ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

カテゴリ: ロシア

 7月1日に投票が行われたロシアの改憲国民投票につき、毎度芸がなくて恐縮だが、こちらのサイトに政治工学センターのA.マカルキン氏のコメントが掲載されているので、以下抄訳しておく。

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 ここ数週間、ちまたでは、改憲に反対する人々につき、恐ろしいレッテルが貼られていた。それは、退役軍人を尊敬しないとか、ロシアの土地を他国に売り渡すとか、コロナと戦う医療従事者のことを何とも思っていないとか、同性愛に賛同して人類を滅ぼすとか、動物を保護しようともしないとか、売国奴・第五列とか、とにかくそんな酷いイメージが語られていた。

 ところが、投票の結果、蓋を開けてみると、改憲に反対する「おぞましい」人々は、公式発表ですら1,500万人もいることが明らかになった。モスクワに至っては投票参加者の3分の1が反対である(その公式発表にしても反体制派は異議を唱えている)。

 実際のところは、改憲に反対した人々は、一枚岩ではない。欧州派のリベラルもいれば、もうすぐ年金をもらえると思っていたのにそれが先送りされたことに怒っている中高年もいる。

 改憲反対派たちは、2020年の統一地方選挙で、行動に出るだろうか? 有権者が統一地方選を、どれだけ自分にとって大事と思っているかが不明なので、何とも言いがたい。それでも、一部の地域では、有権者の反政府的なうねりが生じる可能性はある。

 一方、2021年の連邦下院選に向けては、今回の投票で反対した人々の支持を得ようと、各党がしのぎを削るだろう。早くも共産党は今回、改憲案に反対であるとの立場を示していた。モスクワなどの大都市では、民主野党の動きが活発化するだろう。さらに言えば、改憲に賛成票を投じた人々も、一枚岩ではない。国民投票では「善きもの」に賛成した彼らも、具体的な政党や候補者が問われる議会選では、体制に批判的な票を投じるかもしれない。


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 身も蓋もない話だが、ロイターのこちらの記事によると、金融アナリストの間では、今般の国民投票の結果プーチンがさらに政権を継続できることになったことは、外国人投資家がロシア国債に投資する上で好条件だという見解が支配的であるという。

 Aberdeen Standard Investmentsのケヴィン・デイリーは、これは両面あるニュースだが、プーチンの下では財政政策は賢明だったことは間違いなく、そのことは評価すべきだと指摘。

 有名な投資家のジム・ロジャースも、「ロシアの債券は高配当であり、私が現在唯一買いたいと思う商品だ」とコメント。

 米国の国際金融研究所のエリナ・ルィバコヴァとベンジャミン・ヒルゲンシトクは、政治の継続性は証券投資家にとって朗報だと指摘。

 PineBridge Investmentsのナターシャ・スミルノヴァは、プーチンの治世が伸びる可能性があることは大きな問題ではない、もしそうなら市場がすでにそれを織り込んでいたはずだ、プーチンの支持率が下がっていることは事実としても取って代わる人物はいないとの認識を示す。

 Sova Capitalのイーゴリ・ブルラコフは、ロシアは中銀の慎重なアプローチのお陰で、新興国の中で実質金利がプラスに保たれている唯一の国だ、投資家にとっては政治の問題は二の次だと述べた。


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 GLOBE+に、「プーチンは時代に追い越された 改憲国民投票が突き付けた現実」を寄稿しました。

 7月1日は憲法修正を問うロシア国民投票の投票日でした。公式発表によれば、有権者の68.0%が投票に参加し、賛成票が77.9%、反対票が21.3%だったということです。すなわち、有権者の53.0%が賛成票を投じた計算になります。かくして、憲法修正は国民の賛意を得たこととなり、修正憲法は早くも7月4日に発効しました。憲法の新規定により、既存大統領の任期をカウントしないことになったので、プーチンはいわば「新人」として2024年の大統領選に出馬できることになました。そこから2期務めれば、最長で2036年まで大統領を続けることも可能になったわけです。

 今回の国民投票で、確かにプーチン政権は投票者の過半数の賛成票は獲得できたのかもしれません。しかし、それはなりふり構わない強引な手段で票をかき集め、どうにか見栄えのする数字を作り上げたにすぎません。むしろ、政権と国民の溝が、これまでにも増して深まったという印象です。というわけで、今回のコラムでは、国民投票結果を整理し、筆者なりの評価を述べております。


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 こちらの記事によれば、サッカーのロシア・プレミアリーグでは、7月5日の第26節でゼニト・サンクトペテルブルグがクラスノダルに勝利し、2019/20シーズンの優勝を決めた。ゼニトのプレミア優勝は、2007年、2010年、2011/12年、2014/15年、2018/19年に次ぐものであり、ソ連時代の1984年にもソ連チャンピオンになっている。

 久し振りにロシアリーグの順位表を見たが、まだ6試合も残した中での優勝決定か。今シーズンは、スペインを除いて、欧州主要リーグで首位のチームが独走し、早々と優勝を決めてしまうところが多いが、ロシアもそのトレンドに乗ってみましたといったところか。順位表を見ると、全般にモスクワ勢が奮わないシーズンだったと言えそうだ。

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 7月1日に投票が行われた改憲を問うロシアの国民投票。結局、投票率67.97%、賛成77.92%、反対21.27%というのが最終的な結果だったようだ。

 こちらのサイトに、ロシアの地域別の投票状況をインタラクティブに表示できる図解資料が出ていた。上掲の図の青が賛成、赤が反対である。あくまでも公式発表がどうだったかという話だが、全体として、ヨーロッパロシア部では賛成率が高く、辺境地域では反対率が高く、ただしイスラム系の地域では賛成率が高い、といったパターンが見受けられる。

 メトロポリスでは、首都モスクワ市は投票率(55.93%)も賛成率(65.29%)も全国平均よりもだいぶ低い。プーチンの出身地のサンクトペテルブルグ市では投票率が74.74%とだいぶ高かった(賛成率は全国並み)。

 特殊な地域では、クリミア共和国で、投票率81.75%、賛成率90.07%と、かなり高かった。憲法の新たな条項として、外国に領土を割譲することを禁止するというものがあるので、ウクライナから奪ったばかりのクリミアに住む人たちには、自分たちのロシア帰属をそれによって固定してほしいという願いがあり、それが数字に反映されたのだろうか。ただし、その割には、ロシアで言う南クリル諸島、我が国の北方領土を管轄下に置くサハリン州での投票率は67.99%と全国並み、賛成率も74.84%と突出して高いわけではなかった。極東全般にくすぶる反プーチン政権感情を反映したものか。


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 先日、「ロシア、今度こそちゃんと石油減産するってよ」というコラムをお届けし、その作業の過程で、ロシア・エネルギー省が月別の石油生産量のデータを非常に迅速に発表していることを認識した。今後は、個人的にもそのデータを活用していこうと思っている次第である。

 それで、昨日までのところ、まだエネルギー省のHPに6月の生産量のデータは出ていない。しかし、こちらの報道で、6月の生産量が伝えられたので、上掲のとおりそれにもとづいて図を更新してみた。

 記事によれば、ロシアの石油生産量(ガスコンデンセートを含む)は、5月の日量939万バレルから、6月の932万バレルへと、さらに低下した。これは、OPEC+の減産合意に見合ったレベルである。トンで表すと、6月の石油生産量(ガスコンデンセートを含む)は3,816万tだった。なお、6月の天然ガスの生産量は477億立米で、前年同月比12.1%減だった。


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 昨日投票が行われた改憲を問うロシアの国民投票。上に見るのは、プーチン大統領が投票をする様子であり、いつものとおりモスクワの科学アカデミー本部に設けられた投票所で清き一票を投じたということだ。

 こちらの記事によると、投票率は65%だった。開票85%段階で、賛成77.84%、反対21.35%となっているという。


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 本日はロシアで改憲を問う国民投票の日だが、個人的にはそれとは全然関係のない産業レポートを執筆中であり、直近の生々しいテーマをフォローしたりする余裕がまったくない。

 昨日配信のコラム「改憲の勝負所でプーチンが切った『愛国』カード」でも論じたように、対独戦勝75周年で愛国主義の高揚を(そして政権浮揚を)という路線が続いており、これもその流れに位置付けられると思うのだが、昨日6月30日、トヴェリ州のルジョフで巨大なソ連兵像の除幕式が行われたということである。そして、その巨大像を背景にプーチン大統領が国民向けの演説を行い、国民投票での改憲への支持を改めて訴えた。これまで同様、プーチンは自分の任期のことには触れず、国民の福祉・幸福のための改憲ということを強調した。

 それで、こちらのページに、ルジョフの巨大ソ連兵像のデータの図解資料が出ていたので、それを上掲のとおり転載させていただいた。地上からは35メートルの高さということである。10~11階建てのビルくらいか。

 個人的に不案内だったが、ウィキによれば、ルジョフは大戦の激戦地だったようだ。「第二次世界大戦では、1942年、モスクワ近郊へ追いつめられた赤軍がドイツ軍に対して反攻に出、ルジェフとヴャジマへ向かって進軍を始めた(ルジェフの戦い)。この戦いでルジェフ付近のみを残してソ連軍が前線を西へ押し返し、さらにルジェフに残ったドイツ軍の突出部に対して再度攻撃が行われた(第二次ルジェフ会戦)。激しい戦いでルジェフの建物は全て消滅した。大戦中、市の人口の6分の1以上がドイツに送られ強制労働をさせられ、その他の市民のうち9,000人は射殺されたり拷問を受けたり市の中心に設けられた収容所で飢えたりして死んでいった。これらの戦いのため、古い建物は何も残っていない」ということである。


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 GLOBE+に、「改憲の勝負所でプーチンが切った『愛国』カード」を寄稿しました。

 プーチン大統領は5月26日、延期されていた対独戦勝75周年の軍事パレードを、6月24日に実施すると発表しました。さらに6月1日には、改憲を問う国民投票を7月1日に実施すると決定。軍事パレードからちょうど1週間後に国民投票というタイミングになります。果たして、7月1日の国民投票で、ロシアの人々はどのような反応を示すのでしょうか?


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 最近、ちょっと気になっている話として、ロシアの大学生などの間で、学ぶ外国語の選択として、日本語の人気が落ちているという言説がある。まあ、絶対王者の英語や、飛ぶ鳥を落とす勢いの中国語に負けるのは仕方ないとして、気になるのは、「最近は韓国語にも圧倒されている」というのである。何でも、昨今のロシアの若者の間で、韓国ドラマやK-POPを好きな人が増えており、それが韓国語の学習熱に繋がっているというのである。

 おそらく、日本のお役所の政策担当者は、「クールジャパンで世界を魅了するぜ、イェイ」なんて相変わらず能天気に思っているのかもしれないが(?)、ロシアの若者たちが韓国ドラマやK-POPに惹かれ(日本語でなく)韓国語を選んでいるとしたら、これは由々しい事態だと思った次第である。

 それで、何か参考になるデータがないかなと思って検索してみたら、とりあえずこちらの情報がヒットした。全ロシア世論調査センターが、2019年9月に行ったロシア国民の外国語学習に関する意識調査である。その中で、「貴方の考えでは、今日どんな外国語を学ぶことが有益と思うか?」という質問を選択肢を示したうえで5つまでの複数回答で尋ねたところ、以下のような結果となった。

  1. 英語:93%
  2. 中国語:48%
  3. ドイツ語:32%
  4. フランス語:21%
  5. スペイン語:9%
  6. 日本語:6%
  7. イタリア語:4%
  8. アラブ語:3%
  9. ロシア語:2%
  10. 韓国語:1%
  11. トルコ語:1%

 とりあえず、現時点で韓国語よりも日本語のステータスの方が上のようで、良かった。しかし、これは「日本=経済大国」という古いステレオタイプを残した旧世代も含めた調査結果である。アンテナの鋭い若い世代では、日本よりも韓国文化への関心の方が高く、学習言語の選択にも影響しているのかもしれないが、残念ながらそれを直接裏付けるようなデータは見付からなかった。


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 目下、2019年のロシアの貿易データを整理しているところであり、その一環としてこんな表を作成した。ロシアの商品輸出・輸入において、「ハイテク製品」がどのくらいの割合を占めているかを見たものである。見づらかったら、拡大して表示を。

 この「ハイテク製品」の輸出入という指標は、しばらく前からロシア統計局が発表するようになった。ただ、途中で定義が修正され、額が大幅に変わったりということもあった。「ハイテク」と言いつつ、機械製品なんかはすべて該当するなど、かなり緩い定義になっているはずである。

 ロシアは、石油・ガスをはじめとする原燃料を輸出し、高度製品を輸入するという、典型的な垂直貿易構造の国である。ゆえに、輸出においてハイテク製品は1割程度を占めるにすぎないが、輸入においては、全体の3分の2がハイテク製品という非対称の構図となっている。

 また、プーチン政権は「非エネルギー・非原料商品」の輸出拡大を目標に掲げており、実際にそれが拡大したなどと喧伝することも多いが、伸びているのは小麦、魚、肥料、鉄鋼といったプリミティブなものが多い。この表を見ても、ハイテク製品の輸出は、顕著に伸びているわけではないことがうかがえる。


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 全ロシア世論調査センターのこちらのページに、ロシアにおける愛国主義についての意識調査の結果が出ているので、ちょっとそれを眺めてみる。

 この中で、「過去10~15年ほどのロシアの出来事の中で、貴方に最も誇りを覚えさせるのは、どんな出来事か」という設問があり(回答の選択肢を示さないで3つまでの複数回答で答えてもらった結果)、上位を占めた回答が上図のとおりである。図には載ってないものも含め、10位までは以下のとおり。

  1. クリミアの奪還:16%
  2. オリンピックの開催・勝利:10%
  3. 軍および軍需産業・軍備の発展:9%
  4. シリアへの介入、その勝利:5%
  5. サッカー・ワールドカップ、ロシア代表の活躍:5%
  6. 戦勝記念日、戦勝75周年、軍事パレード:4%
  7. 対外政策:4%
  8. クリミア橋:3%
  9. 経済の発展:3%
  10. スポーツの成果・勝利:3%

 今日のロシア国民にとって、やはり愛国心を刺激する筆頭はクリミアだが、16%という数字は、思ったよりも圧倒的ではないなというのが、個人的な感想である。もっと、30%とか50%といった数字になってもおかしくないようなイメージを抱いていたが、そこまででもないのか。


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 昨日、化学肥料の価格が低迷しており、ロシアやベラルーシが苦しんでいるということをお伝えした。実は、カリ肥料の分野では、他ならぬロシアとベラルーシの業界の振る舞いが、価格下落を誘発してしまった面があったのである。少々古いが、ロシア『エクスペルト』誌2019年9月30日~10月6日号が良くまとまった記事を掲載しているので(S.クジヤロフ氏署名)、以下要旨を整理しておく。

 ロシアのカリ肥料の大手「ウラルカリ」と、ベラルーシの独占企業「ベラルーシカリ」は、2005年にBKKという共同販売会社を設立し、その世界シェアは当初30%、後の買収でさらに43%に達した。かくして、両国の価格カルテルが形成された。

 しかし、2011年にウラルカリがロシアの別の大手シリヴィニトと合併したことで、両国の力関係が変わる。条件に不満を感じたベラルーシのルカシェンコ大統領は2012年12月、ベラルーシのカリ肥料を輸出する上でBKK以外の業者にも権限を与える大統領令に署名した。かくして、BKKの枠組みを通じた独占輸出と価格カルテルは、崩壊したのである。2013年8月には、ミャスニコヴィチ首相の招聘に応じてベラルーシを訪問したウラルカリの社長が逮捕されるというスキャンダルも発生した。

 この顛末の後は、ベラルーシ側は輸出量を重視する方針に転換した。過去5年間で、ベラルーシカリの生産能力は年間1,000万tから1,300万tへと急増している。輸出量は、2012年は610万tだったが、現在は1,000万tである。しかし、価格の下落により、輸出額はカルテル解消前と同じレベルとなっている。ベラルーシは2013~2018年にカリ肥料輸出で143億ドルを稼いだが、もしもカルテルが健在なら、610万tのままでも、150億ドルを稼げただろう。

 ベラルーシ側はさらに生産能力を拡大しようとしている。ベラルーシカリはゴメリ州で年産150万tの鉱山を建設中だし、M.グツェリエフのスラヴカリは2022年に年産200万tの鉱山を稼働させる予定である。

 ロシア側も、エヴロヒムが2018年にウソリエ鉱山を稼働させ、2024年までには(ヴォルガカリも含め)年産800万tを達成する計画である。ウラルカリも、2024年までには1,400万tを、2025年以降には1,700万tを達成したいとしている。

 専門家によれば、全世界のカリ肥料メーカーの生産能力は2031年までに1億900万tに達し、その際に需要は9,600万tに留まる。世銀もカリ肥料の価格は継続的に低下すると予測している。

 すべてのカリ肥料メーカーが価格低迷で苦しんでいるが、ウラルカリは軽微である。BKKとの破談の時点で同社の生産コストは1t当たり60ドルで、ベラルーシカリの半分、米国のライバルの3分の1ないしは4分の1にすぎなかった。2018年の年次報告によれば、さらに下がって42.5ドルである。現在ウラルカリが債務返済のため価格安定を望んでいることは確かだが、おそらくは、いつまでもこんな状態では市場がもつはずはないと考えているのだろう。


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 時々やる、「ちょっと用事があってこんな図表作ってみました」シリーズで、今回は無機肥料(およびその原料)の国際価格の推移を示したものである。

 ロシアの定義によれば、肥料は「非エネルギー・非原料商品」ということになっており、伸ばしていきたい付加価値部門の一つである。しかし、現実には無機肥料は原料直結型の産業であり、価格変動が激しい。過去十余年の動きを見ると、2008年にバブル的な価格高騰があったが、それがリーマンショックで吹き飛び、その後は一進一退ながらも、どちらかと言えば低迷傾向である。特に2018年終盤以降は、価格下落局面となっている。グラフは2020年5月までであるが、直近のコロナショックも、やはり価格を押し下げる方向に作用しているようだ。

 石油・ガスに比べて注目されることは少ないものの、実はロシアは世界第1位の肥料輸出国である。また、ベラルーシはほぼカリ肥料のみであるが、そのカリ肥料の輸出でベラルーシとロシアはカナダに次ぐ世界第2位の座を争っている。肥料の価格低迷は、両国の経済をじわりと苦しめる要因である。


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 先日、「プーチン支持率は回復基調も、一つ気になること」というエントリーで、レヴァダ・センター調査によるプーチン信認率の数字が最近発表されなくなってしまい、戸惑っていると記した。

 その後、レヴァダ・センターのHPに4月、5月分の当該データが掲載され、自分が日頃使うデータだっただけに、一安心した次第である。

 ただし、発表された4月、5月のデータを見ると、どちらの月もプーチンの仕事を是認している国民が59%と、当国としては低い数字となっている。プーチンの最高指導者就任当初の時期を除けば、過去最低レベルの数字である。

 ただし、レヴァダ・センターでは、コロナ情勢を受け、4月から調査方法を変更したということだ(人的接触を伴わない電話調査に変えた)。果たして、4月、5月の変調は、その方法論自体の変更によるものか、それともプーチン体制の終わりの始まりか?

 コロナ危機によっていったん延期されていた2つの重要な政治日程のうち、対独戦勝75周年記念軍事パレードは6月24日に、改憲国民投票は7月1日に実施されることになった。今のところの雲行きでは、国民投票では、改憲が余裕をもって承認されるはずである。しかし、長引くコロナ危機で鬱積する国民感情を背景に、プーチン政権の求心力は、思うように高まっていない印象がある。


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 少々マニアックな話になるが、鉄鋼の間接輸出、間接輸入という概念がある。間接輸出入とは、鉄が機械などに加工され、その機械が輸出入されることによって、結果的に材料の鉄も国境を越えて移動することを意味している。

 そこで、世界鉄鋼連盟が発表している統計にもとづき、私の主たる研究対象国であるロシア・ウクライナ・ベラルーシにつき、鉄鋼の直接輸出入と、間接輸出入の数字をまとめたグラフを作成した。

 ロシア(上のグラフ)と、ウクライナ(下のグラフ)では、鉄の間接輸出はごくわずかであり、鉄を鉄のまま輸出するプリミティブな産業構造が見て取れる。両国は鉄鋼の直接輸出国としては世界の上位に位置するが、間接輸出になると地位が下がり、2017年時点でロシアは27位、ウクライナは40位にすぎなかった 。

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 それとはパターンが異なるのが、ベラルーシである。下図に見るように、ベラルーシの鉄鋼間接輸出量は、人口・経済規模がより大きなロシア・ウクライナのそれにほぼ比肩しており、最新の2017年にはウクライナよりも上の世界36位に位置している。鉄鋼自体の生産・輸出も手掛けながら、それを上回る規模で鉄を加工し(自国産だけでなく輸入した鉄鋼も材料として使用)、付加価値を付けて輸出しているのが、ベラルーシというということになる。

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 ちょっと時間がなく、簡単にできるブログのネタに窮していたところ、TASSのこちらのサイトに、格付け機関RAEXが選定した2020年版のロシア大学ランキングというものが掲載されていたので、それを拝見することにする。訳語は雑だが、ベスト10は以下のとおりとなっている。ちなみに、すべて国立だろう。

  1. モスクワ国立大学
  2. モスクワ物理技術大学
  3. 核研究大学
  4. サンクトペテルブルグ国立大学
  5. 高等経済学院
  6. モスクワ国際関係大学
  7. モスクワ技術大学
  8. サンクトペテルブルグ工科大学
  9. トムスク工科大学
  10. 大統領付属国民経済・公務アカデミー

 我々、経済畑の研究者の間で最近良く言われるのは、「いまや高等経済学院(Higher School of Economics)がロシアの大学のトップ」という話である。経済学院と言いつつ、経済以外の分野でも、優秀な人に所属を尋ねると、同学所属という答えが返ってくることが多くなってきた。ただ、このランキングでは、方法論のあやによるものか、同学は5位ということになっている。


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 RIAノーヴォスチのこちらのサイトに、興味深い図解資料が出ていたので、これをチェックしてみることにする。欧州各国において、平均賃金で、どれだけのガスを購入できるかというのを比較したものである。当然、ガス料金の水準と、平均賃金により、左右されることになる。カザフスタンやロシアなどは、EU諸国などに比べれば所得水準は低いが、それを補ってあまりあるガスの安さで、このランキングの上位に来る。逆にドイツや英国などは、賃金水準の高さゆえに、上位に来るというパターンだろう。

 ただ、賃金の要因は別として、単純に、家庭向けのガス料金がどうなっているかを比較してみたい気もする。それを試みたのが下表であり、家庭向けのガス料金が安い順に並べると(1,000立米当たりドル)、カザフスタン44.7ドル、ロシア87.9ドル、ベラルーシ134.1ドル、ウクライナ149.6ドルなどと続いている。

 このロシアとベラルーシの差を見ると、ルカシェンコが「差別だ!」と怒るのも、一理あるかなという気がしないでもない。あと、ウクライナの家庭向けのガス料金がここまで低いのも驚いた。これでは、逆ザヤではないのだろうか。IMF等のご指導もあり、家庭用公共料金を引き上げることは試みているものの、低所得家庭向けの補助があるようで、ガス輸入国としては(しかもロシアと決別しEUから割高な輸入を迫られている国の割には)異例の低価格となっている。

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 GLOBE+に、「ロシア、今度こそちゃんと石油減産するってよ」を寄稿しました。

 4月12日に成立したOPEC+の歴史的な減産合意が効き始め、石油価格は4月下旬以降は回復傾向にあります。このように威力を発揮している4月の減産合意ですが、近年OPEC+の枠組みで達成された減産合意としては、2016年、2018年に次いで今回が3回目です。ただ、最新の減産合意は、過去2回のそれと比べて、ロシアにとっての意味合いがまったく異なります。そして、それはOPEC+合意全体の実効性を左右する要因です。そこで今回のコラムでは、石油の生産量を調整する上でのロシア国内の問題を考えてみました。


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 個人的に、ロシアのことを研究している割には、石油や天然ガスの分野はそれほど得意でもない。今般、連載を引き受けているGLOBE+用に、ロシアの石油減産の話題について書くことになった。その関連で調べものをして、遅れ馳せながら気付いたのは、ロシア・エネルギー省の統計ページに、最新の石油生産量のデータなどが出ているということだった。これまでの私なら、石油の生産量を見るのに、統計局のサイトを参照していたところだったが、統計局よりもエネルギー省の方が発表がずっと早く、しかも数字も詳細ということが判明した(統計局からは粗い概数しか出てこない)。

 それで、OPEC+の枠組みでの国際協調減産が焦点になっているところなので、石油生産データも、日量に換算して推移を見ることが望ましい。今回、個人的に初めて、その作業を試み、とりあえず上掲のようなグラフを作成してみた。5月にロシアはOPEC+合意にもとづく減産を、ほぼ忠実に実行したことが確認できた。

 上のグラフは、まずはロシアが発表しているままのトンで表示したものである。しかし、減産議論においては、トンよりもバレルで語られることが多いので、バレル換算なんかも試みているところである。今回、リサーチにだいぶ手間取ってしまったが、自分にとっては新しいこういうデータに出会えたということで、収穫はあったかなと思っているところだ。


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 久し振りに、ロシアの株価のグラフを更新してみた。クリック・タップで拡大する。

 今般のコロナ危機の特徴として、世界的に、3月頃に株価が暴落したけれど、割とすぐに回復に転じたという点がある。ロシアも同じであり、3月半ばを底として、それ以降はほぼ一貫して回復軌道を描いている。ルーブル建てのMOEXは、今年後半にかけて、過去最高値を試す展開も考えられるのではないか(株の予想屋のようなことを言う)。


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 GLOBE+に、「ロシア銀行界の巨人ズベルバンク ほぼ太陽の沈まない帝国」を寄稿しました。

 これまでは健全で慎重な財政・金融政策を続けてきたロシア当局も、コロナ危機に直面し、財政拡大や金融緩和に踏み出そうとしています。そうした中で改めて役割がクローズアップされるのが、ロシア最大の商業銀行であるズベルバンクです。実は、ズベルバンクでは最近、筆頭株主がロシア中央銀行からロシア政府へと変わるという動きがありました。そこで今回は、この組織変更の話題も含め、ズベルバンクについて語ってみました。


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 ロシア統計局より、4月の経済概況が発表されたので、それを眺めているところである。

 そもそも、企業からの報告が滞っていることなどから、統計の作成自体が困難になっているという指摘もあり、もしかしたら統計の精度が落ちているかもしれない。ただ、GDPは出るのが遅いので、差し当たり最も総合的な指標ということになる「経済基礎部門商品・サービス生産高」というデータを見ると、2020年4月のそれは前年同月比マイナス9.9%ということになっている。まあ、だいたい想定の範囲内か。

 鉱工業生産指数は、それよりも落ち込みが若干軽微であり、前年同月比マイナス6.6%ということになっている。主な部門の指数をグラフにまとめたのが、上図である。プーチン大統領の指令で、基本的に4月は企業は休業、ただし生産の一時停止が難しいような業種は除く、とされていた。操業停止が難しいのは、具体的には、油田・ガス田、製鉄所、化学プラントといった分野だろう。それに対し、労働集約的な工場などは、コロナ対策上、閉めざるをえない。まあ、ただ、上のグラフを眺めると、4月が丸々休日に指定されたわりには、各分野とも、意外と落ち込みは軽微だったかという印象を受ける。


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 2020年のロシア財政は、当初の計画では余裕しゃくしゃくのはずだったのだけど、周知のようなコロナ危機に石油安が重なり、歳入減と歳出増のダブルパンチに見舞われることは必定だ。具体的に、どうなるか? このほど、アルファバンクのニュースレター(AlfaBank Macro Insights, June 2, 2020)で、その見通しが示されていたので、ざっと紹介してみたい。

 上の表に見るように、2020年の連邦財政の歳入は、当初の予算では20.4兆ルーブルだったものが、実際には18.1兆ルーブルに落ち込むと見られる。逆に、歳出は、19.5兆ルーブルが、20.5兆ルーブルに膨らむ。財政収支は、0.9兆ルーブルの黒字のはずだったものが、2.4兆ルーブルの赤字となる。国民福祉基金は、2.3兆ルーブルの積み増しを見込んでいたものが、0.3兆ルーブル減となる見通しである。


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 ロシアの「発展センター」というシンクタンクでは、主要機関による経済予測を平均した「コンセンサス予測」というのを定期的に発表している。今般チェックしてみたところ、5月6~12日に実施したアンケートにもとづく最新のコンセンサス予測が出ていたので、それを紹介してみたい。

 上の表に見るのが、年ベースのコンセンサス予測。前回調査は4月6~7日にかけてアンケートが行われたものだったが、その時は2020年の成長率が▲2.0%と予測されていた。それに比べて、今回のアンケートでは、マイナス成長がより深く、長期化する方向に予測が修正されている。

 ただし、依然として、それほど大きなマイナス成長を見込んでいるわけではなく、個人的にも、これくらいで収まってくれれば御の字ではないかという気がしている。

 下の表は、より細かく、四半期ベースのコンセンサス予測を示したものである。

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 ロシアにメチェルという中堅鉄鋼・石炭グループがあるが、長らく赤字経営に苦しんでいる(その結果、こちらが伝えるとおり、今般最大の資産であるエリガ炭田の売却を余儀なくされた)。同社はかつてウクライナのドネツク電気冶金工場というアセットを買収したものの、経営は上手く行かず、しかも周知のようなドンバス情勢となり、完全に不良資産と化している。

 メチェルはドネツク電気冶金工場の売却を試みたのだが、買い手が見付からなかった。あの件がどうなったかと思い、久し振りに情報を検索して見たところ、昨年10月のこちらの記事が見付かったので、以下要旨をまとめておく。

 I.ジュミン氏の保有するメチェルはD.コザク副首相に、同社がドネツク電気冶金工場に投資した資金の50%を取り戻すことを支援してほしいとの書簡を送った。この資産はウクライナ東部の軍事紛争で失われてしまったと訴えている。また、同社は債務のリスケも要請している。書簡は2019年夏に送付されたものであるという。

 メチェルがドネツク工場の経営権を取得したのが2009年、5.4億ドルで買収したのが2011年だった。2011~2018年にかけて毎月分割で支払うはずだった。工場はその時点で年産100万tだった。メチェルは工場の近代化に10億ルーブルを投資し、ほぼ100%の稼働を達成していた。しかし、原料となる鉄スクラップの不足により、生産がペイしなくなり、2012年に操業が停止された。そこへ、2014年4月に紛争が発生し、事業を継続できなくなった。2016年夏には、経営権を自称ドネツク人民共和国の当局に剥奪された。こうした状況にもかかわらず、メチェルはアルファバンクに対する融資の返済を続け、2019年2月に完済した。

 こうしたことから、ジュミンはコザク副首相に対し、工場に投資した180億ルーブルの50%の返還を手助けしてほしいと要請し、それをロシアの一連の国営銀行に対する支払いに充てたいとしている。また、それらに対する債務3,400億ルーブルのリスケを希望している。

 なお、ドンバス占領地においては、2016年6月にドネツク電気冶金工場がドネツク人民共和国によって勝手に国有化され、「ユーゾフカ冶金工場」に社名変更されるという動きがあった(ユーゾフカはドネツクの旧名)。こちらが、その公式HPである。こちらの記事によると、同工場では、発注がないことから、2019年10月より生産が停止しているが、この春になり生産再開に向けた準備を始めているという情報もあったということである。

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 GLOBE+に、「新型コロナでざわつくロシアの喫煙者 加熱式や電子たばこにも規制の動き」を寄稿しました。

 5月31日は、世界保健機関(WHO)が定める「世界禁煙デー」でした。また、日本政府は、世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」(5月31日~6月6日)と定め、様々な普及啓発事業を実施しています。今回は、その機会を捉え、ロシアの喫煙事情、禁煙政策について語ってみました。


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 しばらく、鉄鋼業に関連したエントリーが多くなるかもしれない。「何か事情があるのだろうな」とお察しいただければ幸いである。

 さて、世界鉄鋼協会の発表しているデータにもとづき、主要国の粗鋼生産量の推移を示すと、上図のようになる。クリックすると拡大。まあ、とにかく、世界の鉄鋼生産の半分を中国一国で生み出すという時代となっており(2019年のシェアは53%)、私のような日本のロシア・ウクライナ研究者にとっては、グラフを作っていて虚しいというか、もはやグラフとして成り立たなくなってきた感すらある。

 ロシアの場合は、生産規模を維持はしているので、マシな方かもしれない。なお、ウクライナは私の研究対象国だからこのグラフに加えてあるが、世界8位という意味ではなく、ウクライナの上にあるトルコ、ブラジル、台湾といった国々をグラフでは省略しているだけであり、2018年の場合はウクライナは世界13位だった。


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 本日も時間がなくブログのネタに窮しているのだが、時々更新しているこのグラフをお目にかけたい。全ロシア世論調査センターが毎週実施している、国民の主な政治家への信頼度のデータの中から、プーチンの数字を抜き出したものである。

 そもそもが、諸外国と比べて、国民一般のプーチンへの信頼度は高いレベルで安定しており、極端な変動は生じにくい。ただ、今年に入ってからの細かい動きに関して言えば、改憲提案と内閣交代でやや上昇、任期初期化の問題でやや低下、コロナ休業でやや上昇、しかしコロナ感染の拡大続きやや低下、戦勝記念日を境にやや上昇、といった意味合いを読み取れる。

 他方、私がプーチン政権の求心力を測るために参照しているもう一つの指標が、レヴァダ・センターの調査による国民のプーチンへの信認度というものである。こちらに関し気になるのは、上昇・低下というよりも、下に見るように3月で更新が止まってしまっていることである。コロナ問題で技術的に調査や集計ができなくなってしまったのか、はたまた政権当局から圧力でもあったのか、気になっているところである。

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 ロシア・ヤマル半島の天然ガス産地から、ベラルーシ、ポーランドを経由して欧州市場に至る「ヤマル~欧州天然ガスパイプライン」というものがある。稼働したのは1999年だった。ただ、通過国のポーランドとロシアの政治関係は緊張をはらんでおり、そのあたりについてこちらの記事が論じているので、以下要点を整理しておく。

 ガスのトランジット輸送に関するガスプロムとポーランドの歴史的な25年契約が、5月17日に満了した。今後も同パイプラインを通じた輸送は続けられるが、それを取り巻く環境は変容している。

 パイプラインのロシアおよびベラルーシ領部分の所有者はガスプロム、ポーランド部分はEuRoPol Gaz、ドイツ部分はWINGASである。輸送能力は年間329億立米で、トルコストリームのそれに匹敵する。建設当時は唯一のウクライナ迂回ルートであり、それゆえにポーランドを含むすべての当事国が建設に利益を見出した。オレンジ革命後のウクライナの立ち位置もあり、パイプラインはスケジュール通りに建設された。2009年のロシア・ウクライナガス戦争の際も、被害を受けた中東欧諸国と比べ、ドイツやポーランドはヤマル~欧州PL経由で通常通りの輸入を続けられた。

 しかし、2011年にはノルドストリームの1列目が完成し、550億立米の輸送能力が加わったことで、ウクライナやポーランドの「半独占者」としての地位は失われた。ノルド1の能力が充分ではなかったことから、その2国、特にウクライナは一定の意義を保ったが、低減したことは間違いない。トルコストリームも完成した。ポーランドは、政治的影響力の低下が生じると懸念し、ノルドの建設には真っ向から反対したし、現在もノルド2に反対することに全力を傾注している。

 ウクライナと異なり、ポーランドがヤマル~欧州PLのトランジットから得ている収入は少額であり、年間2,100万ズロチを超えることはない。ただし、その代りポーランドにはパイプライン会社の株式の52%が与えられた。1996年の契約で、ポーランドは2022年までガスプロムから年間100億立米を購入する義務を負った。2012年には追加契約が結ばれ、ガス価格の10%引き下げが取り決められた。だが、2016年2月にポーランドはストックホルム仲裁裁判所にガスプロムを訴え、欧州価格に見合った価格の導入を求めた。2018年6月にポーランドPGNiGは暫定的な勝訴を発表し、2020年3月には最終的な勝訴を発表した。ポーランド側は、従来の価格は非市場的なもので、今後は西欧市場に見合った新たな価格に移行するとともに、2014年以降の差額15億ドルを返還すべきとしている。ただし、ガスプロムはその2つとも今のところ履行していない。

 こうした背景を考えると、ガスプロムとPGNiGがヤマル契約を更新するとは考えにくく、両者とも契約延長の意向はなく、交渉も行われていないという。ガスプロムとしてはノルド2、トルコストリームの開通をにらんでおり、2019年末にウクライナ・ナフトガスとの契約も結ばれたので、ポーランドとの新たな長期契約は不要である。ポーランド側は政治的な動機であり、その他の供給源からのガス調達比率を増やして、ロシアからのエネルギー独立の路線をとっている。多様化の手段としては、米、カタール、ノルウェーからのLNG購入増や、デンマークからのガスパイプラインを建設しノルウェー産ガスを購入する計画もある。

 なお、トランジット契約満了後は、ポーランド領パイプラインの利用は、利用予約をオークションで販売する形で行われる。一方、ポーランドがロシア産ガスの購入を完全にやめることはないだろう。その他の供給源からの調達可能性を手にしたら、今後は商業的な観点を重視するようになり、条件が有利ならガスプロムからの購入を続けるということになるだろう。


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