ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

カテゴリ: ロシア

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 ロシアが外国人観光客の受入拡大を目指しているという点に関しては、今年の5~6月に、「ロシアが外国人観光客の受入に本気を出し始めた」というコラムや、「インバウンド観光促進を目指すロシア」というレポートを発表している。

 それらのテキストの中でも、ロシア政府が新たな政策文書の策定に取り組んでいるということに言及していたが、このほどそれが実現した。こちらのサイトに見るとおり、ロシア政府が2019年9月20日付の政府指令で、「2035年までのロシア連邦観光発展戦略」を採択したものである。むろん、国内観光・インバウンド・アウトバンドすべて含んだ戦略となっている。

 ロシアの政策文書と言えば、数値目標が付き物である。そこで、観光発展戦略の付属文書に示されている数値目標の部分を、上掲のとおり切り出してみた。

 戦略の数値目標は、拍子抜けするほどシンプルなものであり、指標が4つしかない。上から、1.観光産業の付加価値、2.ロシア連邦市民にとっての観光の利用しやすさの向上、3.観光サービスの輸出、4.観光部門への投資、となっている。1は、2017年の3.2兆ルーブルが、2035年には16.3兆ルーブルに。3は、2017年の89億ドルが、2035年には286億ドルに、という青写真を描いている。


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 モスクワ滞在は本日まで。過日、日本のロシア関係者の間で話題沸騰の松屋モスクワ店に、行ってきた。我々が行ったのは昼時だったが、開店当初の混雑も落ち着き、適度な客入り。日本人やロシア人というよりも、意外に日本以外のアジア人(中国人とか?)が多いなという印象。

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 私自身は、日本の味と比較するという使命感から、牛丼並み、豚汁、半熟玉子をチョイス。料理に自動的に味噌汁が付いてくるというシステムは日本と同じながら、「味噌汁を豚汁に変更することはできない」ということだったので、豚汁は単品での注文となり、味噌汁とダブルスタンバイに(笑)。

 牛丼の肉質は、日本のものとちょっと雰囲気が違い、やや淡泊かなと感じた。日本のものは適度に脂身が混じり、もっとジューシーな気がする。豚汁は、かなり具沢山で、日本版の里芋と異なり、ジャガイモが入っている。

 

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 同行者は、カツカレーとカツ丼を頼んでいたが、それぞれ「かなり行ける」ということだった。日本の松屋とは違って、カツものが結構売りになっているようだ。

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 そんなわけで、モスクワ松屋の体験レポートを簡単にお届けした。高級店ではなく、値段は抑え目にしてあるので、利益を出してビジネスを軌道に乗せるためには、回転率の向上、さらに今のところは1店舗だけだが将来的には店舗網の拡大が必要になってくるのではないか。ご健闘を心から期待したい。


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 こちらで閲覧可能だが、ロシアの『プロフィール』誌(2019年9月9日号、No.34)に、ロシアのエレクトロニクス産業についてのレポートが出ているので、骨子を以下のとおりまとめておく。

 ロシア政府が検討している「2030年までにエレクトロニクス産業発展戦略によれば、10年間で世界のリーダーたちに追い付き追い越す目標が掲げられている。しかし、実際に商店を覗けば、国産のPC、スマホなどは皆無である。公務員使用の電子製品を輸入代替するという目標も、過去数年で失敗に終わった。最近、政府は2019年7月10日付の政府決定で「ロシアのエレクトロニクス製品の一覧表」というものを制定する新たな試みを始め、これが当該産業の発展を促すことが期待されているが、国産定義の難しさなどがあり、出だしから困難に直面している。

 ロシアのエレクトロニクス産業は、理念的にはソ連の遺産だが、現実には1990年代に壊滅し、ゼロからの出発を余儀なくされた。最初の本格的な再興の試みは、2010年代の初頭に、「2013~2025年の電子・電子無線産業の発展」というプログラムが策定されたことだった。それによれば、ロシアのエレクトロニクス製品市場における国産品の比率が40%に、世界シェアは0.8%になるとされた(2011年現在では17%、0.3%だった)。

 しかし、2014年に危機が起こり、すべての計画が狂った。国の優先方針は輸入代替となり、エレクトロニクス産業発展プログラムは棚上げになった。しかし、PC、スマホを国内生産するための設備を、ロシアは生産できないということが浮き彫りとなった。

 手始めに、まず国家機関で使用する機器を国産化することが想定された。国家安全保障にかかわる分野だからである。しかし、この面でも成果は出ていない。たとえば、2016年にPC1万台を内務省に納入する入札でTプラットフォルムィ社が落札した。総額3.6億ルーブルで、「バイカルT1」というプロセッサをベースとした「タヴォルガ」というPC.だった。同社は2018年末に必要台数を納入したものの、内務省は2,000台しか受け取らず、期限通りに納入しなかったとして社長が逮捕された。産業・商業省、経済発展省が要請しても社長は釈放されなかった。詳細は明らかでないが、同社は内務省の示した課題に応えられなかったと見られる。

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 現在モスクワ滞在中であり、一昨日ちょっと時間があったので、家電店のMヴィデオを覗いてきた。私は以前はロシアの家電市場の調査を熱心にやったりもしたのだが、家電市場が変質してしまったこと、日系メーカーが元気がなくなったことなどからやや熱意が薄れてしまった。それでも、たまには家電売り場を見ておかないと、時代に取り残されてしまう。

 テレビ売り場に関して言えば、相変わらず売り場の半分以上はサムスン、LGという韓国勢によって占められている。そして、両社ともロシアに自社工場があるので、当然のことながら、販売されているテレビはロシア製である。

 その他の外資系では、フィリップス、ハイアールも、ロシア製とされていた。具体的にどこの工場で組み立てているのかは不明であり、そのうち調べてみたい。

 日系メーカーでは、SONYのテレビがかなり多く置いてあり、すべてマレーシア製だった。

 台数はそれほど多くなかったが、パナソニックのテレビは、ベラルーシ製だった。ミンスクのゴリゾント社にアセンブルを委託しているのだろう。もはや日系メーカーと言えるかは微妙だが、わずかな台数置かれていたシャープもベラルーシ製で、やはりゴリゾント委託か。ゴリゾント社自身のテレビも、1台だけ置かれていた。

 昔であれば、冷蔵庫、洗濯機売り場にもベラルーシのアトラント社の製品が大量に陳列されていたわけだが、今回はまったく見かけなかった。


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 当ブログでは何の情報も発信できなかったが、今年7月、ベラルーシのルカシェンコ政権が成立から四半世紀の節目を迎えた。遅れ馳せながら、ベラルーシを代表する政治評論家のV.カルバレヴィチ氏が、こちらのサイトで発表したコラムの要点を、以下のとおり整理しておく。

 国営マスコミはルカシェンコをベラルーシ国家性の父であるかのように描くが、25周年の記念とばかりに、ロシアはベラルーシ国家性の解消についての交渉を申し入れた。「連合国家創設条約」の実施は、ベラルーシの主権が形式だけのものになることを意味する。交渉が具体的な成果を生むとは思えないが、ベラルーシ指導部がそのような交渉に応じざるをえないという事実が重大なのである。

 もしもルカシェンコに判断能力があったのなら2010年代の半ばあたりで退任したはずで、そうすれば国民の間にプラスのイメージとして残るチャンスがあった。ベラルーシ社会モデルが2010年代に危機に突入しただけに、その前にルカシェンコが辞めていたら、国民が「ルカシェンコ時代は安定期だった」と受け止めてくれる可能性があった。しかるに、ルカシェンコはその機会を逸した。

 皮肉にも、ルカシェンコは1990年代の社会的要請に応えることで、その人質となり、結局は国を袋小路に陥れ、彼自身が国民的支持を失った。今日では、ベラルーシ国民がすでにその指導者を追い越している。多数派の国民はそれを実感し、希望を見出せずにおり、その表れが多数の労働移民である。大統領は発展、変化のブレーキになってしまった。実はルカシェンコ自身、自分の人気がなくなったことを自覚しており、その点についての幻想はない。

 もはや、ルカシェンコは別の時代の記念碑、博物館における停滞の時代の展示物のように見える。彼が政権の座にいればその分だけ、国民にとっての歴史的な時間が失われる。ルカシェンコが長く君臨すればするほど、大衆および子孫たちの記憶の中で、彼の肯定的なイメージが損なわれる。


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 GLOBE+に、「インドと比べればロシアも普通? 2つの新興大国の関係と比較」を寄稿しました。

 先日のウラジオストクにおける東方経済フォーラムでは、初登場したモディ・インド首相が完全に主役となり、ロシア・インドの経済協力が大いにプレーアップされました。今回のコラムは、それに触発され、昨年12月に行ったインドでの調査の雑感を述べたものです。


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 ロシアの『プロフィール』誌(2019年9月9日号、No.34)に、ロシア独自開発のスマホに関するコラムが出ている。要点は以下のとおりである。

 ロシアではPC、スマホ等の一般消費者向けエレクトロニクス商品の生産はほぼ行われていないが、時折市場にはロシア独自開発とされる商品が投入されることがある。

 代表的なのは、Yota Devicesが発表したYotaPhoneのシリーズで、e-linkスクリーンというものが裏側のパネルに据えられているものだった。2013年に投入されたが、価格が高くデザインが物議を醸したことで、市場には受け入れられなかった。第2世代のYotaPhoneはデザインが改善されたが、やはり市場には浸透せず、結局、2世代合わせて10万台以下しか売れなかった。

 その数年後、Inoiというブランドが登場し、2019年第1四半期には格安スマホ部門でトップに立ったこともあった。Inoiはアンドロイドだけでなく、オーロラOSの将来版であるセイルフィッシュOSでもスマホを開発している。マスコミでは、Inoiが公務員用スマホの主要候補とされている。

 最近では、ヤンデックス・スマホが注目を集めている。2018年にヤンデックス・ステーションが発表され、スマートホームの構成要素となりつつある。ヤンデックス・テレホンは、ヤンデックスのサービスをプリインストールした廉価スマホである。

 他にもロシアにはBQ、Texet、Maxvi、Itelといったブランドがあるが、それらのスマホはすべて外国の部品を使って中国で組み立てられている。


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 こちらに、サッカーの国際移籍市場の動向と、そこにおいてロシアが占めるポジションに関する記事が出ている。以下、記事の要点を整理しておく。

 ロシアのサッカーが選手獲得に費やす費用は、2010年代の初頭に急増した。2012/13シーズンに、ロシア・プレミアリーグは選手獲得に3.3億ユーロを投じ、ドイツ、スペイン、フランスのリーグを抜いた。2013/14シーズンも3.2億ユーロだった。かくして、ゼニトではフッキとヴィツェルが、アンジではエトーとロベカルがプレーするリーグとなり、外国からロシア・リーグへの関心も高まった。

 しかし、その後、ウクライナ危機、経済危機が起こり、スターたちはロシアを去り、新規の選手獲得は最小限となった。それが、2019年になってロシア・プレミアリーグの選手獲得は再び活気付き、2.4億ドルが投じられた。しかし、専門家たちは、サッカーは経済の一部であり、経済危機の影響が消え去ったなどということはありえないという。実際、現時点で巨額を投じているのは上位の一部のクラブだけである。もしもサッカー界全体が活気付いているなら、プレミア下位のクラブも資金を投じるはずだが、そうはなっていない。スパルタク、クラスノダル、ディナモ、ゼニトの4クラブだけで、移籍金総額の4分の3を占めている。

 なお、ロシア・プレミアリーグ所属クラブの選手の市場価値は、以下のとおりとなっている(額は100万ユーロ)。

  1. ゼニト・サンクトペテルブルグ:201.4
  2. クラスノダル:148.5
  3. CSKAモスクワ:135.2
  4. ロコモティヴ・モスクワ:133.1
  5. スパルタク・モスクワ:93.4
  6. ディナモ・モスクワ:69.5
  7. ルビン・カザン:41.1
  8. アフマト・グロズヌィ:40.3
  9. ロストフ:33.9
  10. アルセナル・トゥーラ:33.5
  11. ソチ:28.9
  12. ウラル・エカテリンブルグ:25.2
  13. オレンブルグ:21.5
  14. ウファ:21.0
  15. クルィリヤ・ソヴェトフ・サマラ:18.9
  16. タンボフ:12.2

 この夏の移籍市場で最も目立ったのは、3年振りにUEFAチャンピオンズリーグに出場し、資金もガスプロムの支援で潤沢なゼニトだった。ゼニトは過去数年の不景気の時期も例外的に積極的な補強を行ってはきたが。ゼニトは、オレンブルグのリーダーだったA.ストルミンを獲得した。最初はストルミンはルビンに移籍すると言われていたが、オレンブルグのスポンサーはガスプロムの子会社であり、天の声が振ってきて、移籍先がゼニトに変わったという。ゼニトはさらに、ロコモティヴのミランチューク兄弟に4,500万ユーロでオファーを出したが、ロコ側が引き留めに成功した。

 その一方でゼニトは、余剰人員をFCソチに売却することに成功した。FCソチのような新興クラブが1,200万ユーロを出したのは異例だが、ソチのスポンサーもまたガスプロムの子会社だというのがミソである。

 この夏の市場で、最大の移籍は、ゼニトが4,000万ユーロでマルコムを獲得したことであった。この額はかつてゼニトがフッキやヴィツェルを獲得した額と同じであり、だからこそ「ロシアのサッカーは危機を乗り越えた」という言説も語られた。しかし、この間、西欧のマーケットはさらに拡大を遂げた。フッキやヴィツェルはクラブでも代表でもリーダーの本物だったが、マルコムはバルセロナの控えにすぎず、まだ目立った活躍はしていない。西欧のビッグクラブは様々な分野のスポンサーを獲得し、新規市場開拓にも余念がないが、ロシアは相も変わらず国営企業、国家財政だけが頼りである。唯一、西欧のクラブと平等な収入源は欧州カップ戦だが、そこで勝てなくなっているという問題がある。

 ある有識者は、次のように指摘する。マルコムの4,000万ユーロは現在の市場では適正だが、問題は今日のロシアで30億ルーブルもの資金を1人のサッカー選手に費やすのが適切かということだ。ガスプロムの支配株は国家に属しており、これは実質的にゼニトの資金の一部は血税ということである。国民の所得水準が低下している中で、こうした支出は社会に対する不道徳ではないのだろうか。

 


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 ちょっと遅かったような気がしないでもないが、こちらおよびこちらのページに見るとおり、ロシア連邦国家統計局は9月9日、ようやく2019年第2四半期(4~6月期)と上半期(1~6月期)のGDP成長率の速報値を発表した。ただ、発表された数字は、以前に示されていた推計値と変わらないものであった。すなわち、第2四半期の成長率は前年同期比でプラス0.9%、上半期全体では前年同期比でプラス0.7%となっている。四半期ごとの成長率を跡付けたのが、上のグラフである。

 GDPを産業部門別に見ると、2019年上半期のパフォーマンスが良好なのは、3.8%増の鉱業である。一方、製造業は0.6%増、建設はプラマイゼロと低調。農林水産業は0.4%減、情報・通信は0.6%減とマイナスを余儀なくされている。たまたま今年の数字がそうなっているだけならいいのだが、何だかますます、地下資源に依存する国になりつつあるような危惧も覚える。


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 こちらの記事によると、ロシアは、国策企業の「合同エンジン・コーポレーション(ODK)」の尽力により、従来ウクライナから供給を受けていた軍艦用エンジンの国産化に成功したということである。ODKのYu.シモチン主任設計士がRIAノーヴォスチ通信に語った。

 シモチン主任設計士によると、ODKはロシア国防省から、8,000~25,000馬力のガスタービンエンジンをロシア海軍用に開発する発注を受け、M70というエンジンシリーズの開発にこぎ着け、その任務を遂行した。

 経緯を記すと、2014年にロシアとウクライナの軍需協力が途絶したあと、ロシアは軍艦向けガスタービンエンジン調達の問題に直面し、たとえば黒海艦隊向けのフリゲート艦の建造が中止に追い込まれたりした。これを受け、ルィビンスクのODKサターン工場で国産ガスタービンエンジンの生産に着手する決定がなされた。2014~2017年にサターン工場で実験・設計作業が行われ、無事開発にこぎ着けた。


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 こちらの記事などが伝えているとおり、ロシア・ウクライナ・欧州委員会の三者が、9月19日にブリュッセルにおいて、天然ガスの供給とトランジットに関する交渉を行うことが明らかになった。マロシュ・シェフチョヴィチ欧州委員会副委員長兼エネルギー同盟担当委員が、当該の情報を確認した。

 シェフチョヴィチは自らのツイッターで、「私は交渉の進展が、冬季を前に、市場と需要家にポジティブなシグナルを送ることになると確信している」とコメントした。ウクライナのN.ボイコ・エネルギー次官も、9月19日交渉実施の事実を確認している。ウクライナ側からは、O.オルジェリ・エネルギー相、A.コボレフ・ナフトガス社長が交渉に参加することになる。ロシア・エネルギー省はまだコメントを出していない。


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 半年ほど前の記事だが、こちらに興味深い図解資料が出ていたので、これを取り上げてみたい。

 記事によれば、ロシア連邦天然資源・環境省が、初めての試みとして、ロシアに埋蔵されている地下資源の総額を産出したということである。その結果、地下資源の総額は2017年の末時点で55.2兆ルーブル(直近の為替レートでは8,385億ドル、90兆円)となり、これはロシアのGDPの60%に相当する。ただし、これは開発ライセンスを付与されており、開発計画も存在する資源に限る数字ということである。

 資源別の内訳では、石油39.6兆ルーブル、天然ガス11.3兆ルーブル、瀝青炭2兆ルーブル、鉄鉱石8,080億ルーブル、ダイヤモンド5,050億ルーブル、金4,800億ルーブルとなっている。

 埋蔵量は、石油90.4億t、天然ガス14.47兆立米、金1,407t、ダイヤモンド3.8億カラットとなっている。

 「開発ライセンスを付与されており、開発計画も存在する資源に限る」と聞いて、安心した。ロシアは年間5億t程度は石油を掘っているので、石油の埋蔵量が90.4億tしかないとしたら、20年ももたないことになってしまうからである。


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 こちらの記事に見るように、今般開催された第5回東方経済フォーラムの席で、サハ共和国のA.ニコラエフ首長が、「レナ川橋」の建設を猛プッシュする一幕があった。サハ共和国の見解によれば、橋の建設によりロシア極東と北極圏を結び付けることが可能になる。サハ共和国が交通網で隔絶されているという問題を、極東発展ナショナルプログラムは解決すべきだ。橋ができれば、インフラの制約が軽減され、全ロシア領土の経済的結合レベルが向上する。大規模な鉱山が稼働し、非資源部門のプロジェクトへの投資も流入する。橋は、アムール~ヤクーツク鉄道、ヴィリュイ、コルィマ、レナという3つの連邦道路、5つの地域道路、ヤクーツク河川港、ヤクーツク国際空港を連結することになる。2025年までに橋が開通すれば、サハ共和国市民のうち通年で交通インフラにアクセルできる市民の比率が20.9%から83%に高まる。北方供給の費用が減るので、財政の節約にもなる。というのが、サハ共和国側の主張である。

 それで、レナ川橋については、かねてからサハ共和国当局が要求していたプロジェクトのようで、こちらに専用サイトもある。端的に言うと、次のような話らしい。これまでサハ共和国の首都ヤクーツクは、鉄道が繋がっておらず、陸の孤島のような位置付けだった。それを、アムール~ヤクーツク鉄道と称し、南部のアムール州からヤクーツクに至る幹線鉄道を現在建設中で、それが上に掲げた地図の赤いルートになる。ところが、同鉄道はヤクーツク市そのものには到達せず、レナ川を挟んで川の対岸にあるニジニベスチャフというところが終点ということになっている(2番目の地図で青いフラグが立っているところ)。これではヤクーツク市が受ける恩恵が低下してしまうので、レナ川を渡る橋を架け、鉄道がヤクーツク市中心部まで到達できるようにしてほしいというのが、サハ共和国の連邦に対する要求事項ということのようである。


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 こちらの記事によると、ロシアとベラルーシは本年12月8日に二国間の統合に向けた新たなプログラム文書(複数)に調印する予定で、現在その準備作業を進めているということである。

 1999年に連合国家創設条約が成立してから、ロシア・ベラルーシ両国は野心的な統合を目指す姿勢を後退させ、さらに2015年にユーラシア経済連合が発足してからは、二国間から多国間の統合へと軸足を移していた。それが、ここに来て改めてロシア・ベラルーシ連合国家という二国間の枠組みでの統合深化がアジェンダに上ってきたということになる。

 記事によれば、ベラルーシ側のD.クルトイ経済相が、記者団に以下のように語ったということである。いわく、重要な問題が未解決だが、ロシアとベラルーシは12月8日に統合のためのプログラム文書(複数)に調印することになる。同日までに統合プログラム(単数)と、ロードマップのパッケージがワンセットで策定されることになる。12月8日というのは両国大統領がサンクトペテルブルグで合意したものであり、これは動かせない。文書には両大統領が署名することになる。また、両国は一連のデリケートな問題、とりわけ天然ガス問題についての一連の協定を準備している。それらの作業を現在行っているところであり、毎日何らかの修正が加えられ、延々と交渉が続いている。ガス価格については個別の政府間協定となり、年末までに結ばれるだろう。行動ブログラム自体は枠組み的なもので、具体的な諸問題はロードマップの方に明記される。ロードマップが策定されるのを受け、2020年を通して法令に落とし込む作業が開始される。そして、2021年1月1日から主要分野において共同市場が始動する。

 以上がクルトイ経済相の発言内容である。なお、記事の補足情報によれば、2018年12月にプーチン・ルカシェンコ両大統領の合意により、統合発展のための政府間作業グループの設置が決まり、6月末に両国首相の会合で11月までに統合のロードマップの中身につきすべて合意して12月には統合プログラムを提案するということが決まった由である。


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 これは、ロシア極東のウラジオストクで開催されている東方経済フォーラムの枠内での出来事である。こちらの記事によると、ロシアのプーチン大統領は4日にインドのモディ首相と会談し、その後の共同記者会見で、(ロシアなど5ヵ国から成る)ユーラシア経済連合とインドは、自由貿易圏(FTA)創設のための交渉を行う用意があると表明した。プーチン大統領は、「FTAの創設により貿易を多様化する新たな可能性が生まれると確信する。これは双方共通の目的であり、近いうちに当該協定を策定するための交渉第一ラウンドが行われることになる」と発言した。

 服部の理解によれば、これまでユーラシア経済連合はインドとは単なる「協力協定」のようなものを結ぶ意向とされていたので、FTAという話は今回初めて出てきたものではないかと思う。

 なお、いつも申し上げるように、ユーラシア経済連合という多国間組織の通商戦略を、ロシア一国の大統領が軽々しく発言してしまうのは、不適切であろう。同じことをキルギスの大統領がやったら、ロシアは激怒するはずである。


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 私個人は無関係だが、本日4日から6日まで、ロシア極東のウラジオストクで、「第5回東方経済フォーラム」が開催される。

 フォーラムの花形と言えば、投資案件の署名である。こちらの記事によると、2015~2018年に同フォーラムの枠内で総額8.7兆ルーブルの投資契約が調印されたということである。最高記録は2018年であり、総額3兆1,080億ルーブルに上る220件の調印があった(むろん、その多くは調印だけして実際には始動していなかったり、同じ案件についての合意を形を変えて繰り返したりしているわけで、8.7兆ルーブルの真水がロシア経済に注がれたわけではないが)。

 記事によれば、過去の大型契約のベスト10は、以下のとおりだという。

  1. 9,480億ルーブル。2015年に結ばれたアムール・ガス加工工場。
  2. 7,960億ルーブル。2017年に結ばれたナホトカにおける石油化学・石油精製工場。
  3. 5,000億ルーブル。2016年に結ばれたアムール・ガス化学工場。
  4. 3,877億ルーブル。2016年に結ばれたナホトカ肥料工場。
  5. 3,600億ルーブル。2018年に結ばれたチュコトのバイムスカヤ銅・金鉱山開発。
  6. 2,100億ルーブル。2018年に結ばれたアエロフロートによるスホーイ・スーパージェット100機購入。
  7. 985億ルーブル。2016年に結ばれたマガダン州ナタルキンスコエ金鉱の開発。
  8. 695億ルーブル。2018年に結ばれたカムチャッカLNGターミナル。
  9. 630億ルーブル。2016年に結ばれたサハ共和国ヴェルフネムンスコエ・ダイヤモンド鉱山の開発。
  10. 600億ルーブル。2015年に結ばれたボリショイカメニ湾におけるズヴェズダ造船所への投資。

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 GLOBE+に、「イスラムとロシア正教が共存するロシア第3の首都カザン ロシアの街物語(9)」を寄稿しました。タタルスタン共和国の首都カザンは、ロシア第3の首都、ロシアのスポーツの首都、ロシアのイスラムの首都など、様々な顔を持っています。


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 しばらく忘れかけていたが、そう言えばモスクワに北京ホテルというのがあった。かつての中ソ蜜月時代の名残であり、昔のモスクワでは中華料理を食べられるレストランは貴重だった。ただし、ソ連末期だったか、連邦崩壊直後だったか、一度だけ食べに行ったら、恐ろしくマズかった記憶がある。

 北京ホテルに関しては、日本語版ウィキペディアに記事があったので、抜粋の上引用させていただく。

 設計者は、ドミートリー・チュチェーリン。ホテルはスターリン様式によってデザインされている。1939年に着工し1955年に完成した。当初、中ソ両国の友好のシンボルとして建設が計画された。ホテルは高級ホテルの水準で計画され、11階建て、最上階の11階には天井の高さ6メートルの豪奢なスィートルームが配置された。1955年12月15日、モスクワ市ソビエト執行委員会はホテルの1階に中華料理のレストランと喫茶店を開くことを決定した。この中華レストランは1990年代前半まで、モスクワ市内で唯一のエスニック料理店であった。

 それで、こちらの記事によると、どうも北京ホテルは身売りされることになり、競売にかけられたということのようである。しかし、入札期限の8月29日までに応札がなかったため、競売は成立しなかったと、記事は伝えている。

 何とも、時代の移ろいを感じさせる話題である。北京ホテルだけに、中国資本が買収する、といったことにはならないのだろうか?


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 こちらの記事によると、このほどトヨタの幹部は、ロシアでエアバッグおよび燃料タンク部品の現地調達を検討していることを明らかにした。同幹部は、「当然のことながら、我々は、将来的にどのような部品を現地調達できるかを検討している。具体的な決定は今のところないが、検討リストには、エアバッグ、燃料タンク部品等がある」と述べた。

 記事によれば、トヨタはロシア連邦産業・商業省との間で、10年間の「特別投資契約」を結んだところである。サンクトペテルブルグ市に所在する自社工場に、同契約の枠内で、200億ルーブルを投資することになる。ペテルブルグ工場では、生産モデルのラインナップの見直し、設備更新を進める。


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 モスクワの空の玄関口、シェレメチェヴォ空港では第3滑走路の建設が続けられてきたが、こちらの記事によると、9月1日に運用が開始されるということである。本来であれば新滑走路は2018年のサッカー・ワールドカップに間に合わせるはずだったが、何度か延期され、2019年9月までずれ込んだ。第3滑走路の開設により、シェレメチェヴォ空港の1時間当たりの最大発着数は、現状の70から100にまで拡大する。シェレメチェヴォでは今後、本年2019年内に新ターミナルC1(処理能力年間2,000万人)、2021年にはC2(1,000万人)の稼働が予定されている。

 さて、今回の第3滑走路でユニークなのは、新滑走路が道路を挟んだ向こう側の敷地にあるようで、航空機が自動車道路を越えられるように、巨大な橋が建設されていることである。上の動画がそれを紹介したものだが、今後は飛行機が道路の上の橋を渡っていく面白い光景が見られそうだ。


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 GLOBE+に、「プーチン政権が陥った袋小路 『4つのロシア』論から読み解く」を寄稿しました。

 ロシアでは、9月8日が統一地方選挙の投票日となっており、その一環として、首都モスクワ市の市議会選挙が実施されます。そのモスクワ市議会選で、野党系の候補の立候補が認められなかったことから、モスクワでは市民による大規模な反政府デモが続いています。今回は、ナターリヤ・ズバレビチという学者が唱えている「4つのロシア」という議論に依拠しながら、プーチン体制のロシアが陥った袋小路について考察してみました。


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 機体そのものに問題があったわけではなかったが、今年モスクワで起きた重大事故により、ますますイメージが悪くなってしまったロシア国産機「スホーイ・スーパージェット(SSJ)」。こちらの記事によると、外国のエアラインとして唯一SSJの運用を続けていたメキシコのインタージェット航空が、このほど保有していたSSJの売却を決めたということである。これで、SSJは完全にロシア国内でのみ使われる旅客機ということになってしまう。

 記事によると、インタージェットではSSJを22機保有していたが、実際に定期運航していたのは6機にすぎず、残りは半年以上、駐機場に停めてある状態だった。インタージェットは、ロシア・アエロフロートの49機に次いで、SSJを多く保有している会社だった。インタージェットは保有する22機すべてを売りに出し、買い手を探すことになるが、すでに1機を解体して復元は不能なので、実際に売るのは21機という説もある(その他にも諸説)。インタージェットでは最近のペソ安により燃料が高騰して財務状態が悪化し、保有機の売却を決めたという。


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 上の図に見るとおり、ロシアの石炭採掘は、現状では4億t強となっている。そして、こちらの記事によると、ロシア・エネルギー省では、これを2035年までに5.5億tないし6.7億tレベルにまで高めることを見込んでいる(おそらく前者が基礎シナリオ、後者が楽観シナリオということだろう)。現在、それに沿った石炭産業発展プログラムを起草しており、9月にもそれを政府に諮る予定である。エネルギー省では、増産分は、国内の住宅公営事業によって消費されるとしている。

 こちらによると、この報告を受けたプーチン大統領は、2018年の石炭の内需が1.8億t、外需が2.1億tだったことを指摘し、外需に依存しすぎることは市場乱高下に左右されるリスクがあると指摘した。同時に、ロシアはオーストラリアやインドネシアといった採炭国と比べると産地から港への距離が遠く輸送コストが高いことが問題だと指摘し、石炭の増産と並行して採炭地の輸送・社会インフラを同時に発展させなければならないと述べた。また、こちらによると、プーチンは採炭業が環境に悪影響を及ぼしてはならないと釘を刺した。

 ただし、私の印象では、最後の「環境への悪影響」は、地球温暖化というグローバルな問題というよりは、炭鉱の周辺環境のことを言っているような気がする。


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 こちらによると、国際的な格付け機関のムーディーズは、ロシア経済の成長見通しを下方修正した。2019年のGDP予想成長率は1.6%から1.2%へと引き下げられた。2020年の成長率は1.5%とされている。なお、インフレ率は、2019年4.6%、2020年4.0%とされている。

 ムーディーズによれば、今回の下方修正の主たる要因は、米中貿易戦争の深刻化である。ムーディーズは今回同じ理由で、ロシアだけでなく、中国、日本、韓国、インド、ドイツといった主要国の成長見通しを軒並み引き下げている。


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 やや古く本年4月の記事だが、ロシアのこちらの経済系サイトに、中国の主導する一帯一路の十大プロジェクトという情報が出ていた。記事によれば、中国の習近平国家主席が一帯一路政策を発表したから6年が経ち、それ以来、世界125か国および29国際機関がこの構想に参加し、その枠内で173の協力協定が結ばれた、とされている。

 それで、記事によれば、以下に見るものが、一帯一路の枠内での10大プロジェクトということである。ただし、各プロジェクトの予算規模などが記されているわけではないので、誰がどのような基準で選んだベスト10なのかは、不明である。また、以下に見る順番がプロジェクトの規模の大きさの順に並んでいるのかも、定かでない。

  1. インドネシアのジャカルタ~バンドン高速鉄道
  2. ナイジェリアのアブジャ~カドゥナ鉄道
  3. スリランカのコロンボ港
  4. ギリシャのピレウス港
  5. ブルネイのテンブロン橋
  6. バングラデシュのパドマ橋
  7. チリのプンタ・シエラ風力発電所
  8. ロシアのヤマルLNG
  9. ベラルーシのグレートストーン工業団地
  10. ジブチの国際自由貿易ゾーン

 ご覧のとおり、私の研究対象国のプロジェクトが2つ入っている。


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 2019年上半期(1~6月期)のロシアの貿易データが発表されたので、それを眺めているところである。今年に入って、ロシアの貿易では、油価の軟化による輸出減、内需低迷による輸入減が生じていたが、上半期の数字を見ると、それがますます鮮明になってきた印象である。

 ロシア中銀発表の国際収支統計によれば、上半期の商品輸出入合計額は3,194億ドルで、前年同期比3.6%減。うち、輸出は2,021億ドル(3.9%減)、輸入は1,173億ドル(3.0%減)であった。

 ロシア連邦税関局の発表によれば、上半期の石油輸出は1億2,583万tで0.5%減、金額では585億ドルで3.2%減であった。上半期のロシアの輸出入総額に占める日本の比率は3.12%で、日本の順位は9位であった。


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 前々回前回に引き続き、小泉悠さんの新著『「帝国」ロシアの地政学 』(2019年、東京堂出版)の紹介を続けたい。

 本書においては、プーチン政権のロシアによるユーラシア統合の試みと、EUによる欧州近隣諸国政策~東方パートナーシップという東西の政策的なイニシアティブがせめぎ合って、ウクライナ危機を招来したことが、中心的なトピックの一つとして取り上げられている。本件は、私自身も研究に取り組んだので、本書の関連個所はとりわけ注意深く読んだ。

 当該の問題に関し、著者は次のような見解を述べている。

 プーチン首相が2011年に提起したEEU(ユーラシア経済連合)は、旧ソ連諸国内の経済統合による経済発展というポジティブな性格を装いつつ(実際、そのような効果は見込まれていたとしても)、それらの国々がEUの経済圏に取り込まれるのを防ぐこと=経済面でロシアの消極的勢力圏に留め置くという、よりネガティブな性格も有していたことになる。

 小泉氏のこの視点は、私にとっては新鮮で、「なるほど」とうならされた。ただ、私自身は、ユーラシア統合がロシア経済に及ぼしうるポジティブな効果(少なくともロシアの政策担当者はそのように信じた)に着目する分析を続けてきただけに、そうした側面ももう少し考慮に入れる方が公平ではないかと考える。2011年のプーチンのユーラシア統合構想は、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンという3国の関税同盟がそれなりに上手く機能したことを前提にしたものだったし、当時ロシアの近代化が国是とされる中で、ロシアにとっての市場拡大や、イノベーション的発展といった要請が、ユーラシア統合構想に繋がった面があった。ウクライナは、単に潜在的な市場規模が大きいだけでなく、ロシアが戦略的に重視する航空・宇宙産業や原子力産業においてもパートナーと位置付けられていた。

 とはいえ、ウクライナ危機が激化するに連れ、もともとそれなりにあったと私が考えるユーラシア統合によるポジティブな経済効果といった要素は吹き飛び、小泉氏の指摘するようなネガティブな側面だけが前面に出る結果になったのは、そのとおりであろう。本書にある、「中長期的に見た場合、ロシアのこうした振る舞い(勢力圏を率いようとする大国的振る舞い)は周辺諸国の警戒感を強め、結果的に勢力圏を衰退させる作用を持つのではないだろうか」との指摘には、首肯せざるをえない。


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 GLOBE+に、「ラグビー・ワールドカップ開幕まで1ヵ月! 開幕戦で当たるロシアを改めて予習しよう」を寄稿しました。

 ワールドカップの開幕戦で日本と当たるロシアのラグビー事情に関しては、今年3月に「ロシアのラグビーは空軍・空挺軍仕込み! W杯開幕戦の日本の対戦相手を知ろう」というコラムをすでに書いていますが、今回は追加情報、最新情報をお届けいたします。


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 前回に引き続き、小泉悠さんの新著『「帝国」ロシアの地政学 』(2019年、東京堂出版)の紹介を続けたい。

 本書では、第1章、第2章で理論的考察を行い、以下の章でその枠組みに沿って、ジョージア、バルト、ウクライナ、中東、北方領土、そして北極という具体的なエリアの現象を論じるという構成になっている。非常に理に適った構成であるが、個人的には、北極を扱った第7章は、それ自体は読み応えがあるものの、本書の主題からはやや外れているかもしれないという印象を受けた。

 第1章では、先行研究にもとづきながら、ロシアの対外戦略を、西欧志向、帝国志向、大国志向の3つに分類する枠組みを採用し、今日のプーチン体制においては旧ソ連圏を勢力圏とする大国志向が主軸になっているとの理解が示されている。その上で、第2章においては、プーチン・ロシアによってその大国志向が、具体的にどのような形で展開されているのかが論じられている。結論を言えば、以下のとおりとなる。

 ロシアの理解によれば、ロシアは、より弱体な国々の主権を制限しうる「主権国家」=大国であり、その「歴史的主権」が及ぶ範囲は概ね旧ソ連の版図と重なる。その内部において、ロシアはエスニックなつながりを根拠とするR2P(保護する責任)を主張し、介入を正当化してきた。

 ただし、その際に、ロシアは必ずしも旧ソ連全域に一様に支配を行使しようとしているわけではなく、ロシアの影響圏から逃れようとしているような遠心的な国については、「ロシアが決定的に望ましくないと考える行動」(とりわけウクライナやジョージアのNATO・EU加盟)を少なくとも阻止するという対応をとっており、「現在のロシアが目指しているのは、まさにこのような意味での影響圏=消極的勢力圏を維持することであろう」と指摘されている。

 私自身も、小泉氏と同様のイメージは描いていたが、本書によってそれをより明確に理解する理論的枠組みが得られ、有益であった。


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2019-08-18

 こちらのサイトに、ロシア国民がビザ無しで行ける国という情報が出ているので、これをチェックしてみたい。地図上で、黄色っぽい色で示されているところがビザ無しで行ける国、黄色と青のストライプになっているところ(中国しか見当たらないが)が一部地域のみビザ無しで行ける国、青がビザが必要な国である。

 CIS諸国間ではビザ無し協定のネットワークがあるので、ロシア国民は同諸国にはビザを取得することなく出かけることができる。ユーラシア経済連合のベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニアに至っては、国際パスポートの携行すら不要である(身分証明書に該当する国内パスポートは必要)。一応、現在のところはウクライナにも90日を上限にビザ無しで行けるということにはなっているが、実際に行ってみると出入国管理で不愉快な思いをしたりするので、ビザとは別の壁がある。

 旧ソ連圏以外では、中南米や、東南アジア諸国が、総じてロシア国民にビザ無しの門戸を開いている。ロシア人観光客が上得意のトルコやエジプトがビザ無しなのも当然だろう。OECD加盟の先進国でロシアにビザ無しを認めているのは韓国くらいか。


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