ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

カテゴリ: ウクライナ

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 昨年の8月に、「今度は鉄道路線を廃止? どこまで続くウクライナ・ロシアの泥仕合」というコラムを発表した。そのあと、実際に両国間の鉄道路線がどうなったのかということがずっと気になっていたのだが、調べられずにいた。今般、鉄道だけでなく、航空、海運、バスも含め、両国間の交通路線がどうなっているのかについてまとめたこちらの記事を見付けたので、メモがてら書き留めておく。

 結論から言えば、ロシア・ウクライナ間の鉄道旅客輸送は、いまだに停止はされていないということである。ロシア鉄道の側は乗客の減少を理由に2014年12月にウクライナ領への乗り入れを停止したものの、ウクライナ鉄道およびモルドバ鉄道が引き続きウクライナ・ロシア間の列車を運行しているということだ。ウクライナ・インフラ省は再三にわたりロシア乗り入れ停止を唱えているものの、ロシア路線に収益を依存するウクライナ鉄道がそれに同意していないという構図らしい。また、ロシア・ウクライナ間の鉄道貨物輸送も保持されており、これは主としてウクライナ側がロシア産の石炭を輸入する必要によるものとのことである。ただし、両国とも相手国の主要鉄道輸送会社に制裁を課しており、それらの会社による自国向け輸送を禁止した状態にある。


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 目下当方、誰も興味のないような輸送部門の地味な研究に取り組んでいるところである。その一環として、ウクライナとベラルーシの鉄道貨物輸送の構造、趨勢を比較したこんなグラフを作成してみた。

 当方の目論見としては、「ウクライナとベラルーシは東西、ロシア・欧州の狭間に位置する国なので、鉄道輸送においても東西を結ぶトランジット輸送が重要な要素のはずである。しかし、ウクライナはロシアとの関係を悪化させ、その打撃で鉄道のトランジット輸送も低下しているのではないか。他方、ベラルーシは、以前からあったトランジット輸送に加え、近年脚光を浴びている中欧班列(中国と欧州を結ぶコンテナ貨物列車)の主たる輸送路になっているので、逆にトランジット輸送が増大しているのではないか」という事前の見立てがあった。

 実際に統計を集計してみると、グラフに見るように、ウクライナの鉄道トランジット輸送がここ数年で半分以下に落ちている事実は、確かに確認できた。それに対し、ベラルーシのトランジット輸送は、一貫して伸びているとはとても結論付けられず、これについては少々当てが外れた。

 これについての、私の解釈は次のようなものである。2018年にベラルーシ領を通過した中欧班列のコンテナは33.2万TEUだった。1TEU当たり10tくらいと考えると、332万tということになる。それに対し、ベラルーシの鉄道トランジット輸送は元々年間3,000万~5,000万tくらいあるので(重量×距離ベースの下図とは異なる)、中欧班列のコンテナが300万tくらいにまで拡大しても、数量的には、トランジット全体の1割くらいにしかならない。そもそも旧ソ連諸国の貨物輸送は、石炭、石油・石油製品、化学品、木材、金属、穀物といった重量のある商品が多く、コンテナが多少増えても、重量で見れば、全体に占める割合はわずかということになってしまうのだろう。

 ほとんど利益が出ていないはずの石炭輸送などと比べて、コンテナのトランジット輸送は高付加価値であり、収益という観点から言えば、ロシアやベラルーシの鉄道に多大な貢献をなしていると考えられる。しかし、ロシアやベラルーシは中欧班列のトランジット輸送による収入を発表していないようである。したがって、中欧班列の活況がトランジット国にどのような経済効果をもたらしているのかを定量的に把握するのは困難であるという結論になってしまった。

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 一般の方々にとっては面白くもなんともないネタだが、個人的に今日は一日ずっとこんなデータを集計していた。ウクライナのサービス輸出のうち、最大の項目は輸送サービスであるが、では具体的にどの国・地域に輸送サービスを提供しているかをまとめたものである。

 グラフに見るとおり、昔も今も、ウクライナの輸送サービス輸出の約半分は、ロシアを対象としたものである。そして、ロシア向け輸送サービス輸出の大部分は、パイプライン輸送であり、これは石油も少しだけあるはずだが、ほぼ全面的に天然ガスのパイプライントランジット輸送による収入と考えられる。

 2014年以降、ウクライナとロシアの国家間関係が険悪化してにもかかわらず、ウクライナのロシア向け輸送サービス輸出はそれなりに持ち堪えていたことが分かる。しかし、それはロシア・ガスプロム社がやむなく欧州向けガス輸出ルートとしてウクライナを活用してきたからである。輸送契約は本年で切れることになっており、ウクライナの年間30億ドル規模の収入が現在存亡の危機に立っているわけである。ロシア:その他というのは、具体的には鉄道、自動車、海運、空運などであり、これらはウクライナ・ロシア関係の悪化をダイレクトに反映して、激減している。

 「欧州」というのは、EU諸国を中心に、その他の西欧・東欧諸国も加えたものである(CIS諸国は除外)。2014年以降、ウクライナはEU統合を前面に掲げているにもかかわらず、欧州向けの輸送サービス輸出も減っている。これは、ウクライナの欧州向け輸送サービス輸出は、そのほとんどが、欧州の貨物をロシア向けにトランジット輸送することによって成り立っているからだろう。つまり、ウクライナがロシアと正常な関係を築けなければ、ロシア向けだけでなく、欧州向けの輸送サービス輸出も減る一方ということである。


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 こちらのニュースが、興味深い事実を伝えている。米国の地名評議会がこのほど、ウクライナの首都キエフの米国における正式な表記を、 "Kiev" から "Kyiv" へと変更したということである。つまり、従来のロシア語風の読み方の「キエフ」から、ウクライナ語風の読み方の「キーイウ」に変えたということだろう。

 日本でも、ウクライナ関係者の間では、ウクライナの地名・人名はウクライナ語風にカタカナに置き換えるべきだというコンセンサスがあるが、こと「キエフ」については日本でもある程度定着した読み方なのでそのままでいいのではないかという有力な意見があり、私が編集した『ウクライナを知るための65章』でもその方式で臨んだ。ただ、米国へ右へ倣えの日本国なので、今後日本での正式な呼び方も「キエフ」から「キーイウ」もしくは「キーウ」などへの変更が検討されるかもしれない。グルジアからジョージアに変更された時と同じように、もしもウクライナが国として日本に正式に要請してきたら、確実にそうなるだろう。まあ、私自身は、そうなった時は、それに倣うのみである。


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 編集作業が終わったばかりの(文字通り、今終わった)『ロシアNIS調査月報』2019年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。今号では、小誌としては初めての試みとして、サービス貿易に焦点をあてた特集をお届けしております。もちろんこれまでも輸送や旅行といったサービスに関連した個別の記事はありましたが、サービス貿易という括りを前面に掲げた特集としては、これが初です。

 私自身は、特集の枠内では「ロシア・NIS諸国のサービス貿易を見る視点」、「ロシアのサービス輸出拡大目標」、「インバウンド観光促進を目指すロシア」を執筆、さながら一人特集のようになってしまいました。特集の枠外でも、「ウクライナのゼレンスキー劇場は第2幕へ」、「ロシア・サッカーの2018/19シーズン終了」、「キエフで堪能するクリミア・タタール料理」といったものを書いています。正直この号では楽をさせてもらおうかと思っていたのに、終わってみれば一人で50ページも書く羽目になり、なんでこんなことになったのか。6月20日発行予定。


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 毎年恒例のペテルブルグ国際経済フォーラムが昨日開幕し、ロシアの経済ニュースはそれ一色のようになっている。

 それで、ウィキペディアの同フォーラムに関するページを眺めていたら、意外なことに気付いた。このページにはフォーラムに出席したことのある外国元首の一覧が出ているのだが(上の画像はその一部を切り取ったもの)、その中にV.ユーシチェンコ氏の名前があったからだ。当時ウクライナ大統領だったユーシチェンコ氏は、2007年、2008年と2度にわたってフォーラムに参加したようである。ウクライナ危機以降、ロシアのビジネスイベントが「踏み絵」のようになってしまい、それに参加することはロシアへの恭順の姿勢と同義みたいになってしまったが、10年くらい前はまだ、フォーラムのプラグマティックな意義の方が前面に出ており、親欧米と呼ばれたユーシチェンコ氏が出席する余地もあったのだなと、そんな感慨を覚えた。


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 ウクライナのV.フロイスマン首相(写真)は、V.ゼレンスキー新大統領の意向を受け、5月23日に最高会議に対し辞任の申し出を行っていたが、こちらの記事などが伝えるとおり、5月30日に決議案が最高会議によって否決された。出席した297人の議員中、賛成したのは97人だけであった。会派別の賛成人数を見ると、ポロシェンコ・ブロックが7人、人民戦線が2人、祖国が9人、急進党が14人、自助党が12人、野党ブロックが19人、人民の意志が0人、ルネサンス・グループが3人、無会派が31人だった。


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 こちらの記事によると、ウクライナのYe.チェルヴォネンコという元運輸相が、ロシアとの対立がウクライナの経済に及ぼしている巨額の損失についてテレビ番組で語ったということである。なお、チェルヴォネンコ氏の経歴はこちらに見るとおりで、運輸相を務めたのはオレンジ革命後の2005年2~9月のティモシェンコ内閣においてであり、ごく短期間だったようである。

 記事によれば、チェルヴォネンコ元大臣は概要以下のように発言した。ロシアとの対立で、ウクライナには巨額の損失が生じている。ウクライナは、もしも中国から欧州への列車がウクライナ領を通っていたら巨額の資金を得られるはずだったが、ロシアと対立したことで不可能となり、結局その全額はベラルーシが受け取っている。2014年にウクライナは欧州から中国への列車を通過させる目前だったが、クーデターが起き実現しなかった。スロバキアから中国に向かうコンテナ列車を通すはずで、すでにスロバキアに待機しており、2014年3月7日にヤヌコーヴィチ大統領がキエフで式典をするはずだったのだが、政変が起きた。現在では、このスキームで、週に75本の列車がベラルーシを通過している。ヨーロッパのビジネスマンたちは内輪の話では、なぜウクライナ当局がこのようなビジネスチャンスをみすみす放棄しているのかと、あきれかえっている。もしもロシアとの対立を解決し、互恵的なシルクロードを築けば、ウクライナの収入は300億ドルにまで高まるだろう。チェルヴォネンコはこのように指摘した。


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 2019年ウクライナ大統領選特報(No.22、2019年5月20日)を配信しました。本日、ゼレンスキー新大統領の就任式があり、議会解散宣言がありましたので、急遽お届けすることにしました。


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 日取りがなかなか決まらなかったウクライナのゼレンスキー新大統領の就任式、こちらの記事などが伝えているとおり、本日5月20日、現地時間10:00から始まるということである。記事によると、どうも型通りの就任式ではなく、テレビドラマ「公僕」の脚本家が演出に加わるなどして、型破りの就任式になる模様である。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2019年6月号の中身を、どこよりも早くご紹介。令和最初の号ですが、毎年6月号は、ロシア以外のNIS諸国をまとめて詳しく取り上げることが恒例となっており、今回もNIS総論特集となっております。その際に、ここ1年あまりの間に、NIS諸国は重要な選挙があったり、大統領・首相が代わったりしているところが多いので、その点に着目して「特集◆転換点に差し掛かるNIS諸国」と題してお届けしております。それにしても、3月にナザルバエフ・カザフスタン大統領が突然「終活」を始めたのには驚きましたが、今回、宇山智彦先生にご寄稿いただいた論考は、この問題に関する決定版とも言うべき考察になっております。

 私自身は、「2019ウクライナ大統領選挙の顛末 ―異例の政権交代はなぜ起きたのか」、「第4期プーチン政権下の政策進捗状況」というレポートを書いたほか、2018年のロシア・NIS諸国全般、ウクライナ、ジョージアの経済パフォーマンスについてのレビューを執筆。

 本来の発行日は5月20日ですが、今号は大型連休のしわ寄せで、4~5日ほど遅れることになりそうです。ご容赦ください。


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 私はウクライナのゼレンスキー新大統領の就任式は6月3日だと理解していたのだけれど、これは遅くとも6月3日までにやるということであり(5月4日に大統領選決選投票の最終結果が官報に掲載され、そこから1ヵ月以内という意味)、具体的な日取りは議会(最高会議)が決定するのだそうだ。それで、こちらの記事によると、まだその日取りが流動的なままとなっている。すでに議会には、就任式の日を5月19日にするとの決議案と、6月1日にするとの決議案が出ているということである。そして今般新たに、就任式を2段階に分けて実施し、まず第1段階では5月19日に議会で就任式を行い、第2段階として6月3日にキエフのオリンピックスタジアムで一般国民や外国の賓客を招いて実施するという提案がポロシェンコ・ブロックの議員から寄せられた、ということである。


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 個人的に、3月に出たこちらの情報を、非常に興味深く感じた。記事によると、ウクライナ側の2018年10月の措置に対抗し、同年12月にロシアが導入した追加制裁により、ウクライナ企業製の電気機関車用のモーターおよび発電機が輸入できなくなった。具体的には、ハルキフのエレクトロチャジマシ社と、スミラ電気機械工場(チェルカスィ州)の製品が対象になっている。ところが、これによりロシア鉄道の機関車更新プログラムの実施が苦境に立たされており、これらの製品を制裁対象から外すよう、このほどロシア鉄道の幹部が産業・商業省を通じて政府への陳情を行ったということである。ウクライナ側の措置から対抗措置を講じるまでに2ヵ月ほどの期間があったにもかかわらず、その間に政府がロシア鉄道の意向を確認するようなことはなされず、またロシア側でウクライナ製品に代わる製品の生産を立ち上げる具体的な動きも今のところないという。


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 ちょっと用事があって、上に見るように、ロシアの商品貿易に占める対CIS諸国取引の比率というグラフを作成した。その比率は年々低下しており、2018年には過去最低の11.8%に落ち込んだ。うち、ロシア側の輸出では12.2%、輸入では11.0%である。

 それで、CISと言えば、ロシアと決別したウクライナが、2018年にCIS脱退宣言をしたことが記憶に新しい。しかし、ウクライナがすでに完全にCISから抜けたのか、今現在すでにメンバーでないのかというのは、きわめて不明確な状態である。試しに、ロシア連邦関税局の発表した2019年1~2月の貿易動向をチェックしてみたところ、下の表のように、ウクライナは依然としてCIS国としてカウントされている。

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 CISとウクライナの関係性については、英語版ウィキペディアのこちらのページに見るように、込み入った法律論になってしまい、白か黒かはっきりしない。実はウクライナはそもそも、CISの基幹文書であるCIS憲章に調印しておらず、それをもって、我が国はCISの加盟国ではなくオブザーバーであるとの立場を以前からとってきたのだが、ここに来てかえってそれがアダになっているような印象がある。というのも、ジョージアの場合であれば、CIS憲章条約に調印していたので、同条約から離脱することによって、正式にCISからの脱退手続きをとることができた。それに対し、元々CIS憲章条約に参加していなかったウクライナは、ジョージアのような手続きを踏むことができないのである。むろんウクライナ自身はもはやCISとは無関係という立場をとるだろうが(ゼレンスキー次期大統領が政策変更する可能性はなくもないが)、ロシアやCIS事務局側はウクライナがCIS当事国のままという建前を崩さないと見られ、いわばウクライナは「CISの罠」にはまったような恰好である。


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 ウクライナ大統領選で、ティモシェンコは割と家族の存在をアピールし、ポロシェンコもよく奥さんを伴って公の場に表れたが、ゼレンスキーについては家族と一緒の写真や動画を見た記憶がなく、どうなっているのか気になったので調べてみた。

 その結果、ゼレンスキーには普通に妻子がいるということが確認できた。奥さんは、オレーナ・ゼレンスカといって、夫ヴォロディーミルとは同郷かつ同い年、つまり1978年ドニプロペトロフスク州クリヴィーリフ生まれの41歳である。ヴォロディーミルとオレーナは同じクリヴィーリフのギムナジウムで学んだが、クラスが違い、当時は知り合うことはなかった。出会ったのは、ヴォロディーミルがクリヴィーリフ経済大学で、オレーナがクリヴィーリフ国民大学で学んでいた時であり、その8年後の2003年に結婚したという。2人の間には、2005年に生まれた娘と、2013年に生まれた息子がいる。オレーナは夫のテレビ制作会社「クヴァルタール95」でも仕事をしているようだ。


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 YouTubeの「2019年大統領選特報」が滞っているが、何とか今夜あたりに1本出せないかなと思っている。

 それに向けて資料に目を通している中で、ロシア『エクスペルト』誌2019年4月8-14日号(No.15)に出たA.スミルノフという人の解説記事を読んでいるところである。ロシアのメディアでウクライナ情勢をフォローするのは邪道かもしれないが、多少の偏りはあるような気もするものの、やはりそれなりに鋭い内容のものは多いと思う。

 それで、このスミルノフ氏の解説記事の中で、気になったのは、今回の大統領選に、ウクライナきっての大富豪R.アフメトフ氏の果たした役割である。スミルノフ氏によれば、V.ヤヌコーヴィチ時代の与党だった地域党の残党である「野党ブロック」が、今回の大統領選で分裂選挙になったのは、アフメトフがYu.ボイコを決選に進ませないように、O.ヴィルクルを担ぎ出したからだったという。というのも、各種世論調査によれば、現職のP.ポロシェンコが決選投票で勝てる相手は、ボイコしかいなかったからだ。アフメトフは、自らの事業地域が戦線で分断されていることが不満で、一向にドンバスに和平をもたらすことができないポロシェンコに苛立っており、政権交代を起こしたかったのだと、スミルノフ氏は論じている。

 私自身は、アフメトフはドンバス紛争で不利益は被ったものの、ポロシェンコ政権から有利な条件を引き出し、電力部門でそれを補って余りあるほどの利益をあげているので、ポロシェンコ体制の継続を望んでいると理解していた。なので、スミルノフ氏の見立ては、個人的に意外なものだった。


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 本日も別件の締切に負われ、週末にお届けするはずの「週刊ロシア経済」や、滞っている「ウクライナ大統領選特報」を配信できそうもない。というわけで、簡単な記事でお茶濁しを。上に載せたのは、時々更新している、「ウクルアフトプロム」という機関によるウクライナの月別新車乗用車の販売台数である。経済は基本的には回復基調にあるウクライナだが、景気のバロメーターとなる新車販売は、2018年は前年割れだった。具体的に言えば、2018年の通年の販売台数は81,877台であり、前年比0.6%減だった。ただ、上のグラフを見ると、2018年が減ったというよりは、むしろ2017年の終盤に何らかの理由で駆け込み的に販売が増えたようにも見えるので、すっかり輸入中古車に席巻されてしまったウクライナの乗用車市場は、まあ2018年のこの程度の実績が実力なのかもしれない。なお、こちらに見るとおり、ロシア系の「アフトスタット」では、2018年のウクライナの販売台数は77,448台で、前年比3.2%減であったという、やや異なる数字を示している。


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 このほど世銀は、2018年の世界各国のレミッタンス、すなわち国外での出稼ぎ等による外国からの個人送金額の推計値を発表した。データはこちらのページからダウンロードできる。概況に関する解説はこちらのページに出ている。

 この統計を使って、上表のとおり、私の関心地域であるロシア・NIS諸国のデータをまとめてみた。ロシア・NIS圏において、国外出稼ぎ労働は、エネルギー等の資源を持たざる国の現象と言える。世銀の解説では、2018年にウクライナのレミッタンス受入が特に大きく伸びたことを強調している。労働移民を受け入れる側のロシアの経済が一定の回復を果たしたことが、周辺諸国のレミッタンス受入額を拡大させる結果となったが、ウクライナの場合には、統計の方法論を変更したことも額が拡大した一因だという。

 下の図には、2018年のレミッタンス受入額がGDPの10%を超えている国を整理した。NIS諸国の部分を濃い赤で塗っており、特にキルギスやタジキスタンは世界屈指の出稼ぎ依存国であることが分かる。

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 ちょっと用事があって、こんな表を作ってみた。過去10年のEUの鉄鋼輸入相手国を整理したものである。EUは米国のトランプ鉄鋼関税に対抗し、2018年7月19日から鉄鋼輸入に暫定的に関税割当を適用してきた。そして、2019年2月2日からは、関税割当が正式に導入され、これが2021年6月30日まで適用されることになっている。関税割当とは、ある一定量までは通常の関税率で輸入されるが(EUの場合、鉄鋼の関税率は基本的に0%、鉄鋼製品は大部分が5.0%)、それを超えると以降は高率の関税率が適用されるという仕組みであり、本件の場合にはそれは25%の上乗せとなっている。この措置の影響を探るための下調べとして、上掲のような表を作成した次第だ。まあ、一口に鉄鋼といっても、プリミティブな半製品から高度な鋼板類まで色々あるし、できれば金額よりも数量ベースで見たいところなのだが、とりあえず全体像を知るための表である。

 EUは域内貿易比率が非常に大きな地域経済圏であり、鉄鋼に関しても輸入はEU域内からが多く、その比率は常に7割を超えている。しかし、鉄鋼の域内輸入比率は、2009年の78.3%から、2018年の72.6%へと傾向的に低下している。

 ロシアは、単独の国としては、EUの最大の鉄鋼輸入相手国である。実は、2018年7月以降のEUの暫定的な関税割当は、かえってロシアには有利に働いたようで、表に見るように、2018年にロシアのEU向け鉄鋼輸出は大きく伸びた。同様のことは、トルコについても言えるようである。こうしたことにかんがみ、EUは2019年2月以降は、基本的に国別に割当を設定し、ロシアのような国から突出して輸入が増えないように修正を図った。

 それに比べると、ウクライナのEU向け輸出は、このところ振るわない。むろんこれには、ドンバス・アゾフ海情勢というウクライナ側の事情が大きく影響している。ただ、ウクライナはEUと連合協定を締結しDCFTAが成立しているのに、それでもEU側の制限措置の対象に加えられてしまうのは、モヤモヤする(今回の関税割当が及ぼす影響は実際には小さいという指摘もあるが)。

 その他のCIS国では、モルドバがEU向け鉄鋼輸出を増やしていることが興味深い。これは、沿ドニエストル共和国に所在するモルドバ冶金工場の製品に他ならず、親ロシア分離主義地域の工場であるにもかかわらず、ちゃっかりモルドバとEUのDCFTAの恩恵に浴しているわけである。

 今や世界に冠たる鉄鋼超大国となった中国だが、中国はEU向けにはそれほど大量に輸出はしていない。日本も微々たるものである。EUはトランプ関税への対抗措置として関税割当を導入したわけだが、実は米国からの輸入はごくわずかである。


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 先日、UNIDOおよび外務省主催のGUAM投資ワークショップというのがあり、そのパネルディスカッションのモデレーターを務めさせていただいた。その中で私はウクライナの投資環境について問題提起したのだが、ウクライナからの参加者は直接的な回答の代わりに、同国に投資を行っている外国企業をずらずらと列挙し始めた。「これだけのサクセスストーリーがあるのだから、投資環境云々といった指摘は当たらない」と言いたかったのだろう。

 そのウクライナ参加者は、実例として自動車のシュコダによる投資も挙げており、同社は西ウクライナで自動車アセンブリーに従事しており、現在それをさらに拡大しようとしていると述べていた。しかし、最新のこちらの記事は、残念な現実を伝えている。シュコダはウクライナでの新工場の建設を断念したということである。

 記事によると、フォルクスワーゲン・グループの傘下にあるシュコダは、複数ブランドの自動車のアセンブリーを手掛ける工場の建設地を選定中であり、2017年には同社代表団がウクライナを訪問してフロイスマン首相とも面談した。しかし、その後ウクライナ側は、シュコダが望むような条件を提示できなかった。工業団地の関税・税制優遇は欠如し、電気自動車戦略は15年も機能しておらず、電気自動車生産を促進する法案は年初に上程されながら審議もされていない。こうした中、ウクライナでは中古車の輸入が野放しの状態にあり、まともな自動車ビジネスを駆逐してしまっている。シュコダがウクライナを選んでくれれば、14億ユーロの投資、5,000人の新規雇用、年産30万台の生産、年間45億ドルの輸出が得られたはずだったが、かくしてウクライナはそれをみすみす手放した。シュコダでは現時点で工場建設地を中東欧の4ヵ国にまで絞り込んだが、そこにはウクライナの名はない、とのことである。


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