これは以前簡単に触れたことがある情報なのだが、ロシア『エクスペルト』誌のこちらの記事によると、ロシアでは民間の大手資本が地方の空港を買収して近代化する動きが進んでいる。その結果、従来モスクワに集中していたハブ機能が、地方のいくつかの拠点空港にシフトする可能性があるということである。やや長くなるが、記事の要旨を以下のとおりまとめておく。
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ロシアでは近年、大手資本が地方空港の買収を進めており、3つの系列が誕生している。第1に、V.ヴェクセルベルグの「レノヴァ」があり、同財閥は2012年年内までに空港ビジネスを「地域空港」社の管理に束ねる予定である。第2に、O.デリパスカの財閥「バザヴイ・エレメント」の傘下にある「バズエル・アエロ」がある。第3に、R.トロツェンコ氏のAEONコーポレーションの傘下にある「ノヴァポルト」がある。これらの3社合計で、15の地方空港を支配しており、エカテリンブルグ・コリツォヴォ、ノヴォシビルスク・トルマチョヴォ、クラスノダルなど、そのうちのいくつかは近いうちに地方ハブ空港の座を占めようとしている。
地方空港のうち、空港ターミナルは上掲の民間資本が押さえているわけだが、滑走路をはじめとする飛行場部分は引き続き100%国家所有となっている。したがって、これらの地方空港の今後の展望は、民間資本のみならず、国の対応にもかかってくるわけだが、国はおそらく有望な民間投資家が参入している空港の飛行場改修を優先することになるだろう。
現在のところロシアの地方空港間を結ぶ役割を果たしているのは、ドモジェドヴォ、シェレメチェヴォ、ヴヌコヴォから成る「モスクワ空港ハブ」である。しかし、これは利用者にとってだけでなく、国民経済全体にとっても不合理である。たとえば、現時点では、カザンから300kmしか離れていないサマラに移動するのに、1,000km以上離れたモスクワまで飛んで乗り継ぎ、折り返してこなければならない。今後、地方の拠点空港を近代化し、国の補助金によって奨励をすることで、地方ハブ空港と近隣の諸都市を結ぶ路線が増え、またモスクワを介さない地方ハブ空港間の路線も開設されると期待される。2012年には初めて、4つの連邦管区内のローカル路線に、連邦政府は10億ルーブルの補助金を拠出した。こうした試みを続けることで、複数の地方ハブ空港から成る全国的な空港ネットワークが機能するようになり、モスクワの空港への依存度を減らした形で地域と地域を結ぶことが可能となる。
地方空港を束ねる持ち株会社が誕生するようになったのは2007年からで、その頃から空港ターミナルは単に空港の一施設というより独自の投資対象として見なされるようになった。ロシアに存在する空港のうち、約200~300箇所は利用客が少ないため、独自のビジネスも、それに付随する補助金も期待できず、投資家の関心の対象とはならない。投資家が興味を示すのは、利用客が年間50万人に達しているか、あるいはその展望があるところで、そうした空港は数十箇所である。
前出の3社はそれぞれ地域的な勢力圏を形成している。レノヴァは、エカテリンブルグ・コリツォヴォ、ニジニノヴゴロド・ストリギノ、サマラ・クルモチを傘下に収めており、主に国土の中央部に関心を示している。バズエル・アエロは、ソチ、クラスノダル、アナパ、ゲレンジク、エイスクという南部に進出している。ノヴァポルトは、ノヴォシビルスク・トルマチョヴォ、バルナウル、トムスク、チタ、チェリャビンスク・バランジノ、アストラハン、ヴォルゴグラード・グムラクと、主に国土の東部を勢力圏としている。
各グループは空港を投資プログラムの義務を負うことなく取得したケースもあるが、いずれにせよ空港の改修・近代化には各グループが取り組んでいる。向こう3年間でレノヴァはニジニノヴゴロド・ストリギノに20億ルーブル、サマラ・クルモチに50億ルーブルを投資する意向である。エカテリンブルグ・コリツォヴォは、すでにある程度の整備が進んでいるが、今後4年間でさらに50億ルーブルを投資する。バズエル・アエロも、クラスノダル、アナパ、ゲレンジクの空港ターミナルを刷新する。ノヴァポルトの投資計画はあまり明らかになっていないが、トルマチョヴォの2つのターミナルを連結する施設や、ヴォルゴグラードのターミナル改修などの計画が伝えられている。
各社の投資は、国による飛行場の近代化が伴わなければ、効果は薄い。民間の投資家が自己資金で飛行場の全面的な改修を実施するのは不可能であり、年間利用者が少なくとも1,000万人規模でないと割に合わない。最新鋭機が発着できる全長2.5km、幅50mの滑走路の建設と関連設備の設置には50億~60億ルーブルを要し、完全に新しい空港を作るのには100億~200億ルーブルがかかる。ただ、最近では3~4年前に比べて官民の投資計画の調整が上手くなされており、国は民間投資家の参入している空港の飛行場改修プロジェクトを優先しているという。
民間投資家の参入した空港は、過去3年間で利用客数が1.5倍に増えた。ヨーロッパでは年間1~3%も伸びれば上々と言われているので、それに比べていかに急成長しているかが分かる。3グループ合計の利用客数は、2011年に1,620万人に上った。ロシアの国民1人当たりの飛行機利用回数が年回0.45回にとどまっており、ヨーロッパの2~3回、米国の4回と比べてはるかに低いことを考えれば、ますますその成長は特筆される。
飛行機の利用頻度は、自動車や鉄道といった他の交通手段による移動も視野に入れて分析しなければならない。たとえば、レノヴァがニジニノヴゴロド・ストリギノを買収する半年前に、モスクワ~ニジニノヴゴロドを結ぶ高速鉄道が開通するという出来事があった。人々には選択肢が生まれたわけであり、こうした競争は人々の移動性を高め有益であると、レノヴァでの幹部はコメントしている。
飛行機の利用率を高める主たる要因は、航空券の値段である。各空港は、航空会社や旅行会社と協力して値引きを実現し、利用者を増やし、地方ハブ空港と周辺諸都市との路線を増加させるよう努めている。そうすることで、地方の拠点空港のハブ空港としてのステータスが高まる。利用者には乗り換えを強いることになるが、ハブ空港の稼働率と地方ハブ路線の搭乗率が上がることで、航空券の値下がりが期待できるという。
従来はモスクワの空港がハブ路線をほぼ独占し、ロシアの各空港を出発する便の75%はモスクワ行きだった。この状況を変えるためには、大都市に地方ハブ空港を形成し、より完全な全国航空ネットワークを築き上げることが必要である。モスクワとペテルブルグ以外でそうした役割を果たしうるのは、エカテリンブルグ、クラスノヤルスク、ノヴォシビルスク、ハバロフスク、サマラ、ロストフ、クラスノダル、カリーニングラード、イルクーツク、ウラジオストク、ウファである。一方、バズエルの幹部は、地方ハブは最大でも5箇所で充分だろうと指摘する。
現時点では、空港がトランジット客への補助を支払っている。コリツォヴォ空港では同空港を本拠地とするウラル航空が補助を支払っている。また、レノヴァは試験的に、航空機4機を購入し、ペルミ、チュメニ、オレンブルグ、マグニトゴルスク、サマラ、カザンなどから地方ハブ空港へと乗客を運び、それを基幹路線に接続するという試みを始めている。レノヴァでは、現在我々の空港のトランジットの比率は5%ほどにすぎないが、地方ハブ空港と呼べるようになるためには、それを少なくとも30%まで高める必要があるとしている。レノヴァは地方路線への補助のプログラムに年間1.5億ルーブルを支出し、その需要を実証して、国からの補助金獲得に繋げる意向である。一方、国は2012年に当該の目的に10億ルーブルを計上しており、まだ不充分ではあるが、第一歩は踏み出した。
今後に関しては、ノヴァポルトでは、ロシアで民営化対象として投資家の興味を引く空港は、あと10箇所も残っていないとしており、今後5年間で2~3箇所を買収する意向。レノヴァは、買収する価値があるのはせいぜい4箇所だとしており、具体的にはペルミ・ボリショエサヴィノ、イルクーツク、ロストフを挙げている。このほか、ヴォロネジ、スィクティフカル、ミネラリヌィエヴォディも有望と考えられる。ウファとカザンの空港は、自前でインフラを更新したが、それでも投資家を募る予定だ。