北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターが10月から11月にかけて開催した公開講座「どうなる? どうする? 日露関係」の講演動画を、順次YouTubeにアップしてまいります。その第一弾として、第1回で服部がやった「日露ビジネスは退くも残るも茨の道」の動画が上掲となります。ぜひチェックしてみてください。
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北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターが10月から11月にかけて開催した公開講座「どうなる? どうする? 日露関係」の講演動画を、順次YouTubeにアップしてまいります。その第一弾として、第1回で服部がやった「日露ビジネスは退くも残るも茨の道」の動画が上掲となります。ぜひチェックしてみてください。
ちょっとマイクに近付きすぎて、音が割れ気味ですな。反省。
今年4月に、米ウォールストリートジャーナル記者が、ロシア・ウラル地方のニジニタギルで逮捕されたというニュースが報じられた。ニジニタギルは、ロシア唯一の戦車工場であるウラル鉄道車両工場がある街であり、私自身も以前は同工場を訪れ鉄道車両の写真撮影に興じたりしたこともあったものだから、とても嫌な印象を受けたものである。
逮捕された記者は、エヴァン・ゲルシコヴィチという名前。生まれはニューヨークだが、ソ連から移住したユダヤ人の家庭の出らしく、おそらくロシア語はお手の物と思われ、ロシア・ウクライナをはじめとする旧ソ連諸国での仕事経験が豊富だった。
春にニジニタギルで逮捕された時の状況については、こちらの記事が参考になった。ゲルシコヴィチには、ウラル鉄道車両工場で働いていた職員から、兵器生産に関する情報を引き出し、それをウクライナの特務機関に有料で売り渡した容疑が課せられているという。
そして、同氏の処分に関し、こちらの記事が最新情報を伝えており、モスクワの裁判所がこのほど、記者の拘留期限を2024年1月30日まで延長したということである。なお、7月にはニューヨークタイムズが、ゲルシコヴィチ記者を含む収監者の交換に関する交渉が米ロ間で行われていると伝えたことがあった。
私はウクライナでの戦争が始まってから、主要国のロシアとの月別貿易額の推移を跡付けるグラフの作成を続けているのだけれど、だいたい9月までの数字が出揃い、最新版を作成したので、お目にかける。米学会での発表用に作ったので英語になっており、ご容赦を。
これは、2021年の月平均輸出入額を100とし、2022年、2023年の月別推移を跡付けたものである。基本的にドル現行価格水準の変化を見ているが、EUはユーロ、英国はポンドでの変化を見ている。ミラーデータなので、上段に見る主要国の輸入はロシアの輸出、下段に見る主要国の輸出はロシアの輸入ということになる。開戦からしばらくは激しい動きがあって結構見応えがあった本グラフなのだが、パターンがだいぶ定着してきてて、面白みはなくなってきた。いつも申し上げるように、インドは数字が大きすぎてグラフに収まらない(2021年のだいたい7倍くらいの水準で推移している)。
ロシアNovostiのこちらの記事が、英テレグラフの報道にもとづいて、欧州諸国がロシアからのLNG輸入をなかなかやめられないということを伝えている。英国自身はすでにロシアのLNG輸入を禁止しているので、上から目線の発動だろうか。テレグラフの元記事を探してみたのだが、見付からなかったので、以下Novostiの記事を要約しておく。
EUは2027年にはロシアからの化石燃料輸入を全廃する意向だが、現実はそれから程遠いようだ。EU諸国は、ウクライナに連帯する急先鋒のエストニア、リトアニアも含めて、ロシアのLNGを輸入している。EUのロシア産LNG輸入は今年すでに61億ユーロに上っており、ロシアから欧州に到着するLNG船は増えている。欧州向けの供給は、2021年の123億㎥から、2022年には167億㎥に達した。
EUの大口顧客には、スペイン、ベルギーなどがあり、2023年1~10月の輸入量はスペインが52.1億㎥、ベルギーが31.4億㎥で、前年同期から50%増となっている。フランスも同様だ。EU統計によれば、ロシア産の(いつの?)LNG輸入に、スペインは18億ユーロ、フランスは15億ユーロ、ベルギーは14億ユーロを費やしている。
もっとも、EUのすべての国がLNG受入港とガス化施設を有しているわけではない。スペインやベルギーで再ガス化されたLNGは、他のEU諸国にも供給されている。
私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2023年12月号が発行されたので、ご紹介。12月号は、「第4期プーチン政権の内政・外交・経済」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。
服部は、特集の枠内では「プーチン戦争でロシア対外経済発展計画は台無し」と「一帯一路の『成功例』中欧班列にも異変」を執筆。枠外では「ウクライナ世論の風向きを読む」を執筆しています。
ロシアの石油関係の文献を読んでいるとよく出くわすのが、трудноизвлекаемые запаы(ТРИЗ)という用語である。定訳とは思えないが、ここではとりあえず「開発困難資源」と訳しておこうか。ちなみに、何ゆえに開発困難かと言えば色んなパターンがあり、上の図はロシア語のままで恐縮だがこちらの記事に出たその内訳である。
問題は、ロシアの石油生産は、西シベリアの簡単に掘れる資源はすでに枯渇に向かい、開発困難資源の割合が増えていくのが必定なことだ。
こちらの記事によると、このほどA.ノヴァク副首相は、現時点でロシアの石油生産に占める開発困難資源の比率は30%だが、これが2050年には70%にまで高まる可能性があると述べた。
ロシア版フォーブス誌のこちらのサイトに、2022年度決算の当期純損失(最終赤字)が大きいロシア企業のランキングというものが掲載されたので、上掲のとおり表にまとめてみた。フォーブスでは先般、利益の大きいロシア100大企業ランキングというのを発表しており、その派生企画らしい。
2022年のロシア赤字企業ランキングには、前年にも同じような規模の赤字を出し構造的に損失を出しているところと、「特別軍事作戦」の影響で収益が急激に悪化したところとの、2種類があるだろう。
ダントツで大きな赤字を出したVTB銀行は、後者の代表例であろう。同行では、地政学的リスクの顕在化により経営が悪化したと説明している。特に4つの大きな要因があり、具体的には、1.オープンカレンシーポジション、2.子会社売却による損失、3.緊急融資引当金の積増し、4.利上げに伴う金利リスクの顕在化による損失であるという。
蛇足ながら、こちらのサイトに、2022年度決算の当期純損失(最終赤字)が大きい日本企業のランキングが掲載されている。
先日発表した「北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること」というコラムでは、ロシアの石油輸出動向の表を掲載して、センセーションを巻き起こした。実は、その時掲載した石油輸出の表は、スペースの都合で、主要国だけに絞ったものだった。準備作業として、すべての国を網羅した表を作成していたので、本日のブログではそれを特別にお目にかける。手抜き? バレたか。
いくつかコメントしておくと、まずCIS諸国に関して言えば、同諸国でロシアからコンスタントに原油を輸入しているのは、実はベラルーシだけということが分かる。他の国は、ロシアから石油製品を輸入しているのだ。ただ、アゼルバイジャンやウズベキスタンの原油輸入が増えてきたのは、新しい現象かもしれない(スワップ用?)。
「友好国:その他」のカテゴリーでは、中・印・土の存在が圧倒的で、その他はチラホラという程度。ただ、ここでもUAEやエジプト、チュニジアあたりがもしかしたら新しい受け皿になっているのかもしれない。また、今のところ少量ながら、スリランカも注目される。
EU諸国では、海上タンカー輸入が禁止された2023年第1四半期に至っても、ドイツこそゼロになったものの、意外と色んな国の数字が残っていることが気になる。これは昨年12月5日以前に契約されたものでOKということだろうか。まあ、2023年第2四半期になれば、パイプライン輸入を続けるハンガリー、例外扱いとなったブルガリアくらいしか、数字が残らないとは思うが。
こちらの記事が、ロシア企業の負債が増加しつつあるということを伝えているので、以下骨子をまとめておく。
連邦税務局のK.チェクムィシェフ副局長がこのほど明らかにしたところによると、ロシア企業の負債合計額が、年初来16%拡大し、8月1日に103兆ルーブルに達した。100兆ルーブルを超えるのは史上初である。他方、企業の売掛金総額は年初来14.4%増加し、99.1兆ルーブルとなった。
負債と売掛金の増加は、現在進行中の破産事件の状況を悪化させる可能性があるため、好ましくない。そうしたケースの数は、年初の50,300件から25%増加し、62,600件へと急増している。
エクスペルトRAのI.スミルノフによれば、買掛金の性質は多面的である。一方では、買掛金は通常、前払い金や立替金であり、このことから、現在の環境下でも取引先に対する信頼は高いと判断できる。しかし、買掛金の背後には負債が隠れている可能性があり、その増加はポジティブとは言いがたい、という。
格付会社NRAのS.グリシュニンによれば、買掛金の増加は、企業が請負業者やサプライヤーに対して負債を累積していることを示しており、企業の流動性の悪化に関連している。流動性の欠如は、売掛金の回転速度の大幅な悪化と、銀行に対する制裁が主な原因である支払の通過速度が原因である。100兆ルーブルを超える債務の増加は憂慮すべき兆候であり、経済全体を不払い危機で脅かしている、とのことだ。
インゴストラフ銀行のS.ダヌィシの意見は異なる。買掛金の増加は、経済の様々な部門におけるビジネス発展のダイナミクスが良好であることを示すが、インフレによる物価上昇も反映している。2024年の買掛金の伸び率がどうなるかは、中央銀行の金融政策、企業に対する国の支援プログラムの利用可能性、連邦予算の執行、高金利の長期化に対する企業の適応度によって決まるだろうと、ダヌィシは言う。
ロシアの貿易統計をめぐる悲喜こもごもについては、先日発表したコラム「北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること」で語ったばかりだ。
そうしたところ、ロシアの貿易統計で、また新展開があった。何を思ったか、ロシア税関が不意打ちで、1~9月の輸出入データを発表したのである。ところが、これがまた中途半端な代物なのだ。ロシア税関のHPは外国からのアクセスが不能だが、私はVPNでアクセスすることができたので、これを紹介してみたい。
今回税関が発表した1~9月の輸出入額は、大陸別の数字、大分類の商品別数字という、2種類しかない。「まあ、ないよりはマシ」といった程度のデータである。
まず、大陸別の輸出入動向が、上表のとおり。大陸別よりも、EU、CIS、APECといった経済圏別の貿易額の方が有益だが、その情報はなし。上表で驚くのは、ヨーロッパとの貿易、特に輸出の激減である。従来ロシアの輸出は、ヨーロッパが5割、アジアが4割といった比率だったのだが、完全に様相が一変し、今年に入りヨーロッパは全体の2割にすぎなくなっている。
そして、商品別の輸出入動向が、下表のとおり。そもそも、分類が非常に粗くなった。軍需にかかわる機械、戦略物資の貴金属の数字を隠したいという意図が見える。全体として、輸出は(おそらく価格低下などを受けて)落ち込み、輸入は復調という傾向になっている。大陸別の輸出入額ほどの激しい構造変化は生じていない。
告知です。まだちょっと先ですが、12月15日にスラブ・ユーラシア研究センター公開講演会の一環として、「ウクライナ侵攻はロシア極東・シベリアをどう変えるか」という講演をやることになりました。無料で、ZOOMでご参加いただけますので、奮ってご参加ください。
ベラルーシにとって、ロシアから輸入した原油を国内2か所の製油所で精製して外国に輸出するビジネスは、ドル箱産業であった。その近況、特にロシアとの関係に関し、目に留まったいくつかの情報を整理しておく。
6月に出たこちらの記事では、ベラルーシのD.クルトイ駐ロシア大使が、両国の経済関係についてインタビューに応じている。この中で対しは、ベラルーシにとってロシアは決して伝統的な石油製品輸出国ではなかったが、今年になってロシアへの供給を本格化しており、例年のベラルーシの輸出総量が600万~700万tであるところ、今年のロシア向けの輸出は100万tに達するかもしれず、これは前例のないことだと語っている。しかし、私の知る限り、例年のベラルーシの輸出総量が間違っているし、ベラルーシは時期により増減はあったがこれまでもロシア市場に供給してきたはずだ。
8月のこちらの記事では、燃料の補助金にまつわる問題が触れられている。背景として理解すべきは、ロシアの石油精製部門には「ダンパー」という補助金制度があり、これによりガソリンと軽油の国際価格と国内価格のギャップを調整していることである。しかし、上記の記事によると、いくらベラルーシが統合相手だからと言って、ベラルーシ産の燃料は「外国産」として、この補助金の対象にならなかった。そこで、2022年9月より、ロシアのプロムスィリヨインポルト社がベラルーシ産の燃料を買い上げ、それをサンクトペテルブルグ国際商品・原料取引所で売却することによって、補助金受給を可能にするというスキームが編み出された。ところが、ロシアで今年9月から補助金額が半減されたことで、ベラルーシの燃料を取引所で販売する旨味が薄れ、今後はベラルーシ産が出回らなくなる可能性があるという。ベラルーシ産の比率は決して大きくないが、ペテルブルグでは一定のシェアもあり、ベラルーシ産が消えることになると、価格面で影響してくると、記事では述べられている。
最新のこちらの記事は、ロシアの石油税制改革に伴い、ベラルーシに支払われる補償金について伝えている。ロシアでは、石油の輸出関税を段階的に廃止し、地下資源採掘税にシフトする税制改革が進められてきた。ベラルーシはロシアの統合パートナーなので、もともと石油輸出関税なしでロシアの原油を輸入でき、他国に比べ有利だったわけだが、この税制改革が完了すると、そのアドバンテージが消えてしまう。そこで、ベラルーシが散々ゴネまくって、昨年のロシア・ベラルーシ財務省間の間接税共通化に関する協定により、ベラルーシの石油精製業者もロシアのそれと同等に逆物品税という形で補償金を得られることになった。今回の記事によると、これによりベラルーシの国庫に入る資金は2023年に17億ベラルーシ・ルーブルで、2024年の予算案では21億ベラルーシ・ルーブルに上るという。ただし、それは石油価格次第であると、記事では指摘している。
ロシア政府に批判的なモスクワタイムズのこちらの記事が、今般ロシア下院が可決した連邦予算案は、極端に軍事支出に傾いていると指摘している。
記事によると、ロシア連邦議会の下院は11月15日、2024年の連邦予算法案を可決した。これは第2読会での可決で、第2はメインとなる読会となっている。賛成328、反対78だった。同法案は、新生ロシアとしては記録的な軍事費の伸びと、保健および経済関連の主要プロジェクト歳出削減を特徴としている。
予算案によると、2024年には「国防」の項目に10兆7,750億ルーブルが支出される。これは、2023年の6.8兆からは70%増、2022年の4.7兆からは2.3倍増、2021年の3.5兆からは実に3倍増である。
国防は、予算の29.5%を使うことになる。これはソ連時代に匹敵し、たとえば1990年には29.4%だった。2023年の当初予算では、歳出26.1兆のうち国防は5兆で19%、2022年には27.8兆のうち4.7兆で17%だった。
これ以外にも、2024年には3兆3,380億ルーブルが「国家安全保障」に費やされる。これらは、内務省、国家親衛隊等々を賄う。この費目も前年比で1,630億ルーブル拡大される。国防と国家安全保障の合計で、歳出の40%を使うことになる。
それに対し、割を食うのが経済および社会保障関連の経費である。たとえば、国民経済費は、2023年の4.1兆から2024年の3.9兆に減額される。
こちらの記事が、G7およびEUがロシア産のダイヤモンドに制裁を導入した場合の影響について伝えているので、以下抄訳しておく。なお、上図もその記事に付属したものだが、正直見方が良く分からない。
ロシアのA.モイセイエフ財務次官が、キンバリー・プロセス2023の本会議後に記者団に語ったところによると、ロシア産ダイヤモンドに対する制裁措置は、天然石から合成ダイヤモンドへの置き換えを加速させる可能性がある。
モイセエフ次官によると、今回G7およびEUは、安定した制裁のメカニズムを構築することに主眼を置いた。AWDCまたはGIAを通じた全ダイヤモンド出荷の認証メカニズムを導入することで、これらの国の市場へのロシア産ダイヤモンド原石の輸入を直接禁止し、政治的に好ましく国や企業の宝飾品およびダイヤモンド消費市場を閉鎖するというものである。ロシアの生産規模を考えると、これを人為的に制限すると、他の供給源から補うことはできない。その結果、残されたメーカーによる短期的な駆け込み需要が起きるが、それは供給量の激減とダイヤモンドの価値の暴落に取って代わられ、天然石はより手ごろな価格の合成石に置き換わるだろう。
これは生き残りをかけた価格競争政策を引き起こし、その結果、天然石市場のすべての参加者が弱い立場に立たされることになる。採掘からカッティング、宝飾品製造に至るまで、市場参加者が短期間でビジネスを失う危険性がある。アフリカのダイヤモンド採掘国は、地域全体の社会経済的発展に不可欠であり、採掘地域の地域社会のウェルビーングを保証する産業を失う危険性があると、モイセエフ氏は指摘する。
キンバリープロセスには80カ国以上が加盟している。この組織は2000年に設立され、いわゆる「血のダイヤモンド」(違法に採掘された宝石で、その売却益が地域紛争やテロリスト集団の資金源となっている)と闘うための第1回会議が開催された南アフリカのキンバリーという町にちなんで名付けられた。
Wedge ONLINEに、「北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。
ロシア統計局のこちらのページで、10月の消費者物価が発表されたので、例によってグラフを更新してご紹介。
10月のロシア消費者物価は、前月比で0.83%増、前年末比で5.47%増、前年同月比で6.69%増だった。インフレがものすごく加速しているわけではないが、じわり値上がりが続いているという感じである。
2年くらいのスパンで見ると、下図のとおり。一頃はルーブル安に起因する非食料商品の値上がりが顕著だったが、10月は食料品の値上げが目立った。
では、10月に特にどんな食料品が値上がりしたかというのを、ロシア語のままで恐縮だが、下図で見てみる。これによれば、10月に値上がりが大きかったのはトマトの31.1%、鶏卵の13.1%、ニンニクの8.5%、バナナの5.8%、ハンバーガーの4.8%、鶏肉のアコローチカ(骨付きのもも肉とむね肉)の4.2%、鶏肉の3.7%などだった。これらはだいたい、季節的な要因によるものだろう。トマトは夏ならロシア国内の露地ものが出回るが、秋・冬になるにつれ輸入依存度が高まるので、高くなる。そして、ロシアでは秋・冬になると養鶏のコストが高くなるので鶏肉も卵も値上がりし、春・夏になると下がるというサイクルを繰り返しているので、今回もそのパターンだろう。日本では歳時記的な需要増減が主流だが(クリスマス時期の12月になると鳥肉・卵・砂糖などの需要がピークに)、ロシアでは気候的な要因が大きいわけである。
ロシア財務省から10月の連邦予算執行状況の数字が発表されたので、恒例によりグラフを更新して紹介する。グラフはクリック・タップで拡大。
たぶん、納税時期の要因に起因していると思われるが、10月には石油・ガス歳入が1年半振りの高水準を示し、それにより歳入が膨らんだ。結局、月レベルで見ると、3ヵ月連続で黒字となった。
2023年1~10月の累計では、歳入が23兆1,060億ルーブル(うち石油・ガス歳入が7兆2,100億ルーブル、非石油・ガス歳入が15兆8,960億ルーブル)、歳出が24兆3,410億ルーブル、財政収支が1兆2,350億ルーブルの赤字(対GDP比0.7%)となっている。
本年の連邦予算は2兆9,250億ルーブルの赤字(対GDP比2.0%)で編成されており、現状のペースはそれよりも小幅な赤字となっている。ただ、ロシアでは「年末のツケ払い」で12月に歳出が膨らむのが通例であり、今年もそれがどうなるかだろう。
こちらの記事によると、ロシア・ワイン協会がこのほど毎年恒例のコンクールを開催し、受賞酒を発表したということである。ちょっと興味が湧いたので、各部門のグランプリ酒だけチェックしてみる。チト用語が分からないところもあるが。
白ワイン:クラスノダル地方のタマニに所在するファナゴリヤ・ワイナリーの「白の100の色相」。シャルドネ、2021年。
スウィートワイン:クリミア共和国バフチサライ地区に所在するアルマヴァレー・ワイナリーの「ソヴィニオンTBA」。2018年。
赤ワイン:クラスノダル地方ノヴォロシースクの郊外に所在するレフカジヤ渓谷ワイナリーの「レフカジヤ」。リザーブ、2015年。
スパークリングワイン:ロストフ州ヴェデルニコフ村に所在するヴェデルニコフ・ワイナリーの「シビリコヴィ」。エクストラブリュット、2017年。
酒精強化ワイン:クリミア共和国ヤルタ近郊に所在するマッサンドラ・ワイナリーの「マスカット白」。2019年。
戦争になり、すっかり取り上げる機会は少なくなってしまったが、近年のロシアが目標に掲げていた政策目標の一つに、石油・ガスをはじめとする資源・エネルギーに偏重した輸出構造から脱し、「非原料・非エネルギー商品」の輸出を拡大するという点があった。以前は国策企業のロシア輸出センターHPに、非原料・非エネルギー輸出の統計が出ていて有益だったものの、開戦後のロシアが貿易統計を公表しなくなった関係もあり、それも途絶え、またその輸出をカウントする方法論にも変化があったこともあり、本件の進捗は非常に分かりにくくなってしまっていた。
そうしたところ、こちらに見るように、本年9月9日付のロシア政府指令により、「2030年までの、また2035年までの期間を視野に入れたロシア連邦の製造業発展総合戦略」が修正されており、そのテキストの中にロシアの非原料・非エネルギー輸出に関し有益な情報が含まれていたので、以下ではそれを抄訳しておきたい。第6項「競争力」のところにそのくだりがあり、公式文書の中でこうした数字が挙げられているのを個人的に初めて見た。
製造業の諸部門は、国内市場における製品の競争力の伸びを実証している。輸入代替政策の結果、工業製品の国内市場における輸入品のシェアは、2014年の49%から2021年初めには39%に減少した。
コロナの影響にもかかわらず、2020年の非原料・非エネルギー商品の輸出総額は1,613億ドルで、前年から4%増加した。競争力のある工業製品の輸出総額は1,310億ドルで、前年から1.16%(?)増加した。
多くの工業製品の輸出において価格変動が大きすぎることを考慮し、指標を算出する上での方法論に修正が加えられた。金および芳香族化合物の扱いが変わった。それを踏まえると、2020年の非原料・非エネルギー輸出の総額は1,413億ドル、工業輸出の総額は1,107億ドルとなる。
2021年には、2020年価格では、非原料・非エネルギー輸出総額は、前年比4%増の1,468億ドル、工業製品の輸出総額は前年比6%増の1,175億ドルとなった。ただし、2021年価格では、非原料・非エネルギー輸出総額は1,920億ドルで、これは前年比35%増となる。
制裁が導入された2022年には、非原料・非エネルギー輸出は1,258億ドル(2020年価格)、工業製品の輸出量は968.9億ドルとなったが、2022年価格では1,890億ドルに上っており、前年からの低下は1.6%に留まる。
こちらの記事によると、このほど中国税関が10月の貿易統計を発表し、それにより中露の二国間貿易が2,000億ドルの大台を突破する目前であることが明らかになった。
中国税関によると、2023年1~10月の中露貿易は往復1,964億ドルに達し、前年同期比27.7%増であった。うち、中国の対露輸出が52.2%増の901億ドル、中国の対露輸入が12.4%増の1,064億ドルだった。
一方、ロシア側の税関は現在基本的に貿易統計の発表を停止しているが、10月末に連邦税関局のR.ダヴィドフ長官代行は、1~9月の露中貿易は前年同期比27%拡大しており、通年では2,200億ドルに達するだろうと発言していた。
こちらに見るとおり、ロシア連邦国家統計局より10月にロシアの長期(と言っても2046年まで)人口予測が発表された。どこかにそれを図にしたような分かりやすい資料がないかと思ったのだが、見付からなかったので、上掲のとおり自分でグラフにしてみた。
ロシアも日本などと同様に少子高齢化・人口減少社会である。ただ、グラフを見ると、当面労働可能年齢層が拡大することになっており、意外に思われるかもしれない。これにはからくりがあり、現在ロシアでは、年金受給年齢を10年かけて5歳引き上げる改革を推進中であり、主にその効果で、今後しばらくは労働可能年齢層は現状維持が可能で、年金受給層も増えないことになっているわけである。
総人口は、2030年までに300万人ほど減る予想なわけだが、でも、心配は無用(?)。上掲グラフの数字は、ロシアが編入を主張しているドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州という4つの「新領土」を含んでいない。こちらの記事によると、新領土の人口は、2024年の時点で323万人と見られており、人口の自然減を戦争による領土獲得で補填できることになっている。もっとも、そんなロシアに嫌気が差して、さらに100万人、200万人といったロシア市民が祖国を捨てる可能性もありそうだが。
こちらの記事によると、ロシアのA.ベロウソフ第一副首相がこのほど記者団に対し、現下の状況でロシア経済が成長を続けている秘訣について語ったということである。
ベロウソフ第一副首相によると、ロシア経済はもっぱら軍需産業によって成長しているという言説があるが、それは一部しか正しくない。確かに、軍需産業の成長は目覚ましく、冶金、化学といった一連の部門にも波及効果を及ぼしている。しかし、輸入代替にかかわるセクターも、季節調整値で月率5~7%というハイペースで成長している。それはとりわけ機械・設備部門であり、また耐久消費財部門である。ベロウソフは以上のように発言した。
なお、先日V.プーチン大統領は、2023年のロシア経済が3%のプラス成長に終わるだろうと発言した。
SWIFT制裁などがあっても、ロシアと外国とで決済できているのには、オーストリア系のライファイゼンバンクがロシアに残り事業を続けていることが大きいとされる。しかし、今年3月のこちらの記事によれば、以下のようなことらしい。
欧州中央銀行(ECB)は、オーストリアの銀行大手ライファイゼンバンク・インターナショナルに対し、ロシアでの高収益事業から撤退するよう圧力をかけている。米国の対外経済制裁当局トップが先月にウィーンを訪問した際、ライファイゼンのロシア事業に懸念を示したことがきっかけという。ライファイゼンはロシアの金融システムに深く入り込んでおり、同国で今なお事業を続けている数少ない欧州系銀行の一つ。ロシアへのユーロ送金の約4分の1を担っている。関係者によると、ECBはライファイゼンに即時撤退を要請していないが、事業解消への行動計画を求めている。計画にはロシアにある傘下銀行の売却または閉鎖が含まれる可能性があるという。
そして、最新のこちらの記事が、ライファイゼンのロシア撤退の見通しにつき伝えている。記事によると、ライファイゼン・グループのトップはこのほど、以前には本年12月31日をもってロシアから撤退する可能性があるとしていたが、現在の状況では年内はほぼなくなったと発言した。我が行としては、売却という形で明快かつより簡単な方法をとることを想定しており、現時点で詳細については明らかにできないが、ご理解いただけると幸いと、トップは述べた。なお、ライファイゼンは1996年からロシアで営業している。
こちらの記事が、中国側の通関統計にもとづき、ロシアから中国へのアルミニウム輸出が急増しているということを伝えているので、以下骨子をまとめておく。
中国側の通関統計によれば、2023年1~9月のロシアの中国向けアルミ輸出は、数量ベースで前年同期から約3倍拡大し、80.6万tとなった。上図に見るとおり、中国のロシアからのアルミ輸入は2022年下半期には顕著に伸び始め、12月になるとそれが加速。通年では前年比59%増の46.2万tだった。今年に入り、すでに1~9月だけで、2022年通年の数字を74%上回ったことになる。
中国のアルミ輸入量全般が大きく伸びており、1~9月には前年同期から2.6倍の95.6万tに上った。ロシアのシェアは圧倒的であり、昨年の76.1%から、今年に入り84.3%に伸びている。国別の輸入量は下図のとおりで、ロシア以下、インド、イラン、オーストラリア、バーレーン、インドネシアと続いている。
EUおよびその他の非友好諸国は、ロシア産のアルミ輸入を禁止はしていないし、ルサール社も直接は制裁の対象としていない。それでも、2023年1~8月に、EUはロシアからのアルミ地金の輸入を前年同期の3分の1にまで縮小させた。ユーザーがイメージの問題でロシア産を敬遠している。また、米国がロシア産アルミと、ロシア産アルミを使って生産された第三国の製品に対し、2023年3月に200%もの高関税を導入した影響も大きい。
こうして、ロシアから中国へのアルミ輸出が拡大しているのは、非友好国市場から友好国市場への強いられた転換である。ルサールの商品が非友好国による制裁の対象になるのも時間の問題であり、EUの第12次制裁パッケージでも検討されている。
他方、ルサールが中国との長期的な協力関係の構築に動いていることも事実であり、10月に中国のアルミナ供給者である河北文豊新材料(Hebei Wenfeng New Materials)に30%出資したのもその表れである。中国は、自身が世界生産の6割を占めるアルミ大国であるが、消費量も膨大なので不足が生じ、ロシアから輸入もしているわけである。
こちらの記事が、近日中に発表されるEUの第12次ロシア制裁パッケージについて報じている。元ネタはブルームバーグだが、そちらの方は有料なので、引用記事で我慢。
これによると、第12次パッケージでは、100以上の個人、40の法人が、制裁リストに加えられることになる。
また、貿易制限措置により、50億ユーロ(53億ドル)規模の輸出入取引が影響を受ける可能性がある。
さらに、ロシア原産のダイヤモンドの輸入規制も盛り込まれる見通し。
「新たな一連の措置には、溶接機、化学物質、軍事目的に使用される技術に対する輸出制限が含まれている。ソフトウェア・ライセンスの提供禁止、加工金属、アルミニウム製品、建設用製品、輸送関連商品、ダイヤモンドの輸入制限も検討されている」と、ブルームバーグは伝えている。
他方、第三国を経由した制裁逃れについても、規制が強化されることになる。
前回の第11次パッケージは、今年6月に施行された。
ロシアでは国産の高級リムジン「アウルス」の生産プロジェクトが進められており、プーチン大統領が自ら利用するなどバックアップに余念がないが、こちらによれば、アウルス社にガスプロムが出資する可能性があるという。ただし、自動車分野は畑違いであり、あくまでも赤字に喘ぐアウルスを支援するための資金的な貢献が求められているようだ。
記事によると、ガスプロムによる出資は、すでに政府レベルで基本的に決定されている。目的は、アウルスの開発費用を捻出するためという。現在のところ、産業・商業省傘下の自動車開発・設計会社「NAMI」が最大株主となっているが、その持ち株を買い取る形で、ガスプロムが最大で40%の出資比率を有することになるという。
ガスプロムがアウルス社と提携したことは以前もあり、2019年にはカザン・ヘリコプター工場の設計した高級ヘリ「アンサト・アウルス」が、(ガスプロムによって?)航空ショーMAKSで展示された。2021年にはドバイの航空ショーでSSJ100の高級仕様機を展示。2023年9月にはガスプロム・テク社がカザンのアウルス・アエロ社を買収している。2023年5月には産業・商業省、合同造船コーポレーション、ガスプロムが、高級クルーザー生産プロジェクト「アウルス・マリン」の実現に向け意向書に調印した。
私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2023年9-10月合併号が発行されたので、ご紹介。9-10月号は、「ウクライナ復興支援の地平」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。
今回服部は、特集の枠内で「ロシア産魚介類輸入に見る日米の相違 ―鍵を握るアラスカの利害」を、枠外では「軍事ケインズ主義に傾くロシアの経済・財政」、「ウクライナによるロシア産アンモニアの輸送」を執筆しております。
こちらに見るように、ロシアのレヴァダ・センターが、パレスチナ情勢につき全国世論調査を行ったということなので、結果概要を簡単に紹介する。
まず、イスラエルで、同国軍とハマスの衝突が起きているのを知っているかを問うたところ、32%が注目している、56%が聞いたことはあるが詳しくは知らない、11%が初耳だ、という結果だった。年配者ほど意識が高く、18~24歳では実に28%が初耳となっている。
「パレスチナ紛争で、いずれの側に共感を覚えるか?」という質問は、これまでも何度か問われてきたようである。今回の回答振りは、64%がいずれの側にも特に共感しない、14%がパレスチナ側、9%がイスラエル側、14%が回答困難だった。容易に想像されるように、ロシア国民でもムスリムは、パレスチナへの共感が46%と高い。また、現地に親戚や友人がいる人では、イスラエルへの共感が21%と比較的強く、これはユダヤ系住民がソ連/ロシアからイスラエルに移住してきた歴史と関係していよう。
そして、「長引く中東の流血・不安定は、主に誰の責任か?」と問うたところ、結果は上図のとおりであり、米国/NATO諸国45%、イスラエル12%、ハマス/パレスチナ8%、イラン/アラブ諸国2%、ロシア1%、具体的に誰ということはない11%、その他2%、回答困難20%という数字が出ている。
こういう世論の構図がある以上、プーチンにとって「使えるネタ」ということになりそうだ。
こちらの記事が、ロシア鉄鋼業の復調の兆しについて伝えているので、要点を以下のとおり整理しておく。
ロシア鉄鋼大手の生産は、2022年に制裁圧力で落ち込んだが、その後生産は回復しつつある。セヴェルスターリの2023年1~9月の粗鋼生産量は835万tで、前年同期比5%増だった。マグニトゴルスク冶金コンビナート(MMK、トルコを除いたロシア分のみ)は961万tで、19.5%増だった。しかし、2021年1~9月では、セヴェルスターリが862万t、MMKが1,003万tだったので、まだ危機前の水準は回復していない。
ちなみに、危機前の2021年通年の粗鋼生産量は、ノヴォリペツクが1,740万t、MMKが1,360万t、エヴラズが1,360万t、セヴェルスターリが1,160万t、メタロインヴェストが490万t、メチェルが350万tであった。
ロシア統計局の発表によれば、2023年1~8月のロシアの粗鋼生産量は4,010万t(前年同期比5.5%増)、完成鋼材は4,300万t(2.8%増)であった。
2022年3月にEUは第4次制裁パッケージの一環としてロシアからの完成鋼材、鋼管の輸入を禁止し、ロシア政府の試算によれば、37億ドル分の輸出が影響を受けた。
こちらのニュースによると、ロシアのM.ミシュスチン首相は、ユーラシア経済連合とイランとの自由貿易協定は、すでに交渉が完了しており、今年中にも調印される見通しであると述べた。
ミシュスチン首相によると、2022年のロシアとイランの貿易は往復3,500億ルーブルに達し、過去最高となった。両国間では特に運輸関係の協力が重視されており、今年5月には首脳会談で、南北国際輸送回廊の一環としての鉄道建設も合意されている。8月1日からはロシア・イラン間でビザ無し制度も始動しており、観光客の増大も期待されると、ミシュスチン首相は述べた。
以上が記事のあらましである。単にユーラシア経済連合とイランのFTAというだけでなく、それに南北輸送回廊が絡むことにより、相乗効果を発揮することは、考えられるかもしれない。上図は、こちらから拝借した南北輸送回廊のイメージ図。