ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

20120510tagil

 地味ながら、個人的に見逃せないと思う出来事が報じられているので、それについて触れておく。こちらのニュースによれば、本日10日、ロシアのプーチン大統領はスヴェルドロフスク州ニジニタギルを訪問し、これが大統領復帰後初の地方訪問となるということである。プーチンは「ウラル鉄道車両工場」を訪れる予定で、そこで国防産業に関する会議に参加するという。この工場は、鉄道車両と銘打ってはいるものの、むしろ戦車などの軍需生産で名高い。

 実は個人的に、2012年ロシア大統領選の本質を読み解く象徴的な街が、ニジニタギルではないかと考えていた。今回、新大統領の初の地方訪問がニジニタギルになるという報道に接して、「やはりそういう流れだったか」という思いを強くした。上掲の記事の中でも触れられているが、反政府デモ華やかなりし昨年12月、ウラル鉄道車両工場の労働者がいち早くプーチン支持運動を立ち上げ、彼らはモスクワの反政府デモを蹴散らすといった勇ましい提案まで示していた。つまり、ニジニタギルという街は、プーチンが軍需産業をはじめとする鉱工業にテコ入れをし、その見返りに工業都市/企業城下町が組織的にプーチンを支持するという、そのもたれ合いの関係が最も端的に表れている街と言えるのではないかと思うのだ。

 なお、ニジニタギルに関しては、以前「煮えたぎるニジニタギル(もちろん駄洒落に決まってます)」というエッセイを書いたことがあるので、よかったらご笑覧いただきたい。

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 本日は、恐怖の月報締切日。それに、もう一つ大きな懸案が重なり、無事生還できるか、微妙なところである。まあ、月報に関しては、今回は連休中も家でずっと準備作業をしていたので、比較的スムーズに乗り切れるのではないかと思っている。

 そんなわけで、ブログ/HPには大した記事は書けないのだが、昨日お伝えしたプーチンの一連の大統領令に関する補足情報を、軽くお伝えしておく。一連の大統領令の中に、「対外政策路線の実現について」というものがあった。この中でプーチンは、パートナーとなる世界の主要国・地域ごとに、ロシアがどのような対外政策を進めるべきか、指針を示している。その中から、アジア太平洋地域に関する記述を、以下のとおり抄訳して紹介しておく。簡略ながら、日本への言及もある。

 アジア・太平洋地域においては、ロシアは、自国の東シベリア・極東諸地域の社会・経済発展の加速を促す目的で、地域統合プロセスへの参加を拡大する。

 アジア・太平洋地域において、集団的・非同盟的原則、国際法の標準と平等で不可分の安全保障の原則にもとづいた新たな安全保障・協力体制の形成に向け、イニシアティブをとる。

 東アジア・サミット、ロシア・ASEAN対話パートナーシップの開催に向け、さらに提案を示していく。

 中国との平等で信頼的なパートナーシップと戦略的協力関係、インド・ベトナムとの戦略的パートナーシップを深化させ、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドおよびその他のアジア・太平洋地域の重要国との互恵的な協力を発展させる。

 以上のとおり。日本は、一応は言及されているものの、中国はもちろん、インド・ベトナムよりも位置付けが一段低くなっている。また、ロシアを中心とする関税同盟がアジア・太平洋諸国とFTAを締結するという話もしばらく前から出始めているものの、この大統領令ではそうした具体的な措置は挙げられていない。

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20120508putin

 そんなわけで、昨日5月7日、モスクワのクレムリンにおいて、ウラジーミル・プーチン氏が大統領就任式を挙行した。4年間のブランクののち、3期目の政権に入ったことになる。ロシアの大統領の任期は、従来4年間だったものが、今回から6年間となるので、2018年までの長丁場である。

 さて、就任式の模様や、街頭の反政府デモなどに関しては、日本のニュースでも情報が流れているので、割愛させていただく。私は引き続き、経済を中心とした政策路線の問題にフォーカスして、新プーチン体制の動向をフォローしていきたい。

 注目されるのは、大統領に就任した当日の7日、プーチンが早速一連の大統領令に署名し、新政権の各政策分野に関する指針を示していることである。プーチンは選挙キャンペーン期間中に自らの選挙綱領に相当する7本の論文を新聞紙上で発表し、ロシアの政官界ではそれを受けてプーチン公約を政策として実現しようとする動きが早くから見られていたわけたが、晴れて大統領に正式に就任したことで、プーチンが改めて自らのマニフェスト実現に向け政権に号令をかけた形である。

 手始めに、5月7日にどんな大統領令が出されたかを、以下のとおり整理しておく。 重要な大統領令の中身については、追って報告したい。

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 ご存じの方も多いと思うが、Google URL Shortenerというサービスがある。インターネットのアドレス(URL)が長すぎて不便だという思いは誰でもしたことがあるはずだが、このグーグルのショートナーを使うと、あら不思議、URLが短縮されて表示されるという優れもののツールである。たとえば、私のホームページのURLを短縮すると、http://goo.gl/P3bUCになる。

 これってどういうテクノロジーになっているのか、不思議に思ってたんだけど、要するに短縮のリクエストが来るたびにグーグルのサーバーが自動的に新しいURLを発行してるんだろうね、たぶん。その後は、閲覧者がまずグーグルのサーバーにアクセスして、そこから元のURLに飛ぶという。最初は、元のURLと短縮URLの間に法則的な対応関係でもあるのかと思ったけど、そういうんじゃないみたい。

 というのも、今般Google URL Shortenerのインターフェイスが若干変わり、短縮を行うたびに、画像で表示されたデフォルメされた英数字を入力しなければならないようになった。まあ、デフォルメ文字を入力させて、ちゃんと人間が入力していますよと証明する方式はブログのコメント欄なんかでもよくあるけれど、Google URL Shortenerの文字列はガチで解読不能なくらい極端にデフォルメされていて、クリアするのに苦労する。いずれにしても、こういうハードルを設けたということは、やはりリクエストされるたびに短縮URLを発行していて、機械を使ったいたずらで大量にリクエストが来ることを防ぐためなのだろう。

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 少々マニアックな話題だが、日本にとっては無視できない動きなので、書き留めておく。現在ロシアで創設が検討されている極東・東シベリア開発公社(名称、組織形態とも未定)に関し、こちらのニュースが、そのトップ人事についての観測を伝えている。これによれば、現在、国家コーポレーション「ロステフノロギー」の第一副社長を務めているアレクセイ・アリョーシン氏が、開発公社の総裁候補として浮上しているということのようである。本日7日、プーチンが大統領就任式を行い、メドヴェージェフを首相候補として議会に提案する予定になっているが、その際に与党「統一ロシア」は、首相承認問題と併せて、一連の国家コーポレーションの問題も討議する方向であるという。メドヴェージェフが民法のなかに国家コーポレーションという概念を維持する意向なのかという点が、新たに創設されようとしている極東・東シベリア開発公社との問題とも関連して、問われる見通しだ。A.ドヴォルコヴィチ大統領補佐官は今週、メドヴェージェフは国家の経済への影響を低減させるため国家コーポレーションを改革すると表明しているが、抵抗に遭ってその作業が難航していることを認めていた。

 なお、こちらのサイトによれば、アレクセイ・アリョーシン氏は1959年生まれ。1981年ケメロヴォ国立大学法学部卒。1996~1999年、国家単一企業「ゴスザグランソープストヴェンナスチ」第一副社長。1999~2000年、連邦国家単一企業「プロムエクスポルト」第一副社長。2000~2007年、連邦国家単一企業「ロスアバロンエクスポルト」第一副社長。2010年以降、国家コーポレーション「ロステフノロギー」第一副社長。軍需畑を歩んできた人物と言えそうである。

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 こちらのニュースが、本年秋に実施されるウクライナの国会「最高会議」の選挙のスケジュール等について報じているので、骨子を整理しておく。

 これによれば、最高会議選挙の投票は、10月28日(日)に実施される。小選挙区225、比例代表制225の並立制で、計450名の議員を選出する。候補者の立候補は7月30日から8月9日まで。小選挙区は党の擁立でも無所属でもどちらでも構わない。候補者の登録手続きは8月20日に完了する。党および候補者は、登録された次の日から選挙運動を開始できる。10月28日の投票後、中央選挙管理委員会は選挙の公式結果を11月12日までに確定させ、遅くとも11月17日までにそれを議会および政府の機関紙に掲載する。

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 ウクライナ・ポーランド共催のサッカーのヨーロッパ選手権、ユーロ2012がいよいよ間近に迫ってきた。しかし、例のティモシェンコ事件が尾を引いて、どうも西欧の政治家たちがウクライナでのユーロをボイコットするという動きになっているらしい。また、ウクライナでは4月27日に東部の都市ドニプロペトロウシクで爆弾テロ事件があり、同市はユーロの開催都市ではないものの、これもウクライナでのユーロ開催を疑問視する声に繋がっているようである。むろん、現実的には今さら大会が中止になったり、西欧諸国の代表チームが出場を取りやめたりといったことはまず考えられないが、大会に関連してEUや西欧諸国の首脳がウクライナを訪問することは見合わせるという流れになっているようである。こちらのニュースによれば、バローゾ欧州委員会委員長をはじめとるすEU幹部は、誰一人としてユーロに関連した行事に出席するためウクライナを訪問する意向はないとのことである。

 ティモシェンコ事件についての評価は別として、ウクライナにとってのせっかくの晴れ舞台なのに、残念なことになってきた。

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 ロシアの経済政策において焦点の一つとなるモノゴーラド(企業城下町)問題につき、こちらのサイトに興味深いコラムが掲載されているので、その要旨を以下のとおり整理しておく。イルクーツク州に人口1.4万人のバイカリスクという街があり、そこにバイカリスク紙パルプ・コンビナートという工場があって、その工場をめぐる動きがモチーフとなっている。執筆者は政治評論家のV.ヴイジュトヴィチ氏。

 バイカリスク紙パルプ・コンビナートの職員らは、プーチンに公開書簡を送った。コンビナートの旧オーナー、バゾヴィ・エレメント社のO.デリパスカは、2年前にコンビナートの給料遅配問題を解決するため、1.5億ルーブルを会社に貸し付けていたが、デリパスカがその返還を求めていることに関し職員らは、デリパスカは2009年に会社を見捨てバイカリスク市を破局寸前に追い込んだ、もしも融資返済を求められたらバイカリスクは再び破局的状況となる、国はコンビナートを放置することはないとする貴殿(プーチン)の発言は心強いがデリパスカはそれを理解していないようだ、本件は手動方式で解決してほしいと、書簡の中で訴えている。つまり、2009年にレニングラード州ピカリョヴォで、やはりデリパスカの所有する城下町企業3社が停止した際に、プーチンが直々に介入して瞬く間に給与遅配問題を解決した、その奇跡の再現を求めているのである。

 ただ、バイカリスクの労働者は、落胆することになるかもしれない。プーチン大統領の3期目においては、政権は「手動統治」に訴えるのはなるべく少なくし、非常事態の際にとどめようと努めている。新政府の課題は、制度的な統治を、なるべく最大限に効果的にすることである。

 バイカリスクのようなモノゴーラドはロシアに450以上存在し、現代発展研究所によればそのうち少なくとも100都市の状況が企業閉鎖、失業増大、賃金遅配などで予断を許さない。ただ、政府も、州知事も、企業を操業停止から救い、すべての失業者に職を提供できるわけではないし、経営者の社会的責任を問うのも酷である。経済は客観的な法則に従って動くものであり、特定の個人によって左右されるのではない。知事の解任をちらつかせたところで、既存の中核企業に取って代わるような投資家を連れてくることは、できるはずがない。いかに経営者が社会的責任に忠実でも、市場経済に反するような決定を下すことは、1~2度なら可能かもしれないが、常に行うのは無理である。

 ここで問わなければならないのは、ピカリョヴォやバイカリスクのように、不穏な企業城下町が出てくるたびに、政治の責任、経営者の責任といった議論がすぐに始まることである。その一方で、いわゆる庶民の自らの境遇に対する責任ということが問われることは、まずない。ちなみに、ピカリョヴォの際に、レヴァダ・センターが世論調査を行ったところ、ピカリョヴォ問題が大規模な抗議に繋がった原因に関し、28%が経営者の無責任が原因、19%が経済危機という客観情勢が原因、13%がロシア政府に責任があると答えていた。

 バイカリスクの職員たちは、プーチンに直訴する前に、労働者としての利益を擁護するために、自ら何かをしたのだろうか? 独立労組を作るとか、操業縮小・賃金カット・大量解雇といった事態の際に自らの権利を保証するような書面上・法的な約束をオーナーから取り付けるとか、自らの力で何かを試みたのだろうか? 残念ながら、彼らにはそれは望めず、彼らは単なる庇護の対象なのである。彼らのイメージでは、国家と市民の関係は、パートナーというよりも、家父長主義的なものにすぎないのだ。

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20120505moon

 今夜は「スーパームーン」と言って、通常の満月より大きく明るい満月が見える日らしい。普段あんまり月なんかじっくり見ないけど、ちょっと自分のカメラの性能を試してみようと思って、月の写真を撮ってみた。しかし、駄目だなあ。明るすぎて、真っ白になってしまい、月の模様が全然確認できない。露出を一番低くして、撮った後にフォトショップで目一杯補正しても、こんな感じにしかならない。

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 ロシアの政治工学センターのA.マカルキン第一副所長が5月3日付の『エジェドネーヴヌィ・ジュルナール』に寄せた論考が、こちらのサイトに掲載されているので、重要部分だけ以下のとおり抄訳しておく。

 メドヴェージェフは非力ではあったが、自分の力の範囲内で、国の優先的な発展課題を見直そうと努力した。また、それなしでは脱工業化的な発展が不可能であるダイナミックな社会層に対する政権側の態度を、変えようとした。「スコルコヴォ」はすでに笑い話の対象になっているが、こうしたイノベーションセンターを作るという構想自体は有意義なものだった(すでに入居者のいるシベリアのハイテクセンターの一つを指定した方が賢明だったというのは、別の議論である)。国際的な経験を部分的に考慮した反腐敗法もいくつか採択された。及び腰ではあったが、国家が経済に君臨することを拒絶しようという試みもなされた。

 しかし、現在、すべてが反転している。シベリアおよび極東開発のための新たな国家コーポレーションが創設されようとしており、これがその他の国営主体よりも効率的になるとは思えない。I.セーチンをはじめとする有力者たちが、反民営化の強固な同盟を組んでいる。メドヴェージェフは新たな現実への適応を余儀なくされ、自らを保守派と宣言し、プーチンと一心同体であるということを誇示しているが、そうしなければ首相のポストは得られないからである。しかし、タンデム体制が垂直的な権力構造に取って代わられようとしている現在、こうした首相の値打ちは大幅に下がることになる。むろん、今後のロシア政治が反動一色ということにはならないだろうが、それが近代化路線になることはなく、むしろ「一歩前進、一歩後退」といった形で進んでいくと思われ、現代社会において効果的な発展を遂げるためには甚だ不充分である。

 しかも、プーチンは工業社会の人間である。プーチンにとっては、たとえ軍が購入を拒否するような時代遅れの製品を生産していても、労働者は尊い勤労者なのである。逆に、ウェブデザイナーや銀行のアナリストなどのことは、理解できない。プーチンは、伝統的な支持層からの支持を確保するために、ソ連的な時代遅れの手法に、西側のポピュリズムを折衷した方法に訴えた(ソ連共産党の幹部はビアホールに出かけるわけには行かなかったので)。ただ、公務員や労働者を動員した大集会は全国民的支持の効果を確かに発揮したものの、それは一過性のもので、経済次第で変わっていく。政権が支持層の家父長主義的な要求に応えられないと、政権への忠誠は急激に低下していく。カオスへの恐怖にもとづく保守的な動員は、選挙を勝つのには役立っても、国の現代的な発展を可能にしてくれるわけではない。これがロシア社会に立ちふさがる最大の問題であり、政権がそれへの適切な答えを出すのはきわめて困難だろう。

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 本ブログ/HPでも既報のとおり、与党「統一ロシア」は、プーチンが大統領キャンペーン中に発表した一連の選挙綱領論文を政策として実現していくため、「ロードマップ」を策定したと伝えられている。こちらのサイトに、これに関する批判的な論評が掲載されているので、以下のとおり抄訳しておく。

 4月初頭、統一ロシアが、国家発展の「ロードマップ」を提案したことが明らかになった。これは、統一ロシアがプーチンの選挙綱領論文をもとに取りまとめたもので、160項目から成る。同党所属の議員たちは、それらすべてが法制化されると言明している。しかし、それらは漠然とした形で示されていることが多く(「住宅のない軍人の問題を解決する」といった具合)、誰がどのようにそれを実現するのかが不明確である。

 統一ロシアと、全ロシア国民戦線は、大統領選後、政権ポストの配分をめぐって、激しい競争を繰り広げている。そのため、両エリートグループとも、プーチンへの忠誠を競い合い、自分たちこそが有能であると誇示しようとしている。全ロシア国民戦線は統一ロシアの攻勢に押され、連敗を重ねている。

 プーチン公約の法制化のイニシアティブは、まだ構想にすぎず、きっちりとした法案になっているわけではない。したがって、政治改革と同じく、プーチンのイニシアティブの中身は、大きく変わる可能性がある。

 一例を挙げれば、年金改革がある。国民の高齢化を受け、政府としては年金の支払いを縮小する必要があるが、社会の反発を招かないような形でそれをやらなければならない。年金受給開始年齢の段階的引き上げ、仕事を持つ者への年金給付廃止、年金行政の変更など、いくつかの選択肢がある。プーチンが選挙公約で社会保障に重点を置いていたことを考えれば、この問題は最大の焦点の一つである。

 もう一つ、焦点となるのが、民族政策である。残念ながら、ロードマップの起草者たちは、新たな省を設けるという、総論的な措置しか打ち出していない。こうした行政的な措置だけで、国の南部や中央部をはじめとしてロシアの諸民族が直面しているイデオロギー的、人口的等々の問題を解決することはできない。教育、社会的上昇、雇用などの問題も避けて通れない。クレムリンはしばしば、ソ連型の民族政策の復活、すなわち民族の混淆や、諸民族の友好といったプロパガンダに傾きがちである。民族問題は、地域閥や腐敗といった問題とも関連しているだけに、厄介である。

 さらにもう一つの焦点は、経済・税制である。具体的には民営化、贅沢税の導入などであり、これらは経済危機の第二派が懸念されることを考えれば国にとって安全装置となりうるが、政権側が大企業の社会的責任を問おうとするたびに彼らがゴネることを考えれば、実施可能とは思えない。

 これらや、その他の問題に関する具体的な法案の作成には、時間と、有能な専門家の参加を要する。ロシアの経済・社会改革は機が熟しており、熟れすぎてさえいるが、これまでそれを担当してきた人々が今後も担うことになれば、その効果はこれまでと同じである。

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 ロシアでは、新体制発足を目前に控え、連邦および地域レベルで様々な人事の動きがあるが、今般O.チルクノフ・ペルミ地方知事が解任され、V.バサルギン地域発展相がペルミ地方知事に転身することになった。そして、地域発展省が4月28日に、バサルギン大臣が在任していた3年半の間の省の業績を総括するプレスリリースを出したということである。ただ、地域発展省のウェブサイトを眺めてみても、当該の情報は見付からないので、ノーヴォスチ通信のこちらの記事にもとづいて、その骨子をまとめておく。

 これによれば、3年半の間に、8つの連邦管区すべてについて発展戦略が策定され、その枠内で優先的な投資プロジェクト7兆ルーブル分が制定され、新たな雇用が30万創出された。大多数の地域および地方自治体の地域計画文書が採択された。在外同法の帰還事業では、2011年の1年間だけで、過去4年に匹敵する数の帰還が実現した。地域歳出の効率が向上し、予算間関係が改善された。モノゴーラド(企業城下町)の経済多角化が、初めて個別の国家優先政策として制定され、今日ではモノゴーラドは明確な複合的投資計画を有し、50のモノゴーラドがその実施のために財政資金を投入されている。2009年以降、地域発展省の起草した約1,000の文書が採択されており、そのなかには50以上の連邦法、数十の大統領令、約200の政府決定、約250の政府指令が含まれる。

 このほかにも住宅・公営事業、建設業など、様々な成果が挙げられている。これらを見ると、あまりにも守備範囲が広く、地域発展省の分割という観測が浮上しているのも、うなずける気がする。

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 このブログ/HPでもすでに報告したように、ロシア新政権の下で、極東・東シベリア開発のための公社的な組織が新たに設置されようとしている。それに関し、『コメルサント・ジェーニギ』誌のこちらの記事が、きわめて辛辣な論評を寄せているので、その要旨を以下のとおり整理しておく。

 過去2週間ほど、ロシアの経済政策路線が、加速度的に、喜劇的な様相を深めている。政府内で検討されているシベリア・極東開発国営企業を創設する法案に関しては、現体制およびプーチン個人に忠誠を保ち続けているA.クドリン前副首相・蔵相ですら、「経済発展省が他省庁との調整のために送付した法案を自分の目で見るまでは、信じられなかった」と述べている。

 常識で考えれば分かることだ。この法案により、ロシアの領土の60%が連邦法の枠外とされ、行政府の管轄が及ばなくなるのである。新たな国営企業とその各プロジェクトは、前例のない税制優遇、潤沢な財政投入を受ける。それのみならず、地下資源採掘ライセンスが、入札抜きで、「優先的な投資プロジェクト」に交付されることになるのである。土地利用および建設に関する既存の規則および制限は、新国営企業のプロジェクトには、実質的に課せられなくなる。

 新国営企業に対する優遇措置を具体的に列挙することは、現時点では意味はない。法案は正式に公表されておらず、各省庁から出てくる情報にも齟齬があるからである。重要なのは、東インド会社、「ダリストロイ」(スターリン時代の極北建設総局)、イワン雷帝時代の直轄地のごとき代物が、21世紀の今日形成されようとしているという事実である。ただ、特に驚くには値しない。政権は、正常なビジネス環境を創出できず、それゆえに「手動統治」に傾き、とりわけ国家コーポレーションの制度を作り上げた。国家コーポレーションは理論上は市場が解決できない諸問題を解決するはずであったが、実際には天下りの官僚OBに巨額の給料を払い、公開的な手続きを迂回して財政資金を配分する都合の良い手段となった。

 これらの開発諸制度から派生し、特に地域レベルで盛んになっているのが、産業およびイノベーションのテクノパークである。それが成功しているところでは、その主たる目的が、投資家・生産者が連邦のばかげた行政的障壁を克服できるようにしてあげる点にあるということを、地元行政ははっきりと明言している。しかし、多くの場合テクノパークもまやかしで、流動性のない不動産を購入する手段になってしまっていることが多い。

 すでにスコルコヴォのプロジェクトが愚行の象徴となっているが、今や極東・東シベリア開発というより大きなスケールで、それが繰り返されようとしている。しかも、極東そのものにとっても、幸運や繁栄はもたらさない。

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 4月27日にメドヴェージェフ現大統領/次期首相が与党「統一ロシア」の幹部らと面談し、同党の党首の役割を引き受けることを表明するとともに、自分は保守派であると発言したということで、話題になっている。こちらのサイトに掲載された論評の要旨を、以下のとおり紹介する。

 統一ロシアが下院選でしくじり、プーチンが大統領選で党から明確に距離を置いたことにより、党内には焦燥感が広がった。同党は自立した政治勢力であったことはこれまで一度もなく、上からのシグナルを待っていたが、シグナルはついぞ来なかった。プーチンに代わってメドヴェージェフが党首になりそうだという雲行きになると、統一ロシアとメドヴェージェフは水と油であり、党内で大きな変化が起きてしまうことは必至だといったことが語られた。おそらく、メドヴェージェフが党幹部および主要活動家らと面談した際も、党側にはそうした不安感があったに違いないが、面談後には安心して帰っただろう。この中でメドヴェージェフは、党首に就任するだけでなく、党活動に積極的に参加すると表明し、党側を安心させた。それのみならず、メドヴェージェフは不意に、自分は一度もリベラルであったことはなく、自分は保守派だとまで発言した。さらに、自分はこれまで長らく党と一体であったのであり、統一ロシアは末永く主導的な政治勢力であり続けると述べた。これはつまり、本格的な党改革はないことを意味する。

 党のイデオロギーについてメドヴェージェフは、アモルフでは駄目だが、なるべく多くの人々にとって分かりやすいものでなければならない、磁石のようになるべく多くの人々を引き付けるものでなければならない、これは社会的国家の価値観だが決して市場経済や民営化とは矛盾しない、党内に様々な潮流があることは望ましくもあるが分裂は駄目である、ゆえに保守主義、社会的国家、中道がこれからも党の顔となる、誰が党首になってもそれは変わらない、我が党はどこかのリベラル派が望もうと泡沫のセクトになるわけにはいかない、などと述べた。ただし、同時にメドヴェージェフは、イデオロギーは自己目的ではなく、国家的課題を解決するための手段にすぎないと強調し、党内で我々は90%は立場が一致しているので合意することは常に可能であると述べた。

 このような文脈に照らすと、メドヴェージェフが「統一ロシアにはいわゆるリベラルも、いわゆる社会民主主義者もおり、そのことは喜ばしい。なぜなら我々は皆、保守主義者だからだ」と述べたことの意味が理解できる。つまりメドヴェージェフにとってそれは、常に政権党でい続けるという意味なのだ。彼が、常に議会の多数派を目指すと言っているのも、そのためである。もっとも、ロシアの現状でそれが可能かどうかは、別問題だが。

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20120503senkaku

 先日、中国で買ってきた地図帳を眺めていると、興味深いことに、地図上では尖閣諸島を明確に中国の国境の内側に入れていない。台湾はもちろん国境内にしているし、南沙諸島なんかもちゃっかりすべて自国領に入れているが、尖閣諸島の部分には明確な国境線を引いておらず、地図によってこれが中国領であるという強力なアピールはしていない。よく知らないから、滅多なことは言えないけど、もしかしたら尖閣諸島は中国にとって「ダメモト」的な主張なのかな?

 あと、中国の地図では日本海は「日本海」でOKなのね。

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 3~4月は1年間取り組んできた調査・研究の成果をアウトプットする時期なので、このところ新規のニュースのフォローがなかなか行き届いていなかったのだけれど、仕事的にはアウトプット作業も一段落したので、またロシア・ウクライナ・ベラルーシ情勢の日常的なフォローを強化していきたい。ちょうど、今は同諸国も連休シーズンで、新聞も休刊の日があったりするので、このタイミングを利用し、ちょっと遡ってこの間の動きなどを取り上げてみたい。

 4月24日、ロシアで国家評議会の拡大会議が開催され、退任するメドヴェージェフ大統領が自らの4年間の成果を総括する演説を行った。そのテキストはこちらで読むことができる。『コメルサント』紙のこちらの記事が、メドヴェージェフ演説の経済部分に関し論評しているので、その要旨を以下のとおり整理しておく。

 演説においてメドヴェージェフ大統領は、経済の成果を総括するとともに、5つの優先的な原則について語り、これらの原則を来たるメドヴェージェフ内閣の指針に据えようとしていることが見て取れた。演説は出席者向けにかなり簡略化された内容で、予算のルール、年金改革、資源部門への負担、国営銀行といった政府部内で現在論議となっている複雑な諸問題には触れなかった。自らが5月7日に首相候補として推挙されようとしていることについての直接的な言及はなかったものの、それをほのめかした上で、自らが率いることになる新政府の新たな課題を挙げた。それらの課題が野心的であることは、メドヴェージェフがF.ルーズベルト米大統領に言及したり、詩人V.ジューコフスキーが皇太子時代のアレクサンドル3世に示した助言などを引用していることからも、窺い知ることができる。

 プーチンと同様に、メドヴェージェフも、自らの2008~2012年の治世の成果として、経済危機の第一波によるカオスを押し留め、経済を安定させたことを挙げた。そして、メドヴェージェフは2012年以降の政府の7つの目標として、以下の点を挙げた。これらは主として、プーチンが選挙論文で提案したことと重なり、それを若干精緻化したものとなっている。すなわち、2017年には所得が最低生計費を下回っている世帯の比率が10%以下になることや、2,500万の新たな雇用を創出するという課題に加え失業率を5%以下とするという要請が加わったことである。新たな目標としては、ロシアの家庭の大多数は15年に一度はより良い住宅に引っ越せる可能性を持てるようにしなければならないという点や、ロシアの大学のうち5校は世界の大学ランキングトップ100に入らなければいけないという点、またロシアは生活の全分野でのエレクトロニクス技術導入度において世界のベスト10に入るべきだという点があった。

 そして、新政府の指針となる5つの原則が示された。具体的には、1.企業家としての才能を重要な社会的価値として認めること、2.国家の経済への介入は最小限で透明なものとすること、3.司法機関は対象の所有形態にかかわりなく分け隔てない態度をとること、4.規制のあり方の質を国際的なレベルにすること、5.社会がゲームのルールの形成に参加すること、である。メドヴェージェフは、「国家行政の手動的な手法に代わって、透明で、分かりやすく、公平なルールが基盤となる」と発言しているが、ちなみにプーチン内閣がこれら5原則から逸脱したことについては、やはり危機の局面ゆえだったとされ、それゆえに経済の成果も達成されたと説明された。国家管理のモデルを手動から自動に変更することも、経済が安定する状況下でのみ可能となるが、来たるプーチン大統領がメドヴェージェフ新首相にそれを保証できないことは明らかである。

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 プーチン首相は大統領選挙キャンペーン中に自らの選挙綱領に相当する7本の論文を発表したわけだが、4月26日付コメルサント紙のこちらの記事が、その公約を実現することに向けた動きを伝えているので、記事の骨子を以下のとおりまとめておく。

 3月に何回か会議が開かれた結果、プーチンが新聞論文の中で示した公約を実現するための大統領令の草案を起草するよう、プーチン首相は政府に指示を出した。プーチンの指示は、かなり不明確であるものの、広範であり、実質的に2012年一杯の政府の仕事をあらかじめ決めてしまうようなものである。A.ヴァイノ官房長官の4月19日付の書簡によれば、大統領令の草案は政府内部で4月30日までに起草することになっている。首相がすでに出している指示のなかで名指しされている省庁は、4月25日までに経済発展省にプーチン論文を実現するための提案を提出しなければならない。ただし、当該の大統領令に署名するのがメドヴェージェフ現大統領なのか、プーチン次期大統領なのかは不明である。各省庁向けの書簡には、プーチンの7本の論文だけでなく、2012年第1四半期のプーチンの諸演説、4月24日の国家評議会におけるメドヴェージェフ演説、2020年までのロシアのイノベーション発展戦略、国家プログラムの諸草案にも依拠するよう、奨励されている。プーチンは今週、新政府の「ロードマップ(複数)」について発表したが、その際に念頭に置いていたのは戦略的イニシアティブ庁の構想だけでなく、自らの新聞論文に沿って政府部内で非公式に制定されたその他の5つのロードマップも含んでいた。現在のところプーチンの指示は急ではあるものの緩いもので、各省庁はほとんどの場合、2012年の5月から12月にかけて数十の様々な問題についての見解を示すよう求められている。大統領令で示される指示の多くは、メドヴェージェフ新内閣が処理することになり、少なくとも2012年一杯は政府はその仕事で手一杯だろう。「新聞大統領令」が政府にとっての行動計画となり、首相が独自性を発揮する余地はほとんど残らない。

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20120502gyuudon

 先日購入したiPadを、引き続き色々と試しているところ。新たに、「ロケスマ」というアプリをインストールした。これは、グーグルの地図に、様々なテーマの情報を重ねて表示できるという面白いアプリ。たとえば「牛丼マップ」というのを地図に重ねてみると、写真のようになる。

 牛丼屋の数の多さに驚かされるが、さすがに広尾、麻布、白金といった高級住宅街にはまったく店舗がないようで、牛丼マップが完全な空白地帯になっている。

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20120501volga

 この連休は、私としては珍しく、世間様と同じような調子でのんびりと過ごしている。この1年くらい取り組んできた様々な仕事に、3~4月にようやく区切りをつけ、ほっとしているところ。なので、本ブログ/HPでロシア情勢に関する本格的な記事を書いたりするモードには、ちょっとなれない。その点、ご勘弁。

 昨日は、久々に自転車に乗って、家から近い荒川区とか台東区のあたりをブラブラしてみた。そしたら、ちょっと変わった店を見付けた。「露西亜風洋菓子『ヴォルガ』」という洋菓子店で、喫茶店も兼ねているようだった。

 私はスイーツに疎いので、ロシア風の洋菓子というものが本当に存在するのか、そしてこの店で売られているものがそれを忠実に再現しているのかというのは、さっぱり分からない。ちょっと気になったが、入店して試してみるというほどではなかった。

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20120428sanpo

 一昨日、調布市にある味の素スタジアムに出かけ、JリーグのFC東京VS清水エスパルスを観戦してきた。そのついでに、おとといのブログにも書いたとおり、郊外移転後初めて、東京外国語大学に立ち寄ってみた。天気も良かったので、生来の散歩好きが頭をもたげ、外語から、中央線の三鷹駅まで、歩いてみることにした。調布というのは、都心からものすごく離れているようなイメージをもっていたのだが、地図を見てみると、調布市と三鷹市はお隣であり、三鷹くらいまでなら歩けそうだなという気がして、歩いてみた。なお、正確に言うと外語の住所は調布市ではなく府中市のようだ。

 せっかく4GのiPadを購入したので、iPadのグーグルマップで時折現在地を確認しながら散歩をした。グーグルマップによれば、外語~三鷹駅は最短で6.3km、所要時間1時間18分とされている。しかし、私はちょっとぶらぶらしながら歩いたので、2時間半くらいかかった。実際に歩いてみた感覚から言うと、いくら早足で歩いても、1時間18分は無理だと思う。ただ、外語も、味スタも、私が想像していたよりはそれほど郊外ではなかった。

 しかし、自分がいつも生活圏としている東京の下町と比べると、こちらの方はさすがに緑が多く、環境が良い。途中で、近藤勇の生家跡なんてのがあった(写真)。

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 ネットで「文体診断ロゴーン」というのが話題になっていたので、私も試してみることにした。これは、このサイトに自分の書いた文章を入力すると、自分の文体にどんな特徴があり、またどんな著名人の文体に似ているのかが、瞬時に判定できるというもの。ただし、私の場合には結構色んなタイプの文章を書いており、それによって文体も使い分けている。そこで、1.先日月報に書いたレポート「ロシア大統領選と新プーチン体制」、2.先日HPのマンスリーエッセイに書いた「ロシア研究者の見た北京」、3.サッカー関係のエッセイという3つのテキストを試してみた。

 その結果、1に関しては、浅田次郎の文章に最も良く似ているという結果が出た。2はなぜか、大宅壮一似だという。そして、3は再び浅田次郎似という結果だった。しかし、恥ずかしい話、私は大宅壮一も浅田次郎もまったく読んだことがないので、自分ではよく分からない。特徴としては、全般的に、読みづらいが、表現力が豊かと指摘された。

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c08276f0.jpg 味の素スタジアムにサッカー観戦に来たついでに、東京外国語大学に来てみた。外語が調布に移転してからは、初めての母校訪問。とはいえ、見知らぬ土地に立つ小綺麗なキャンパスには、何の感慨も湧かない。

 以前本ブログ/HPでも触れたことがあるが、今年の初め頃、ロシアのショイグ非常事態相が極東・東シベリア開発のために新たに公社を創設するという提案を示す動きがあった。この提案自体が大胆である上に、「なぜ非常事態相が極東・東シベリア開発を語るのか?」ということでも、注目を集めた。ただ、考えてみれば、ショイグ自身が東シベリアのトゥヴァ共和国出身ということもあって、ロシア東部開発には応分の関心を抱いていたのかもしれない。そして、大統領府および内閣の人事が大幅に動こうとしている状況下で、自らの新たな役職としてそうした公社の総裁ということを思い描き、提案したといったところか。ただし、その後ショイグはモスクワ州の知事に就任することとなり、彼自身が極東・東シベリア開発公社の総裁に収まる可能性はなくなったわけである。

 とはいえ、当該の公社を新設するという案自体は、なくなったわけではない。それは、プーチンが4月11日の政府活動報告で、概要以下のように述べたことからも確認できる。「むろん、極東・東シベリアの開発には特別な関心を払う。これは、最重要な地政学的課題だ。シベリア・極東の諸地域の経済成長率が、ロシア全体のそれよりも高い状態を、少なくとも10~15年は続けなければならない。当然、極東・東シベリアの諸地域の人口が安定的に増大するようにする必要がある。現在我々は、極東・東シベリア開発のための諸プロジェクトの調整と管理に当たる特別な組織の創設を検討しており、その決定は近日中に下される。」

 本件に関しては、開発策の具体的な中身や財源につき議論が分かれているようだが、プーチンが公の場でここまで明確に述べている以上は、公社が創設されること自体は間違いないのだろう。

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 今季のUEFAチャンピオンズリーグでは、バルセロナとレアル・マドリッドというスペイン2強の力が突出しており、その両チームによる決勝を予想・期待する声というのが世界のサッカーファンの大勢であった。決勝トーナメントの早い段階で両者が当たってしまわないよう、UEFAが抽選会で細工をする、といったことも、まことしやかに語られた。そして、ベスト4の顔触れが決まり、CL決勝でのクラシコへの期待は、いやがうえにも高まった。国内リーグで精彩を欠くチェルシーやバイエルン・ミュンヘンは、スペイン2強の敵ではないと思われた。しかし、昨日未明のバルサに続き、本日未明の試合ではレアル・マドリッドまでもが敗退してしまったのだから、サッカーは分からないものである。

 2レグのレアル・マドリッドVSバイエルン・ミュンヘンの試合展開も、なかなか興味深いものだった。1レグは2対1でホームのバイエルンが勝利し、迎えたこの試合。マドリが序盤から凄い勢いで敵に圧力をかけ、あっという間に2点を奪う。しかし、バイエルンも意外にチャンスはあり、PKを奪って前半のうちに1点を返した。これで、2試合合計でまったくのタイに。しかし、そこからゲームはまったく動かなくなった。まあ、選手が疲労したというのもあったが、アウェーチームが慎重なのは当然として、ホーム&アウェー方式のあやで、仮にバイエルンが1点とるとマドリが2点返さなければならなくなるため、マドリとしても無理に前がかりにもできず、両者にらみ合いといった感じで、延長も含め120分が推移していったわけである。で、PK戦は確かに両キーパーは凄かったが、巨大な重圧からか、名手たちによるキックミス合戦のようになり、この試合序盤で浮足立っていたような感じだったバイエルンのGKノイアーが最後にヒーローになって、死闘に決着をつけた。

 いや~、準決勝1レグの2試合は半ば居眠りをするような感じで観た私だったけど、さすがに2レグの2試合は凄かった。

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 4月12日のエントリーで触れたが、ロシアのプーチン首相は4月11日、連邦議会向けに前年の政府活動報告を行った。その演説のなかに、以下のようなくだりがある。

 開発のための諸制度は、数千という企業にとっての本物のビジネス・エレベーターの役割を果たさなければならない。早くも2012年から、「ロシア輸出信用保険庁」が、ハイテク製品を世界市場を輸出しようとする中小企業に支援を提供することになる。2020年までにはハイテク輸出を少なくとも2倍に伸ばし、GDPに占めるハイテク・知的部門の比率を1.5倍に伸ばさなければならない。

 2013年には、国が出資している企業のプログラムだけでも、イノベーションに対する内需が1.5兆ルーブルにまで高まる。国は、技術開発、死活的に重要なセクターの支援に、直接的に資金を拠出する。それはまず何よりも、工作機械、発動機、新素材、医薬品、航空・造船業である。

 ……肝心なのは、イノベーションをビジネスにとって得になるようにすることである。我々は、ロシア企業と世界の主要メーカーとのハイテク連合を引き続き支援する。特に重視するのは、フルサイクル生産の形成、とりわけ重要な開発センターの設置、まさにロシア領で技術開発が行われることである。外国投資を誘致する際に我々が主たる条件とするものの一つは、現地化、60~70%までの設備がロシア領内で生産されることに加え、技術センター、設計および技術開発センターが設置されることである。工業発展をリードする区画、地域・生産コンプレクスの形成を奨励する。向こう数年間で、機械生産、医薬品からナノテク、エレクトロニクスまで、20~30のこうした拠点的なクラスターが誕生するだろう。

 近代化の資源となるものの一つが、国防発注である。ご存じのとおり、陸・海軍の再装備、軍需産業の近代化のために、向こう10年間で約23兆ルーブルを割り当てる。我が国の軍需および民需企業、研究センターおよび主要大学が、大口を発注を受けることになる。間違いが生じないように、政府調達のルールを厳格化する。3年、5年、長い場合には7年といった長期的な国防契約の慣行へと移行する。

 以上のとおり、プーチンは発言している。ここには、プーチンが現在推進しようとしている経済政策の基本的な発想がよく表れている。すなわち、主として国防発注を通じて、ロシアのハイテク産業を振興し、もってロシア経済を高度化・多角化して行こうという姿勢である。言わば、プーチン流の軍事ケインズ主義と言えよう。

 それに関連して、こちらのサイトに出ている、プーチン報告に関する論評が興味深い。上掲のように演説の中でプーチンは工作機械、発動機、新素材、医薬品、航空・造船業を「死活的に重要なセクター」の代表例として挙げているわけだが、この論評によれば、これは現政権が過去数年掲げてきた戦略重要分野と微妙に異なり、宇宙と原子力が抜け落ちている、というのである。

 確かに、メドヴェージェフ大統領の近代化政策において重要5分野とされていたのは、①エネルギー効率・省エネ、②核技術、③宇宙技術(とりわけテレコム、ナビゲーション分野)、④医療技術および医薬品、⑤ICTであり、これがイノベーションセンター「スコルコヴォ」の対象分野にもなっていた。大統領と首相が入れ替わろうとするこのタイミングで、プーチンが若干ニュアンスの異なる発言を示したことは、新政権下で方針転換がなされようとしている兆候とも受け取れ、とりわけ軍需部門へのより一層のシフトを示唆しているのかもしれない。

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 五輪サッカー男子の組み合わせが決まり、日本はスペイン、ホンジュラス、モロッコと対戦。個人的には、ベラルーシと同組になって、「特需」が起きることを期待していたのだが…。私のブログやHPの閲覧数が急増するとか、突然本がバカ売れするとか(笑)。残念無念。orz

 ただし、決勝トーナメントの組み合わせを見ると、1回戦で、日本の属すD組の1位と、ベラルーシの属すC組の2位、またD組2位とC組1位がぶつかることになっている。D組ではスペイン、C組ではブラジルという本命がいるため、日本またはベラルーシのいずれかがグループステージを1位で突破するというシナリオはハードルが高そうだが、強豪国はグループステージでは力を温存することもあるため、決勝トーナメントで日本VSベラルーシが実現することも、まったくありえないわけではないだろう。まあ、仮に当たったとしても、対戦が決まってから試合までに数日しかないだろうから、「予習」のために私の文章を読んでもらえるチャンスは、あまり大きくないかもしれないが、そんなことは別として、実現を祈りたいものだ。

 さて、ベラルーシのサッカーと言えば、日本時間本日未明のチャンピオンズリーグ準決勝2レグ、バルサVSチェルシーを観て、昨年のCLグループステージのBATEボリソフVSバルサ戦を思い出してしまった。BATEが人類サッカー史上最も極端と思えるほど引いて守った試合だったが、結局はバルサの攻撃の圧力に抗しきれず、完敗した試合だった。チェルシーの戦い方も同じような感じではあったものの、やはり守備の強固さと、ボールを奪った時の一発の迫力が、BATEとチェルシーではまったく違っていた、ということかな。

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 仕事上の大きな懸案がようやく一つ片付き、ちょっとぐったりしているところ。

 最近のエンタメ界の話題と言えば、NHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が低迷しているというものがある。でも、私、観てますけどね、平清盛。確かに、ものすごく良いという感じはないけど、かと言ってそんなに酷いとも思えない。個人的に、昨年の「江〜姫たちの戦国〜」はあまりに酷くて3~4回観てやめたが、今年は今のところ続いているので、「歴史的低視聴率」が話題になったりするのは、ちょっと意外。「江」とか「篤姫」とか「義経」(笑)とか、ああいう学芸会っぽい大河に比べれば、ずっと良い。

 「平清盛」については、「画面が汚い」ということがしばしば話題になる。そもそもテクノロジー的に言うと、「平清盛」は、「竜馬伝」や(これは大河じゃないが)「坂の上の雲」と同系統のフォーマット。私は最初「竜馬伝」であの画面を観た時に、フィルムテイストにするためにわざと画質を落としているのかと勘違いしたのだが、逆にハイビジョンを越えた超高精細な撮影法で(名称忘れた)、陰影豊かな情感に溢れた描写が可能になるすごい代物らしい。私はてっきり、今後大河はすべてこれで行くのかと思ったのだが、「江」で普通のハイビジョンに戻ってしまい、おバカ風の演技と相まって、同作の安っぽさを増幅していた。よって、「平清盛」が竜馬テイストに戻ったことは、私としては歓迎である。で、「平清盛」では、実は平安時代の空気感はこんな感じなんですよということを表現するために、穀物の粉のようなものをあえて空中に漂わせているらしく、登場人部の身なりもあえて薄汚れた感じにして、リアリティを追求しているようだ。それが、一部で不評となっているらしいのだが、別にいいではないか。

 まあ、ストーリー的に言えば、一般の視聴者は派手な源平合戦を観たいはずで、現在のところそれに至る伏線を描いており、その伏線の部分が冗漫すぎるという感じは、確かに否めないかな。

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 本日中に仕上げなければいけない重要な仕事があり、ブログは自粛気味で。

 もしもスマホで本ブログを定期的にチェックしてくださっている方がいらっしゃったら、単にブックマークするだけではなく、ホーム画面にそのアイコンを設定することもできるのをご存知ですか? まあ、私などが言うまでもないとは思うけれど、一応説明しておくと、たとえば、iPhoneのSafariでウェブサイトを閲覧していると、下の方に矢印のマークが表示されるので、それをタップすると、「ホーム画面に追加」というのを選べるので、それによって本ブログのアイコンをホーム画面に置くことができ、ストレートに本ブログに進むことができるわけです。しかも、ライブドアのブログで良いのは、ライブドアの羽根のマークのかわいいロゴがホーム画面上に表示されること。もちろん、名前は自分で自由につけることができます。写真は私のiPod Touchのホーム画面の一部ですが、私は自分のブログを「RUB Smart」という名前でホーム画面に表示しています(ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪のスマホ版という意味で)。まあ、私のブログがホーム画面に置くほど有益なものとも思えませんが、一応ご案内まで。

 ところが、今般iPadを使い始めて気が付いたのですが、iPadのホーム画面に私のブログを追加しようとしたところ、ライブドアのかわいいロゴではなく、自分のブログの画面をミニチュア化した見栄えの良くないアイコンが表示されてしまいます。同じiOSなのに、不思議なことです。

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20120422cyber

 今頃になって、1ヵ月前の北京出張の資料を整理しているのだが、そのなかから新聞の切り抜きが出てきた。現地で読んだ英字新聞(2012年3月20日付チャイナ・デイリー)で、目に留まった記事を破いて取っておいたもの。この記事によれば、2011年に中国に対する外国からのサイバーアタックが増大し、しかもその国別のソースを辿ると日本が最大で、全体の22.8%が日本からのアタックだという。2番目が米国の20.4%、3番目が韓国の7.1%だった。日頃、我々は逆の構図、すなわち中国人が日本の官公庁や企業のサイトを攻撃するという構図で捉えているので、ドキっとした。

 ただし、私の感覚から言うと、日本人が殊更に中国のサイトを攻撃することがそんなに多いとは思えない。日本からの攻撃と言っても、中国人が日本のネットワークを経由して自国のサイトを攻撃しているのかもしれない。また、中国の側が日本に攻撃を仕掛けたという情報が広がり、日本人が報復を試みる、といったこともあるかもしれない。まあ、いずれにしても、立場が変われば見方も変わるというか、中国側がこうした面で日本を加害者として見ているというのは、まったく予想外だった。

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20120422toujisha

 iPadで読もうと思って、私としては初めて、電子書籍を購入してみた。佐々木俊尚氏の『「当事者」の時代』という本。もともとは光文社新書から900円とかで出ていたものなのだが、電子版は税込で490円になっている。こちらのページから購入でき、PDFとePub版をダウンロードできるようになっている。

 私自身、佐々木氏よりは2ケタくらいスケールが劣るとはいえ、情報発信や出版にかかわる者の端くれとして、この本の中身に加えて、電子書籍という媒体と、そのビジネスモデルには一応の関心がある。佐々木氏はこの本のメッセージがより多くの読者に届くよう、採算度外視で、書籍版の半額近くでの電子配信に踏み切ったようだ。まだ読み始めたばかりだが、著者がそうまでして訴えたかったことは何なのか、そのメッセージをしかと受け止めたい。

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