ユーラシアリサーチ 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心に旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 上掲の動画は、ウクライナの公共放送「ススピーリネ(Суспільне)」ドニプロ支局による報道番組で、2023年6月のカホフカ水力発電所ダム破壊によって消滅したカホフカ貯水池を、戦後に再建すべきか、それとも自然環境の回復が進む「大ルーフ(Великий Луг)」を保全すべきかという論争を取り上げている。主な内容を以下のとおり整理しておく。

 2023年6月6日、ロシア軍によるものと疑われるカホフカ水力発電所のダム破壊で、巨大なカホフカ貯水池が消滅した。それから3年以上が経過した2026年現在、かつての貯水池の底には若い森林や草地が広がり、歴史的な湿地帯「大ルーフ」の自然環境が急速に回復しつつある。こうした中、9月19日、ドニプロペトロウシク州議会議長のミコラ・ルカシュークが、戦後の貯水池再建を支持する意見をSNSに投稿し、論争が再燃した。ルカシュークは、大ルーフが歴史やコサックの伝承、環境保護プロジェクトの中では魅力的な存在であっても、現代の地域経済を支えているのは都市、工場、農業であると指摘する。ニコポリ地区とクリヴィーリフ地区だけでも100万人以上が暮らしており、安定した水源がなければ農業生産、雇用、地方財政が脅かされるとして、戦後復興計画に貯水池の再建を盛り込むよう求めた。

 ダム破壊当時、ニコポリ地区の行政責任者を務めていたイェウヘン・イェウトゥシェンコも再建を支持する。同氏によると、かつてニコポリ地区では約2万7,000haの農地が貯水池の水を利用して灌漑されていた。しかし、ダム破壊後は灌漑ができなくなり、収穫量が減少した。その結果、農家の収入や納税額が減少し、雇用削減にもつながっている。また、地域の多くの住民は家庭菜園、果樹栽培、ベリー類の生産などによって収入を得ていたが、これらの活動も水不足によって打撃を受けた。 工業部門でも、水不足が企業活動を制約している。ロシア軍による砲撃が続く中、水の確保が困難になったことで、企業が他地域に移転する危険性も高まっている。さらに、貯水池は重要な水上輸送路でもあった。現在もドニプロ川の本来の河道は残っているものの、幅が狭く、従来のような貨物輸送には適していない。道路や鉄道への負担が増しているが、これらの輸送手段だけでは従来の水運貨物量を代替できない。イェウトゥシェンコは、現在の河道では地域の発展に必要な水量を確保できないと主張する。

 ニコポリ地区で30年以上農業に従事するヴォロディミル・イェウトゥシェンコは、ダム破壊後、干ばつによって収穫量が数分の一に減少したと訴える。同地区はもともと気候が不安定な地域であるが、貯水池が消滅してから水不足が一層深刻になったという。同氏は、巨大な貯水池が存在していた頃には周辺の水分環境にも影響を与えていたと考えている。現在は周辺地域に雨が降っても、ニコポリ地区だけ降水が極端に少ないことがある。作物の生育に必要な月20~30mmの降水量が確保できず、3~55mm程度しか降らないこともあるという。節水技術としての点滴灌漑についても、水の使用効率を改善することはできても、水そのものを生み出すことはできないと指摘する。地域の地下水は灌漑に適しておらず、淡水を安定的に確保する必要がある。

 これに対し、環境学者のヴァディム・マニュークは、貯水池の再建に強く反対する。大ルーフは、カホフカ貯水池の建設以前に存在していたドニプロ川流域の広大な湿地帯であり、春の増水によって水が流入し、夏にも湿地に水が残るという自然の循環を持っていた。この仕組みが地域の気候を調整し、豊かな生物多様性を支えていた。現在、かつての貯水池の底では、草地、ヤナギを中心とする若い森林、水域などが急速に回復している。野生動物の回復も顕著である。さまざまな小鳥類に加え、ペリカンが2025年から確認されるようになり、2026年にはニコポリからバゾウルクにかけて定期的に観察されるようになった。チョウザメの生息を示す情報もあり、キツネやノウサギなどの哺乳類も増加している。軍用ドローンによる映像も、野生動物の回復を裏付けているという。マニュークによれば、貯水池が消滅したことで、ドニプロ川は本来の流れを取り戻した。流速が速くなった結果、河川の自然浄化能力も回復している。同氏は、こうした湿地帯がもたらす生態系サービスは、経済的な価値を含めて、ダムの再建による利益を上回ると主張する。

 ドニプロ・オリシリ自然保護区の研究員、オレクサンドル・ポノマレンコも、かつての貯水池を自然保護区として活用するよう提案する。ドニプロペトロウシク州では、土地の78%が耕地として利用されている。残る22%にも都市、道路、送電線などのインフラが含まれるため、自然のまま残されている土地は極めて少ない。こうした地域で、約20万haもの土地を自然保護の対象とすることができれば、非常に大きな意義がある。ウクライナには、これほど広大な自然保護区域はほとんど存在しないという。ポノマレンコは、これほど農業開発が進んだ地域で、自然保護区を設ける機会を逃すべきではないと主張する。

 マニュークは、貯水池を再建しなくても、地域の雇用や経済を維持・発展させることは可能だと考えている。具体的には、大ルーフの自然環境を利用した観光、湿地帯を巡るツアー、水上交通関連サービス、土産品の販売などが考えられる。こうした観光・レクリエーション産業は、適切に計画すれば、ダム再建よりも多くの雇用を生み出し、数十年にわたって持続的な収入源となり得るという。 また、科学者たちは、水供給の問題と貯水池再建の問題を切り離して考える必要があると主張する。 地域の水需要には、近代的な取水設備、節水型灌漑、小規模な貯水施設などを組み合わせることで対応できるとする。

 ドニプロペトロウシク州の復興・インフラ開発局長、オレクサンドル・コロミイツェウは、ダム破壊後に建設された新しい水道管について説明する。ダム破壊によってニコポリ地区の住民は集中水道を失ったが、政府は特例措置を講じ、新たな水道管の建設を迅速に進めた。新しい水道システムは、ザポリージャ市付近から取水し、ニコポリ、マルハネツ、ポクロウ、ミロヴェ、トマキウカなどに水を供給するものである。長期使用を前提とする近代的な設備であり、都市住民だけでなく、工業用水の需要も考慮して設計された。コロミイツェウによれば、この水道システムによって、現在の対象地域の水需要は十分に満たされている。

 ダム破壊直後、地域住民は深刻な水不足に直面した。ある住民は、川まで容器を持って水をくみに行かなければならず、汚れた水しか手に入らなかったと振り返る。水道が復旧するまで半年ほどかかった地域もあった。しかし、現在は生活用水の供給が改善している。住民の一人は、井戸にポンプを設置したことで、家畜の世話や家庭菜園などに必要な水は確保できるようになったと話す。飲料水は別途運搬されてくるものの、日常生活に必要な水は足りているという。

 カホフカダムの破壊によって、ウクライナは2つの異なる将来像の選択を迫られている。一つは、貯水池と水力発電所を再建し、従来の灌漑農業、工業、水上輸送を基盤とする地域経済を復活させる道である。もう一つは、自然に回復しつつある大ルーフの生態系を保全し、新たな自然保護区や観光資源として活用する道である。マニュークは、この選択は単に一つの水力発電施設を再建するかどうかという問題にとどまらないと強調する。戦後のウクライナが、破壊されたものを従来どおりに復旧するのか、それとも新たな価値観に基づいて地域の将来像を描くのかを示す重要な事例となる。


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Иноземцев

 こちらの記事で、著名な亡命エコノミストのウラジスラフ・イノゼムツェフ氏がインタビューに応じ、ウクライナ侵攻を続けるロシアの経済レジリエンスについて語っているので、以下で発言要旨を整理しておく。

 ロシア政府が提出した2027年予算案では、軍事支出が17.1兆ルーブルに達し、2026年の当初計画の12.9兆ルーブルから33%増加するとされている。しかし、こうした数字の比較には慎重であるべきだ。ドイツのロシア専門家ヤニス・クルーゲは、2026年上半期だけで軍事支出が約10.5兆ルーブルに達したと推計している。年間では少なくとも16兆ルーブルになると考えられるため、2027年の17.1兆ルーブルという数字は、実際には30%もの増加を意味しない。むしろ重要なのは、2026年にすでに実現した軍事支出の拡大が、2027年以降も恒常化するという点である。政府はその財源を確保するため、あらゆる追加税収を追求することになる。すでに導入されている5段階の個人所得税、輸入品に対する付加価値税、2023年に導入された超過利潤への一時課税などの仕組みが利用される。鉱業企業にも30%の超過収益税が課される。税制の抜本的変更が行われるわけではないが、既存の課税手段を通じて、企業や国民から従来以上に厳しく税収を搾り取ることになる。

 2027年予算案から判断すると、プーチンは現在と同程度の強度で戦争を継続するつもりであり、戦争の進め方を大きく変える兆候はない。新たな大規模動員も、おそらく実施されないだろう。30万~40万人の兵員を追加するのであれば、予算案に盛り込まれた金額をはるかに上回る軍事費の増額が必要になるからである。プーチンは、今後さらに1年ほど様子を見るつもりだと考えられる。具体的には、ウクライナが冬をどう乗り切るか、米国政権がどう行動するか、対米関係改善の可能性があるか、欧州政治がどう変化するかを見極めようとしている。特に、ドイツのメルツ首相の去就、2027年フランス大統領選挙でのルペンの勝利の可能性、欧州全体の対応などが重要になる。現時点でプーチンは、戦争は順調に進んでおり、勝利はすぐには訪れないとしても不可避であると確信している。また、ロシア経済は少なくともあと1年は現在の状況に耐えられると考えている。

 ロシアとウクライナは、いずれも経済的困難に直面しているが、その性質は大きく異なる。ロシアは制裁や国際的孤立に直面しているものの、基本的には自国で稼いだ資金を戦争に投入している。最大の問題は財政赤字の拡大である。戦争開始当初には1兆ルーブル程度だった財政赤字が、2026年には7兆ルーブルに達する可能性がある。2027年の計画では5.5兆ルーブルとされているが、実際にはこれを上回るだろう。それでも赤字はGDPの2~3%程度であり、2026年には中央銀行を通じた、事実上の財政ファイナンスによって、その大部分が穴埋めされている。これに対し、ウクライナはGDPの約30%、ほぼ3分の1に相当する外部資金に依存している。この支援が途絶えれば、経済はほぼ即座に崩壊する。ロシア経済とは異なり、ウクライナ経済は外部の支援国から継続的な資金供給を受けなければ存続できない。したがって、プーチンには持久戦に期待する根拠がある。欧州でウクライナ支援への失望や意見対立が広がり、資金援助を継続できなくなれば、それがロシアの勝利につながると考えているのである。欧州の姿勢が変わらないことを期待したいが、プーチンの戦術はあくまで待つことであり、ロシア経済は2026年も2027年も、さらにその先も戦争を支えられると考えている。

 ロシア経済の状況は確かに悪化している。国民生活は困窮し、家計の余力は失われつつあり、経済成長も期待できない。企業や個人の資産接収は続き、投資環境も劣悪なものになるだろう。しかし、経済が健全であるかどうかという問題と、戦争を継続できるかどうかという問題は区別しなければならない。ロシア経済の状態は悪いものの、戦争を支える能力は今後数年間にわたって確保される。少なくとも今後2年程度、経済状況の悪化が戦争遂行に直接影響することはない。一方、欧州政治については、プーチンの期待が実現するとは限らない。例えば、かつて親ロシア的だったフランスのルペンの発言も変化している。ロシアによる欧州での破壊工作を通じてフランスに条件を押し付けることは認めないと述べ、ユーロ圏離脱やEU離脱も主張しなくなっている。したがって、プーチンが期待するほど欧州の立場が変化するとは限らない。

 2022年にウクライナへの全面侵攻を開始した際、クレムリンは西側諸国が消極的な対応にとどまると確信していた。実際に発動された制裁やウクライナへの軍事支援の規模は、クレムリンにとって予想外だった。現在も、欧州が宥和政策に戻ることを期待している可能性はあるが、それを前提に行動しているわけではない。クレムリンは、欧州が再軍備を進め、ウクライナへの財政支援を続けている現実を受け入れている。その一方で、西側に対して、越えてはならない一線があると警告し続けている。これまでにも多くの「レッドライン」は越えられてきたが、現時点で重要なのは、欧州諸国によるウクライナへの軍事顧問団や部隊の派遣である。クレムリンは、それを欧州諸国による対露宣戦布告と見なすと表明している。ロシアにとって現在の欧州の対応は不快ではあるものの、まだ許容できる範囲にある。クレムリンも、欧州が今後半年程度でウクライナ支援を放棄するとは考えていない。しかし、西側がこれ以上深く戦争に関与することもないと想定している。クレムリンには明確な戦略があるわけではない。基本的な目標は、さらに一定期間持ちこたえることである。プーチンは、ロシアはこの戦争に耐えられるが、欧州は耐えられないと確信している。

 戦争による経済的な変化が、すでに後戻りできない段階に達したとは考えていない。歴史的には、戦争中に巨額の財政赤字を抱え、政府が経済に極端な介入を行っても、戦後に経済が回復した事例は数多く存在する。問題の本質は戦争そのものというより、プーチンの経済政策にある。プーチンが構築しようとしているのは、極めて奇妙で、長期的には存続不可能な経済モデルである。一方では、特に政権に近い企業家の経済活動の自由を認めながら、他方では国家による圧力や計画経済的な要素を組み合わせている。ロシア経済は、戦争そのものよりも、政府の政策によって大きな損害を受けている。プーチンは自由経済や自由市場に敵対し、世界に開かれた経済や技術進歩にも背を向けている。独自のインターネットや独自のイノベーションを構築するという、いわゆる主権的技術発展の構想は完全に行き詰まった発想であるが、プーチンはそれに取りつかれている。しかも、この政策路線が変更される見込みはない。

 ロシア経済が2026年までに崩壊するという予測が多く聞かれたが、自分はそのような予測をしたことはない。むしろ、少なくとも数年間は戦争遂行に深刻な問題が生じないと繰り返し主張してきた。ロシア経済が予想以上の耐久力を示している理由はいくつかある。第1に、ロシアには依然として巨大な民間企業部門が存在している。民間企業は生き残り、利益を獲得し、富を増やそうとするため、非常に柔軟に行動する。仮に1980年代のソ連経済が現在と同じ状況に置かれたなら、おそらく生き残れなかっただろう。しかし、2022年以降のロシア経済は、西側から東側への供給ルートの転換に成功した。これを実現したのは国家ではなく民間企業である。民間企業は賃金を柔軟に調整し、新たな市場を開拓し、新商品を提供してきた。つまり、ロシア経済の耐久力の基盤は民間部門にあり、西側はその重要性を明らかに過小評価していた。2022年に制裁を導入した際、西側ではロシアを国家主導の経済だと考える見方が広がっていたが、それは誤りだった。第2に、ロシアは国際市場から完全に切り離されたわけではない。欧米市場を失っても、中国、インド、その他の発展途上国の市場を利用できる。特に中国は、ロシアへのハイテク製品供給を保証する最も重要な存在である。もし中国が存在しなければ、ロシア経済はおそらく壊滅的な状態に陥っていただろう。第3に、ロシア経済は規模が大きく、一定の自給能力を備えている。さらに、制裁が非常にゆっくりと導入されたことも、ロシア経済に適応する時間を与えた。

 西側が制裁を強化しようとするなら、最も重要なのは、ロシアへのあらゆる技術製品の輸入を厳格に制限することである。特に、第三国を経由してロシアに製品が流入している西側企業自体に制裁を科すべきである。冷戦時代には、日本の東芝が米国の規制を迂回してソ連にコンピューターを供給した事件があり、その結果、同社は長期間にわたり米国市場での販売を制限された。同様に、どのような経路であれ自社製品がロシアに流入した場合に西側企業が制裁対象となるなら、企業はサプライチェーンを徹底的に監視するようになる。その結果、ロシアは深刻な困難に直面するだろう。さらに、ユーラシア経済連合のすべての加盟国に対して制裁を科すことを提案する。そうすれば、関税同盟やユーラシア統合は急速に崩壊し、プーチンにとって極めて大きな打撃となるはずである。しかし、現実にはこうした措置は講じられていない。そのため、現在の制裁では、クレムリンの戦争に対する姿勢を変えることはできない。

 最近、ロシアが欧州に対する攻撃を準備しているとの観測が広がり、ロシア共産党のジュガノフ党首も、2029~2030年に大規模な戦争が起きると発言している。しかし、これがロシア国民を大戦争に向けて準備させる動きだとは考えていない。現在のロシアでは、国民を動員すること自体が難しく、クレムリンもそれを理解している。社会には不安が広がっており、国民は大規模な戦争を望んでおらず、その準備もできていない。したがって、ロシアが欧州諸国に直接侵攻することは、ほぼあり得ないと確信している。ただし、漸進的なハイブリッド戦争、テロ、破壊工作、情報戦は今後も続き、欧州に脅威を感じさせ続けるだろう。現在のロシアは、ウクライナでの戦線を効果的に維持することさえできていない。最近はウクライナ軍が攻勢に出ており、ロシア側に戦果は見られない。プーチンにとっては、現在の消耗戦を続けることが勝利につながる最も有望な選択肢に見えている。しかし、ポーランド、フィンランド、その他のNATO諸国を含む西側全体と消耗戦を戦うことは、ロシアにとって自殺行為である。その代替手段となり得るのは核戦争だけである。戦況が悪化した場合、プーチンが戦術核兵器を使用する可能性は排除できない。それでも、プーチン自身が欧州への通常戦力による攻撃を命じることは、ほぼ考えられない。欧州に対するハイブリッド戦争の費用は、ウクライナでの戦争と比較すれば、それほど大きくない。年間数千億ルーブル程度であり、現在のロシアの軍事予算の最大でも5~6%にとどまる。


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376

 イズヴェスチヤの記事が、ロシアの国民福祉基金をめぐる動きについて伝えているので、以下のとおり抄訳しておく。

 ロシアでは、財政ルールにおける石油の基準価格(足切り価格)を1バレル当たり50ドルに引き下げ、2029年まで据え置く方針である。財務省は、これにより今後3年間、国民福祉基金(FNB)の流動性資産を積み増すことが可能になると見込んでいる。

 ロシア財務省は、今後3年間にわたってFNBの積み増しが続くと予想している。これは、ロシア中央銀行が改訂した2027~2029年の金融信用政策基本方針案に記されている。同文書では、石油の基準価格を引き下げることによって、対外経済環境の変化に対する財政政策の安定性が高まり、FNBの流動性資産を十分な水準に維持することが可能になると説明している。

 従来は、2027年には追加的な石油・ガス収入によるFNBの積み増しは行われないと想定されていた。2026~2028年の連邦予算法によれば、FNBの規模は2026年初めの13兆6,600億ルーブルから、同年末には13兆8,370億ルーブルに増加する見通しだった。ただし、増加分の1,769億ルーブルは為替相場の変動によるものにすぎなかった。

 一方、シルアノフ財務相は9月、2026年末までのFNBの積み増し額が6,000億~1兆ルーブルに達する可能性があると述べていた。また、2028年には、前年に得られた追加的な石油・ガス収入によって3,421億ルーブルが積み増されると見込まれていた。

 ロシア中央銀行によれば、新たな予算の基本方針には財政ルールの変更が盛り込まれている。同時に、連邦予算の構造的基礎的赤字は段階的に縮小し、2029年にはゼロになることが想定されている。政府は2027年から、財政ルールにおける石油の基準価格を1バレル当たり50ドルに引き下げ、2029年までその水準に据え置くことを提案している。

 基準価格の引き下げによって、歳出上限を算定する際に考慮される石油・ガス収入が減少する。財務省の試算では、基準価格の見直しにより、基礎的な石油・ガス収入の対GDP比が0.4~0.5ポイント低下する可能性がある。ただし、今後3年間、連邦予算の名目歳出額は引き続き増加する。その財源としては、前年の予算編成時の見通しよりも増加する石油・ガス以外の収入などが想定されている。

 2027年から石油の基準価格を59ドルから50ドルへ引き下げる計画について、専門家は、より保守的な財政モデルへの移行と解釈している。分析会社ボルセルのオリガ・ヴェレテンニコヴァ副社長によれば、ロシア当局は、中期的にロシア産原油の価格が60ドル前後で安定すると想定することは、もはや危険だと事実上認めたことになる。これは原油価格の急落を予想しているというよりも、比較的高い原油価格を前提として恒常的な政府支出を計画することを避けるためである。

 また、連邦予算に占める石油・ガス収入の割合は数年前から低下しており、この傾向を財政ルールにも反映させる必要がある。2026年1~8月の石油・ガス収入は5兆200億ルーブルで、前年同期比16.7%減少した。一方、石油・ガス以外の収入は18.1%増加し、20兆9,100億ルーブルに達した。

 石油の基準価格とは、実際の原油価格がそれを下回った場合に、予算を補填するためFNBの資金が取り崩される境界となる価格である。専門家の推計によれば、2026年9月のウラル原油価格は1バレル当たり約80ドルである。この水準であればFNBへの資金の積み増しが可能であり、財政ルールは資金を蓄積する方向に機能する。政府は、2027~2029年の基準価格について、従来予定されていた比較的高い水準から、50ドルに引き下げることを提案している。経済発展省は、ウラル原油の価格を2027年に53ドル、2028年に52ドル、2029年に51ドルと予測している。中央銀行が9月に実施した専門家調査では、2027~2029年の平均価格は56ドルと予想されている。一方、中央銀行自身が7月に発表した中期予測では、2027~2029年の全期間について50ドルと想定されていた。したがって、50ドルという基準価格は中央銀行の保守的な予測に近いものの、極端に低い水準ではない。基準価格を引き下げることで、FNBの資金を取り崩す必要性が低下する。実際のウラル原油価格が50ドルを上回れば、追加的な石油・ガス収入の大部分は歳出拡大に回されず、FNBの流動性資産の積み増しに充当される。ただし、財政赤字を補填するためにFNBがまったく使われなくなるという意味ではない。

 フィンゴールド社の創業者兼最高経営責任者アントン・ニキーチンによれば、基準価格が低いほど余剰収入が増え、準備資金の蓄積が速まる。政府は事実上、「余剰分を支出する」モデルから、「万一に備えて蓄積する」モデルへと移行することになる。ヴェレテンニコヴァによれば、最大の利点は、財政の原油市況への依存度が低下し、FNBの流動性資産が回復することである。ロシア産原油の実際の価格が50ドルを上回る状態が続けば、FNBは再び準備資金を蓄積する機能を果たすようになる。

 基準価格の引き下げが直接促進するのは、当面の財政赤字そのものの縮小ではなく、構造的な赤字の削減である。基準価格を引き下げれば、政府が経常的な歳出に利用可能とみなす石油・ガス収入が減少する。もっとも、予算の収支は、税収、借入、歳出の変更によって調整することもできる。基本方針案によれば、追加的な歳入源として、個人所得税の累進税率の適用対象となる課税ベースの拡大、良好な対外経済環境によって鉱業部門に生じる追加所得への課税、輸入に伴う税収の増加などが想定されている。ガスフォンド年金基金の投資管理部長ユーリー・ミシュコフによれば、こうした方針は構造的財政赤字を段階的に縮小するとともに、FNBの流動性資産を回復させる効果を持つ。その結果、中期的にはFNBの役割が財政上の準備資金としての機能に重点を移すことになる。ヴェレテンニコヴァも、基準価格の引き下げによって財政の仕組みが厳格化され、恒常的な歳出の財源として利用可能な石油・ガス収入が減るため、構造的赤字の削減が促進されると指摘している。

 財政赤字の補填は、今後、FNB以外の財源、とりわけ国内債券市場への依存を強めることになる。FNB自体は、財政赤字を恒常的に補填する財源ではなく、原油市場の変動から財政を守るという本来の役割に徐々に回帰する。こうした変更がルーブル相場に及ぼす影響は両面的である。一方では、基準価格の引き下げによって外貨需要が増加するため、短期的にはルーブル安要因となる。しかし、中期的には財政ルールの厳格化によって歳出の原油市況への依存度が低下する。その結果、インフレリスクが低下し、国家財政の安定性が高まる。ヴェレテンニコヴァによれば、ルーブルのリスクプレミアムが縮小することで、中央銀行は金融政策を緩和しやすくなる。こうして財政ルールの変更は、原油価格の一時的な変動に左右されにくい、より予測可能なルーブル相場の形成につながる。


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374

 こちらの記事が、ロシアの攻撃による大オデーサ港の輸出停止で、ウクライナの食料輸出が滞っており、ウクライナ農業の資金繰りから次期作付けにまで波及しつつあることを論じている。以下で記事を抄訳しておく。

 ロシアの攻撃によって大オデーサ港(オデーサ、チョルノモルシク、ピウデンヌィの総称)からの農産物輸出が停止してから約1カ月半が経過した。政府はドナウ川と鉄道への貨物振替を進めたが、代替できたのは一部にとどまる。9月最初の20日間の輸出は潜在的な輸送量の44%まで回復したものの、8月は30%だった。

 輸送ルートが長く高価になった一方、国内の農産物買付価格は下落している。収穫が続いて倉庫が埋まるなか、農家には秋播き用の種子、肥料、燃料を購入する資金が必要となっている。秋の作付けだけで約2,000億フリヴニャ、半年後の春にはさらに3,000億フリヴニャ以上が必要になる。

 本来、その相当部分を現在の収穫物の販売によって調達するはずだった。資金や貯蔵能力に余裕がなければ価格回復まで販売を待つことも難しい。現在の輸出制約が続けば、冬作物の作付面積は100万ha以上減少し、とりわけ小麦が大きな影響を受ける可能性がある。

 大オデーサ3港からの穀物積出量は、7月の221万tから8月には19万4,000tへ激減した。同じ期間にドナウ川港湾の積出量は19万8,000tから67万5,000tへ増加したが、大オデーサで失われた積出量の4分の1弱しか補えなかった。8月の農産物輸出通関量全体も7月の367万tから215万tへ減少し、特に穀物が98万8,000tまで落ち込んだ。逆に油糧種子は8万8,500tから32万9,500tへ増えた。

 代替ルートの中心はドナウ川と鉄道である。現在の輸送能力は必要量の44%程度で、月間約500万tを輸出する必要があるのに対し、約200万tしか運べない。条件が良くても代替ルートで処理できるのは約250万t、必要量の半分程度である。ルーマニア方面への輸送は急増しており、主要国境通過地点の農産物輸送量は7月の12.5万tから8月には71.7万tとなった。イズマイル経由は9.9万tから43.1万t、レニ経由は0.3万tから13.3万tへ増えた。ポーランド、ハンガリー方面も36.4万tから59.2万tへ増加した。

 ルーマニアのコンスタンツァ港へはモルドバ経由でもウクライナ産穀物が運ばれている。8月17日から9月5日までに、一つの鉄道路線だけで小麦、大麦、菜種約3.5万t、約500貨車が輸送された。しかし代替ルートで輸出できているのは、穀物では潜在輸出量の35%にすぎない。油糧種子と植物油では66%に達する。トン当たり価格の高い商品ほど追加輸送費を吸収しやすいためである。菜種なら近隣のEU市場へ輸出できるが、北アフリカ向け穀物の場合には、ドナウ川あるいはポーランド経由でバルト海まで運んだ後、さらに海上輸送が必要となる。9月最初の21日間の輸出計画達成率は、油糧種子75%、植物油55%、ミール41%、穀物38%だった。

 輸出封鎖によって世界市場価格とウクライナ国内価格の連動が切れた。国外では穀物価格が上昇する一方、ウクライナ国内の買付価格は下落した。9月初めにはその価格差が、小麦で1t136ドル、大麦100ドル、トウモロコシ67ドルに達した。小麦の国内指標価格は7月初めから9月10日までに35%下落した。ポーランド・グダニスクまでの輸送費は1t90~110ドルで、農場が西部国境から離れていればさらに5~10ドル増える。イズマイル~コンスタンツァ経由では、積み替えとルーマニアからの海上運賃を合わせて125~135ドルに達する。

 エジプトの買い手が小麦1tに300ドルを支払う場合、大オデーサ港が機能していた時にはオデーサからの海上運賃は約20ドルだった。しかし現在ではドナウ川からエジプトまでの海上輸送部分だけで100ドル近くになる。そこから港までの国内輸送、積み替え、保険、トレーダーの経費などを差し引くと、農家に提示できる価格は1t約130ドルまで低下する。輸送費そのものはトレーダーが支払うが、そのコストは農家への買付価格に転嫁される。小麦1tの生産費が7,500~9,000フリヴニャなのに対し、販売価格は最高でも6,000フリヴニャ程度で、損失が1t4,000フリヴニャに達する場合もある。それでもヒマワリ種子など新たな収穫物を入れる倉庫を空けるため、赤字を承知で小麦を売らざるを得ない農家がある。特に脆弱なのは、ドナウ川や西部国境から遠い小規模農家と一部の中規模農家である。

 ドナウ川でも水先案内人不足、低水位、船舶の待機列が問題となっており、船舶の停泊コストは1日1万ドルに達する場合がある。ルーマニアのターミナルは自国や第三国の貨物も扱っており、船舶の待機が貨車やエレベーターの滞留を引き起こし、ウクライナ国内の貯蔵施設が新しい収穫物を受け入れられないという連鎖も生じている。

 政府が設定する農産物の最低輸出価格も問題を複雑化させている。市場価格に応じて毎月改定されるが、9月には一部商品で実際に外国の買い手が提示する価格を上回った。トウモロコシの最低輸出価格は1t195ドルだったのに対し、ドナウ川港での提示価格は170ドルだった。ヒマワリ油も最低価格1,350ドルに対して市場価格は1,125ドル、ヒマワリ種子も最低価格671ドルに対してブルガリア、ルーマニアの買い手は最大570ドルしか提示しなかった。政府は10~12月の最低価格算定に引き下げ係数を導入する方向で調整している。

 大豆と菜種にはさらに10%の輸出関税がかかる。生産者自身が輸出する場合には一定の条件で免除されるが、トレーダーに販売すれば関税がトレーダーのコストとなり、買付価格に反映される。農業団体は、関税を撤廃すれば、トレーダーが節約分を農家に還元する限り、買付価格を最大10%引き上げられるとみている。最高会議には油糧種子の輸出関税を一時停止する2つの法案が提出されている。

 一方、油脂加工業界は撤廃に強く反対している。輸送能力が不足している以上、海外に輸出すべきなのは油脂やミールであり、原料となる種子は国内加工工場に残すべきだと主張する。2026年の油糧種子収穫量は2,000万t、そのうち1,570万tが国内で加工される見通しである。関税を撤廃すれば農家には新たな販売先が生まれるが、国内加工業者は輸出業者との原料獲得競争にさらされ、一部工場が操業できなくなる可能性がある。

 輸出制約、高額な物流費、国内価格の低下、最低輸出価格制度が重なり、秋播きを前に農家の手元資金が不足している。秋の農作業には約2,000億フリヴニャ、春にはさらに3,000億フリヴニャ以上が必要となる。政府は融資によって資金不足を補おうとしている。「5-7-9%」制度では年利10%で融資を受けられ、1企業当たりの上限も9,000万フリヴニャに引き上げられた。穀物を担保として評価する際の掛け目も0.4から0.75へ引き上げられ、融資期間も12カ月から18カ月へ延長された。しかし港湾問題の発生後に農業部門が調達した融資は210億フリヴニャ、そのうち「5-7-9%」によるものは63億フリヴニャにすぎず、秋の農作業だけで必要な金額にも遠く及ばない。銀行側も価格下落と換金の難しさから、穀物を担保に取ることに消極的である。

 融資を受ければ当面の種子や肥料などを購入できるが、春には穀物販売収入から返済しなければならない。輸出が正常化せず国内価格も低迷すれば、問題を先送りするだけになる。肥料1tは約4万フリヴニャであり、それを購入するためには、現在の5,000~6,000フリヴニャという価格では小麦を7~8t売らなければならない。このため肥料や種子への投入を削減する農家や、一部の農地を作付けしない農家が出る可能性がある。

 冬作物の作付面積は100万ha以上減少する可能性があり、最大の影響を受けるのは小麦である。2026年の平均単収4.95t/haで計算すれば、100万haは約500万tの小麦に相当する。2025年の小麦収穫量が2,300万tだったことから、年間収穫量の約5分の1に相当する規模となる。さらに春には1,600万haの春播き作物に3,000億フリヴニャ以上が必要になる。海港の操業が回復したとしても、穀物輸出能力は月450万t程度で、必要な約600万tを下回る。現在の収穫物を正常に輸出して販売収入に変えられる状態が戻らない限り、融資は農家に「時間を買う」だけにとどまる。


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 ロシア産業家・企業家連盟(RSPP)と言えば、しばしば「ロシアの経団連」などとも呼ばれるロシア財界の総本山である。コメルサント記事によると、このほど議会審議が始まった2027~2029年連邦予算案に、鉱山・金属企業に対する年間2,000億ルーブル規模の「超過収益税」の案が含まれていることに、連盟が反発しているということである。以下で記事を抄訳しておく。

 ロシア産業家・企業家連盟(RSPP)は、財務省が2027~2029年に鉱業部門を対象として導入を提案している「超過収益税」に反対を表明した。この税によって3年間で6,830億ルーブルの予算収入を得ることが想定されている。企業側は、この構想について、2030年まで約束されていた財政上の安定性と公平性の原則に反するものだと考えている。その理由は、税が事実上遡及的に導入され、利益ではなく売上高を基準に算定されるうえ、鉱業部門に対する投資家の信頼を損なうからである。RSPPはアントン・シルアノフ財務相宛てに書簡を送り、導入案に反対する意向を表明した。

 RSPPが第一に反発しているのは、この税が事実上遡及的に導入されることである。2027年分の課税標準は、すでに終了している2026年の鉱物資源価格が、基準年である2025年の価格をどれだけ上回ったかに基づいて算定されることになる。連盟によれば、企業が考慮に入れることのできなかった過去の期間に新たな財務負担を適用することは、租税の基本原則に真っ向から反するものであり、法律の遡及適用によって納税者の立場を悪化させることを意味する。

 さらにRSPP側によれば、超過収益税の導入は、政府と企業の間で最近成立した合意にも反する。RSPPは、2024~2025年の大規模な税制改革に際して、政府が2030年まで財政上の安定性を確保し、一時的・個別的な徴収措置を行わないと約束したことを指摘している。RSPPは、「状況に応じた非体系的な財政措置」という慣行への回帰を懸念している。「このようなやり方では、生産計画や投資サイクルを立てることができない」と、大企業関係者は指摘する。算定の仕組み自体も批判の対象となっている。政府が財務的成果への課税を優先すると表明してきたのとは異なり、超過収益税は、企業の実際の利益を考慮せず、価格の乖離と計算上の売上高を対象として徴収される。このため同税は、政府が公式には廃止した売上高課税的な性格を帯びることになる。

 RSPPは、鉱業部門が過去5年間にすでに何度も財政的な徴収措置の対象とされてきたと強調している。さらに個別的な措置を導入すれば、ロシアの税制の予測可能性に対する投資家の信頼を損ない、経済の長期的な持続可能性に重大なリスクを生じさせる、と同連盟は訴える。

 同連盟によれば、財政赤字の問題は、金利を均衡のとれた水準に戻すことや、ルーブル相場を実勢に即した水準にすることなど、マクロ経済的な措置によって解決すべきであり、それ自体が課税ベースを拡大することになる。

 それでも負担増が避けられないのであれば、経済全体を対象とする財政措置を優先すべきだとしている。その例として、すべての企業を対象に法人利潤税率を一時的に0.5~1%ポイント引き上げることが挙げられており、これによって国庫に5,000億~1兆ルーブルの収入をもたらしつつ、負担を経済全体に均等に配分できるとしている。RSPPは、現行案のまま法案が採択されれば、鉱業部門の多くの企業に悪影響が及ぶおそれがあると懸念を表明している。

 市場環境、販売上の特性、債務負担など、企業活動の成果のあらゆる側面を包括する普遍的な指標は利益である、とノリリスクニッケルの担当者は認めている。財政負担を調整するには、利潤税を通じて行う方がより効率的で、経済的にも合理的である。こうした立場は経済界が以前から表明してきたものであり、その際には利潤税率が20%から25%へ引き上げられた、と同社は指摘する。現行税率を、たとえば3年間にわたって1%ポイント一時的に引き上げれば、財政には少なくとも1兆ルーブルの収入がもたらされ、新税による徴収予定額を上回る。財務省の試算によれば、新たな税制が現行案のまま採用された場合、ノリリスクニッケルの負担額は他社を上回り、3年間で1,710億ルーブルに達する。

 この措置は、計画中および実施中の投資プロジェクトに明らかに悪影響を及ぼす、と冶金業界の関係者は述べる。「財務省と政府が企業から、またしても架空の『超過利潤』を取り上げようとしている状況では、産業界には投資に回す資金そのものがなくなってしまう。しかも、この措置は、大統領や政府が繰り返し表明してきた新たな投資サイクルを始動させるという計画にも、明らかに逆行する」と同氏は述べている。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週4位のBlack Is Black - Los Bravosという曲を、個人的に知らず、今般初めて聴いたのである。モータウン風のビート、黒は黒というタイトルなどからして、公民権運動の歌かと思いかけたのだが、実際にはそうではなく、むしろ他愛ないラブソングらしい。そして、Los Bravosは白人グループということであり、いわゆるブルーアイドソウルの範疇に入る。しかも、1965年にマドリードで結成されたグループであり、ヴォーカルはドイツ人で、曲を作ったのは英国人のチームだった由。スペインのバンド+ドイツ人ヴォーカル+英国人ソングライター/プロデューサー+米国黒人音楽の影響という、1966年らしい大西洋横断型のポップスだったわけだ。

その頃ソ連では
1966年10月3日:モスクワにおいて、ソ連がベトナム民主共和国に新たな無償援助を供与すること、追加融資を提供すること、1967年の貿易、およびその他の事項に関する諸協定・文書が調印された。

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 Wedge ONLINEに、「ロシアの軍事財政を覆い隠す『7つのからくり』…『国防費』を大幅に増やしても全体の戦費か見えない理由」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。



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 昨日9月30日、ロシア政府が承認した連邦予算案が連邦議会に到着し、これから議会審議が始まる。それで、その件を伝える下院HPの記事を眺めていたら、興味深い写真が添えられていた。上と下に見るように、文書輸送官が鞄に入れた法案を仰々しく運び、それを議会側に手渡す様子である。今日日、法案等もすべて電子的なやり取りになっているのかと思いきや、ロシアの正式な文書輸送制度が現在も物理的に機能しているということが分かった。気になったのでちょっと情報を集めてみた。

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 写っている制服の人物は、服装や鞄からみて、国家フェリドイェーゲリ(政府特使・機密文書輸送)制度の職員と見られる。ロシアには現在も「Государственная фельдъегерская служба(国家フェリドイェーゲリ局、ГФС)」なるものがあるそうで、大統領府、政府、連邦議会、裁判所などの間で、「特別重要」「極秘」「秘密」その他の公用文書を物理的に配送することが法律上の任務になっている由だ。この写真で係官が持っている大きな鍵付き鞄も、文字どおり「政府から下院へ予算関係文書を届けている」場面なのだろう。

 それで、これには単なるセレモニー以上の意味がありそうである。一般に公開されるロシアの連邦予算案は、「秘密」「極秘」という項目を大量に含んでおり、一般人はそれにアクセスできない。それに対し、予算を審議する議員は、「秘密」「極秘」の項目も見られるので、係官が輸送しているのはそうした項目を含んだ特別なバージョンということになる。

 というわけで、係官が文書を運んでいるからといって、これをゼロックスにかけて全議員に配るということではなく、公開部分は当然電子データで処理される一方、秘密・極秘指定された付表を含む正式文書一式については、こうした政府専用の物理的配送ルートも必要になる、ということなのだろう。ГФС自身も、電子メールや衛星通信が発達しても、機密性と確実な受領を保証するため物理的配送が必要な文書が残る、と説明している。実はこの制度、かなり歴史があり、1796年に皇帝パーヴェル1世が設置したФельдъегерский корпусにまで遡るということだ。ソ連時代にはGPU/NKVD系統で機密文書を運び、現在のГФСにつながっている由。

 ちなみに、ロシア予算法典第209条は、連邦予算の秘密項目(секретные статьи)は連邦議会両院の非公開会議で審議すると定めている。したがって、一般国民には公開されない数字についても、議会の審議対象にはなっている。一方、同条にはさらに、「秘密項目に関する資料は、両院の議長および両院の特別委員会のみが審査する」としている。つまり、秘密項目そのものは非公開の議会審議の対象となり、その裏付けとなる詳細資料については議長・特別委員会にアクセスを限定という二層構造になっているようだ。

 ただ、下院議員は必要がある場合、国家機密へのアクセスについて一般人のような通常の身辺調査を経る必要はない。国家機密法上、議員には在任中の特別なアクセス制度があり、秘密保持義務と漏洩時の責任を負うことになる。そして実際の非公開会議は相当に厳格であり、下院規則では、携帯電話、録音機器、写真・映像機器などの持ち込み・使用は禁止され、マスコミも入れない。議員には冒頭で秘密の等級と漏洩した場合の責任が告知される。非公開会議の速記録や関係資料も、下院事務局の国家機密保護部門で秘密文書として保管され、議員が閲覧するときにも署名が必要ということだ。


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 プーチン・ロシア大統領は9月28日付で、大統領令第686号「燃料・エネルギー複合体に関するアクセス制限情報の一覧の承認およびその利用手続きについて」に署名した。石油・石油製品などの輸出に関する企業別・取引別の詳細情報を、従来よりも厳格なアクセス制限の対象とするものとなっている。しかも、単に企業に情報公開を控えさせるだけでなく、税関統計や国家機関が保有する情報の取り扱いまで対象にしている。特に目を引くのは、輸出数量・価格だけでなく、取引相手、決済、輸送ルート、港湾ターミナル、さらには石油精製所の稼働状況まで、広範な情報を制限対象にしている点である。以下で大統領令の主な内容を整理しておく。

 今回の大統領令では、制定理由を「米国およびこれに同調する外国・国際機関による非友好的で国際法に反する行為に対応するため、緊急措置を講じる必要性」としている。そして、2006年7月27日付連邦法第149-FZ号「情報、情報技術および情報保護について」第9条第1・2項、2018年6月4日付連邦法第127-FZ号「米国その他の外国の非友好的行為への対抗措置について」第4条を法的根拠としている。その上で、燃料・エネルギー複合体に関する特定情報について、アクセスを制限するとともに、その秘密保持を義務付けている。

 大統領令では、大きく4種類の情報がアクセス制限対象として指定されている。第1に、最も広範なのが、法人による商品輸出の詳細情報で、以下の情報が列挙されている。

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 特に、輸送ルートや港湾ターミナルだけでなく、保管施設の地理座標まで明示されている点が特徴的。なお、表題は燃料・エネルギー複合体に関する情報だが、この第1項自体は「法人による商品輸出に関する情報」という書き方になっている。対象となる具体的な商品コードについては、後述するように政府が別途決定する仕組み。

 第2に、法人による輸出に関する税関統計の集計情報が制限される。個別の通関申告情報だけでなく、法人による商品輸出に関する税関統計の集計情報も制限対象に含めている。これだけをもって、ロシアの燃料・エネルギー関連の輸出統計がすべて公表禁止になるとまでは断定できないが、具体的な対象品目の指定と、統計の公表・提供に関する運用を確認する必要がある。

 第3に、ロシアの製油所を運営する法人について、原油処理量および製品生産量に関する情報が制限される。輸出だけでなく、国内の石油精製活動そのものを対象にしている点が注目される。

 第4に、石油製品の販売計画数量・取引所取引数量の情報も制限される。こちらは少し複雑で、対象となるのは、ロシアの独占禁止法上、同一企業グループに属する法人を含めた、特定の大手石油事業者に関する情報であり、具体的には、原油から製造された特定石油製品について販売を予定している数量、各課税期間の各取引日において商品取引所で行われた当該石油製品の売買取引数量が該当する。対象企業は、該当する商品市場で支配的地位を占める事業者。対象商品は、オクタン価92以上の自動車用ガソリンおよびディーゼル燃料とされている。つまり、石油製品の取引所市場における大手企業の供給計画や販売動向に関する情報も、アクセス制限の対象になる。

 そして、大統領令本文第2・3項は、上述の情報について秘密保持を義務付け、次のような取り扱いを定めている。ただし、一般への情報提供の禁止には例外があり、法人が自らの活動に関する情報を公開することは、禁止の対象外と明記されている。したがって、企業自身による任意の情報公開まで全面的に封じる制度ではない。一方で、第三者による情報の取得・提供や、行政機関が保有する情報の公開については、より厳格な管理が可能になると考えられる。

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 大統領令第4項は、ロシア連邦政府に次の3つを命じている。第1に、10日以内に対象商品コードを確定すること。ユーラシア経済連合の統一商品分類(ТН ВЭД ЕАЭС)に従った商品コード、および全ロシア経済活動別生産物分類(ОКПД 2)のコードを確定する。つまり、今回の大統領令では制限対象となる情報の種類を定め、実際にどの商品が対象となるかは、政府が追って具体化することになる。第2に、国家情報システムから取得した情報の自動処理に関する標準規則を承認すること。これは、連邦行政機関が保有する情報を、どのような手続きで処理・提供するかという運用面の整備となる。第3に、政府自身の関連規則を今回の大統領令に適合させること。


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 Meduzaの下記の記事が、ロシアの北極海航路をめぐる状況について、かなり詳しく伝えている。地政学的リスクが既存航路を使いにくくするほど、相対的に北極海航路の価値が上がるが、ロシアにとっては対中依存度の増大という新たなリスクが発生していることを指摘している。記事のあらましは以下のとおり。

 2026年8月半ば、中国・寧波舟山港から英国フェリックストウに向けてコンテナ船「Dubai Tower」が出航した。これにより、北極海航路で初めて明確なスケジュールを持つコンテナサービスが始まった。中国のSea Legend Shippingは、中国から北欧まで20日間で結ぶ定期運航を計画しており、これはスエズ運河経由のおよそ半分の所要時間となる。

 北極海航路はカラ海峡からベーリング海峡までロシア北極沿岸約5,600kmを通る。航行許可はロスアトム傘下の北極海航路局が発給し、約45隻、うち原子力砕氷船8隻からなる世界最大規模の砕氷船団が航行を支援する。ロシアによる北極海航路管理の法的根拠は国連海洋法条約第234条にあるが、ロシアはすべての船舶に事前許可、パイロット、水先案内・砕氷船支援への支払いなどを要求しており、条約が認める範囲を超えている面がある。

 北極海航路の歴史は、目標未達の歴史でもある。2018年の大統領令では2024年までに貨物量を8,000万tに増やすことが掲げられたが、実績は3,790万tと半分にも届かなかった。それでも2025年3月、プーチン大統領は従来の「大北極海航路」構想を「北極海横断輸送回廊」と改称した。

 気候変動は航路に有利な方向に働いており、2025年夏末の海氷面積は2005年より28%小さく、2025年3月の冬季最大海氷面積も47年間で最小となった。しかし平均的に海氷が減少しても、翌年の特定の日に航行可能かどうかを予測できるわけではない。このため長期的に確実な運航スケジュールを組むことが難しく、他の輸送ルートに比べ経済性に疑問が残る。この問題が今後10年以内に解消すると予想する向きもない。

 2025年の北極海航路貨物量は前年比2.3%減の3,700万tだった。アジアから欧州へ抜ける純粋なトランジット航行は過去最高の103回に達したものの、輸送量は320万tにすぎず、航路全体の9%未満だった。これに対し、スエズ運河では危機の最中だった2025年末でも週約244隻、2023年末には週約500隻が通航していた。2026年の北極海航路貨物量は過去最高の4,000万t超となる見通しだが、トランジット輸送は依然として季節限定的であり、時間短縮効果の不足や航行安全上の問題も残る。現在の成長をもたらしているのは気候変動や航路自体の経済性向上ではなく、世界各地の戦争の増加である。

 第1の推進力は、ウクライナ侵攻である。ロシアのウクライナ侵攻後に西側諸国が導入した大規模制裁は、ロシアの貨物を東方へ振り向けただけでなく、北極圏に新たな輸送需要を生み出した。戦前には実験的だったロシア北極圏からの原油輸出は、2019年の220万バレルから2025年には1,300万バレルへと約6倍に増加した。北極海航路を利用すれば、タンカーへの検査、拘束、その他の制限が生じる海域を避けてアジアに到達できるためである。ロシア・中国間貿易そのものの拡大も寄与し、2026年上半期だけで北極海航路経由の露中貨物は500万tを超えた。ただし、ロシア政府が期待するアジア~欧州間のトランジット輸送には十分結び付いていない。2025年夏、中国のNew New Shipping LineとロスアトムはNorthern Sea Route Shipping Lineを設立したが、2026年シーズンに予定されているのはDubai Towerを含めわずか8航海、輸送能力約1万4,000コンテナにすぎない。これは2026年上半期だけで約45万コンテナに達した露中間輸送より桁違いに小さい。

 第2の推進力は、湾岸地域の戦争である。2026年にはもう一つの要因として、米国・イスラエルとイランの戦争が加わった。ホルムズ海峡の交通量が約90%減少し、イエメンのフーシ派が紅海の航行も制約したことで、各国は炭化水素輸送の代替ルートを模索し、その一部がロシア北極圏に向かった。8月半ばまでに約600万バレルが北極海航路経由でアジアへ輸送され、前年を上回った。中東からの供給混乱が続けば、中国もロシア産の購入を増やす可能性がある。インドと韓国も中東危機を明示的な理由として北極海航路利用に関心を示した。ロシア政府は2026年7月、インドとの北極海航路輸送発展に関する覚書を承認し、ロスアトムは年内の署名を目指している。韓国も8月22日に釜山からフェリックストウへの試験輸送を実施し、2030年代には恒常的なルートにすることを目指している。韓国の石油・ガス輸入の80%以上は歴史的に中東に依存しており、ホルムズ海峡封鎖に対する脆弱性が大きい。つまり中東の戦争は、米国の同盟国まで北極海航路利用へと向かわせている。

 第3の推進力は、米中対立である。最も持続的な北極海航路発展要因は米中対立である。中国の石油輸入の約80%はマラッカ海峡を通過する。中国にとって同海峡封鎖の危険は以前から重大な安全保障問題であり、北極圏での活動拡大は、米中関係が急激に悪化した場合にも利用できる代替輸送路を増やす意味を持つ。ただし北極海航路も米国の圧力から安全とはいえない。東側出口のベーリング海峡では米国が軍事的プレゼンスを強化しており、西側もバレンツ海からノルウェー沖を経てNATOが強く支配する海域へ出る。したがって、中国にとって北極海航路は現時点では本格的な代替ルートではなく、将来に備えた経験蓄積の場という性格が強い。経験豊富な乗組員、海氷データ、船舶などを整備し、平時の定期運航を長期間続けること自体が、非常時の航路利用能力を高める。

 中国の関心はロシアに安定した需要を保証する一方、北極海航路に対するロシアの支配を弱める可能性もある。中国が独自の砕氷船や特殊タンカーなどを整備すれば、ロシアの競争優位は低下する。航路自体はロシア沿岸を通り続けても、砕氷支援、造船、出発港、保険、航行監視などを中国側が担えるようになる可能性がある。

 経済性を比較すると、北極海航路は依然として最も高価である。2026年8月27日時点で、上海~ロッテルダム間の40フィートコンテナのスポット運賃は4,287ドルだったのに対し、北極海航路では約8,500ドルと約2倍である。しかも輸送期間20日という条件に加え、狭い季節的航行期間に制約される。中国~欧州間鉄道輸送は、2026年1月平均で約6,000ドル、所要16~22日だった。したがって北極海航路は鉄道より高いにもかかわらず、時間面での優位もない。一方、鉄道では軌間の違いによる国境での積み替えが必要になるため、危険物や不安定な貨物などには北極海航路のニッチな需要が存在する。今回のSea Legendの貨物にも、蓄電装置、駆動用バッテリー、太陽光発電モジュールなど、米中通商摩擦の対象となり、陸上輸送しにくい商品が含まれている。

 北極海航路で8,500ドルもの運賃が支払われる理由は、時間短縮そのものではなく、途中で貨物を止められる地点が少ないことにある。その割増料金が成立するのは、他の輸送ルートが異常事態に陥っているからにすぎない。中東海域の航行が部分的にでも正常化すれば、海上コンテナ運賃は2023年末の水準、すなわち1コンテナ1,500ドル未満まで低下するとの予測もある。その場合、北極海航路の8,500ドルという価格を経済的に説明することは難しくなる。

 現在の北極海航路の人気上昇は、その航路自体の優秀さというより世界の紛争の関数である。海氷状況、航路の経済性、砕氷船団が根本的に改善したわけではない。世界的な緊張緩和が実現すれば、北極海航路は再び「季節的で、高価で、ほとんど船が通らず、維持費が収益を上回る航路」に戻る可能性が高い。 その真価を判断する一つの目安が2029年である。それまでに中国国有企業や欧州系など世界の大手海運会社が北極圏の定期航路に参入すれば、商業航路として成立したと評価できる。逆に二流の事業者が便宜置籍された小型フィーダー船を運航する状態にとどまれば、これは本格的な輸送回廊ではなく、世界に十分な戦争が存在する間だけ採算の取れる、ロシアと中国による「戦略的経験を蓄積するための共同事業」にすぎないことになる。


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 「世界経済に忍び寄る『黒海海運』麻痺のダメージ」と題するエキスパートトピを書きましたので、ぜひご覧ください。



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 ロシアで政権から独立した世論調査機関として定評のあるレヴァダセンターのデニス・ヴォルコフ所長が、以下の記事で、下院選結果を総括しているので、以下で要旨をまとめておく。

 世論調査によって、新しい下院の基本的な構成は投票前からかなり正確に予測されていた。投票率は前回より数ポイント上昇すると予想され、実際にそうなった。「統一ロシア」が第1党になることも予想どおりだったが、得票は予測をやや上回った。世論調査が困難な「新地域」における与党支持を十分に織り込めなかった可能性がある。共産党の第2位と得票はほぼ予測どおりだった。自由民主党は第3位と予測されていたものの、得票は予想をやや下回った。「新しい人々」の第4位、公正ロシアが議席獲得ラインぎりぎりとなったことも意外ではなかった。最大の予想外は「ヤブロコ」の支持急増だったが、これも選挙戦の途中から世論調査で把握されるようになっていた。

 今回の結果を理解するうえでは、2026年秋までの社会意識の変化が重要となる。2022~24年には、国際紛争を背景とするロシア社会のかなりの部分の結集、長期間にわたる生活水準の上昇、さらに新たな動員を行わず志願兵募集を選択したことなどにより、社会のムードはほぼ一貫して改善した。2024年半ばには、国の状況、個人の経済状態、将来への期待など、多くの指標が2008年の「プーチンの安定」のピークに匹敵する高水準に達した。

 転換したのは2025年半ばである。蓄積した経済問題に加え、トランプによるロシア・ウクライナ紛争解決への期待が崩れたことで、社会のムード、国の状況に対する評価、政権支持率が徐々に悪化し始めた。2026年春末から初夏には悪化が一服するように見えたが、ウクライナによるロシア都市への攻撃範囲の予想外の拡大と、それに伴うガソリン危機によって再び否定的感情が強まった。6~7月には社会のムード、現状評価、政権支持率が目立って低下した。しかし8月になると、最初のショックが薄れ、政府による厳しい規制措置で燃料市場も比較的正常化し、人々も状況に適応した。その結果、選挙直前には政権と「統一ロシア」の支持率が回復した。

 それでも現在の社会意識は、前回下院選挙が行われた2021年より良好であり、2021~24年の改善分がその後の悪化によって完全に失われたわけではない。このため、「統一ロシア」が前回を上回る結果を得たのは自然だった。投票率上昇には、遠隔電子投票の普及も影響した可能性がある。

 統一ロシア、公正ロシア」、そして程度は弱いものの自民党と新しい人々の支持者は、ロシアが正しい方向に進んでいると考え、プーチン大統領の政策を概して支持する傾向が強い。これに対し、最も抗議的なのは「ヤブロコ」と共産党の支持者である。「ヤブロコ」支持者では国が間違った方向に進んでいるとの見方が多数を占め、共産党支持者でも約半数に達する。同様の否定的態度は、無効票を投じる予定の人や棄権予定者にも多かった。

 経済的に比較的恵まれているのは統一ロシアとヤブロコの支持者だが、前者は状況の改善を感じる傾向が強いのに対し、後者は悪化を感じている。共産党、公正ロシア、自民党支持者は比較的所得水準が低く、状況が悪化したとの回答も多い。新しい人々はその中間に位置する。年齢では共産党支持層が最も高齢である。一方、ヤブロコ支持者の3分の2は35歳未満で、新しい人々でも35歳未満が3分の1以上を占める。

 既存政党には長年同じ党に投票している固定支持層があり、「習慣」で投票するという回答も少なくない。統一ロシアについては、「プーチンの党」であることが重要な支持理由となっている。政権党であり「最も強い党」であるため、公約の少なくとも一部を実現できると期待されている。また、現在の生活に満足し、政治路線の変更を望まない層から支持されている。共産党支持者にはソ連時代から長期間支持している人が多く、レーニンやスターリンは、過去の秩序や、より公正で豊かだったと認識されるソ連社会の象徴となっている。自民党には、死去したジリノフスキーへの支持が依然として強く残る。「彼はいつも真実を語った」「すべてを予見していた」といった評価が支持理由として語られ、党指導部も創設者の名前を引き続き積極的に利用している。

 新しい人々は「若者の党」「進歩的な勢力」と認識され、新しい政治家による刷新への期待を集めている。インターネット上の禁止やブロッキングに反対していることを評価する支持者もいる。 公正ロシアは社会的公正を訴える点が支持理由となっているものの、今回の選挙では統一ロシアとほとんど区別できない存在として受け止められ、党としてのアイデンティティを失いかけていた。

 ヤブロコは20年以上にわたり1~2%程度の支持にとどまっていたが、今回、急速に支持を伸ばした。その支持者を最も明瞭に特徴づけていたのは、「特別軍事作戦」の早期終了をほぼ全員が支持していたことである。同時に、政権そのものやウクライナ政策への支持も低かった。他方、議席を有する諸政党の支持者でも、軍事行動継続より交渉を望む人が多数を占め、全国平均と同程度の約60%に達していた。しかし、これらの人々は同時にロシアの対ウクライナ行動を強く支持していた。したがってロシアの世論では、和平を望むことと政権を支持することが矛盾していない。このため、政権への抗議と反戦を結び付けた政治的主張によって動員できる層には、もともと限界があった。

 ヤブロコへの関心急増は今回の選挙戦最大のサプライズであり、2024年大統領選挙でボリス・ナジェジディンの立候補署名に人々が列を作った現象にも似ていた。5月時点ではレヴァダ、FOMとも支持率は1%以下だった。7月には約2%となったが、過去の選挙でも見られた程度の変化だった。一方、VCIOMの7月調査では18%が「ヤブロコへの投票を選択肢として考えられる」と答えたが、これは実際の投票意向とは別の指標である。この数字を選挙支持率と混同し、「ヤブロコが選挙に参加できれば第2党になれた」とする噂が選挙直前に広がったが、主要世論調査機関のデータはそれを裏付けていない。

 しかし8月になると、ヤブロコへの投票意向は20年以上ぶりに全回答者の4~5%に達した。選挙に参加していれば阻止条項を突破できる可能性が生じており、その場合の得票率は公正ロシアや新しい人々に近い6~7%程度だったと考えられる。支持拡大の中心となったのは、これまで選挙にも政治活動にも参加したことがなかった平和主義的な若者で、一部は党のボランティアにもなった。しかしヤブロコが選挙から排除されると、その多くは新しい人々を中心とする他党支持へ容易に移行した。安定したヤブロコ支持層が形成されるまでには至らなかった。

 統一ロシアは今回も、比較的豊かで現状の生活に満足している人々の党となった。2022~24年に社会のムードと現状評価が改善したことが、その支持基盤を強化した。公正ロシアの支持層は政権支持層と特徴が似すぎており、それが5%ぎりぎりの得票にとどまった一因と考えられる。その他の議席保有政党の支持者には程度の差こそあれ現状への不満がある。共産党は、とりわけ社会政策を厳しく批判しながら、ウクライナに対しては他党以上に強硬な政策を支持する高齢の抗議層を引き付けている。自民党支持者は自分自身の生活や経済情勢に不満を抱えているものの、政権そのものには概して忠実である。新しい人々の支持者は比較的若い都市住民で、現状にはほどほどに満足しつつも、政治路線や政権担当者の一定の刷新を求める層である。ヤブロコは長年なかった規模で関心を集め、政権に批判的で平和主義的な学生層を引き付けることに成功した。ただし、この新しい支持層を今後維持できるかどうかは不明である。


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360

 Bloombergの以下の記事が、ロシアのオリガルヒらの興味深い動きを伝えている。ロシアの富豪たちは、アリシェル・ウスマノフとミハイル・フリードマンがEU制裁から外れた経緯を検討しており、できればそれにあやかりたいが、それを自らの制裁解除に直ちに応用できると考える者は少ないという。記事のあらましは以下のとおり。

 資産凍結や複数の制裁制度をめぐる法廷闘争が何年も続くなか、多くのロシア富豪は、自らの「好ましからざる人物」としての扱いを短期間で解消する方法はないと考えている。ウスマノフとフリードマンの制裁解除についても、それぞれに固有の事情が作用した特殊なケースだと受け止められている。それでも、Bloombergが調査したロシア人実業家のうち少なくとも2人は、フリードマンの事例が自らの法的異議申し立てにも利用できる先例となることを期待し、詳細に検討する意向を示した。

 制裁法を専門とするモスクワの法律事務所BGP Litigationのセルゲイ・グランディンは、フリードマンのケースが一種の「攻略法」になりうるとみている。投資仲裁を利用すれば、政府に交渉を促したり、場合によっては制裁リストからの除外につなげたりする有効な圧力手段となりうる。請求額が大きければ大きいほど、交渉が迅速に進む可能性もある。ウスマノフとフリードマンは、これまでEU制裁から解除されたロシア人の中でも特に著名な人物であり、しかもEU主要加盟国による継続的な働きかけを経て解除された最初の事例となった。

 ウスマノフの制裁解除を求めたフランスの動きは他のEU加盟国を驚かせ、個人・企業に対する約3,000件の制裁措置の更新そのものが危うくなるほどの対立を引き起こした。最終的には妥協が成立し、ウスマノフとフリードマンを制裁対象から外す一方、それ以外の対象者に対する制裁を36カ月延長することになった。フランスがウスマノフの解除を求めたことに対応する形で、ルクセンブルクはフリードマンの制裁解除を求めた。フリードマンは、EU制裁に基づく資産凍結が投資保護条約に違反するとして、ルクセンブルクを相手に約160億ドルの投資仲裁を起こしていた。

 2022年の全面侵攻開始後、ロシアの富裕層の多くは資産や企業をロシアへ戻し、国内の銀行、消費関連企業、工業資産、テクノロジー企業などに資金を投入してきた。ウスマノフやフリードマンの制裁解除を歓迎しながらも、自分たちにとっての実際の意味は限定的だと考える富豪もいる。中には、自分たちの制裁解除のために利用できる「欧州人の囚人」を友好的な国で見つけられるわけではない、とブラックユーモアを交えて語る者もいた。 これは、フランスがウスマノフの制裁解除を働きかけた背景に、アゼルバイジャンとの囚人交換問題があったことを指している。EUがウスマノフの制裁解除に合意した翌日、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は、スパイ罪で収監されていたフランス人マルタン・ライアンを恩赦した。フランス政府は両者を公には結び付けていないものの、事情を知る関係者によると、フランスはアゼルバイジャンとの囚人取引の一環としてウスマノフの制裁解除を働きかけていた。

 一方、一部のロシア富豪は、ウスマノフとフリードマンの解除によって、欧州で事業を続けるロシア企業をめぐる状況がかえって悪化する可能性を懸念している。今回の決定によってEUの制裁政策が傷つけられたとの認識が広がれば、その反動として加盟国が他のロシア企業や富豪への制裁を強化する可能性があるためである。ウクライナ大統領府の制裁政策担当コミッショナー、ウラジスラフ・ヴラシュークはPoliticoに対し、ウスマノフとフリードマンを解除したのであれば、ノリリスクニッケルの主要投資家ウラジーミル・ポターニンと、ノヴォリペツク製鉄所を支配するウラジーミル・リシンをEUの制裁対象に加えるべきだとの考えを示した。ポターニンはすでに米国と英国の制裁対象であり、リシンはオーストラリアとカナダの制裁対象となっている。

 世界最大のパラジウム生産者であり、主要ニッケルメーカーでもあるノリリスクニッケルは、一部の金属を欧州に輸出し、フィンランドには精錬所を保有している。ノヴォリペツク製鉄所は、ベルギー・ワロン地域政府所有の投資ファンドSOGEPAと共同で欧州の複数の工場を所有している。また、EU制裁の適用除外措置により、2028年9月30日までEU向けに鉄鋼スラブを輸出することが認められている。


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355

 こちらの記事が、ウクライナ鉄鋼業がかつてない危機に直面していることを伝えているので、主な内容を以下のとおり整理しておく。

 ウクライナ最大の鉄鋼会社アルセロールミタル・クリヴィーリフは9月25日、ロシアによる工場への攻撃が激化する中、鉄鋼生産を再開できないと表明した。ウクライナの鉄鋼業界は、産業全体の崩壊を防ぐため、政府および国外のパートナーに大幅な支援強化を求めている。

 ロシアは夏以降、ウクライナの主要産業拠点を機能停止に追い込むことを狙った広範な攻撃を展開している。2025年にGDPの7%を占め、数万人を雇用していた冶金部門はその主要な標的となり、8月以降だけで少なくとも9回の弾道ミサイル攻撃を受けた。最近の攻撃による鉄鋼メーカーの損失は1億ドル近くに達すると推定されている。2022年にマリウポリのアゾフスターリおよびイリチ製鉄所がロシア軍に占領・破壊され、国内鉄鋼生産能力の40%が失われたが、2026年はそれ以降で最悪の年となっている。ロシア軍は高炉など重要設備を狙って精密攻撃を行い、銑鉄生産を不可能にしている。メトインヴェスト、インテルパイプ、アルセロールミタルいう主要3社はいずれも鉄鋼生産を停止している。

 問題は製鉄所への直接攻撃だけではない。ロシアの攻撃によって黒海の港湾が機能停止し、海上輸送による輸出入が困難になっている。同時に、EUが6月に導入した新たな通商措置によってウクライナ製品のEU市場へのアクセスが制約され、さらに欧州の脱炭素政策によって輸出コストも上昇している。加えて、一部の大手はオリガルヒ所有であるため、国際金融機関の支援対象になりにくい。海上輸送の代わりとなる陸上輸送は非常に高価であり、企業が毎月数千万ドル規模の損失を出している状況では大きな負担となっている。鉄鋼業が崩壊すれば影響は製鉄所だけにとどまらない。建設業界はより高価な欧州製鉄鋼を輸入せざるを得なくなり、建設費と物価を押し上げ、最終的には戦後復興のコストまで増大する可能性がある。

 欧州議会議員カリン・カールスブロは、EUがウクライナを支援するどころか、その鉄鋼業を弱体化させていると批判している。春にウクライナの製鉄所を視察した同議員は、EUに対して通商政策を早急に見直し、6月に導入した関税制度からウクライナを除外するよう求めている。ウクライナの防衛能力を本気で支援するのであれば産業インフラを支えなければならず、経済が崩壊すればウクライナは自国を防衛することがさらに困難となり、EUからの支援への依存度も高まるとの主張である。

 9月初め、鉄鋼業界はセルヒー・コレツキー首相に対し、状況が限界に達しているとして支援策を提案した。その一つが、既存の「ウクライナ・エネルギー支援基金」をモデルとした鉄鋼基金の創設である。外国のパートナーから資金を集め、被害を受けた企業が欧州から重要設備を調達できるようにする。緊急修理、生産能力の復旧、設備の強靱化などに利用することが想定されている。また、欧州復興開発銀行などの国際金融機関との協議を行い、リナト・アフメトフが所有するメトインヴェストのようなオリガルヒ系企業にも融資を可能にする必要があるとの主張も出ている。

 黒海港湾の閉鎖による物流費の高騰も深刻である。石炭など一部の貨物を鉄道やポーランド、ルーマニアの港湾経由で輸送すると、コストは従来より50~60%高くなる。これについては、ウクライナ政府と欧州諸国が物流費を分担する案が示されている。ウクライナ政府は財政収入を確保するため鉄道運賃を高水準に維持する必要があるため、EU側が資金を提供して政府が輸送費の一部を補助する仕組みが考えられている。物流費が下がれば、外国から銑鉄やスラブを輸入し、ウクライナ国内の圧延設備で鋼材を生産することも可能になる。現状では輸送費が高すぎるため、こうした原料・半製品の輸入も採算が合わない。

 鉄鋼業界は、EU鉄鋼市場への無制限のアクセスと、炭素集約的な輸入品に追加負担を課す炭素国境調整メカニズム(CBAM)からの免除も求めている。ミサイル攻撃を受けるたびに設備を再建しなければならないウクライナ企業には、大規模な脱炭素投資を行う余力がないというのがその理由である。

 鉄鋼業にとって最大の支援策となるのは、黒海航路の再開である。海上輸送が復活すれば物流費が大幅に低下するだけでなく、鉄鋼生産そのものを再開できない場合でも、鉄鉱石を輸出して外貨収入を得ることができる。9月23日の国連総会に合わせ、51カ国がウクライナの黒海通商ルート再開を支持する共同声明を発表した。しかしロシア側には、ウクライナの港湾や民間船舶への攻撃を弱める兆候はみられない。政府や外国のパートナーから必要な支援を得られたとしても、鉄鋼生産の再開には数カ月と数千万ドルが必要となる。しかもそれは、復旧後にロシアが再び攻撃しないことを前提とする。当面の課題は、生産拡大ではなく産業そのものを生き残らせることとなっている。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、大きな声では言えない(?)が、個人的にビートルズ以上に思い入れのあるのがキンクスで、その名曲、Sunny Afternoon - Kinksが今週14位につけており、これがピークだったようだ。全米ではメガヒットとまでは言えないが、本国英国ではBeatlesの「Paperback Writer」を首位から引きずり下ろし、2週連続1位を獲得している。歌詞は、「税務署に金を全部取られた 彼女にも逃げられた もう何もないから、せめて晴れた午後をのんびり過ごさせてくれ」といったもの。ビートルズがTaxmanで怒ってみせた同じテーマを、落ちぶれた金持ちの視点で皮肉を込めて描いている。Kinksが「You Really Got Me」の激しいロックバンドから「Ray Daviesの英国社会観察劇」を演じるバンドへ転換したことを決定づけた曲と位置付けられている。

その頃ソ連では
1966年10月1日:世界で初めて、地下核爆発を利用してウルタ・ブラクガス田の事故が収束された。ウズベク共和国の天然ガス田で、制御不能となって長期間噴出・炎上していたガス井の近くで地下核爆発を起こし、地層をずらしてガスの流路そのものを圧壊・遮断したもの。

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 「ロシア連邦予算の審議始まる 軍事費の把握はますます困難に」と題するエキスパートトピを書きましたので、ぜひご覧ください。


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353

 ロシアで来年度の連邦予算の審議が始まった。なお、連邦予算は当該年に加えその後2年間の見通しと合わせた3カ年のスパンで採択されるのが通例であり、今回も2027~29年の連邦予算案ということになっている。まだ予算案の詳細は不明なのだが、ざっと見渡したところこちらの記事が良くまとまっていたので、以下その中身を要約しておく。

 ロシア政府は9月24日、2027年連邦予算および2028~2029年の見通しを審議。同時に2029年までの社会経済発展予測と、2026年の改訂予測も検討している。新しい予算案は、すでに2026~28年予算法で設定されていた2027、2028年の数値を改定し、新たに2029年の見通しを決めることになる。

 現段階で明らかになっている最大のポイントは、2027年の連邦財政赤字がGDP比約2%になる見込みだということである。プーチン大統領が9月17日にこの数字を示し、シルアノフ財務相も同様の見通しを表明して、「管理可能な水準」としている。これは現行予算法で予定されていた2027年の赤字3.19兆ルーブル、GDP比約1.2%からかなり拡大する。ただし、新しい名目GDP予測がまだ公表されていないため、GDP比2%をルーブル額に単純換算することはできない。

 もう一つの大きな変更は、予算ルールで用いる原油の基準価格を1バレル=50ドルとすることである。しかも財務省は、2027~2029年の3年間を通じて50ドルを適用する方針を示している。この50ドルは「2027年の実際の原油価格予測」ではないという点である。これは予算ルール上、どこまでの石油・ガス収入を通常の歳出に利用し、それを上回る収入を追加収入・準備資産として扱うかを決める基準価格である。従来は現在の59ドル程度から毎年約1ドルずつ引き下げ、2030年に55ドル程度とする想定だった。それを一挙に50ドルまで引き下げることで、財政支出を高い原油価格に依存しにくくする狙いがある。

 新予算の詳細な歳出内訳はまだ明らかになっていない。しかし、プーチン大統領は9月17日、予算の「無条件の優先事項」として、国家の社会的義務の履行、国民の安全確保、国防力の強化を挙げている。したがって、正式な予算案が発表された際に、社会給付、医療、教育、国家プロジェクト、家族支援、インフラ、国防、安全保障への支出を重点的に見る必要がある。

 新しい3カ年予算の課題の一つは、原油市場の変動に対する財政の耐性を高めることである。プーチンによれば、2026年1~8月の非石油・ガス歳入は前年同期比18%以上増加した。また8月単月では連邦財政が6060億ルーブルの黒字となったとされている。ただし、2027~2029年について石油・ガス歳入と非石油・ガス歳入がそれぞれどの程度になるかは、正式な予算案の公表を待つ必要がある。 予算関連の税制変更を直ちに「増税」と解釈するのは適切でない。複数の所得源を合算して個人所得税を計算する仕組みなど、税務行政上の変更と税率引き上げは区別すべきであり、具体的評価は関連法案の公表後に行うべきである。

 2026年9月1日時点で、国民福祉基金は約13.19兆ルーブル、そのうち流動資産が約4兆ルーブルだった。シルアノフ財務相は、石油・ガス収入が想定を上回れば、年末までにFNBへの追加積立もあり得るとしている。予算ルールの基準価格を50ドルに引き下げれば、実際の原油価格・石油ガス収入がそれを上回った場合に準備資産を積み増す余地が大きくなる。一方、石油市況が悪化した場合には逆方向にこの仕組みが働く。

 今回の予算は、ロシア中央銀行の金融政策にも影響する。中銀の従来の基本シナリオでは、構造的プライマリー赤字を2027年GDP比1%、2028年0.5%、2029年ゼロへと縮小することを想定していた。これは通常の連邦財政赤字とは異なる指標であり、今回示された「2027年の財政赤字約2%」とは区別する必要がある。中銀は9月11日、新しい予算で構造的プライマリー赤字が基本シナリオより大きくなる場合、他の条件が同じならば、より引き締め的な金融政策が必要になる可能性があると指摘した。次回の主要な政策金利決定会合は10月23日であり、その時点では新予算の内容を金融政策判断に織り込める見込みである。

 今後の日程に関して言うと、9月24日に政府が審議した後、予算案は10月1日までに国家院に提出される。その後、国家院、連邦院での審議を経て、大統領の署名によって成立する。現段階では、①現行の2026~2028年予算法の数字、②新予算について政府が事前に明らかにした数字、③最終的に成立する2027~2029年予算の数字、の三つを混同しないことが重要である。


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 「ナヴァリヌィ・ライブ」のこちらの動画が、本職はエコノミストであるはずのアンドレイ・ベロウソフ氏が2024年5月に国防相に就任し、その下でロシア軍はどう変わったかということを論じている。だいぶ手厳しい告発調の内容になっているが、以下で主な内容を整理しておく。

 ベロウソフ氏は、モスクワ大学経済学部出身の経済学者・官僚であり、経済予測やモデル分析を専門として、2008年以降、政府内で経済発展省次官、経済発展相、大統領補佐官、第一副首相などを歴任した。国家による経済統制を重視する人物で、2014年のクリミア併合を支持し、2018年には金属・化学大手の超過利潤を国家が徴収する案を提唱したことなどが、その国家主義的な経済観の例として挙げられる。

 2024年5月の国防相就任は当初かなり意外視された。しかし、2年以上経った現在から振り返ると、その狙いは明確だった。つまり、長期的な消耗戦を遂行できるよう、軍の経済・兵站・調達・技術革新を整備することである。

 ショイグ時代とは異なり、軍の作戦指揮はゲラシモフ参謀総長に集中させ、ベロウソフは軍需産業、財政、兵站、装備調達、軍事施設建設などの「経営・管理」を担当する役割分担になった。副大臣にも財務省、会計検査院、大統領府などの出身者を登用し、国防省の行政・経済管理機構としての性格を強めた。つまり、ロシア軍を国家経済の中により効率的に組み込み、長期戦を可能にするためのテクノクラート登用であった。

 就任直後のベロウソフは、軍病院の過密、住宅問題、官僚主義、新技術導入の遅れ、国家国防発注の問題などを率直に指摘し、「間違えることは許されるが、嘘をつくことは許されない」という原則を掲げた。そのため、腐敗と官僚主義に覆われた国防省を、経済官僚の手法によって合理化するのではないかとの期待あるいは警戒があった。しかし、ベロウソフがシステムを変えたのではなく、システムの方がベロウソフを取り込んだ。現在では「改革者」というより、既存の仕組みを維持・運営する「管理者」にすぎなくなっている。

 具体例として挙げられるのが無人機である。2024年に設置された無人機技術センター「ルビコン」は、操縦者、技術者、開発者などを従来の軍組織からある程度切り離し、民間企業的な運営方式を導入した組織で、ウクライナ軍にとって非常に危険な存在に成長した。そこでベロウソフは、このモデルを拡大して本格的な無人システム部隊を構築しようとした。

 しかし、この「ルビコンのスケールアップ」は失敗した。組織が大きくなるにつれ、従来のロシア軍と同じ官僚主義や調達上の問題を抱えるようになった。特に人員確保が問題となり、大学生を大々的に募集したものの、計画3万4,000人に対して確保できたのは約8,000人だった。また、前線部隊が自費やボランティア経由で調達したドローンを新設部隊が吸い上げてしまう、といった批判もある。さらに、ウクライナ側が無人機を絶えず改良しているのに対し、ロシア国防省は標準化された機種を大量発注する傾向が強く、技術革新の速度についていけていない。

 それでも、ベロウソフ時代に明らかに強化された分野もある。それがウクライナ後方への長距離攻撃能力である。ミサイルの生産が増加するとともに、エラブガではシャヘド/ゲラン系無人機の生産が大幅に拡大した。さらに新型のジェット推進型「ゲラン4」「ゲラン5」などが登場し、大規模な無人機発射拠点も整備された。これは民間人へのテロだが、軍事能力についての分析部分だけを取り出せば、ロシアが長距離無人機・ミサイルを大量生産し、大規模な飽和攻撃を継続できる体制を構築したことは、ベロウソフ時代の軍事的な変化として認められる。

 逆に「最大の失敗」と位置付けられるのが防空である。軍用飛行場で航空機用シェルターの建設が進んだことは評価されるものの、製油所をはじめとする重要インフラについては、国防省が十分な防空体制を整備せず、事実上、企業側に自衛を任せてきた。その結果、ウクライナ無人機による製油所、倉庫、物流施設などへの攻撃が相次いだ。移動式対無人機射撃部隊の導入も遅く、車両、機関銃、要員訓練、部隊間調整などが不足していると指摘するロシア側軍事ブロガーもいる。こうして、攻撃用無人機の大量運用能力は強化された一方、自国後方をウクライナの無人機から守る能力では立ち遅れた。

 もう一つ期待されたのが、従来型の巨大軍需企業と、戦争開始後に急成長した小規模な民間開発企業、いわゆる「人民軍需産業(народный ВПК)」との関係改善だった。しかし、新装備の試験、改良、正式採用などの手続きは依然として遅く、国防省の官僚主義は大きく変化していない。無人機の国家調達をめぐる刑事事件も相次いでおり、中国製品をロシア国産品として再ブランドして納入した疑いなどが出ている。また、大型輸送無人機などについては依然として前線から不足が訴えられている。

 ベロウソフ就任後、ショイグ時代の国防省幹部らを対象とする汚職事件が相次いだ。だが、これをもってベロウソフが国防省の体質を根本的に改革したとは認められない。象徴的な例として、極東の第155海軍歩兵旅団向け施設建設が挙げられる。ベロウソフ自身が完成期限を指定し、遅延すれば刑事責任を問うとまで警告したにもかかわらず、工事は少なくとも1年遅れた。強い指示を出しても実際の行政執行能力が伴わないことの象徴である。

 ベロウソフが就任時に掲げた「嘘をついてはいけない」という原則についても、完全に失敗した。クルスク州へのウクライナ軍侵入以降、国防省は実際の戦況と乖離した発表を繰り返し、占領していない集落を占領したと発表するなど、戦果の誇張が常態化した。同時に、国防省のメディア戦略そのものは高度化した。旗を掲げる映像、戦果を強調する動画、定型化された「勝利報道」が増える一方、兵士自身による不満や現場映像は表に出にくくなった。つまり、軍の実態を改善する以上に、軍のイメージ管理が改善された。

 兵員については、契約兵への一時金や募集費用が拡大し続けている。純粋な志願者が次第に減少する中で、毎月約3万人規模の補充を維持するため、徴兵中の兵士や社会的に脆弱な人々に契約を迫るなど、半強制的な募集が広がっている。また、2022年秋に動員された兵士の大規模な復員も実現せず、むしろ契約兵へ移行させられている。公式の追加動員を避けながら人的資源を補充する「隠れた動員」である。

 親戦争派のロシア軍事ブロガー(Zブロガー)の評価が変化している。ベロウソフ大臣就任当初は、腐敗したショイグ体制を新大臣が改革するとの期待が大きかった。しかし次第に、物資不足、救急キット不足、無人機部隊の混乱、虚偽的な戦果報告などへの不満が高まり、2026年になると一部では「ショイグより悪い」とまで批判されるようになった。つまり、反戦派だけでなく、戦争を支持し、ロシア軍の勝利を望む側からも「改革が実現していない」という批判が出ている。

 ベロウソフの息子パーヴェルが経営するコンサルティング企業が国営・軍需関連部門と取引しており、2023年以降急速に売上・利益を拡大したことから、調査報道機関が潜在的な利益相反を指摘している。また、ベロウソフ本人についても、イタリアの別荘を所有していた可能性を示すメールが流出している。ただし、登記上の所有関係を確認できていないなど、これについては確証はない。

 総じて、ベロウソフはショイグ時代の国防省を根本的に作り替える「改革者」にはならなかった。官僚主義、兵站、装備調達、技術革新、後方防空などの構造的問題は残り、「人民軍需産業」を正規の軍需システムに統合することにも成功していない。一方で、一部の問題を緩和し、軍需生産、とりわけ長距離無人機などの能力を拡大し、国防省の情報発信を強化するなど、既存システムを以前より円滑に機能させる「管理者」としては一定の役割を果たした。そして政治的には、独自の権力基盤や政治的野心を示さず、プーチンに忠実であり、ゲラシモフの作戦指揮を支える後方管理者として、長期戦を可能にすることこそがベロウソフの本質的な役割となっている。


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 こちらの記事が、ロシアにおける動画視聴市場の動向について伝えている。上掲グラフは、動画サービス利用者が、各年の上半期に各サービスを何分見たかを示している。記事は、2024~25年に進んだYouTubeからロシア系サービスへの視聴者移動が一巡し、むしろYouTubeがかなり強く戻ってきているという変化を伝えている。なお、たとえばYouTubeの視聴時間は2026年上半期では99分になっているが、これはロシア市民全体が平均99分見ているという意味ではなく、1ユーザー当たりの視聴時間を比較したものである。さらにSmart TVが除外されており、VK Видеоについて比較可能な数字がないなど、プラットフォーム間比較にも一定の制約がある由。記事の要点は以下のとおり。

 Future Lab(Starlinkグループ)がMediascope Cross Webのデータをもとに分析したところ、2026年上半期、ロシアの主要動画プラットフォームにおける1人1日当たり平均視聴時間は前年比6%増の87.7分となった。しかし、YouTubeを除くと逆に5%減となっており、ロシアにおける動画視聴時間の増加は、実質的にすべてYouTubeによってもたらされた。前年同期には反対で、動画プラットフォーム全体が27%減だったのに対し、YouTubeを除けば32%増だった。

 特にYouTubeは、2026年上半期の1人1日当たり視聴時間が前年比24%増の99分となった。2025年上半期には28.6%減少していたため、かなり大きな反転だ。なお、調査はロシア国内のデスクトップおよびモバイル利用を対象とし、Smart TVと埋め込み動画の視聴は原則として含まない。またVK Видеоは、MediascopeがVKグループ全体を一体として測定しているため、この比較には含まれていない。

 Rutubeについては評価が食い違っている。Future Labによれば、埋め込み視聴を含めた1日当たり視聴時間は4.7%減の41分となり、初めて半期ベースで減少した。ただし埋め込みを除けば9.5%増の62.8分。これに対してRutube自身は「視聴時間が減少しているとは認識していない」と反論し、Mediascopeの別の指標では2026年上半期に9.1%増だったとしている。VKも、VK Видео専用アプリの平均視聴時間が大幅に伸び、約100分に達したと説明している。

 各社はそれぞれ自社の動向について説明しており、Yandexは検索・コンテンツ推薦の質、Startはコンテンツ分析と視聴者の関心予測の改善を成長要因として挙げている。一方Winkは、治安上の理由によるモバイルインターネットの制限がモバイル視聴に悪影響を与えたと説明し、Smart TVでの視聴は伸びているとしている。

 専門家によれば、2024~25年のロシア系動画サービスの成長は必ずしも「有機的成長」ではなかった。YouTubeの通信速度が人為的に低下したことで、そこから離れたユーザーがRutubeなど様々なサービスを試し、その結果としてロシア系サービスの利用が急増した面が大きかった。現在はこの一時的な視聴者再配分が一巡し、市場そのものがピークに達したとみられている。

 そして2026年になってYouTubeが再び伸びている理由として、専門家はコンテンツの豊富さ・質と推薦アルゴリズムの優位性を挙げている。ロシア系プラットフォームのアルゴリズムは利用者の期待に十分応えられず、YouTubeに劣っているという評価だ。また、今や各サービスが新たな動画需要を生み出すというより、すでに存在する動画視聴時間を奪い合う「ゼロサム的」な市場になりつつあるとも指摘されている。

 Rutubeについても、YouTube低速化後に大量の「お試しユーザー」を獲得したものの、それが必ずしも恒常的な利用習慣には結びつかなかったとの指摘がある。また、コンテンツ制作者を十分に引き付けられていないことも、利用者の関心低下につながっている可能性がある。


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Dxeo

 「ロシア下院選が終了 『茶番』だったとはいえ、節目を越えたロシアを待ち受けるのは?」と題するエキスパートトピを書きましたので、ぜひご覧ください。


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20260919

 HP更新しました。マンスリーエッセイ「幻に終わったヨーロッパ・ロシア大周遊、秋の満喫旅」です。よかったらご笑覧ください。


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374

 ロシア産の原油や天然ガスの購入量が多い上位5カ国からの全ての輸入品に米国が最大100%の関税を課すことなどを柱とする「リンゼー・グラム・ロシア・イラン制裁法」は、米上下両院により可決され、9月18日トランプ大統領の署名により成立した。それでは、同法の実効性はどうなのだろうか? 情報を探したところ、トランプ署名の前に書かれたものだが、こちらの論考が目に留まった。米国の元国務次官補・元制裁政策調整官であるダニエル・フリード氏による論評である。以下でその要旨をまとめておく。この法律はウクライナおよびそれを支持する超党派勢力にとっての成果である一方、実効性はトランプ政権がどのように運用するかにかかっていると論じている。

 この法律は、ウクライナおよびそれを支持する超党派勢力にとっての成果である。一方、その実効性は、トランプ政権がどのように運用するかにかかっている。

 法案の中で最も強力かつ論争的なのが第113条である。これは、ロシア産原油・天然ガスを大量に輸入する国、あるいは制裁回避を大規模に助ける国に対し、最大100%の関税を課す権限を米政権に与えるものだ。対象となりうる国として、中国、インドだけでなく、トルコ、日本、さらにEU加盟国のスロバキア、ハンガリーが挙げられる。

 この仕組みには批判もある。そもそも関税はロシアや第三国に圧力を加える手段として適切なのかという疑問があり、さらに政権に広い裁量を与えるため、たとえば一部加盟国がロシア産エネルギーを購入していることを理由にEU全体に関税を課すといった乱用も理論上は可能になる。こうした懸念には根拠があり、実施は容易ではない。

 ただし、特筆されるのは、第113条に組み込まれた柔軟性である。113条(b)では、対象国がロシア産石油・ガスの輸入を削減または停止すれば、関税率を調整できる。したがって、最初から100%関税を機械的に発動するというより、これを交渉上の圧力として利用し、各国にロシア産エネルギー輸入を段階的に削減させることが可能になる。過去に米国がイラン産石油をめぐって中国やインドに行わせた「ramp down(段階的削減)」というモデルがある。また113条(c)により対象はロシア産石油・ガスの上位5輸入国に限定されるため、対象国が際限なく広がる仕組みでもない。

 自分(フリード)自身、2014年のロシアによる最初のウクライナ侵攻後、国務省の制裁調整官として欧州諸国などとの制裁交渉に携わった経験がある。その経験を踏まえると、第113条は適切に使えば、各国政府との交渉を通じてロシアの石油・ガス収入を削減する有効な道具になりうる。むしろ懸念されるのは、トランプ政権がEUなどに乱用することよりも、適用除外(waiver)を乱発し、強力な条項をほとんど使わない可能性である。

 そのため、トランプ大統領が法案に署名し、超党派の支持者を伴ってこれを大々的に発表したうえで、迅速かつ強力に実施する意思を示すべきだである。それによってウクライナを励まし、欧州の同盟国に米国の連帯を示し、さらにロシア政府に対して和平交渉を引き延ばさないよう圧力をかけられる。

 トランプ政権が実際にそのように行動することには懐疑論もあるが、議会はすでに行動した以上、政権の実施状況を監視すべきだ。政権が法律を実施するなら議会は支援し、実施しないなら議会が圧力をかけ、責任を問うべきだ。


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bill

 「対露制裁グラム法が成立 実効性はトランプ政権の『やる気』次第」というエキスパートトピを書きましたので、ぜひご覧ください。


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372

 こちらの記事が、ロシアのアルミ産業部門の巨人であるルサール社をめぐる最近の動きを伝えている。2026年に表面化した連邦連邦反独占局との価格形成をめぐる対立、輸出市場のアジアシフト、国内販売価格の問題、原料部門再編の懸案などが取り上げられている。記事の要旨は以下のとおり。

 ルサールは2026年上半期に4億1,900万ドルの純利益を計上し、前年同期の8,700万ドルの赤字から黒字転換した。売上高も10.7%増の83.4億ドルとなった。背景にはホルムズ海峡封鎖によるアルミ価格上昇があり、平均価格は前年同期比23.6%高の1t当たり3,227ドルとなった。一方、販売量は前年比10%減少し、生産量は4.5%増加した。なお2025年通年では4億5,500万ドルの純損失だった。

 ルサール発足時の2007年、ロシア連邦反独占局(FAS)は国内価格をロンドン金属取引所(LME)の価格に、欧州市場の現物価格を反映する「ロッテルダム・プレミアム」を加味して決める方式を認めていた。ところが2022年以降、ロシア産アルミの輸出先は欧州からアジア、とりわけ中国へ大きくシフトした。ルサールの売上高に占めるアジアの比率は2022年の23.3%から2025年には67.4%へ上昇し、EUは23%から7.3%へ低下した。輸出そのものが売上高に占める比率は両年とも74%で変わっておらず、「輸出依存度は変わらないが、仕向地が欧州からアジアへ劇的に変わった」という構図である。

 FASは、主要輸出市場がすでにアジアになった以上、欧州市場を基準とするプレミアムを国内価格に組み込むのは不合理だと主張。国内需要家への販売価格が外国顧客向けを上回らないよう、契約条件の変更を要求した。しかしルサールは応じず、FASは2026年7月に反独占法違反事件として正式に調査を開始した。

 実際、FASによれば国内価格は輸出価格を、2025年11月に4.9%、12月に6.4%、2026年1月に4.2%、2月には10%上回っていた。戦略研究センターの調査でも、国内需要家は外国顧客より平均3.4~12.7%高い価格を支払っているとの結果が出た。

 FASが検討しているのは、アジアと欧州への実際の輸出比率を反映した加重平均輸出パリティ価格である。たとえば輸出の58%がアジア向けなら、国内価格の58%についてもアジア市場価格を基準にし、さらに物流費・関税を控除するという考え方である。

 ルサールはFASの警告に従わず、逆にモスクワ仲裁裁判所に提訴し、現在の価格計算方式は合法だと主張している。裁判でルサールが勝訴すればFASはすでに開始した事件を取り下げざるを得なくなる可能性がある。他方、FAS側が勝訴しても、それだけで反独占法違反そのものが確定するわけではない。警告の適法性をめぐる裁判と、実際に競争制限が存在したかを審査するFASの手続きは別だからである。競争制限が認定された場合、制裁金は原則として問題となった市場での売上高の1~15%などとされる。ルサールの2025年のロシア国内向け売上高は38.6億ドルで、試算では最悪の場合、制裁金は7,700万ドル程度に達する可能性がある。

 FASと産業商務省は8月31日、ルサールに対して生産するアルミの最低10%を取引所で販売することを義務付けた。国内市場向けが生産量のおよそ20%なので、その約半分を取引所経由にする計算となる。狙いは国内価格形成の透明性向上である。興味深いことに、9月8日のサンクトペテルブルグ取引所での取引価格は1t当たり37万500ルーブル(4,298.6ドル)で、同日のLME価格3,325ドルを25.5%上回った。したがって、取引所取引を導入しただけで国内価格が国際価格並みに下がるわけではないことも示されている。

 もう一つの大きな問題が、ロシア国内のボーキサイト・アルミナ生産である。ルサールはミシュスチン首相に書簡を送り、国内原料基盤を近代化する過程で、一部のボーキサイト・アルミナ設備を休止する意向を示した。同社によれば、これらの事業は年間8億ドルの損失を生んでおり、原料部門の再建には18億ドルの投資が必要となる。その間は輸入ボーキサイトを使用する方針で、輸送・港湾料金の優遇措置として年間約7,000万ドルの支援を政府に求めている。また、工場休止によって影響を受ける地域・自治体への支援も求めている。対象とされるのは、セヴェロウラリスク・ボーキサイト鉱山、ボゴスロフスク・アルミ工場、ウラル・アルミ工場、ピカリョヴォ・アルミナ工場の4事業所。セヴェロウラリスクはルサールのボーキサイト消費量の9%、3つのアルミナ工場は同社のアルミナ生産の30.7%を担っている。

 これに対し、スヴェルドロフスク州知事は工場停止を認めない姿勢を示し、レニングラード州側も驚きを表明した。専門家からは、4事業所は単なる不採算工場ではなく、採掘、鉄道輸送、ネフェリン精鉱処理、建材生産などを結ぶ一体的な産業システムであり、閉鎖すればロシア国内の原料基盤そのものが大きく損なわれるとの指摘が出ている。

 一方、ルサールの提案そのものが政府支援を引き出すための交渉戦術ではないかという見方もある。実際に国内原料設備を閉鎖すれば輸入アルミナへの依存が高まり、国際価格上昇時にはルサール自身が不利になるため、実際の全面的な休止は考えにくいという指摘である。


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 「米トランプ政権とミョーに馬が合うベラルーシのルカシェンコ体制」と題するエキスパートトピを書きましたので、ぜひご覧ください。


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370

 フランスが突然、ロシアの富豪アリシェル・ウスマノフ(上掲写真)をEUの個人制裁リストから外すよう求め始めたことが、様々な憶測を呼んでいる。こちらの記事が、一連の動きを整理しているので、以下で要約しておく。

 EUでは、2022年2月以降に導入された対ロ制裁のうち、個人・法人約3,000件を対象とする制裁リストを半年ごとに全会一致で更新している。ところが今回、フランスがロシアの富豪アリシェル・ウスマノフの除外を求め、以前から同様の要求をしていたスロバキアに同調したため、更新手続きが停滞した。フランス外務省は理由について、複数の国際的パートナーから指摘された「国家安全保障上の問題」が生じたため検討している、とだけ説明し、具体的内容については「機密の協議」であるとして明らかにしていない。

 報道によれば、9月15日に予定されていた制裁リスト更新を前にフランスがウスマノフの除外を要求し、EU各国は結論を1週間先送りした。スロバキアは夏以来ウスマノフの除外を求めている一方、多くの加盟国は依然として反対している。またルクセンブルクは、ウスマノフを除外するのであればロシアの富豪ミハイル・フリードマンも除外すべきだとの立場を示している。

 フランスの動きの背景としてFTなどが報じているのが、アゼルバイジャンで拘束・収監されているフランス人の釈放問題である。フランスがウスマノフへの制裁解除と引き換えに、アゼルバイジャン側からフランス人の釈放を引き出そうとしている可能性があるという。Le Mondeも、ウスマノフへの措置を緩和すれば「世界のどこかで収監されている少なくとも一人のフランス国民」が釈放される可能性があるとのウクライナ筋の話を紹介している。

 とりわけフランス政府が懸念しているのが、フランス人実業家マルタン・ライアンのケースである。ライアンはアゼルバイジャンでスパイ罪に問われ、2026年7月末に控訴審で懲役10年を言い渡されたが、本人は容疑を否認している。フランス外務省は即時釈放を要求している。このほか、フランス企業Saurの中東担当幹部アナス・デラズも、ロシアの富豪ファルハド・アフメドフから賄賂を受け取ったとして2025年11月に懲役12年を言い渡されている。

 そもそも現在の仏・アゼルバイジャン関係はきわめて悪化している。フランス外務省は、アゼルバイジャンではフランス人が「恣意的に拘束」される危険があるとして、緊急の場合を除いて渡航しないよう勧告している。ただしフランス外務省は、アゼルバイジャンで恣意的に拘束されているフランス人が具体的に何人いるのかについても回答を避けている。

 フランスの姿勢は他のEU加盟国から強い反発を招いている。Euronewsによれば、加盟国の間には「巨大な苛立ち」があり、あるEU外交官は、フランスの動機はむしろ「主として経済的理由」ではないかとの疑念も示している。ただし記事には、この「経済的理由」が具体的に何を指すのかについての説明はない。

 とりわけ問題視されているのは、EUの対ロ制裁を、第三国に拘束されたEU市民を取り戻すための交渉材料として使う前例を作ってしまうことである。FTによれば、これまでにもロシアとの囚人交換や、裁判で勝訴した人物、モスクワと距離を置いた人物などを制裁対象から外した例はあった。またハンガリーやスロバキアの政治的要求による除外も存在した。しかし、囚人釈放と対ロ制裁解除を直接結びつけるのは今回が初めてになるという。ある欧州外交官は、これでは「ロシアだけでなく、欧州人を投獄する側にも褒美を与える」ことになると批判している。

 Le Mondeが引用するブリュッセルの外交筋も、こうした前例が生まれれば、「EU市民を人質に取れば何でも可能になる」という危険なメッセージを世界に発することになると警告している。つまり、二国間問題を解決するためにEU共通の対ロ制裁を取引材料にすること自体が問題視されている。

 ウスマノフはウズベキスタン生まれの73歳のロシア人実業家で、鉱業や通信事業で財産を築き、Forbesによる推定資産は約140億ドル。EUはプーチン大統領との「特に緊密な関係」などを理由に制裁対象としてきたが、ウスマノフ本人は制裁の根拠を争い、欧州の裁判所で複数の訴訟を起こしている。

 なお、制裁リストをめぐる政治的な取引自体は初めてではない。ハンガリーは以前から更新への拒否権行使をちらつかせており、2025年3月にはスロバキアとともに、ウスマノフの姉妹グリバホル・イスマイロヴァを制裁対象から外すことに成功している。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週はソフトロックの金字塔、Cherish - Associationが1位に輝いた。アソシエーションというのは基本的に歌って演奏もするバンドであるが、最大の強みは高度な多声ヴォーカル・アンサンブルにあり、レコード制作ではWrecking Crew系のスタジオミュージシャンをかなり起用していたらしい。このCherishも、まさにそのような音だ。なお、英語のcherishは日本語にしにくいが、単に愛するだけでなく、かけがえのないものとして慈しむといった意味合いになる。

その頃ソ連では
1966年9月20~28日:ソマリアからアデン・アブドラ・ウスマン大統領がソ連を訪問。

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 9月9日に開催した第59回スラブ・ユーラシア研究センター公開講演会での講演、「鉄は国家なり:戦争が試すロシア・ウクライナ鉄鋼業の底力」をYouTube配信しました。ぜひご覧ください。


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coale-20260915

 米トランプ政権がプーチン・ロシアに接近して対ウクライナ侵攻の和平を実現しようと工作していることは良く知られているが、実はトランプ政権はルカシェンコのベラルーシにかなり食い込んでおり、こちらは政治犯の釈放という点ではかなりの成果を挙げている。その交渉役となっているのがジョン・コール(John P. Coale)という人物であり、職業外交官でもロシア・東欧専門家でもなく、トランプ氏と個人的な信頼関係を持つベテラン弁護士が特使になった形である。

 本人によれば、2025年に国務省からベラルーシ行きを打診されたとき、「ベラルーシって一体どこだ?」というのが最初の反応だったという。2025年3月にウクライナ担当特使の副特使となり、その後ベラルーシとの政治犯釈放交渉に参加。11月にトランプからベラルーシ担当特使に任命された。その交渉スタイルは独特で、ユーモアによって相手との個人的関係を作ることを重視しているという。ルカシェンコとは冗談、ウォッカ、かなりくだけた会話を通じて関係を築いたとされている。実際、こちらの記事によれば、本人が今年3月に語ったところによると、最初の会談でルカシェンコが欧州の指導者への不満を語り始めた際、コールもかなり下品な表現で欧州人をけなして同調、それですっかり打ち解けたのだという。

 前置きが長くなったが、今般再びコール氏がベラルーシを訪問し、ルカシェンコと会談した。本件に関し、こちらの記事で政治評論家のA.クラスコフスキー氏が論評しているので、以下要約しておく。

 9月15日にベラルーシの最高権力者ルカシェンコは、ミンスクで米国のジョン・コール特使らと会談した。この席でルカシェンコは、ベラルーシには政治犯も政治的弾圧も存在しないと主張した。しかし、米国側はそうした説明を額面通りには受け取っておらず、ルカシェンコ自身も、トランプが「体制の人質」と呼ぶ政治犯を、対米交渉の取引材料として利用している。

 今回の交渉の最終的な成果や釈放される政治犯の人数はまだ判明していないが、すでにベラルーシ側が得た成果が一つある。米シティバンクで凍結されている4,300万~4,400万ドルについて、コールは銀行側に凍結解除を要請し、そのための仕組みを検討していると述べた。この資金は、制裁のために凍結されていた可能性がある。

 米国がこうした譲歩をする背景の一つとして、ベラルーシ産カリ肥料への関心がある。ベラルーシ産カリの米国向け輸送がすでに再開されつつあるとみられ、ルカシェンコも凍結資金の返還を求めた際、「その後でもっと重大な問題について交渉しよう」と発言している。

 もう一つの交渉材料が、ベラルーシに残存している高濃縮ウランである。これはソ連時代の実験の遺産であり、核物質の拡散防止を重視する米国は、これを安全な場所へ搬出することに関心を持ち、その費用を負担する用意もあるとされる。

 ルカシェンコ側にとって特に重要なのは、カリ肥料の安価な輸出ルートを回復することである。現在は制裁のためロシアの港湾を利用せざるを得ず、輸送費が高くついているため、理想的にはリトアニアのクライペーダ港経由を復活させたい。コールはミンスク入りする直前にヴィルニュスでリトアニア外相と会談しており、政治犯の受け入れだけでなくカリ肥料問題も話題になった可能性がある。米国側にとっても、カリ輸送の物流費低下にはメリットがある。

 実際、リトアニア外相は5月、カリ肥料の問題をめぐって米国からリトアニア政府に圧力がかかっていることを認めていた。翌年分のカリ肥料契約の時期も近づいており、ルカシェンコの言う「もっと重大な問題」とはクライペーダ経由輸送の再開を念頭に置いたものではないかと見られる。またルカシェンコは、今年分のカリはほぼ契約済みであり、米国への試験輸送分をようやく確保したと強調することで、自国産カリの商品価値を高く見せようとしている。

 政治犯についてルカシェンコは従来通り、その存在自体を認めていない。「我が国の法律には政治犯という条文はない」と主張するとともに、釈放した人数と同じだけ新たに収監することが政府の目的ではないと述べた。しかし、人権団体「ヴャスナ」の数字はこの説明に反する。コールが前回3月に訪問した際には250人が釈放されたが、それ以降、新たに224人の収監者が政治犯と認定されたほか、釈放後に政治犯だったと認定された者も138人おり、合計362人に達する。ベラルーシ反体制派や人権団体も米国側に弾圧の継続について情報提供しており、コールは訪問前に「ヴャスナ」代表でノーベル平和賞受賞者のアレシ・ビャリャツキとも会談していた。

 米国との交渉ルートを維持するため、ベラルーシ当局は弾圧そのものをやめるのではなく、弾圧をより外部から見えにくい形に変えていく可能性があるのではないか。裁判情報を非公開にしたり、政治犯の家族に圧力をかけたりするほか、長期収監以外の「ハイブリッド型」の圧力を多用することが考えられる。自宅拘禁型の刑罰、高額な罰金、行政拘留、繰り返しの「予防的面談」、営業活動の妨害、職場や学校からの排除など、政権は多様な手段をすでに持っている。

 結局、ルカシェンコはトランプ政権からの好意的な関心を今後も維持し、その対価として経済的利益を得たいと考えているが、米国からの「ご褒美」のために体制そのものを本格的に軟化させるつもりはないのだ。一方、トランプ政権もベラルーシを民主国家に転換することをコールに課しているわけではないだろう。それでも米国の交渉によって新たな政治犯が釈放されるのであれば、それは「可能性の技術」として評価すべきだ。


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202608a

 代わり映えがなく恐縮だが、今般ロシア統計局が8月の消費者物価統計を発表したので、定番のグラフを更新してお目にかける。毎度申し上げるとおり、グラフがどんどん横長になっているので、クリック・タップし拡大してご覧ください。

 8月のロシアの消費者物価は、前月比0.08%減、前年末比4.67%増、前年同月比6.33%増だった。ロシアでは夏は青果物を中心にデフレになる傾向があり、昨年8月以来1年ぶりに単月で小幅ながら物価下落を記録した。

 下図は、消費者物価を食料品、非食料商品、サービスに分けてその推移を示したものである。8月単月では、食料品が前月比0.26%減、非食料商品が0.53%増、サービスが0.54%減だった。

 注目されるガソリンは、前月比0.76%増と、意外とそれほど高騰していない。ただ、これは価格管理が行われているからと見られ、価格自体よりも品薄や行列という形で危機が表れているからではないか。

 ところで、8月のデータで最も興味深いのは、サービスの中の「ロシアの黒海沿岸への旅行」という項目が前月比19.7%も下落していることである。本来であれば、8月はハイシーズンのはずだが。このあたりにもウクライナによる攻撃のダメージを見て取れそうである。

202608

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