルを投資している。これまではすべて少数株主だったが、今回はDomainとほぼ対等の出資をすることになった。また、プロジェクトのマネジメント会社を起用するのはこれが初めてとなる、とのことである。
モルドバでは、国民の直接投票ではなく、議会が大統領を選出することになっている。それで、こちらのニュースによると、議会の多数派および無所属議員らは3月7日に、大統領の選出を3月16日に行うことを決定したということである。
自由民主党会派のV.ストレレツ会長は、共産主義者党が議会の審議をボイコットし続け、政治危機の克服に協力しようとしていないのは残念だと述べた。民主党会派のD.ジヤコフ会長は、交渉は数ヵ月も続いたが、ようやくフィニッシュを迎えたようだ、新しい大統領は国民にも各政治勢力にも受け入れられる人物でなければならないため交渉が難航した時もあったが、それが特定の党派に属さない人物であることにより、状況は健全化するだろうと述べた。一方、自由党会派のI.ハディルケ会長は、喜ぶのはまだ早計で、実際に大統領が選ばれてからにしようと述べた。無会派のI.ドドン議員は、自分たちのグループは「欧州統合連盟(AEI)」の議員たちとともに投票に参加し、政治危機からの脱却を目指すと述べた。
こちらのニュースによると、このほど『フォーブス』誌が発表した世界の富豪ランキングに、カザフスタンから3名がランク入りした。なお、『フォーブス』誌のランキングのオリジナルはこちらで閲覧することができる。具体的には、以下の3名である。
314位:ウラジーミル・キム:資産35億ドル:51歳:カザフムィス社社長
418位:アリジャン・イブラギモフ:資産28億ドル:58歳:ユーラシア天然資源(ENRC)社共同オーナー
854位:ブラト・ウテムラトフ:資産15億ドル:54歳:元大統領官房長で政商
帝国書院から、『図説地理資料 世界の諸地域NOW 2012』というものが刊行された。高校生用の地理の副読本。この資料に、「市場経済の導入と経済成長」と題する私の小文が載っている。まあ、250字程度のコラムなので、ごくごく簡略な解説にすぎないけど、一応ご報告まで。
3月4日投票のロシア大統領選挙の最終的な開票結果が、3月8日付のロシア政府機関紙『ロシア新聞』等に掲載され、これで選挙結果が最終的に確定した。各候補の得票数と得票率は、下表のとおり。
どうでもいいが、『ロシア新聞』のサイトに出ているプーチンの得票数、間違っており、1ケタ少なくなっている。首が飛ばなきゃいいが。
プーチン大統領の就任式は、5月7日に行われる。
毎月恒例、雑誌締め切りの修羅場は、昨日何とか乗り切った。本日はオフなので、ロシア・ウクライナ・ベラルーシ情勢のフォローはお休みとさせていただく。
締切前なのでTV観戦を見送り録画してあったUEFAチャンピオンズリーズ(CL)のベンフィカVSゼニト・サンクトペテルブルグを、ようやく観ることができた。初めてCLの決勝トーナメントに進出したゼニトだったが、ホーム&アウェー2試合合計でベンフィカが上回り、ベスト16で姿を消すこととなった。私としては、昨年秋のシャフタール・ドネツィクとのアウェー戦で見せてくれた質の高い攻撃に魅了され、ロシアのチームとしてはゼニトが最もお気に入りになっていただけに、個人的にも残念である。
ゼニトは、ホームのファーストレグでは終了間際に劇的な決勝ゴールを挙げ3対2で勝利したものの、相手にアウェーゴール2つを許しての1点差勝利は、感覚としては引き分けに近いというか、むしろ敵の方が有利という感じもなきにしもあらずである。ホームの初戦で、ゼニトは正GKのマラフェエフが怪我で出場できず、代役GKの不安定な守備で2点を奪われたことが、後々重くのしかかることになる。
迎えたリスボンでのアウェー戦。前半は、お互いに前線から激しくプレッシャーをかけ合うも、それぞれ守備の意識も高く、決定的シーンはそれほど多くなかった。しかし、前半ロスタイムに、ベンフィカが相手DF陣の一瞬の隙を突いて先制、2試合合計で優位に立った。
とはいえ、ゼニトが同点に追い付けば次のラウンドに勝ち抜けられるわけで、後半は完全にベンフィカが引いてゼニトが攻めるという形勢となった。しかし、ほとんど有効な攻撃が組み立てられず、シュートは数えるほど。前日の国内のCSKA戦では躍動していたFWケルジャコフも、この試合では鳴りを潜め、実況が名前を呼ぶ機会も少なかった。いつもは敵守備陣をかき回すFWダニは怪我で離脱中、一方先日レンタルで戦列に加わったFWアルシャヴィンは出場できないということで(未確認だが、今季すでにアーセナルでCLの試合に出ていたはずなので、冬の市場で移籍した場合に別のチームでCLには出れないはず)、前線で決定的な仕事ができる駒が不足している感は否めなかった。結局、ゼニトは最後までゴールを割れず、後半ロスタイムには駄目押しとなる2失点目も食らって、万事休すとなった。
しかし、スカパー!の後藤さんの解説を聞いて驚いたけど、ポルトガル随一の人気を誇るベンフィカというチームには(少なくともこの試合の出場メンバーには)、ポルトガル人プレーヤーが1人もいないんだね。それで、ゼニトにはポルトガル人DFのブルーノ・アルヴェスがいて、途中出場した彼がボールを持つたびに、スタジアムから強烈なブーイングが浴びせられるという……。まあ、日本人みたいに、海外に移籍した日本人選手を、日本人であるというだけの理由で、自分たちの代表のように応援するのも異常だと思うけど、このリスボンでの試合で唯一ピッチに立ったポルトガル人プレーヤーを徹底的にいじめ抜くポルトガルの観衆というのも、私には理解しがたい。まあ、そのせいか、ブルーノ・アルヴェスは2~3本パスミスをしており、ブーイングが多少なりともベンフィカの勝利に結び付いたのも事実だが。
そんなわけで、ゼニト初のCL決勝トーナメントの冒険は終わった。近年躍進著しいゼニトだけれど、ヨーロッパレベルで見れば、まだまだビッグクラブというよりもミドルクラブくらいの位置付けなのかな。
今日は雑誌の締切で、本当にやばい日。本日中に生きて帰ることが目標なので、ブログはほぼお休みにする。小ネタだけ。
先日、比較的うちから近所の荒川区東尾久界隈を歩いていたら、不意に大学のキャンパスがあって驚いた。「首都大学東京」と書かれており、そういう大学ができるという話は聞いていたが、実際にできたということは認識していなかったし。そうか、いまは東京都立大学というのは、もうないのか。
しかし、調べてみたら、この首都大学というのは、キャンパスが八王子、日野、荒川区東尾久、中央区晴海と、いずれも東京の周縁部で、しかもそれぞれがかなり離れているんだね。大学としての一体感はどうなのかな。少なくとも荒川キャンパスはあまり便利そうな場所ではなかったな。真新しい施設だったけど、ここは新設なのかな?