ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

カテゴリ: ウクライナ

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 このニュースを理解するためには、まずソ連時代に建設されたとあるパイプラインのことを知る必要がある。本件に関しては以前、「ロシアとウクライナにまたがる『世界最長の化学品パイプライン』の謎を解く」というコラムを書いた。ロシア沿ヴォルガ地方のサマラ州トリヤッチ市から、ウクライナ・オデーサ州のピウデンヌィ(ユジネ)港に至る、全長2,471kmに及ぶアンモニアパイプラインが存在する(上図参照)。ソ連崩壊後も、途切れることなくアンモニアの輸送が続けられてきた。ところが、2月24日のロシアによる軍事侵攻開始後、パイプラインの起点に当たる窒素肥料大手トリヤッチアゾト社は、パイプラインを通じたアンモニアの輸出を停止した。ついでに言うと、アンモニアは天然ガスをもとに生産され、窒素肥料の前段となる。

 そして、こちらの記事によると、このほどゼレンスキー・ウクライナ大統領はロイターとのインタビューで、ウクライナ領を経由するロシア産アンモニアの輸出は、ウクライナ兵の捕虜が解放される条件においてのみ認めるとの考えを示した。

 この提案に対し、ロシアのD.ペスコフ大統領報道官は、人間とアンモニアを同列に扱うのかと、否定的に反応した。

 これに先立ち国連は、ウラルヒム(注:トリヤッチアゾトではないのか?)の生産したアンモニアをパイプラインのロシア領部分で対ウクライナ国境まで輸送し、その地点でトレーダのTrammo社が買い上げる(注:その後はTrammo社の貨物としてパイプラインのウクライナ部分でピウデンヌィ港まで運ぶということだろう)というスキームを提案していた。

 国連は肥料価格を引き下げるとともに、穀物輸出に関するイスタンブール合意へのロシアのコミットを確かなものとするために、ロシアとウクライナにアンモニア輸送に関する合意を形成するよう提案しており、国連関係者によれば両国とも前向きな姿勢だという。この合意が成立すれば、ロシア産アンモニアがピウデンヌィ港からウクライナ産穀物と同じスキームで輸出でき、輸送量は200万t、現在の相場で24億ドルに上る。

 2月24日の軍事侵攻開始後、トリヤッチアゾトはアンモニア輸出を停止した。ただ、同社によれば、同社のアンモニア生産は、国内需要を満たし、尿素および尿素ホルムアルデヒド濃縮物を生産するのに充分な水準を継続している。同社では鉄道輸送により顧客へのアンモニア供給義務を全面的に履行している、という。


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 こちらの記事の内容、図解資料は、興味深い。これによると、東方経済フォーラムでプーチンは、イスタンブール合意によってウクライナから積み出された穀物は、大部分がトルコとEU諸国に向かっており、食料を切実に必要としている途上国には80隻の運搬船のうち2隻しか向かわなかったと発言したということである。その上でプーチンは、ロシアとしてウクライナからの穀物その他の食料の積出を制限することも検討するかもしれないと発言している。

 そこで、Meduzaが、ウクライナを出港した穀物船が実際にどこに向かったかを、図にしてみたということである(上掲参照)。

 それによると、88隻のうち、トルコに向かったのが32隻、EUが30隻、その他が25隻、不明が1隻だった。その他の内訳は、エジプト6、中国3、韓国3、イスラエル3、インド3、イラン2、イエメン1、スーダン1、ソマリア1、ジブチ1、レバノン1ということである。


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 これは8月27日の動きだと思われるが、こちらの記事などが伝えるところによると、ロシアのS.キリエンコ大統領府第一副長官が、ウクライナのロシア占領地域でロシア編入に関する住民投票が実施された場合の「見通し」を述べたということである。

 キリエンコによると、決定は住民たち自身が決めるものであり、ロシアは住民投票が行われていかなる結果が出たとしても、それを尊重する。もっとも、自分はドンバスおよびヘルソン、ザポリージャ地域における住民の意向を知っており、意識調査結果なども見ており、住民投票における決定は大差となろう。

 すなわち、ドネツク人民共和国とルハンシク人民共和国では、意識調査で、91~92%の回答者がロシアへの編入に賛成すると回答している。ヘルソンおよびザポリージャの地域では、意識調査での賛成率は約75~77%だが、毎週調査をするたびにその比率は増えている。

 以上がキリエンコ第一副長官の発言であった。現実を反映しているとはとても思えないが、一応記録しておくことにした次第。


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 8月24日に日本国際問題研究所主催の「中東からみたウクライナ戦争と食糧不安・危機」という公開ウェビナーがあり、そこで「ロシア・ウクライナからみた黒海穀物輸送」という報告をさせていただいた。それに向けて作成したグラフをちょっとおすそ分けしたい。

 旧ソ連諸国の中では、ロシア・ウクライナ・カザフスタンが3大穀物輸出国となっている。そこで、それら3ヵ国の穀物輸出構造を、穀物の種類別と、相手地域別に示したグラフを作成した。データは数量ベースで、2012~2021年の平均値である。

 まず、穀物の種類別の内訳を見たのが、下図となる。ロシアとカザフスタンが小麦主体であるのに対し、ウクライナはとうもろこしが半分以上を占める。

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 次に、輸出相手地域が、下図のとおり。ロシアとウクライナは、アフリカ・中近東を主力とする構造が似通っている。ただし、ウクライナはEU、APEC(具体的には中国、インドネシア、韓国等)向けも多い。なお、2014年の連合協定後も、ウクライナのEU向け穀物輸出は、関税割当によって抑制されていた。遠い外国向けが主流のロシア・ウクライナと異なり、カザフスタンはCIS(近隣の中央アジア諸国)向けが圧倒的に多い。

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 8月6日付と少々古くなってしまったが、こちらの記事がイスタンブール合意後のウクライナ穀物輸出の可能性につき論じているので、以下要点を整理しておく。

 業界団体「ウクライナ・アグリビジネス・クラブ」のR.スラステン専務理事によると、オデーサ州港湾の封鎖解除により、月量約400万tの穀物および採油用作物の輸出が可能になる。すでに試みられていたドナウ川河川港および欧州方面陸路の輸送路と合わせると、月660万tが輸送できる。

 昨年収穫されながら港に滞貨していた作物は1,500万~1,800万tである。一方、今年は7,000万tが収穫されると予想され、うち1,500万~2,000万tが内需向けとなり、輸出できるのは5,000万~5,500万tとなる。昨年と今年を合わせて、7,000万tほどということになる。毎月600万tを積み出すことができれば、12ヵ月でそれらをさばくことができる。

 しかし、外国の船主がウクライナの港に寄港することを見合わせれば、絵に描いた餅になる恐れがある。現在のところ、積極的な外国船主は数少ない。O.クブラコフ・インフラ相は、月に100隻の寄港を実現するのが目標だと先日表明した。

 前述の7,000万tの輸出が実現すれば、現在の国際価格だと、ウクライナの農業生産者は150億ドルの売上を得ることになり、輸送業者なども含めたウクライナ関係業界の売上は200億ドルとなる。

 ただ、もしも毎月の穀物輸出が100万tにも達しないような状況だと、生産者は2023年の収穫に向けた今年の秋蒔きの作付を縮小してしまうかもしれない。また、昨年の秋蒔きの作付は650万haだったが、そのうち現在ウクライナが実効支配できているのは470万haである。輸出収入が得られないと、播種作業に必要な資金が得られず、秋蒔きの作付は300万haにまで縮小してしまう恐れがある。


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 ニブロン社と言えば、農業王国ウクライナの中でも、国を代表する穀物および植物油輸出企業である。こちらが伝えているとおり、7月31日にロシアがミコライウを爆撃した際に、ニブロンの創業者であるオレクシー・ヴァダトゥルシキー氏の自宅も被害に遭い、同氏および妻のライサさんが亡くなったということである。

 今般の戦争で、私が研究していた一連の工場や港が破壊されたり戦場になったりしてきたが、さすがにオリガルヒが亡くなる事態はこれが初めてだと思う。当ブログでは2014年にウクライナのオリガルヒ・シリーズというのをお届けしたのだが、追悼の思いを込めて、ニブロンのヴァダトゥルシキー氏の回を以下復刻してお届けする。

 O.ヴァダトゥルシキーは、食糧企業「ニブロン」の創業者、共同オーナー、社長である。同氏は、ウクライナ南部において、ヤヌコーヴィチ旧政権と敵対していた急先鋒だったと言える。彼にとって前政権の治世は、ビジネスにとって常に脅威が生じた時代であり、彼の立場も当然である。

 過去4年間のいくつかの出来事を思い出せば、ヴァダトゥルシキーの立場も容易に理解できよう。すべては2010年夏に始まった。ニブロンが河川ターミナルを建設するのに障害が生じ、その後には支社長が起訴される事態となった。同年秋にはウクライナで穀物の輸出割当が導入され、「フレブ・インヴェストブド」なる会社が突如として市場に参入した。ニブロンにも一定の割当が提供されたが、計画していた輸出をこなすのにはまったく不充分な規模だった。しかも、割当分ですら、しばしば港湾が許可を出さず、大幅に遅延することが多かった。2011/12穀物年度には、ニブロンは過去数年で初めて最大の輸出企業の座から滑り落ち、フレブ・インヴェストブドにその座を明け渡した。

 2012年秋頃になると、ヤヌコーヴィチ・ファミリー派のYu.イヴァニュシチェンコがニブロンの一部を簒奪しようとしているとか、あるいはすでに簒奪したという噂が流れ始めた。ヴァダトゥルシキーはこの情報を否定しており、現実にニブロンの株の80%は同氏が保有し、残りの20%は息子のアンドリーが保有している。しかし、火のない所に煙は立たぬというものであり、関係筋によれば、ニブロンはファミリー側に上がりの一部を日常的に上納することを余儀なくされていたという。

 ヤヌコーヴィチ政権が採ったその他の政策も、ニブロンにとっては不利なものだった。特に、2013年暮れに再燃したロシア・ウクライナ・カザフスタンによる「穀物OPEC」構想が挙げられる。ニブロンが他の農業グループと異なる点は、土地資源がそれほど多くないにもかかわらず、高い収益性を挙げていることである。ニブロン傘下の農地は8万haほどなのに、40万haのカーネル、60万haのウクルランドファーミングに匹敵する利益を確保してきた。これは、輸出を主体としているからこそであった。しかし、穀物の国際カルテルが形成されたら、ロシアの競合業者と、ロシアの政治によって、自分たちの経営が左右されることになってしまう。ロシアの政治は、時に経済合理性を無視することで知られる。

 こうしたことから、2014年の3月初頭になると、ヤヌコーヴィチ政権下で常態化していた資産の分捕りを批判するヴァダトゥルシキーの声明がマスコミで流布するようになった。「古典的な乗っ取りの手口が横行してきた。週末に企業に武装した人々が押しかけて、守衛を追い出し、自分たちの経営者を連れてきて、彼らが経営者であると宣言する。クリミアでもまったく同じことが起きている」と、彼は指摘した。声明の中で彼はさらに、ロシア資本が取得した企業は悲惨な状態にあること、ロシアのテレビ局の嘘、マイダンで新たな民族が誕生しつつあること、分離主義は認められないこと、ウクライナの欧州選択、など多くについて語った。つまり、旗幟を鮮明にしたわけである。4月になるとヴァダトゥルシキーは、ヘルソン州での検問に当たっているミコライウ州駐留ウクライナ軍への支援を提供し、ミコライウ州の他の企業家たちにも傍観しないように呼びかけた。

 ヴァダトゥルシキーにとって頭が痛いのは、ニブロンの後継者問題である。いかに有能な同氏であっても、もう66歳である。彼には一人息子のアンドリーがおり、現在は副社長として働いている。ジュニアは、外国の取引相手を見付けることなど、一定の能力も見せてはいるが、父のような経営能力は望むべくもないとされる。


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 週刊エコノミストのサイトに、「ウクライナ最強キーウのサッカーチーム 戦争に屈しない『伝説の試合』」というコラムを寄稿しました。タイトル含め、編集側の意向で変えたところが若干ありますが、よかったらご笑覧ください。紙の雑誌版のエコノミストにも載るようです。


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 一昨日、ウクライナの穀物輸出に関するウクライナ・ロシア・国連・トルコ間の合意がまとまったばかりだが、昨日その合意に反するように、ウクライナの港湾施設がミサイル攻撃を受ける事件が発生した。

 本件に関し、差し当たりこちらの記事で目に留まったロシア国際問題評議会のA.コルトゥノフ理事長のコメントを以下のとおり抄訳して紹介する(必ずしも賛同を意味するわけではないので悪しからず)。

 本件に関し、なぜロシアの公式声明が出ていないのか、それはロシア国防省に訊いてみないと分からない。ただ、近いうちに何らかの情報は発信されるだろう。というのも、事態は異常なもので、不明確な状況が残れば、ロシアの敵たちによってネガティブキャンペーンに利用され、場合によっては武器支援の決断を促すかもしれないからだ。

 現下の状況では、様々な偶発的事件が起こりうる。全当事者が政治的意思を持っていても、不測の事態が起こらないという保証はない。問題は、いかに迅速かつ効果的に問題を封じ込め、再発の可能性を可能な限り少なくするかである。

 近くのどこかで何かの弾薬が爆発したのかもしれないし、どちらか一方が何らかのシステムを無許可で起動したのかもしれない。紛争下では、残念ながら何が起こるかわからない。しかし、やはり、できるだけ完全に、できるだけ早く、情報を開示することがロシアの利益になるはずだ。

 今のところ、今回のことが穀物輸出をめぐる状況を根本的に変えたとは思えない。もちろん不都合なことではあるが、穀物倉庫は被害を受けていないし、インフラ全般にも大きな被害はなかった。速やかに穀物の積出を開始するのに技術的な障害はないはずだ。 


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ランキング

 今まで全然知らなかったが、こちらのサイトに見るとおり、ウクライナの「政治研究所」というところが、ウクライナ政治家のメディアランキングというものを発表しているとのことである。マスコミやフェイスブックで言及された頻度を示しているそうで、したがって悪目立ちした人物も登場する。

 上掲は、6月のランキング結果。1位はV.ゼレンスキー大統領、2位はS.ハイダイ・ルハンシク州行政府議長、3位はO.アレストヴィチ大統領顧問、4位はM.ポドリャク大統領顧問、5位はD.クレバ外相、6位はD.シュミハリ首相、7位はP.ポロシェンコ前大統領、8位はA.イェルマーク大統領府長官、9位はV.クリチコ・キエフ市長、10位はV.キム・ミコライウ州行政府議長と続いている。


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 こちらの記事が、2022年のウクライナのとうもろこし収穫見通しにつき報じているので、要旨を紹介する。

 Barva InvestのアナリストYu.ハウリリューク・P.ハウストフによると、2022年のウクライナのとうもろこし収穫は2,550万~2,650万tになることが予想される。昨年は約4,000万tだった。

 両者によると、戦争が始まって以来、とうもろこしが穀物で最大の輸出品目となっている。これは、EUへの陸上輸送だけが生き残る中、とうもろこしはEUでの実需があるからである。それに対し、小麦・大麦はEUでの需要がないか、現地価格と比べて大幅に格安である場合にのみ買われる形だ。

 5月には100万tのとうもろこしが輸出され、6月も同量だった。このトレンドが続けば、シーズン(何の?)終了までに2,450万tのとうもろこしが輸出される可能性がある。

 とうもろこしが秋収穫だというのが、ウクライナにとって幸いするかもしれない。旧在庫をあと何カ月か輸出できる上に、そのころまでには港の一部を使えるようになるかもしれないからと、ハウストフは指摘した。

 一方、ハウリリュークは、もしも輸出の状況が大きく変わらなければ、農家は保管場所不足から、とうもろこしの多くを収穫せずに残すことになるかもしれないと指摘した。


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 今般の戦争が起きてから、ウクライナが海港から穀物を輸出できなくなり、それが世界の食料安全保障を脅かすという問題が浮上した。私はこれまで、半ば趣味的に、ウクライナの港湾のことを調べたり資料を収集したりしてきたのだが、まさかそんな情報が人の役に立つ日が来るとは思わなかったわけである。

 上掲は、ちょっと古くなってしまったが、『ウクライナ港湾ハンドブック2012』という本。オデーサにウクライナ港湾出版という出版社があり、その事務所に出向いて購入した。

 ちなみに、今般ウクライナ穀物の積出港として、ドナウ川に面したイズマイル港、レニ港の存在が脚光を浴びることになった。しかしながら、ウクライナの分類では、イズマイル港、レニ港とも、下の目次に見るとおり、河川港ではなく海港という扱いになっている。イズマイルにしても、黒海からは百数十キロも離れた内陸にあるのに、なぜ海港という扱いになるのか、ちょっと不思議だ。

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 このハンドブックを紐解くと、港のマニア情報が載っているわけである。下はイズマイル港のレイアウト図。

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 私の所属団体では、前出出版社が発行している『ウクライナの港湾』という月刊誌も定期購読している。ただ、同誌はこれまでロシア語主体だったわけだが、今後どうするのだろうか(ていうかウクライナに港はいくつ残るのだろうか…)。

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 私は『黒海百科事典』、『カスピ海百科事典』、『ドナウ百科事典』といった資料も収集してきた。『ドナウ百科事典』全2巻なんて、まさか実際に使う日が来るとは思わなかった。

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 最近得た情報で、ちょっとばかり嬉しい驚きだったのが、サッカーのウクライナ・プレミアリーグが、戦乱にもかかわらず、2022/23シーズンを開催することになったという話である。こちらの記事などが伝えている。以下、情報を総合し、事実関係を整理しておく。

  • 2022/23シーズンは、今年8月23日に開幕する。この日は火曜日で平日だが、「ウクライナ国旗の日」という国民的記念日なので、それに合わせた。
  • 参加クラブは16チームで、2回戦総当たり。
  • 会場は、必ずしもそれぞれのクラブのホームタウンではなく、比較的安全な首都キーウ(たぶん4スタジアム)、西部リヴィウ(たぶん3スタジアム)などが中心となる。
  • UEFAチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグに参戦するクラブに関しては、国内リーグのプレミアのゲームを国外で開催することもありうる。
  • 現時点では、試合は無観客になる予定。空襲警報が鳴ったら、ただちに試合を中止し、選手・スタッフの安全を確保する。

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 多くのメディアが報じているが、ウクライナ軍が黒海の蛇島を奪還したことによって、ウクライナの穀物を輸送するルートが保証され、今般外国船がウクライナの港に複数寄港したということである。

 当然、オデーサやミコライウの港はまだ利用不能。ドナウ川にある港(たぶんイズマイルだと思うが)で積み出し、ドナウ~黒海運河で黒海に出して、そこから運んでいく形である。

 実は、今までもドナウ川を遡ってルーマニア領に入り、ルーマニア側のドナウ~黒海運河で黒海に運び出すという試みはなされていた。今回は、蛇島奪還により、それと向かい合わせの位置にあるウクライナ側のドナウ~黒海運河を新たに使えるようになったという点が、新しい。

 運河の地図を探してみたところ、こちらの記事に添えられていたものが一番分かりやすかったので、冒頭に掲げさせていただいた。緑の矢印で描かれているのが運河の輸送ルートである。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2022年8月号の中身をいち早くご紹介。今号では「ロシア貿易の劇的ビフォーアフター」という特集をお届けしております。

 月報では、毎年この時期、前年のロシアの貿易統計を詳しくお伝えするレポートを掲載し、それを軸にロシア貿易特集をお届けするのが恒例となってきました。今年も一応当該のレポートを作成しましたが、ロシアの貿易をめぐる状況が一変してしまい、2021年のデータをまとめるだけでは意味がなくなりましたので、可能な範囲で軍事侵攻後の情報も盛り込んで、「ビフォーアフター」という形でお届けした次第です。

 服部個人は、特集のメインとなる「2021年のロシアの貿易統計」というレポートに加え、「ロシアの軍需産業と輸入代替」、「ウクライナの電力とザポリージャ原発」を執筆。「ルクオイルが保有していたオデーサ製油所」というフォトエッセイも。

 7月20日発行。


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 穀物のマーケットでは、各年の7月始まり、翌年の6月終わりの穀物年度というものを使う。したがって、現在は、2021/22年度のマーケットが終わったばかりということになる。その2021/22年度のウクライナ穀物輸出実績がこちらのサイトに出ているので、過去の数字と合わせて、グラフにまとめてお目にかける。

 これによると、2021/22年度のウクライナの穀物輸出総量は4,851万tで、前年度比8.5%増だった。2021年のウクライナは史上最高の豊作に沸き、それを受けた2021/22年度の輸出も本来であれば過去最高の数字をたたき出すはずであった。それが、ロシアの侵略により港に2,000万tあまりの穀物が積み出せないまま滞貨する事態となり、平凡な輸出実績で終わってしまったというわけである。

 2021/22年度の種類別の輸出は、とうもろこしが2,354万t(2.0%増)、小麦が1,874万t(12.6%増)、大麦が575万t(36.0%増)などとなっている。


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 ロシアのエネルギーへの依存から脱却しようとしていたウクライナにとって、原発はその重要な手段であったが、ソ連時代以来の伝統で、核燃料の供給をロシアのTVEL社に頼っているのが泣き所だった。

 2000年代以降、アメリカが官民を挙げてウクライナの原子力市場への参入を目指すようになり、ウェスティングハウス社によるウクライナへの核燃料供給が始まった。その結果、ロシアTVELからの調達は縮小し、ウェスティングハウス社スウェーデン工場から供給される割合が増えてきた。

 ウクライナの原子力公社「エネルゴアトム」の総裁が2021年2月に語ったところによると、ウクライナで稼働中の15機の原子炉のうち、8機がロシアTVELの、7機が米ウェスティングハウスの燃料を使用しているとのことであった。そして、エネルゴアトムでは、2021年中にリウネ原発の1機をロシアTVELから米ウェスティングハウスに切り替える予定で、それによりついに米ウェスティングハウスの方が多数派になるとされていた。

 その後、本件がどうなったか気になったので、ウクライナの貿易統計を紐解き、2021年にウクライナがロシア、スウェーデンからそれぞれ核燃料を輸入した額を調べてみた。そうしたところ、上図に見るとおり(単位を入れるのを忘れたが金額ベースで100万ドル)、2021年に初めてロシアとスウェーデンの額が逆転し、ウェスティングハウスの方が優勢になった事実を確認できた。

 ただ、6つの原子炉のうち、4機までもがウェスティングハウスの核燃料に移行していたザポリージャ原発が、今般の戦争の過程で、ロシア軍により占領されてしまった。一説によると、ザポリージャ原発に出張したロスアトムの職員がウェスティングハウスの技術を盗もうとしているといった情報も流れている。当然のことながら、ロシアによる占領が長引けば、ロシア側が燃料をTVEL製に戻してしまうことも考えられよう。


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 モルドバ・インフラ地域開発省によるこちらのリリースが、見逃せない動きを伝えている。モルドバとウクライナの鉄道が接続され、工事自体はそれほど大規模なものではないけれど、両国の物流の可能性を切り拓くものになるということである。

 くだんの接続される2箇所をグーグルマップで表示してみたのが、上図である。

 リリースによると、接続されるのは、モルドバ南部のバサラベアスカと、ウクライナ南西部オデーサ州のベレジネ村。この区間の鉄道は、1997年に廃止されていたが、23km(うち1.2kmがモルドバ側)の工事を行って、復活させるものである。このほど両国の担当省庁間でメモランダムの調印が行われた。今年秋の開通を予定している。

 これにより、モルドバはドナウ川沿いに位置するイズマイル港を通じて貨物の輸出入が可能となり、レニ港の混雑が緩和される。ウクライナはこのルートでのモルドバやEUへの輸出が可能になる。バサラベアスカ地区は、ピウデンヌィ、オデーサ、チョルノモルシク、ビルホロドドニストロフスキー、イズマイル、レニ、ジュルジウレスティ、ガラティ、ブライラ、コンスタンツの港を結ぶ国際物流拠点へと変貌する。かくして、港湾施設の競争力が高まり、港湾サービスの受益者はより多様なサービスを受けられるようになると、リリースは強調している。


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チョルノモルネフチェガス

 先日、こちらの記事が、以下のように伝えた。

 ウクライナ軍は6月20日、ウクライナ南部の黒海に面した港湾都市オデーサ(オデッサ)にある食糧貯蔵施設がロシア軍のミサイル攻撃で破壊されたと明らかにした。民間人の死者は出ていないとしている。ウクライナの南方作戦司令部によると、ロシア軍は3時間に14発のミサイルを発射した。

 同市のオレクシー・ホンチャレンコ議員は「ウクライナ軍によるクリミア近郊の石油採掘施設への砲撃に対する報復」として、オデーサが攻撃を受けているようだとの見解を示していた。ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア地域のトップとして派遣したセルゲイ・アクショノフ氏は20日、メッセージアプリ「テレグラム」に、ウクライナ軍が海上の石油掘削施設を攻撃したと投稿。3人が負傷し7人の作業員の捜索が進められているとした。ロシアのRIAノーボスチ通信によると、この石油掘削施設はオデーサから71キロの地点にある。ロイターは攻撃に関する報道をすぐに確認することができなかった。

 「クリミア近郊」という表現があまりに分かりにくかったが、要するにこれは黒海海上の生産プラットフォームが攻撃を受けたということである。また、記事では石油とあるが、私がロシア側の元記事で確認したところ、正しくは天然ガス生産プラットフォームであった。

 より具体的に言えば、チェルノモルネフチェガス社が開発するオデーサ・ガス鉱床のBK-1というプラットフォームへの攻撃が6月20日にあったということである。

 オデーサ・ガス鉱床の位置を示した分かりやすい地図がないかと思って探したところ、こちらのサイトのものがよかったので、上掲のとおり使わせていただく。

 同サイトの解説も拝借すると(2018年現在の解説)、チェルノモルネフチェガスは、かつてはナフトガス・ウクライナ社傘下のウクライナ国営企業だった。しかし、ロシアがクリミアを一方的に併合したことを機に、同社についてもロシアは強引にロシア国有企業にしてしまった経緯がある。2018年の同社による天然ガス生産は16.7億立米の見通しで、クリミア半島による消費は年間27億立米でやや自給に足りない。クリミア半島および沿岸の開発余地は大きく、それに成功すればクリミア地元の需要を賄った上でなお60億立米をガスプロムのパイプラインで(トルコストリームと結合するなどして)輸出することも可能だが(ヤマル半島から輸送するよりも安上がり)、制裁を恐れるガスプロムは慎重姿勢である、としている。


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 ウクライナのザポリージャにモトル・シチというエンジンメーカーがある。一時、中国資本が買収しかけて、国際的に物議を醸したところだ。同社をめぐる最新状況をこちらの記事が伝えている。以下、要点を整理しておく。

 かつては、ロシアで生産される軍用・民間用ヘリコプターには、すべてモトル・シチ製のエンジンが搭載されていた。しかし、2014年後、ロシアは輸入代替を進め、今やサンクトペテルブルグの「合同エンジン生産コーポレーション・クリモフ工場」がロシアのヘリコプター生産の需要を満たしている。

 他方、2016年、モトル・シチの株式の56%が中国のSkyrizon社によって買収された。しかしながら後日それらの株式は差し押さえられ、中国の投資家は株主総会にも呼ばれず、経営に参加できなかった。中国側は2020年12月にウクライナを相手取って35億ドルの損賠賠償を求める訴訟を起こした。2021年1月28日にゼレンスキー大統領はSkyrizon社とそのオーナーに対する制裁を導入するとの安保会議の方針を実施に移し、中国外務省が投資家保護を求める事態となった。

 5月2日、ロシア国防省は、ザポリージャのモトル・シチ工場へのミサイル攻撃を行ったことを明らかにした。ただ、上述のとおりロシアはヘリコプター・エンジンを国産化しているので、これによってロシアへのエンジン供給やサービスに影響が及ぶことはない。ロシア側によると、ロシア軍が工場を攻撃したのは、ウクライナ軍用の無人偵察機のエンジンがこの工場で生産されているからだとされている。


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 先日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの席でプーチン・ロシア大統領が、EUは軍事ブロックではないので、ロシアはウクライナのEU加盟には反対しないと表明した。これは本当なのか、プーチンの真意は何なのかというのが、憶測を呼んでいる。

 個人的には、まったくシンプルな話だと思っている。プーチンはウクライナが自分たちの縄張りだと考えているので、当然NATOだけでなく、EU加盟も許容できないはずである。ただ、プーチンは、ウクライナという国をいまの姿のままで存続させるつもりはない。ロシアが領土の重要部分を奪ってしまい、一応ウクライナという国が残るにしても、すっかり弱体化した国になるはずだと信じている。そういう縮小・弱体化した国ならば、EUに加入しても別に意に介さない、ということではないだろうか。

 私の見立てだけでは何なので、他の有識者がどんなことを言っているかざっとチェックしてみたところ、A.ゾロタリョフというウクライナの政治評論家によるこちらのコラムが目に留まった。いわく、ウクライナがEU加盟候補国になることへのロシアの反応は、すぐに明らかになるだろう。ロシアの反応はただ一つであり、それはウクライナ国家を滅ぼそうとすることである。クレムリンは、ウクライナが欧州とロシア帝国の間のグレーゾーンであり続けるよう、あらゆることをするだろう。「特別軍事作戦」も、ウクライナの政権を交代させ、冬頃、つまりソ連邦結成百周年(注:今年の12月29日)の前くらいにはロシア主導の単一経済空間にウクライナを戻し、新たな連邦条約に調印することを目的としていた。おそらく、現在モスクワは、ウクライナの占領地も加えて、それをやるつもりなのだろう。いずれにしても、プーチンはソ連邦2.0を結成するという考えに憑りつかれており、絶対に諦めない。以上がゾロタリョフ氏の指摘であった。


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 今般の戦争に関し、自分の研究分野との関連で、気になっていることがある。ウクライナでは従来、国内で稼働している製油所が1箇所しかなかった。それはポルタヴァ州のクレメンチュークにある製油所であり、主にアゼルバイジャンから黒海経由タンカーで石油を輸入し、それをオデーサ港で揚げ、そこからパイプラインで製油所まで石油を運んでいたと理解している。

 しかし、現在はオデーサ港が封鎖されているので、当然石油の輸入もできない。しかも、以前お伝えしたとおり、ロシア軍がクレメンチュークの製油所を爆撃して破壊したので、もう国内では一切、石油製品は生産されていないはずである。

 ちなみに、駄目のダメを押すということだろうか、こちらなどが伝えているとおり、ロシア軍は昨日、クレメンチュークの製油所に新たに6~8発のミサイル攻撃を行ったということである。

 問題は、従来ウクライナが、国内生産では賄い切れない石油製品の需要を、ロシアとベラルーシから輸入していたことである。当然、今日の状況では、両国からの輸入は途絶えているだろう。国内生産も、敵国からの輸入も止まり、燃料不足がウクライナの戦争継続能力を削ぐことになりはしないかと、気になっていたわけである。

 当然のことながら、燃料が枯渇すれば、ウクライナの中核産業である農作業にも支障が生じる。

 結論から言えば、目下ウクライナは燃料の需要を、特にポーランドからの輸入で賄っている部分が大きそうである。

 こちらの記事によれば、ポーランドは開戦当初、無償援助として2.5万tの燃料をウクライナに提供したが、その後は商業的な販売に移行している。ポーランドの石油精製大手Orlenが供給を手掛けている。現在、ポーランド・ウクライナ国境で燃料の通過能力を増強する作業が行われている。

 こちらの記事によると、ウクライナの燃料の輸入手段としては、自動車、河川、鉄道がある。3月と5月を比べると、それらの輸送量は、自動車が15倍、河川と鉄道が5倍になった。


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 昨日、ウクライナの穀物輸出代替ルートに関連して取り上げたこちらの記事は、ウクライナ農業政策省による2022年の収穫見通しについても伝えていたので、今日はそちらのデータの方を取り上げる。

 上掲の表は、私がウクライナ統計局データにもとづいて定期的に更新しているものであり、今般ウクライナ農業省が示した2022年の予測をそれに加えてみた。表に見るとおり、2022年の穀物生産は4,800万~5,000万tの見通しということである。前年から実に40%程度低下することになる。

 ただ、表を見れば分かるとおり、そもそも2021年の穀物収穫量が突出しており、史上最大、空前絶後の2021年と比べれば、ある程度減っても不思議でないとも言える。

 現に、記事の中で農業省幹部は、しばらく前まではウクライナの穀物収穫は4,000万~4,500万t程度だったわけで、今年4,800万~5,000万t程度になっても危機的ではないと発言している。

 もちろん、ロシアの侵攻がなければ、昨年のような大豊作が期待できたのかもしれず、その点は重く見るべきだが。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2022年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号では「ロシアの基幹産業は生き残るのか」という特集をお届けしております。ウクライナへの軍事侵攻後、欧米日からの網羅的な制裁を科せられたロシア。そのロシアで、経済の中核を成すエネルギー、金属、機械などの産業に焦点をあて、直面している苦境と生き残りの道について概観したものです。

 服部個人は、特集の枠内では「制裁でロシア鉄鋼業も東方シフトを迫られる」を執筆。枠外では、「プーチンではなく欧米を恨むロシア国民」、「戦時下で進むウクライナ経済インフラの破壊」というレポートも。さらに、「在りし日のアゾフスターリ」というフォトエッセイも担当しました。

 6月20日発行予定。お問い合わせ・お申し込みは、publication@rotobo.or.jp まで。


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 こちらの記事が伝えているとおり、ウクライナ農業政策省のT.ヴィソツキー次官が、農産物の輸出向け積出状況につき発言したということである。

 次官の話をまとめると、ウクライナでは7月1日の時点で依然2,000万tの旧年度の農産物(≒穀物と考えていいだろう)が残ることとなり、そうこうするうちに今年の収穫も加わる。それらの輸出をさばくのには、少なくとも毎月400万tを積み出す必要がある。現在、海港からの積出ができないので、陸路および河川港からの代替ルートで積出が行われている。各月の積出実績は、3月35万t、4月94万t(算出値)、5月170万tと推移している。6月には200万tとなる見込みだが、これでもまだ最低限の必要量400万tの半分のレベルにすぎない、ということのようである。以上の数字を私がグラフにまとめたのが上図となる。

 正直言うと、私が想像してたよりも、陸路および河川路という代替ルートによる輸出も進捗しているのだなという印象だった。


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 プーチン・ロシアはウクライナ侵攻によって、これまでドンバスのルハンシク州、ドネツク州の全域占領を目指すとともに、ヘルソン州のほぼ全域をすでに手中に収め、ザポリージャ州の南部も支配している。

 プーチン・ロシアが最初からこういう地域を重点的に占領しようとしていたのかは、定かでない。ドンバスは当然、最重点だったとは思うが、ドンバス以外のウクライナ全土に関しては、首都キーウ、ハルキウなども含め広域(全土?)を支配下に置こうとしたものの、結果的に南部だけがとれたという気がしないでもない。

 今般の戦争では、開戦当初、ロシアがいわゆる「ノヴォロシア」という言説に訴えることは、あまりなかった印象がある。18世紀末にエカテリーナ2世が獲得した歴史的なロシア領土の奪還というニュアンスは、それほどなかったはずだ。しかし、結果的に占領できたのがヘルソン州、ザポリージャ州だったので、後付け的に、最近になりむしろノヴォロシア言説が盛んになってきた感じがする。

 余計なことを言うと、このように後付けでノヴォロシア言説が盛んになり、さらにその後付けとして、ロシアがオデーサ攻略にこだわるようなことがなければいいのだが。当然、ロシア側が抱くノヴォロシア空間に、オデーサは欠かせないものだろうから。

 最近、個人的に愕然としたのは、愛読誌のロシア『エクスペルト』が、まさにノヴォロシア特集を組み、上掲のとおり、「ヘルソンの復帰」といった破廉恥な見出しを掲げていたことである。『エクスペルト』は経済誌として、元々はリベラルな姿勢だったはずだが、ロシアの領土拡張主義の旗振り役を買って出るようなこんな特集を組むとは、幻滅である。

 その中には、下に見るように、「ドンバスとノヴォロシアの主要経済アセット」という地図が掲載されていた。ザポリージャ州は、まだロシアが占領したわけでもない州都ザポリージャ市まで含んでいる。まるでロシアがこれらのアセットをもう手中に収めたかのような誌面である。

 ただ、地図にはマリウポリのアゾフスターリだけが載っていない。再建するつもりはないということか。

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 ウクライナで大量の穀物が港から積み出せずにいる問題に関し、トルコが仲介に名乗りを上げ、穀物輸出船の安全を保障するいわば「穀物回廊」の構築で、(ウクライナの頭越しで)ロシアと合意するという動きがあった。

 なぜトルコがそのような動きに出たのかだが、世界食料危機を憂慮して善意で行動したという面もあったのかもしれないが、一つには、トルコ自身がロシア・ウクライナから供給される穀物に依存している点も見逃せない。

 そこで、貿易データを整理してみた。やはり、トルコは穀物貿易が一貫して大幅な入超である。過去10年の輸入相手国をまとめたのが上図であり、ロシアが半分強、ウクライナが4分の1近くとなっており、両国への依存度の高さは歴然だ。2021年のロシア最大の穀物輸出相手国(金額ベース)もトルコだった。


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 現在ロシアは、ウクライナ南部のザポリージャ州のうち、その南部一帯を占領した格好になっている。ドンバスの2地域やヘルソン州と違い、ロシアが仮にザポリージャ州を占領し続けるにしても、同地域をどのように扱おうとしているのかは、今までどうも不明確だった。

 本件に関し、こちらの記事に見るとおり、(ロシア側が言うところの)ザポロジエ州軍民行政府の幹部が展望を述べたということなので、その要旨をまとめておく。最後にとんでもないことが書いてあった(当然予想されたこととはいえ)。以下、ロシア側の発言なので、ロシア語読みのザポロジエと表記させていただく。

 ザポロジエ州軍民行政府のV.ロゴフ評議員によれば、州のロシア編入を問う住民投票は、今年中に実施される。すでにその決定を下した。準備には数ヵ月かかる。設問の文言はもうすぐ発表する。住民の大多数は大国ロシアの一部になることを望んでいる。住民投票を早くやるほど、州の営みが早く開始できる。州発展の唯一の道は、ロシア連邦への加入であり、ザポロジエ人民共和国や何らかのグレーなゾーンを形成するのではなく、通常の地域としてロシアに加入することだ。ロシアへの加入プロセスは、州都(ザポロジエ市)に対する支配を確立したのちに、開始される。ロゴフは以上のように述べた。


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 ウクライナ側は、ロシアに損害賠償させる気満々であり、それもあってだと思うのだが、ロシアの軍事侵攻による損害の事例を記録し、それを集計する作業に取り組んでいるようである。ウクライナ経済省がシンクタンクと組んでその仕事をしているようである。そして、(他にも出ているのかもしれないが)こちらのサイトで、その情報が定期更新されているということのようだ。URLは2021になっているので紛らわしいが、ちゃんと最新情報であり、今掲載されているのは5月25日現在の損害額である。一部、何を意味しているのか分かりにくい箇所もあるが、上掲のとおり、一覧表を日本語にしてみた。

 現時点で、損害の総額は1,055億ドルということになっている。原典では「文書化された被害」となっているので、やはりきちんとデータベース化していて、それに登録された被害ということなのだと思う。

 なお、1,055億ドルというのは、戦争による直接的な物的破壊の被害額である。これ以外に、間接的な損害額(GDPの低下、投資の停止、労働力の流出、追加的な軍事・社会支出等々)を加えると、損害の総額は5,640億~6,000億ドルになるとされている。


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 以前から私は、自分で試算したデータにもとづいて、「ウクライナの穀物輸出は九割方が黒海の海港から積み出す海運によるものです。その他の主要品目も海運が主流。港が使えなくなると、ウクライナ経済は詰みます」と、事あるごと強調してきた。

 しかし、それはあくまでも個人的な試算値であり、各品目の海運比率を具体的に示したような情報源には、接していなかった。

 そうしたところ、こちらの記事の中で、ウクライナの4大輸出品目である穀物、ひまわり油、鉄鋼、鉄鉱石につき、海港から積み出され、海運で運ばれていくものの比率を示した数字が掲げられていた(2021年の数字)。早速それを上掲のとおりグラフにしてみた。

 だいたい自分のイメージ通りだったが、まさか穀物で海運比率が99%にも上っていたとは。これからは、「穀物輸出は九割方が海運」ではなく、「九分九厘が海運」と言わないといけないな。


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 こちらの記事が、ロシアによるドンバス住民へのパスポート付与について伝えている。これによると、2019年のロシア大統領令にもとづいて、今年2月15日までに簡易方式でロシア国籍を付与されたドンバス住民は、86万人に上った。

 もっとも、その権利を行使したのは、自称ドネツク、ルガンスクの両人民共和国の国籍を持つ人々だった。今般、5月4日にプーチン大統領が新たな大統領令に署名し、2019年の大統領令が修正され、これまで両人民共和国でなくウクライナの国籍だったドネツク州、ルハンシク州民も、簡易方式でロシア国籍を取得できるようになった。この優遇措置は特にウクライナからロシアに難民として逃れてきた人々に適用される。2月18日から5月3日にかけて、両人民共和国の領域からロシアに110万3,701名が避難しており、うち60.8万人は両人民共和国の国籍で、残りがウクライナ国籍となっている。


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