ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

タグ:ユーラシア経済連合

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 やや古いが、今般、T.メシコヴァ・V.イゾトフ・O.デミトキナ・Yu.コフネル「変わりゆく地政学的文脈の中のユーラシア経済連合:国際協力の優先事項」『ロシア諸民族友好大学紀要:政治学』(2019, Vol.21, No.1, 7-33)という論文に目を通した(上掲画像は違う号なので悪しからず)。内容を忘れないように、私なりの注目点を以下のとおりメモしておく。著者らは直接的な政策担当者ではないが、ロシアのエリート層のリベラル派の考え方を反映した内容と考えていいと思う。

  • この論文では、CIS域内だけでなく、域外も含め、ありとあらゆる国際機構、地域統合、政策枠組みとの連携が検討されている。あまりに多くのものが挙げられ、総花的に過ぎると思われるほどである。しかし、不思議なことに、ユーラシア経済連合とCIS集団安保機構の連携ということは、一切語られていない。両者は加盟国がほぼオーバーラップしており、西側のEUとNATOのようにいわば対をなす存在と言えるわけだが、なぜかそういう観点は語られていない。
  • 一部に、CIS自由貿易協定を廃止して、まだユーラシア経済連合に加盟していないCIS諸国に連合加盟を迫ろうという発想があることに関し、この論文ではそれは誤ったアプローチで、それはロシアがこれまで表明してきた立場と矛盾するし、かえってそれらの国々を欧州や中国との接近に向かわせてしまう恐れがあると指摘している。あくまでもソフトパワーで行こうというのがこの論文の立場。
  • 論文によれば、当面の目標として、すでにユーラシア経済連合のオブザーバーになっているモルドバに加えて、2024年までにタジキスタンとウズベキスタンをオブザーバーとして迎え入れたい(注:ただし、その後の内政の風向きの変化で、モルドバは自らのオブザーバーとしての地位に疑問を呈し始め、ウズベキスタンはすでに実際にオブザーバーになったが)。その上で、2030年までにモルドバ、タジキスタン、ウズベキスタンを正式な加盟国として迎え入れたい。
  • この論文では、さすがに、ウクライナをユーラシア経済連合の正式加盟国やオブザーバーにしたいということは語られていない。というか、「ウクライナ危機」という語が一度出てくるだけで、それ以外はウクライナという具体的な国名が一切登場しない。
  • この論文によれば、EUとの関係では、総合的かつ深甚な通商・経済パートナーシップの協定(非対称的なFTA、経済部門別および部門横断的な協力関係)を目指す。EUとユーラシア諸国で多くの問題を解決しなければならないことを考えれば、想定される協定は広範なものとなる。商品・サービスの貿易、資本・労働の移動、ビザなし、インフラ開発、知的所有権の保護等々。
  • 論文によると、課題となるのは、ユーラシア経済連合、EU、東方パートナーシップ諸国の3者間で、新たなイニシアティブを立ち上げることである。それにより、EUとユーラシア経済連合の共存・協力に関し、新たな構想を示すことが促され、そのことはロシアの利益に資する。

 ロシア・ウクライナ情勢が憂慮されますが、それに関する最新情報の発信や軍事的な分析は詳しい方にお任せし、私のブログでは自分の調査研究テーマに関する情報発信を地味に続けます。何卒ご了承ください。


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 ロシアの北都ことサンクトペテルブルグには、日系のトヨタ、日産、韓国系のヒュンダイという外資系乗用車メーカーの現地生産工場が立地している。こちらの記事が、その最新動向について伝えている。

 記事によると、3工場合計で、2021年には36.3万~36.5万台が生産されたと見られる。コロナ禍の影響が大きかった2020年に比べると、10%ほど拡大した。しかし、コロナ危機前の2019年と比べると、まだ2.0~2.5%ほど低い水準である。

 トヨタ工場では、2021年に8万800台が生産され、前年比20%増であった。なお、生産の11.9%が輸出向けであり、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニアというユーラシア経済連合諸国への輸出を行っている。

 日産工場では、2021年に4.5万台が生産され、前年比17%増であった。輸出台数は4,400台であり、前年の数倍になった。主な輸出相手国はやはりカザフスタン、ベラルーシである。

 ヒュンダイ工場では(キア・ブランド車も生産)、2021年に23.4万台が生産され、前年比6.5%増であった。また、近隣諸国向けに2.4万台を輸出したが、うち1.6万台はヒュンダイのカザフスタン工場向けのアセンブリーキットであった。


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 こんなご時世にマニアックな話題で恐縮だが、ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合と、アゼルバイジャンが接近か?という問題が一部で注目されているようである。

 こちらの記事の中で、I.マリニナ氏がその動きについて論じている。これによると、先日ユーラシア経済連合の最高評議会が開催された際に、連合の産みの親ともいうべきナザルバエフ・カザフスタン初代大統領が、アゼルバイジャンに対して、まずは連合のオブザーバー国となったらどうかと提案したということである。

 記事によると、アゼルバイジャンの専門家の中でも、本件に関する立場は分かれているという。たとえば、T.アッバソフは、アゼルバイジャンは、ロシア、カザフ、ベラルーシ、キルギスといった国と二国間の関係を発展させているので、多国間連合たるユーラシアと接近する必要性は特にないと主張している。それに対し、E.マメドフは、今日の国際経済の中で、何らかの統合に参加することは不可避だと説いている。

 アゼルバイジャンのユーラシア経済連合加盟の可能性については、スプートニクのこちらの記事で、そのメリットが図解入りで説かれている。ミュンヘン市場統合・経済政策研究所のYu.コフネル研究員が、そのような分析を発表したということである。それによれば、ユーラシア経済連合加盟はアゼルバイジャンの農産物・非石油輸出を拡大する効果をもたらし、それによってアゼルバイジャンのGDPは0.6%拡大、アゼルバイジャン国民は1人当たり1,013ドル豊かになる、ということである。

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 若干フォローが遅れてしまったが、こちらに見るとおり、モルドバのサンドゥ大統領がロシア『コメルサント』紙のインタビューに応じ、その内容が11月1日に出た。この中でサンドゥは、モルドバのユーラシア経済連合におけるオブザーバーとしてのステイタスを否定する発言をしている。サンドゥ大統領の主な発言内容を以下のとおりまとめておく。

 (ガスプロムとモルドバガスの供給交渉の中で、供給条件を見直す代わりに、モルドバがEUとの自由貿易協定を修正しユーラシア経済連合に加盟することをガスプロム側が提案したとFTが報じたことに関しては?)交渉の中でそのようなやり取りはなかった。

 (貴方が大統領になってから1年が、新内閣が成立してから100日が経つが、ロシアの大統領、首相との会談が実現していないことに関しては?)首脳、首相会談は実現していないが、様々なレベルで対話はしている。

 私がキエフで開かれた「クリミア・プラットフォーム」に出席したのは、モルドバがウクライナの領土的一体性の原則を支持し、ウクライナもまたモルドバのそれを支持してくれることが重要だから。

 他方、CISは重要なフォーラムであり、モルドバも同諸国との経済・通商関係の発展を望んでいるところ、モルドバでは大統領よりも首相の方が経済面での権限が大きく、したがってCIS首脳会談には大統領ではなくガヴリリツァ首相が出席した次第。

 モルドバがユーラシア経済連合のオブザーバーであるかという問題に関しては、前大統領が何かの文書に署名したのかもしれないが、それに関しモルドバの国内手続きは一切行われておらず、オブザーバー加盟手続きは完了していないと認識している。

 (先のユーラシア経済連合の首脳会議に参加しなかったことについては?)外務省に訊いてほしい。


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 ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合では、定期的な会合である評議会を10月5日に開催した。

 だいぶマニアックな話なのだが、こちらの記事に見るように、ベラルーシからユーラシア経済連合に派遣されている公式代表のI.マルキナ氏が、評議会の焦点についてベラルーシ政府系新聞のインタビューに応じている。記事は、欧米諸国によるユーラシア加盟国への制裁への対抗措置をユーラシア経済連合が共同でとることが、同評議会の主たる議題であるかのようにまとめられている。

 しかし、たとえば欧米諸国がベラルーシに適用した制裁に対し、ユーラシア経済連合が共同で対抗措置をとるなどということは、同機構の機能として想定されていないし、他の加盟国も絶対に承服しないだろう。ベラルーシに同情的で、自らも欧米の制裁のターゲットとなっているロシアならともかく、カザフスタン、キルギス、アルメニアは米国およびEUとの友好関係を望んでおり、ベラルーシやロシアのトラブルに我々を巻き込んでくれるなという立場のはずである。ユーラシアという虎の威を借りようとするベラルーシ狐の試みは(ベラルーシは動物ではウサギに例えられることが多いが)、失敗に終わるはずである。

 実際、こちらのサイトに10月5日の評議会の成果がまとめられているが、制裁への共同対応などという決定は見当たらない。ベラルーシ政府系新聞のくだんの記事は、あくまでもベラルーシ国内向けのもので、他の加盟国もベラルーシ国内向けのその程度の政治利用なら渋々黙認しているといったところか。


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 ユーラシア経済連合は、2015年に5ヵ国になって以降、新規の加盟国は現れていない。中央アジアではカザフスタンとキルギスが加盟国であるものの、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンは非加盟となっている(ウズベキスタンはオブザーバー国)。

 これに関し、こちらの記事によると、カザフスタンの初代大統領でユーラシア経済連合の名誉議長でもあるN.ナザルバエフ氏は8月19日、連合を強化する必要があり、ウズベキスタン、タジキスタンといった我が国の隣国にも加盟してほしいし、さらにトルクメニスタンにも働きかけるべきであると発言した。さらに、キルギスのS.ジャパロフ大統領も同国独立30周年の演説で、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンがユーラシア経済連合に加盟してくれることを望むと発言した。

 上掲記事によると、本件につきロシアの政治学者P.ダニロフ氏がインタビューに応じ、以下のようにコメントした。ウズベキスタンに関しては、向こう2~3年でオブザーバー国から正式な加盟国となるであろう。一方、タジキスタンとトルクメニスタンは、近い将来にはオブザーバー国がやっとかもしれない。これら2国は経済問題がウズベキスタンより深刻だからだ。トルクメニスタンは永世中立国でもあり、ガスプロジェクト絡みでトルコと米国が自分たちの側に引き入れようとするだろう。タジキスタンの場合は、自国の経済を大統領が一元的に管理しており、それから脱してユーラシア経済連合諸国に開かれた市場になるのは困難だ。もっとも、同国にしても、時代の要請により、変化は必須となっている。ダニロフ氏は以上のように述べた。


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 欧米がベラルーシに制裁を決定したことに対し、ベラルーシは対抗制裁を打ち出そうとしているわけだが、先日ベラルーシのI.ペトリシェンコ副首相は、ベラルーシのほかロシアやカザフスタンなど全5ヵ国から成るユーラシア経済連合が共同で対抗制裁を策定しているところだと発言した。

 これを受け、こちらのサイトに見るように、カザフスタン外務省が反発を示した。6月5日付のプレスリリースで、その事実を否定したものである。

 プレスリリースいわく、ユーラシア経済連合は、もっぱら経済統合組織である。我が国はユーラシア統合機関に、それにそぐわない機能を与えることは受け入れられないという立場を、伝統的に示してきた。第三国の制裁措置に対する対抗措置を講ずるといったことは、ユーラシア経済連合条約の管轄外に属する。我が国は、西側の制裁は主として政治的な動機に基づくものであり、ユーラシア経済連合全体ではなく一部の国に適用されているとの認識に立脚する。カザフスタンは、他国による制裁に対抗してユーラシア経済連合が「連帯した措置」を講ずる交渉など、一切行っていない。ユーラシア統合のパートナー諸国との作業において、ありうるのは、制裁が加盟諸国の社会・経済情勢にに及ぼし得る否定的な影響を防止するための共同行動に限られる。

 というわけで、当然のことながら、相当迷惑そうなカザフスタンであった。ベラルーシがロシアやカザフといった虎の威を借りようという作戦は失敗のようだ。


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 こちらの記事によると、ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合では、域内で共通の求職・求人デジタルシステム「国境なき仕事」を、7月1日にローンチする予定である。

 記事によると、ユーラシア経済連合レベルで共同のデジタルプロジェクトが立ち上げられるのは、これが初めてということである。ユーラシア全体のシステムが、各国のシステムと統合され、求職・求人情報を全ユーラシアレベルで検索できるようになる。

 以上が記事のあらましである。これは以前述べたことの繰り返しになるが、すでに民間の求職・求人アプリがあまた存在する中で、ユーラシア経済連合という縛りを設けることが、どのくらいの意味があるのかは、良く分からない。単に仕事を見付けるだけじゃなく、それ以外の利用メリットもあるのだろうか。たとえば、ユーラシア経済連合に加入していないウズベキスタンの市民がこのアプリを利用することはできないのだろうか? 色々と疑問点が残る。


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 昨日書いたとおり、2月11~12日に開催された全ベラルーシ大会に合わせて、2021~2025年のベラルーシ社会・経済発展プログラムが採択されようとしている。ルカシェンコ五ヵ年計画の中身に関心を寄せたりすると、何やらルカシェンコ政権の正統性を認めているようで嫌な感じがするが、この政策枠組みは以前から私がずっと研究してきたものなので、今回のプログラムについても中身を一応確認しておくことは必須の作業であり、そうした観点から取り上げる。

 すでに発表されているプログラム概要の中でも、第7章の通商政策の部分が、とりわけ私にとっての中心的な研究分野なので、以下でその骨子を箇条書きでまとめておく。

  • 今後の五ヵ年で重点を置くのは輸出の質的な成長とその地理的多角化であり、それにより販路の拡大と外国貿易の安定が可能になる。
  • 外国市場の多角化においては、2つの課題を解決しなければならない。第1に、伝統的な販売市場におけるプレゼンスを低下させないこと。第2に、外国貿易の多ベクトル性を保持し、中国、EU、米国、さらにアジア・アフリカ・中南米諸国*への輸出を拡大し、世界市場の新たなニッチを開拓すること。(注 *原典ではстраны «дальней дуги»という言葉が使われているが、これはベラルーシ独特の表現であり、その定義についてはこちらの論考参照。)
  • 2025年までに輸出総額に占める中国向けの比率を5%にまで高め、またEU向けの比率は非原料輸出の拡大を優先しつつ30%にまで高める計画である。
  • 中国、シンガポール、トルコとの経済協力を拡大するための措置を講じる。その目的で、サービスおよび投資の自由取引に関する二国間協定*を締結する。(注 *モノのFTAはユーラシア経済連合の管轄分野だが、サービスの二国間FTAはベラルーシがユーラシア加盟国であっても独自に結ぶことができる。)
  • ユーラシア経済連合のレベルでは、国益を考慮しつつ、イスラエル、エジプト、インドとFTAを結ぶ。
  • インドネシア、モンゴル、アルジェリア、ペルシャ湾岸諸国などの国々および経済統合組織との交渉を通じて、新たな戦略的通商パートナーの発掘を活発化する。
  • 輸出構造多様化の主たるベクトルは、輸出に占めるハイテク製品の拡大であり、上図のように、2025年時点で5%以上を確保する。そのために、工業団地「グレートストーン」のポテンシャルを活用し、その入居企業による輸出を2025年までに4億ドル以上に高める。
  • 貿易促進のために輸出入庁を創設する。
  • 経済統合の面で、主たるベクトルとなるのは、国益を順守しつつ、連合国家創設条約にもとづき、ロシアとの二国間関係を深化させること。ユーラシア経済連合の枠内では、障壁・例外なきモノ・サービス・カネ・ヒトの自由移動を実現する。輸入代替の分野も含め、共同生産を活発化する。ベラルーシは(ユーラシア経済連合枠内での)中国との全面的な協力を引き続き拡大していく。CISの枠内ではFTAの形成を特に重視し、それをサービス、投資、政府調達、産業協力、デジタル化などの新たな分野にも広げていく。
  • こうした取り組みにより、2025年までに商品・サービス輸出を500億ドル以上に拡大し(上図参照)、その構造を多角化し、中身を高度化し、輸出入の均衡を保ち、ひいてはそれを国内の経済成長に繋げることが可能になる。

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 ロシアが主導し現在5ヵ国から成るユーラシア経済連合では、こちらのサイトに見るように、2020年12月11日の首脳会合で、「2025年までのユーラシア経済統合発展の戦略的方向性」と題する文書が採択された。

 まあ、そのことは大いに結構なのだが、腑に落ちないのは、まず第1に、文書が採択されたのが2020年12月11日なのに、そのテキストが発表されたのが2021年1月14日までずれ込んだという点である。私は、物好きにもこの経済同盟を研究しているので注視していたのだが、「戦略的方向性を採択した」と発表しながら、肝心のそのテキストがどこにも存在しないという点に、首をかしげざるをえなかった。

 それで、1ヵ月あまり経って、ようやくユーラシア経済委員会のサイトにそれが掲載されたものの、今度はそのPDFファイルに問題があった。ロシアの政府機関ではお馴染みの現象だが、WordからダイレクトにPDFに転換するのではなく、わざわざ紙の文書を画像スキャンしたものを掲載しているのである。「なるほど、こんなことを手作業でやっているから、掲載するのに1ヵ月もかかるのか。納得」などと、皮肉の一つも言ってやりたくなる。結果、PDFは19MBもあり、ダウンロードするのに難儀する。それのみならず、文字検索ができないという致命的な問題が起きる。たとえば、私はユーラシア共同ガス、石油市場のことについて調べたいのだが、газ、нефтьといったキーワードで検索ができないので、挙動の重いPDFを隅から隅まで眺めないといけない。

 皮肉なのは、今回の「戦略的方向性」の中では、「ユーラシア共同デジタル空間」の形成をうたうなど、デジタルが前面に出されていることである。コピー機だかスキャン機だかの性能が悪いのか、ブサイクに傾いた不鮮明な画像でデジタル推進などと言われても、説得力はまるでない。

 ユーラシア経済委員会のウェブサイトは、最近リニューアルされ、表面的な見栄えはとても良くなった。ロシア人お得意の、カーソルをかざすと画像が反応したり、画像が自動的に流れたりといった凝った作りになっている。しかし、ロシアのこういう見栄えだけに凝ったウェブサイトというのは、サイト全体の構造を把握しにくかったりして、閲覧者にとってはものすごく使いづらい。それに対し、EUの欧州委員会のサイトを見ると、奇をてらった要素などは皆無であり、全体がスマートに整理され、ユーザーが目的の情報に辿り着くことを最優先して作られている。今回のお粗末PDFに象徴されるように、ユーラシア経済委員会のサイトはまさに仏作って魂入れずであると言わざるをえない。

 技術的な指摘ばかりになってしまったが、「2025年までのユーラシア経済統合発展の戦略的方向性」の中身は、現在精査中。


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 こちらのサイトこちらの記事によれば、ユーラシア経済連合で2019年12月20日に調印された年金保証に関する協定の批准が2020年末までに完了し、協定はこのほど発効した。これにより、たとえばユーラシア経済連合に加盟するA国の国民が別の加盟国Bに定住するようになった場合に、その定住先のB国で年金を受け取れるようになるということである。

 詳しいことを確認しているヒマがないが、国ごとに損得が発生しないように、年金受給者の納税・年金保険料納入実績を踏まえ、加盟国間で相殺を行い、発生した差額は、年金支払いの負担を免れた国からその負担を負うことになる国へと、送金をして処理する模様である。


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 こちらなどが伝えているとおり、12月11日に「ユーラシア最高経済評議会」の会合がリモートで開催された。これは、ユーラシア経済連合に加盟している諸国の首脳による定期会合である。

 その結果、「2025年までのユーラシア経済統合発展の戦略的方向性」が承認された。その他、ユーラシアの共同エネルギー市場の形成に向けた決定もなされた。

 また、かねてから検討されてきたように、ウズベキスタンとキューバにユーラシア経済連合のオブザーバー国という資格を与えることも、正式に決定された。


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Eurasia

 一般の方はまずご関心はないだろうと思われるテクニカルな話で恐縮である。

 以前、当ブログで「『ロシアと韓国がFTA』という怪情報」というエントリーをお届けしたことがある。ロシアと韓国が自由貿易協定に関する交渉を開始するというのだが、ロシアはユーラシア経済連合に通商に関する権限を委譲しているはずであり、ロシア一国が韓国とFTAなどというのは原理的にありえない話で、これはおそらく投資とサービス貿易の自由化という意味ではないかと、その時には記しておいた。

 実は今般、私のその見立てを裏付ける情報を見付けたので、メモがてらそれを取り上げようと思い立った次第である。それは、2019年6月に出たこちらの記事である。

 記事によると、投資やサービス貿易は(ユーラシア経済連合ではなく)構成各国の独自裁量領域であり、それゆえにロシアは韓国とその自由化に関する協定の交渉を開始したとされている。また、記事によれば、貿易円滑化、Eコマース、知的所有権保護などの分野も各国の独自裁量であり、独自に第三国との二国間協定が結べるとされている。

 以前示した私の推測は、結果的に正しかったわけだが、正直これは盲点だった。サービス取引に関して言えば、ユーラシア経済連合全体で単一サービス市場が成立しているという建前になっているのに、にもかかわらず第三国との協定締結権が各構成国にあるという点がややこしい。


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 旧ソ連圏の求人・求職活動も、スマホのアプリが主流という時代に入っているのだろう。たとえば、グーグル・プレイで、「поиск работы」というキーワードで検索すると、多数のアプリがヒットする。上に示したのは、「スーパージョブ」という転職会社のアプリ。ただし、グーグルの頭が良すぎるのか、ロシア圏以外のサイト、たとえば日本の「マイナビ転職」などというのもヒットしてしまうが。

 そうした中、こちらの記事によると、ロシアのM.ミシュスチン首相はこのほど、ユーラシア経済連合加盟諸国の市民向けの求人・求職アプリを2021年にローンチする予定だと表明した。眼目は、ユーラシアのパートナー諸国からロシアがロシア語話者の人材をリクルートするという点にある由である。もちろん、ロシア人が他のユーラシア諸国で働きたいと思えば、それに利用することも可能だが。

 以上が記事のあらましだが、すでに民間の求人・求職アプリがあまた存在する中で、ユーラシア経済連合という縛りを設けることが、どのくらいの意味があるのかは、良く分からない。単に仕事を見付けるだけじゃなく、それ以外の利用メリットもあるのだろうか。たとえば、ユーラシア経済連合に加入していないウズベキスタンの市民がこのアプリを利用することはできないのだろうか? 色々と疑問点が残る。


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 こちらこちらの記事が伝えているとおり、イタリアのベローナで第13回ユーラシア経済フォーラムが開催され、そこでユーラシア経済連合のA.スレプニョフ通商大臣が演説したということである。

 この中でスレプニョフ大臣は、ユーラシア経済連合は政治ではなく経済の統合体だ、我々は相互協力にコミットし対話拡大の用意がある、将来的にユーラシア経済連合とEUが完全な通商協定の関係に移行するという案も生きている、などと発言したということである。


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shema-reeksportnyh

 ロシアは2014年から欧米産の主要食品の輸入を禁止しているが、これはユーラシア経済連合としてではなく、ロシア単独の措置である。そこで、禁輸品目がベラルーシなどのユーラシア経済連合諸国に輸入され、それがロシア市場に違法に持ち込まれるという現象が、以前から知られていた。この問題に関し、こちらの記事が近況を伝えているので、要旨を以下のとおり整理しておく。

 なお、このような問題があるので、ベラルーシがロシアの保護国になったら、ロシアはベラルーシとの税関業務を統合する、言い換えればベラルーシの税関業務が実質的にロシアの管理下に置かれることになると、私は見ている。

 ロシアに非合法に再輸出される制裁対象食品の量は、縮小していない。ロシア市場における食品の供給量は、過去3年間、正式に登録された量(訳注:国内で生産された量+正式な輸入量という意味だろう)を少なくとも20%上回っている。少なくともその半分は、制裁対象品目である。さらにその半分強は、その他のユーラシア経済連合加盟国を経由してもたらされたものである。

 ロシア農産物監督局のS.ダンクヴェルト長官は先日、制裁対象食品の密輸はますます巧妙になっているとして、対策を厳格化することを提案した。特に、輸送業者および運転手を処罰することが必要であり、トラックおよび商品を押収し、業務を5年間禁止すべきである、という。

 もう何年も、ユーラシア経済委員会、ロシア税関局、その他のロシアの関係省庁は、ユーラシア経済連合加盟国を通じた再輸出を問題視している。しかし、その防止を難しくしている一連の要因が残っている。

 これに対し、ベラルーシ税関委員会のYu.セニコ委員長は、ベラルーシからロシアにもたらされる禁輸品目はほとんど、他ならぬロシアの業者によって販売されていると指摘した上で、我が国はその防止に全力を挙げていると弁明している。2019年には600のケースが摘発されたが、多くはロシアの業者による違反だったという。ロシアの業者は、輸入品をベラルーシで調達し、その後ベラルーシ産品であるなどという偽造文書を用いて、ロシアに持ち込むということである。

 このこと自体は、ロシア側も否定していないが、かといって、すべてがロシアの密輸業者の仕業だとは考えにくい。2018年の数字だが、輸出によって国庫にもたらされる歳入のうち、合法および非合法の再輸出に由来する歳入の比率は、ベラルーシでは約4分の1、カザフスタンでは20%強、キルギスでは3分の1にも上っているのである。


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 こちらのサイトに、ロシアに代わる石油供給源を模索したベラルーシが、カザフスタンに白羽の矢を立てながら、ロシアの妨害で実現しなかった経緯をまとめた記事が出ているので(I.ザハルキン署名)、以下のとおり要旨をまとめておく。

 2020年に入ってもベラルーシとロシアの石油供給に関する合意がまとまらず、ベラルーシにとっては困難な時期となった。ベラルーシが代替の石油供給源を模索する中で、カザフスタンからの輸入という案が浮上した。ただし、過去数年、その案は何度が出ていたが、その都度実現には至らなかった経緯がある。

 これまでベラルーシが代替供給源の候補国として挙げた国には、米国、アゼルバイジャン、中東諸国、そしてカザフスタンがあった。カザフの石油は、実際に入荷したこともある。2016年8月から2017年6月にかけて、ベラルーシはカザフから10万8,600tの石油、総額3,370万ドルを輸入した。その輸入には、ロシアからの輸入と比べて、480万ドルの追加費用がかり、しかも輸送ルートもきわめて複雑になった。にもかかわらず2019年5月にルカシェンコ大統領はカザフとの新たな交渉を開始した。

 2019年秋にはベルネフチェヒムのV.シゾフ副総裁が、石油輸入に関するカザフスタンとの政府間協定が合意間近だと発言した。ベラルーシは原油だけでなく加工が可能な石油製品(軽油、重油)も輸入したい意向を示し、輸入量は年間100万~350万tになるとされた。その後の情報によれば、あとは技術的な問題、特にロシアが自国領でのトランジットを認めるかという点だけだと発表された。

 しかし、その後本件は一切の進展がない。本年初めにベラルーシがロシアの石油会社(複数)と厳しく対立し、ノルウェー、アゼルバイジャン、サウジアラビア、さらには米国からの購入に走った時でさえ、カザフの石油にはアクセスできなかった。

 本年の初めに明らかになったのは、ロシア同様、カザフスタンもベラルーシに値引きをするつもりはないということだった。2月にカザフのN.ノガエフ・エネルギー相は、ベラルーシへの石油供給が可能になるのは商業的な条件においてのみであり、値引きは一切なしで、カザフ企業に有利な場合だけであると発言した。さらにK.トレバエフ副首相は、価格に輸出関税が上乗せされた場合のみ供給の用意があると述べた。しかも、カザフ側にはベラルーシへの不信感が頭をもたげ、カザフの原料を用いてベラルーシの製油所で生産された石油製品は国内市場への供給に限定し、輸出はされないという保証をベラルーシ側に求めた。

 ただ、専門家によれば、これらの問題がカザフスタンからベラルーシへの供給の主たる障害になったわけではない。ベラルーシ側は、価格を含め、カザフのすべての条件を飲むつもりだった。ところが、以前と同様、今回も、両国は最大の問題を解決できなかったのである。ロシアが、自国領の石油パイプラインを通じてカザフからベラルーシに石油を運ぶことを、認めようとしない問題だ。

 それでも、両国は交渉らしきものは続けているようであり、7月のユーラシア経済連合の政府間会合でベラルーシのR. ゴロフチェンコ首相は、以前両国が結んだ政府間協定はもう実現可能であると発言した。

 関連して興味深いのは、書類の上では2020年上半期にカザフスタンの石油はすでにベラルーシに入荷したことになっている点である。輸入統計には、37.6万tの輸入が記録されていた。ただ、それがいつなのか、誰が取引したのかはいまだに不明である。しかも、後に統計局はこのデータを削除し、実際に取引があったのかどうかは、迷宮入りした。

 ここ数ヵ月の動きが物語っているのは、カザフ石油の輸入というはすでにほぼ意味を失っており、その今後はベラルーシ指導部のプロジェクトの域を出ないということである。

 現時点ではすでに、カザフの石油を本当に必要ではなくなっている。1~5月にベラルーシは500.7万tの石油を9億483万ドルで輸入した。そのうちロシア以外の代替石油は20%ほどであり、それも第1四半期にロシア石油がほぼ入荷しなかったから生じたものである。6月にはもう、ベラルーシはロシアの石油を100万t輸入し、これは最適な分量である。

 2019年秋に結ばれた2020年のベラルーシとロシアの需給バランス指標によれば、第3四半期にはさらに575万t(注:多すぎないか?)がロシアから輸入されることになっている。最近ベラルーシで取り沙汰されている代替石油はアゼルバイジャンと米国のものだけである。アゼルバイジャンについては、計画された100万tのうち、タンカー6隻分の50万tが入荷する。米国については、8万~8.5万tずつの入荷が2回あり、2度目は8月上旬の予定である。米国からの調達は、経済というより、政治的な動機だろう。これら以外の輸入はすべて、価格および輸送面で有利なロシアから行う予定である。現に、4~5月の1t当たりの価格を見ると、ロシアが109ドル、アゼルバイジャンが239ドルとなっている。

 他方、カザフ石油を輸入する場合のルートの問題は、相変わらず未解決である。多くの専門家が指摘するのは、カザフは石油を輸出する上でロシア、カスピ・パイプライン・コンソーシアムおよびアストラハン~サマラのパイプラインに高度に依存しているという点だ。カザフは年間1,500万tほどをロシア経由で輸出している。輸出先は多岐にわたるので、ベラルーシへの輸出も可能に思える。しかし、そのためにはロシアがカザフ石油により多くのキャパを割り当てることになり、一見大した問題ではないように思えるものの、現実にはロシアはそれを拒む。ロシアとしては、カザフの石油をトランジットして2億~3億ドル程度の料金をとるよりも、ベラルーシに直接石油を売った方が国益にかなうからである。

 一方、カザフとしては、ベラルーシとの小口の取引のために、ロシアと対立することは避けたい。ロシアを迂回して輸送するルートとして、しばしばオデッサ経由が候補に挙がるが(注:ロシアを避けるとするとカザフ~カスピ海をフェリー~アゼルバイジャン~ジョージア~黒海をフェリー~オデッサ州のユジネ港~オデッサ・ブロディパイプライン~ベラルーシというルートだろう)、これはあまりにコスト高でベラルーシが受け入れられない。

 結局のところ、カザフからベラルーシへの石油供給の問題が近い将来に解決する可能性はない。机上でも不可能であり、増してや以前表明された計画を実現するのは不可能である。したがってカザフからの輸入という構想は今のところ、単にベラルーシがロシアのパートナーを苛立たせようという試み以上のものではない。


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 キルギスとカザフスタンの国境では、5月の末からカザフ側が国境管理を厳格化し、その結果、貨物を積んでユーラシア経済連合市場に向かうキルギス側のトラック300台ほどが、国境を通貨できずに列をなして停止している状態が続いている。

 こちらの記事によれば、キルギスはこれに反発し、ユーラシア経済連合に派遣している自国代表者の償還、さらには連合の活動のボイコットも辞さない構えだという。キルギス議会の外交委員会の席で、S.ムカンベトフ経済相が表明した。大臣によれば、現在、連合のルールの枠内で問題解決を図っているところだという。


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 はっきり言ってウズベキスタンの議会制度のこととか良く分からないのだが、Законодательная палатаというのは、同国議会の下院のことだろうか。こちらの記事によれば、おそらくその下院が、ユーラシア経済連合にオブザーバー参加することを承認したということである。採決は賛成86、反対32、棄権14だったということであり、ウズベク議会というのはこんなに票が割れたりするものなのだろうか? そのこと自体が意外だ。

 これでウズベク国内の手続きがすべて完了したのかということも不案内につき分からないが、仮にそうだとすると、ウズベキスタンが意向を通知した30日以内に、加盟各国がユーラシア経済委員会に自国の立場を表明し、最終的な決定はユーラシアの首脳会談に当たる最高評議会で下されるということである。


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 色々バタバタしており、ブログでは、他のところの用事のために作成した図表を転用するなどしてしのいでいるが、これもその一つ。ユーラシア経済連合の主要経済指標に、加盟各国が占めるシェアを示したグラフを更新したので、お目にかける。

 ご覧のとおり、主要指標のだいたい8割くらいをロシア1国が占めるという、非常にアンバランスな力関係になっている。ベラルーシとカザフスタンの2国はまだしも一定の寄与をしているが、キルギス、アルメニアという2つの小国の存在感は微々たるものであり、あまりにも狭いのでデータラベルも貼れないということになっている。


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 昨年秋からユーラシア経済連合加盟が取り沙汰され、今年1月にミルジヨエフ大統領がその検討を指示していたウズベキスタンだったが、こちらの記事によると、このほど同国政府は、当面はユーラシア経済連合のオブザーバーに留まることが適切との結論に達したということである。ウズベキスタン政府がその旨の文書を作成し、議会に諮ることとなった。これに先立っては、関係省庁の代表者から成る作業部会が設置され、16の産業部門への影響が検討されたほか、コンサルや研究機関、内外の専門家からの聞き取りも行われた。

 ウズベキスタンとしても、過去3年改革開放政策を実施し、経済の一層の発展と輸出増のためには、ユーラシア経済連合とのより緊密な連携が喫緊の検討課題となっていた。ウズベキスタンの輸出の80%はロシア、カザフスタン、キルギスというユーラシア諸国をトランジットして行われており、また完成品の50%は同諸国に輸出され、品目によっては80%に達するものもある。

 今回浮上したオブザーバーという方式は、最もシンプルな協力形態であり、経済主権の一部を超国家機関に移譲したりする必要はない。オブザーバーになることで、ウズベキスタンは連合の会合に代表者が出席し(むろん採決には参加できないが)、採択された文書(機密文書以外)へのアクセスを得て、ユーラシア経済委員会と恒常的にコンタクトができる。オブザーバー資格の期限は設けられていない。今回ウズベキスタンとしては、差し当たりオブザーバーの資格を選択することで、自国のどんな製品がユーラシア市場に輸出するのに有望かの情報を得て、輸出促進をしやすくなる。なお、将来的な加盟の可能性は、あるとしても遠い将来であり、専門家筋によればその可能性は10%もない、ということである。


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 YouTubeの「深掘り! ロシア・ユーラシア」のシリーズで、「ユーラシア経済連合の共同エネルギー市場」という動画を配信しました。

 何度か申し上げたとおり、2月16日(日)に立教大学で公開シンポジウム「エネルギー安全保障:欧州の経験とアジアへの示唆」が開催され、私はそこで「ユーラシア経済連合の共同エネルギー市場」という報告を行いました。せっかくパワーポイントを作ったので、それを利用して、シンポジウムにおける報告要旨をご紹介するものです。


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 昨日、ツイッターで奇妙なスライドが回ってきた。「ユーラシア経済連合の統合深度は、EUに次いで世界2位」という図である。当のユーラシア経済連合の事務局であるユーラシア経済委員会によるツイートだった。

 ものすごーく重いのでご注意いただきたいが、原資料はこちらからダウンロードできる。また、より詳しい方法論とレポートは、こちらかダウンロードできる。

 この比較作業は、ユーラシア経済委員会自身の方法論によるものであり、世界にある様々な経済統合組織を、制度、市場原則、マクロ経済の収斂度という3つの指標から調査し、統合の深度を比較するという試みである。主にEU、ユーラシア経済連合、ASEAN、南米南部共同市場(メルコスール)の4つが比較されている。そして、短期間で急激に統合の実を挙げているユーラシア経済連合が、現時点でEUに次ぎ世界で2番目に深い統合の深度を達成しているとされているわけである。

 お手盛り評価という感が強いが、よく考えてみれば、EU以外に完成度の高い経済同盟というのは、世界にそれほど存在するわけではない。ユーラシア経済連合の場合、肝心なところで骨抜きになったりしてはいるものの、少なくとも表向きの統合の射程は非常に大胆なものなので、評価の仕方によっては、EUに次ぐ世界2位ということになっても、不思議ではない。


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 こちらのコラムが、ここに来てアゼルバイジャンがロシアとの関係を重視するようになっている旨論じている。ロシア人が書いたロシア目線のテキストという感じもなきにしもあらずだが、要旨をまとめておく。

 アゼルバイジャンは優先順位を見直してロシアとの関係を重視するようになっており、それは最近の両国間の高官の往来にも表れていた。アゼルバイジャンは、運輸・エネルギーのプロジェクトで繋がりの深いトルコとの戦略的関係を保持しつつも、ロシアとの既存および計画されているプロジェクトにも関心を強めている。

 アゼルバイジャンのそうした変化の一因は、EUが新たなパートナーを受け入れる熱意が低いことである。アゼルバイジャンにとってそのことは、不利な連合協定の締結を迫られながら、その結果得たのはEUからの輸入増大やいつまで続くかも不確かなビザ免除協定だけだったという隣国ジョージアの教訓からも明らかである。

 先日、アゼルバイジャンのメフリバン・アリエヴァ第一副大統領がロシアを訪問し、国家元首でもないのにプーチン大統領が直々に会談し、二国間関係に尽したとして勲章まで与えた。一部の専門家は、プーチンはメフリバンを「未来の大統領」として受け入れたと論評した。マスコミ等では、イルハム・アリエフ大統領は次期大統領選に出馬せず、妻のメフリバンにその座を譲るという観測が絶えないからである。ただ、そのことの真偽は定かではなく、確かなのは、両国関係が拡大しているという事実である。

 アゼルバイジャンの専門家によれば、最近行われた機構・人事改革の結果、政権におけるメフリバン・アリエヴァ第一副大統領の役割は高まっており、国際舞台で国を代表する役割を与えられ、それには対ロシア関係も含まれ、今般のロシア訪問団を第一副大統領が率いることになったのもまさにそのためだった。昨年、アゼルバイジャン・ロシア経済協力二国間委員会のアゼル側の共同議長にM.ジャバロフ経済発展相が就任したが、同氏はメフリバン第一副大統領のチームの一員であるという。アゼルバイジャンはロシアとの関係で社会・経済分野を重視しており、今回のロシア訪問団にも同分野の高官が多く参加していた。そして、それらの分野の機関を束ねる役割を果たしているのがメフリバン第一副大統領である。

 ここ数年、二国間の貿易は順調に伸びており、すでに25億ドルを超え、本年は30億ドルの達成も見込まれる。経済関係における投資の役割が高まっており、しかも投資は双方向となっている。特にアゼルバイジャン企業が石油精製をはじめるとするロシアの加工部門に投資をしており、たとえば国営石油会社SOCARはロシアのアンチピノ製油所の株式を取得、実質的にロシアの石油精製市場におけるプレーヤーに躍り出ている。一方、アゼルバイジャンは同国が第三国で実施するプロジェクトにロシアの参画を得ており、たとえばSOCARがトルコに開設したスター製油所に供給される原油の半分ほどがロシア産となっている。さらに、アゼルバイジャンとトルコはガスパイプラインTANAPおよびTAPが輸送するガスの一部もロシア産とすることを検討しており、ガスプロムと交渉している。

 対するロシアは、自身が主導する国際的枠組みにアゼルバイジャンの参加を得ることを目指しており、それにはアゼルバイジャンがユーラシア経済連合に加入する可能性も含まれる。現に、プーチン大統領はアリエフ大統領をモスクワでのユーラシア経済連合サミットに招待した。


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2019-12-04-Kaz

 こちらのサイトで、アネット・ボアという専門家が、カザフスタンの対外政策、とりわけウズベキスタンを中心とした中央アジア諸国への働きかけについて論じているので、要旨を以下のとおり整理しておく。

 ナザルバエフがカザフスタンの大統領職から退き、後任がトカエフとなって、この間の注目すべき動きとして、中央アジア域内の協力関係が拡大していること、カザフの新体制が地域対話を改善しようとしていることが挙げられる。

 カザフは長らく、中央アジア固有のプレーヤーというよりも、ロシアと中央アジアを取り持つユーラシア国家としての自意識を形成してきた。しかし、2017年以降、それまで弱かった中央アジアの周辺国との協力関係強化を模索するようになった。それは多分に、ウズベキスタンという大きな市場の自由化の賜物だったが、それ以外の要因もある。

 その要因の一つは、カザフがロシアの対応を新植民地主義的なものと見なすようになっていることである。その一例がロシア主導のユーラシア経済連合であり、カザフはその実態に満足しておらず、この経済同盟に強固に縛り付けられることは望んでいない。モスクワから適度に距離を置くためにも、カザフは中央アジアの地域的な枠組みに関心を示すようになっている。

 石油依存を軽減する狙いもあり、カザフはユーラシア統合における運輸・テレコム・投資のハブになることを目論んでいる。中央アジアにおける輸送のリードタイムは世界の他地域に比べて大きいので、カザフのこの路線は中央アジア域内貿易を活性化する効果がある。

 さらに、カザフにおける人口トレンド、教育の民族主義的な方向へのシフトにより、同国指導部は中央アジア全体との紐帯を重視するようになっている。ウズベキスタンでミルジョエフ大統領が誕生し、カザフ側は両国の地理的近接性、経済的補完性、文化・歴史の繋がりなどをより意識するようになった模様である。

 また、中央アジアでは、孤立主義的なトルクメニスタンもある程度含め、域内貿易はお互いにとって利益であるという認識が広がっている。ロシアの抱える経済的問題を考えれば、なおさらである。カザフ・ウズベク関係が強化されるにつれ、中央アジア全体の域内協力が動き出し、2018年には中央アジア域内貿易が前年比35%増加した。

 ただし、カザフもウズベクも、中央アジア・レベルでの統合、機構化の議論はないとしている。以前の試みはロシアによって横取りされ、中央アジア独自の調整機構はできなかったという教訓があるのだろう。

 カザフもウズベクも、健全な競争が、外国投資の獲得など、両国経済のためになるという認識である。ただし、カザフの民間専門家の中には、ウズベクの台頭を、カザフから投資を奪ってしまうものとして、潜在的な脅威と見なす向きもある。ウズベク側はすでに一回政権交代を経験したという意味で有利なのに対し、カザフにはナザルバエフが完全に姿を消したらどうなるか分からないというハンデがある。ウズベクの人口はカザフの1.3倍で、製造業も一定の発展を見ており、安全保障面においては地域のリーダーである。その代わり、ウズベクのGDPはカザフの3分の1であり、キャッチアップ過程にある。

 カザフの貿易全体に占める中央アジア諸国のシェアは5%以下であり、ロシア、中国、欧州などの取引とは比べ物にならない。したがって、カザフは今後も、中央アジア地域のリーダーというよりは、グローバルなプレーヤーとしての立ち位置を重視し続けるだろう。


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 当ブログでも過日お伝えしたように、ウズベキスタンがユーラシア経済連合に加入するのではないかとの見方が、一部で取り沙汰されている。これに関し、こちらの記事の中で、F.ルキヤノフという有識者がコメントしているので、要旨を整理しておく。

 ルキヤノフ氏いわく、ウズベキスタンがユーラシア経済連合に加入するにはコストも要するが、プラスの方がはるかに大きく、同国にとっては条件をすべて精査し、最大限の利益を引き出すことが得策だろう。全体として言えることは、この地域においては統合が不可避ということである。行動の自由を確保しつつ、国が発展していく上での立ち位置を固めなければならない。ウクライナやモルドバにとってとは異なり、ウズベキスタンにはEUという選択肢はない。他方、中国は結局のところ自国の国益を志向しており、他の国の発展には関心を示さない。そうした中で、ユーラシア経済連合は大いに受入可能な枠組みである。

 いずれにしても、政治的決定を下すのはウズベキスタン自身であり、すべてのプラスを考慮し、必要な経済セクターを保護しようとするだろう。参加という判断が下されるにせよ、すぐにではなく、加盟条件が肝となる。ユーラシア経済連合では、共通の規定や原則はあるものの、加入条件は国ごとに異なる。加盟国の経済はまちまちで、交渉力も異なっており、厳しい駆け引きが不可避だ。EUでも、ポーランドが自国の立場を守り通したのに比べ、チェコの加入条件は不利だった。ウズベキスタンの場合、もしもユーラシア加入の条件が折り合えば、すべての国にとって得になるだろう。ルキヤノフは以上のようにコメントした。


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 ロシア・ベラルーシ・カザフスタンによる関税同盟が成立した当初は(その後5ヵ国によるユーラシア経済連合に発展)、ロシアの自動車メーカー(外資系も含む)がその枠組みに乗ってカザフスタンやベラルーシへの輸出を強化するという現象が見られた。しかし、こちらこちらの記事によると、ここに来て、カザフやベラルーシの新興自動車工場からロシアへの輸出という逆転現象も目立ってきているということである。

 ロシアAvtoVAZのカザフにおけるパートナーとなっているのが、アジアアフト社である。アジアアフトは、現在はカザフ国内市場向けのセミノックダウン生産だけを行っているが、ウスチカメノゴルスクにおける一貫生産工場の建設を2021年に完了することになっている。新工場の第1ラインの生産能力は年産6万台で、一部をカザフ国内市場に、一部をロシアを含むユーラシア経済連合諸国に供給する。

 AvtoVAZとカザフ側のビペクアフト・アジアアフトは数年前に契約を結び、AvtoVAZのシベリアおよびウラル連邦管区におけるディーラー網の経営権を後者が取得した。両社による合弁企業が2014年に設立されており、それと引き換えにAvtoVAZはカザフ市場へのアクセスを得た。現在のところビペクアフト・アジアアフトはシベリアとウラルのディーラーでロシアのトリヤッチおよびイジェフスクで生産されたラーダ社を販売しているものの、新工場が完成したらシベリアおよびウラルへの輸送が格段に楽になる。カザフ側は新工場からロシア極東への供給にも興味を示している。

 一方、ベラルーシにおいては、ミンスク州ボリソフ近郊にベラルーシ中国合弁のベルジー社による新工場が建設され、すでに年産6万台が可能であり、12万台への拡張計画もある。現時点では、セダンのEmgrand 7、クロスオーバーのEmgrand X7、そしてクロスオーバーのAtlasという3モデルが生産されている。前2者が旧モデルなのに対し、AtlasはVolvoの協力も得て開発した最新鋭モデルである(中国の吉利汽車(Geely)は2010年にVolvoを買収している)。ベルジーは2019年1~10月にロシア市場で7,260台を販売し、前年同期比213%増であった。

 専門家のS.イファノフは、アジアアフトおよびベルジーは合計でロシア市場の5%を占めることが可能であるとの見方を示す。それに対し、ロシア経済発展省の自動車部門の顧問であるS.ブルガズリエフは、両社がロシア市場でロシア工場の製品に太刀打ちするのは難しいだろうと、懐疑的な見方を示した。


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 上の図に見るように、ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合では当初、2019年から共同電力市場が立ち上がるということになっていた。それが実際にどうなったのか、気になったので調べてみたところ、2025年まで先送りになっていたということが判明した。

 こちらの記事などが伝えるように、ユーラシア経済連合の電力共同市場に関する国際条約が、2019年5月29日にヌルスルタンで開催された首脳会議において調印されたという。この時点では、条約は6月末までに発効する予定とされていたが、実際にどうなったかは不明である。

 私が調べた範囲内では、こちらに掲載されている「ユーラシア経済連合創設条約に電力共同市場を形成する部分に関する修正を加えるプロトコール」と称するものが、当該の国際条約なのだろう。

 そして、ユーラシア経済委員会のこちらこちらのページによれば、共同電力市場は「遅くとも2025年の年初から稼働し始める」とされているわけである。共同市場の基本ルールについては合意したが、今すぐに実行に移せる準備は整っていないということだろうか。

 経済統合の推進が当初のスケジュールよりも遅れるということは、あっても不思議ではなく、そのこと自体はやむをえまい。しかし、個人的に問題だと思うのは、「当初2019年立ち上げとされていた共同電力市場が、6年も遅れることになった」ということがきちんと説明されておらず、当初のスケジュールなどなかったことのようになってしまっていることである。こういった態度では、問題点を洗い出して、その課題を着実に解決していくということが、難しくなると思うのだ。


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 ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合は、域内の経済統合の進捗は怪しい面もあるが、域外の第三国との経済連携ネットワークの構築では意外に成果を挙げている印象がある。

 こちらのサイトによれば、ユーラシア経済連合は10月25日の政府間協議会の席で、セルビアと自由貿易協定(FTA)を締結したということである。

 上掲サイトによれば、ユーラシア諸国のうち、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンの3ヵ国は、セルビアと個別に自由貿易取決めを有していた。今回の新協定は、それらを一本化するとともに、キルギス、アルメニアもセルビアとのFTAの枠組みに参加でき、また法規制関係を刷新することに新味があるということである。

 ただ、セルビアは数年後のEU加盟を目指しているはずであり、そうなれば独自の通商政策は消滅するので、今回のユーラシア・セルビアのFTAは短命に終わるかもしれない。他方、今回のようにセルビアがユーラシアに接近する姿勢を見せることが、同国のEU加盟交渉上どう作用するかは、微妙な問題であろう。


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 ユーラシア経済連合の話題が続いて恐縮である。ユーラシアとイランの間では、2018年5月に暫定FTAが締結され、それが本年10月27日に発効することになっている。それで、こちらの記事によると、イランとしてはそれに飽き足らず、ユーラシア経済連合の加盟国になることに前向きな姿勢を示しているということである。このほどイランのエネルギー相が、テヘランで記者団に対して、「ユーラシア経済連合はイランに対して、正式な加盟国になるための3年間の期間を与えた」と発言したという。

 ユーラシア経済連合は、旧ソ連諸国による経済統合を想定した統合機関であり、実際に現加盟5か国もすべて旧ソ連諸国。もし仮にイランの加盟が実現すれば、ユーラシアにとってまったく新たな展開となる。

 しかし、こちらの記事によると、ユーラシア諸国、特にカザフスタンは、イランを加盟国として受け入れることに後ろ向きである。FTAはともかく、米国の厳しい制裁下にあるイランを正式加盟国として受け入れるようなことは時期尚早である。イランが加盟すれば、ユーラシア経済連合が政治化し、反西側同盟のように映ってしまい、このことは石油輸出先や生産プロジェクトで欧米に依存するカザフスタンにとってまずい事態だからである。カザフ国内にはユーラシア懐疑派がおり、イランの加盟はそうした風潮を強めることになる。


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