ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

タグ:一帯一路

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 以前、「『欧州~中国西部』道路の通過ルート」というエントリーをお届けした。その時は、ロシアの南部を走る「子午線」という道路について主にお伝えしたが、実はそれと並行するように、もう一つの道路のプロジェクトがあり、もしかしたら東西を結ぶ主要路線としては、そちらがメインになるのかもしれない。モスクワ~カザン高速道路建設というのがそれであり、こちらに掲載されていた上の概略地図に見るように「子午線」よりも北のルートをとり、カザンから南下してオレンブルグに向かう。こちらに掲載されていたのはより詳細な地図であり、それを下に掲げる。

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 そして、今般こちらの記事が、モスクワ~カザンの高速道路建設予定について報じている。M.アキモフ副首相が記者会見で語ったところによると、この高速道路は2020年初頭から建設に着手し、2027年までに完成させる。モスクワからウラジーミルまでの145kmの新区画を建設し、それにはバラシハ、ノギンスクの迂回路も含まれる。一方、I.アラフィノフ運輸次官によれば、トリヤッチ迂回路を含む総工費は、7,300億ルーブルとなる。9月にYe.ディトリフ運輸相が述べたところによると、ロシア政府はウラジーミルまでのメイン区画と、カザンを迂回するカザン区画という2つの区画の建設を承認した。


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 昨日概要だけ紹介した穆尭芊・徐一睿・岡本信広(編著)『「一帯一路」経済政策論 プラットフォームとしての実像を読み解く』(日本評論社、2019年)。我々ロシア地域の関係者は、やはり新井洋史氏による第6章「東北内陸 ―近くて遠い『借港出海』の進展は?」にとりわけ大きな関心を覚える。

「借港出海」とは、海への出口を持たない内陸国が、近隣国の港を利用して海への出口を確保し貿易を行うことを指す。この第6章で具体的に論じられているのは、中国東北部の吉林省および黒龍江省のケースであり、両省の場合は自国の大連港に出るよりもロシアや北朝鮮の港を借りた方が距離的に近いことから、これまでも様々な輸送ルートが検討・開拓されてきた。

 

 問題は、現在も続く両省による借港出海の模索が、今日の一帯一路政策とどのように関係していくかだろう。一帯一路は、一般的には、中国と欧州を結ぶものとイメージされることが多く、中国東北地方から東に向かう借港出海はそれにはマッチしないのではないかという疑問も湧く。しかし、実際には吉林省および黒龍江省は、以前からの借港出海の試みを、今日では一帯一路の名の下で推進するしたたかさを見せているということである。第6章の締めくくりでは、以下のように論じられており、なるほどと納得させられた。

 歴史的な出自が異なり、一見無関係に見える政策を、黒龍江省や吉林省はいとも簡単に「一帯一路」に結び付け、しかも停滞気味だった状況を打破する契機として活用している。政策主体の工夫次第で、いかなる政策であっても「飲み込む」ことができる「一帯一路」の懐の深さを示す好事例である。


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 このほど、ERINA北東アジア研究叢書の10作目として、穆尭芊・徐一睿・岡本信広(編著)『「一帯一路」経済政策論 プラットフォームとしての実像を読み解く』(日本評論社、2019年)が刊行された。目次を整理しておくと以下のとおり。

序 章 プラットフォームとしての「一帯一路」(徐一睿・穆尭芊)
第1章 地域開発政策-地域一体化への新展開とは?(穆尭芊)
第2章 地方財政-財政格差の再拡大をどう防ぐか?(町田俊彦)
第3章 インフラ整備-地域間の格差是正に寄与しているか?(徐一睿)
第4章 農村・農民-農村を発展させられるか?(岡本信広)
第5章 人流・物流-鉄道輸送の経済効果をどの程度変えるか?(南川高範)
第6章 東北内陸-近くて遠い「借港出海」の進展は?(新井洋史)
第7章 海上シルクロード-「海運強国」は実現可能か?(朱永浩)
終章  政策評価-「一帯一路」はプラットフォームになりえるのか?(岡本信広)
あとがき(穆尭芊)

 中国の一帯一路政策を扱った文献はあまた存在するが、本書はやや異色な部類に属すと思われる。というのも、同政策が国際関係論的な角度というよりも、中国の国内経済的な観点に主軸を置いて論じられているからである。もちろん、「異色」ではあっても、このアプローチが正鵠を射ていないというわけではなく、むしろこれまで同政策の研究で欠落していた部分を埋める貴重な作業ということになろう。

 個人的に特に注目した部分については、明日触れることとしたい。


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 ベラルーシのミンスク郊外に、ベラルーシと中国が共同で設立した「グレートストーン」という工業団地がある。こちらの記事によれば、このほど同工業団地で、ベ中合弁のエンジン工場「MAZ-Weichai」が開設された。出資したのは、中国山東省濰坊市を本拠とするWeichai Powerである。2014年から、ミンスク自動車工場(MAZ)においてユーロ4、ユーロ5の環境性能に適合したWeichai ブランドのエンジンが生産されてきたが、新たに専用工場を開設したものである。これにより、従来はロシアのヤロスラヴリから調達していたディーゼルエンジンを自前で賄うことが可能となった。投資総額2,000万ドルのうち1,400万ドルを中国側が出資した。同工場での国内調達比率は30%だが、ベラルーシ政府はそれを50%に高めることを課題に掲げている。協力の次の段階として、やはり同工業団地内にトランスミッション工場が建設され、その作業はすでに始まっている。

 さらに、こちらの記事によると、グレートストーン工業団地の入居企業は、すでに55社に上っている。工業団地のA.ヤロシェンコ総裁は、入居企業数は、本年中に60に達し、2020年末までには80に増大させたいとの抱負を示した。


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 ユーラシア開発銀行が発行した中欧班列に関するレポートに、目を通してみた(こちらからPDFのダウンロードが可能)。当ブログでも何度か取り上げているように、中欧班列とは、ユーラシア大陸を横断して、中国と欧州を鉄道のコンテナ列車で結ぶ新たな輸送ルートのことである。2011年から始まり、その貨物量は年々拡大している。主なトランジット国は、カザフスタン、ロシア、ベラルーシである。

 それで、今回上掲のレポートを読んで分かったのは、その中欧班列のコンテナ輸送において、ポーランド(ポーランド・ベラルーシ国境を含む)がボトルネックになっているらしということだった。関係者の間では知られた話のようだが、上掲のレポートでは技術的な側面も含めて事実関係が良くまとめられていた。

 レポートによると、現時点で中欧班列を発展させるうえで最大のボトルネックとなっているのが、ポーランド・ベラルーシ国境における処理能力の不足である。ベラルーシのブレストとポーランドのマワシェヴィチェ間の交通量が、きわめてタイトとなっている。中欧班列の実質的にすべての列車が、このルートを通る。ポーランドのインフラ・機関車・貨車の状況を考えると、ブレスト~マワシェヴィチェのルートでのコンテナ輸送量をこれ以上拡大できるかは疑わしい。すでに現時点で、1日14本の列車の通過が合意されていながら、実際にはポーランド側は9~10本しか受け入れていない。ポーランド側は、ポーランド・ベラルーシ国境の既存の5箇所の鉄道通過ポイントをすべて稼働させ、ベラルーシ側での積み替え作業も含め、処理能力を高めることによって、状況が改善されることを期待している。

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 こちらの記事によると、中国の黒竜江省で、ロシアとの経済協力を円滑化するための自由経済ゾーンを創設するということである。なお、ロシア語では「自由貿易ゾーン」となっているが、いわゆるFTAを形成するものではないはずなので、特区的なものと理解して、「自由経済ゾーン」と訳しておくことにする。

 黒竜江省は、ロシアと2,981kmの国境を有し、15の国境通過ポイントがある。同省の貿易の25%がロシアとのものである。

 黒竜江省に形成される自由経済ゾーンは、総計119.85平方キロメートルの面積で、3つの区画から成る。ハルビン、黒河、綏芬河の3区画であり、その機能はそれぞれに異なるという。


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 中国の東莞市(とうかんし)というところについては、個人的に認識していなかった。場所は、上の地図に見るように、香港および深圳の後背地のようなところである。ウィキペディアからの丸写しになるが、「改革開放前は現在の市域の多くは赤土が広がる貧しい農村だったが、1980年代末から広州と深圳、香港の中間に位置することから、香港企業、台湾企業の委託加工先や工場建設の好適地として、衣料品、日用雑貨、玩具、電子製品、パーソナルコンピュータまで、重工業以外の各種工場が林立する工業地帯に変貌した。特に、パソコン部品は世界の供給拠点として重要な地位を占める。また、輸出に必要な包装用段ボールを製造するための製紙工業もさかんで、中国最大の工場群もある」ということである。

 さて、今回お伝えしたいのは、その東莞とベラルーシが、物流で繋がったという話である。こちらの記事が伝えている。

 記事によれば、このほど東莞の国際ロジスティクスセンターにベラルーシから貨物が到来した。ベラルーシ産木材1,500tである。ヨーロッパから鉄道を利用して東莞に外国の貨物が届くのは、これが初めてのことである。46両から成る貨物列車は、ミンスクを出発し、対ロシア国境の満州里を経由して、当地に到着。全長11,884kmの行程を、28日間で走破した。東莞から欧州方面に輸出用の貨物列車が初めて出たのは2016年6月であり、その後の3年間で16,600本の列車が運行され、計24万tの貨物を運んだ。今回、初めて輸入貨物を受け入れたことにより、広東省~欧州の中欧班列路線は、双方向の輸送ルートとなった。これにより、往路と復路のアンバランスという課題が解消に向かうことが期待される。なお、供給されたベラルーシ産木材は、家具生産に用いられるという。


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 末廣昭・田島俊雄・丸川知雄(編)『中国・新興国ネクサス: 新たな世界経済循環』(2018年、東京大学出版会)の紹介を続けさせていただく。

 本書の中でも、第1章「中国・新興国ネクサスと『一帯一路』構想」(伊藤亜聖)は非常に多面的かつ情報量豊かで、決定版に近い論考と思われる。ただ、この章を読み終え、「よし、これで一帯一路のことは良く分かった」と思うよりも、むしろ一帯一路なるものの掴みどころのなさ、研究する上での難しさを思い知らされた気がする。

 伊藤によれば、一帯一路政策が対象としている地理的範囲は、実は明確でないという。一般に、65ヵ国の沿線国が対象とされることが多いものの、それは俗説に過ぎないし、65ヵ国の具体的な顔ぶれにも複数バージョンがあるということである。ともあれ、代表的な説によれば、(服部の個人的な研究対象地域である)旧ソ連諸国や、やはり関心国である中東欧諸国が、すべてその対象国となっていることは、間違いないところのようだ。ただ、実際には中国がアフリカ等を対象に実施する投資プロジェクトも、一帯一路の一環として位置付けられることが多く、その地理的範囲を特定することは意味をなさないということのようである。

 恥ずかしながら、29ページに掲載されている一帯一路の「六大経済回廊」という枠組みを、個人的に知らなかった。六大のうち、私の研究対象地域にかかわるのは、①中国・モンゴル・ロシア経済回廊、②新ユーラシアランドブリッジ経済回廊、③中国・中央アジア・西アジア経済回廊である。驚いたことに、ロシアのモスクワ~カザン高速鉄道プロジェクトは、①の一環ということになっているようだ。中国と欧州を結ぶコンテナ貨物列車「中欧班列」は、②に位置付けられている。さらに、トルクメニスタンと中国を結ぶガスパイプラインも、③の一部として、一帯一路政策に含まれているとは知らなかった。

 ただし、個人的に気になって調べたところ、ロシアから中国向けのガス輸出パイプライン「シベリアの力」は、一帯一路の枠内とは位置付けられていないらしい。あれだって中国との共同プロジェクトに変わりはないのだが。


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 やや古く本年4月の記事だが、ロシアのこちらの経済系サイトに、中国の主導する一帯一路の十大プロジェクトという情報が出ていた。記事によれば、中国の習近平国家主席が一帯一路政策を発表したから6年が経ち、それ以来、世界125か国および29国際機関がこの構想に参加し、その枠内で173の協力協定が結ばれた、とされている。

 それで、記事によれば、以下に見るものが、一帯一路の枠内での10大プロジェクトということである。ただし、各プロジェクトの予算規模などが記されているわけではないので、誰がどのような基準で選んだベスト10なのかは、不明である。また、以下に見る順番がプロジェクトの規模の大きさの順に並んでいるのかも、定かでない。

  1. インドネシアのジャカルタ~バンドン高速鉄道
  2. ナイジェリアのアブジャ~カドゥナ鉄道
  3. スリランカのコロンボ港
  4. ギリシャのピレウス港
  5. ブルネイのテンブロン橋
  6. バングラデシュのパドマ橋
  7. チリのプンタ・シエラ風力発電所
  8. ロシアのヤマルLNG
  9. ベラルーシのグレートストーン工業団地
  10. ジブチの国際自由貿易ゾーン

 ご覧のとおり、私の研究対象国のプロジェクトが2つ入っている。


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 第10回スラブ・ユーラシア研究東アジア大会が、昨日6月29日と、本日30日の2日間、東京大学の本郷キャンパスで開催されている。上の動画は、開会式で松里公孝先生が挨拶をされている様子。

 私自身は、昨日29日のDifferentiation or Convergence? —Changes in Political Regimes in Post Soviet Countries in the Last Decadeというパネル(下の写真参照、写っているのは私ではないが)で、“Comparing Transport Strategies of Ukraine and Belarus as Transit Nations” と題する報告を行った。ウクライナとベラルーシはともにロシアとEU、東と西の狭間に位置し、その地理的条件を活かして東西を結ぶトランジット輸送を発達させる可能性を持っている。近年は、中国の一帯一路政策が始動したことで、より一層その可能性が広がっている。現実には、ベラルーシが一定の成功を収めているのに対し、ウクライナはロシアとの対立などでそのポテンシャルを活かせていない。この報告では、初歩的な統計の整理だけになってしまったが、そうした観点からウクライナとベラルーシの実情を比較した。

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