このブログでは過去にも、中国と欧州の間を鉄道コンテナ輸送で結ぶ「中欧班列」というプロジェクトについてお伝えしている。この輸送は、大部分が、カザフスタン~ロシア~ベラルーシというルートを辿る。そして、この3国部分の輸送を担うために3国の国鉄の対等出資で設立されたのが、「ユーラシア鉄道アライアンス」という合弁である。同アライアンスによる中国⇔欧州の輸送データを整理していたところ、興味深いことに気付いた。上図に見るとおり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始後、中国⇔欧州間のトランジット輸送は大きく低下し、政治・安全保障上の理由で顧客離れが起きていることをうかがわせた。ところが、今年に入り、一転して、輸送量は再び拡大に転じていたのである。
その際に鍵になるのは、海上運賃との兼ね合いである。中国⇔欧州間の貨物輸送は、海運が主流だが、海上運賃が値上がりすると、中欧班列の価格競争力が相対的に高まる。そこで上図では、中国から欧州向けのコンテナ海上運賃の指数も、赤線で複合的に示した。中国⇔欧州間の鉄道コンテナ輸送量は、かなりの程度海上運賃と比例しており、したがって2022年後半以降の中欧班列利用低下は、政治・安全保障の要因に加えて、海上運賃が下がったので、中欧班列の利用価値が下がったという面が大きかったと考えられる。それが、2024年に入り紅海危機で海上運賃が高騰し始め、顧客が中欧班列に戻ってきたというのが真相であろう。
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