ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ウズベキスタン

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 こちらの記事が、ウズベキスタンからロシアに働きに来る労働移民の動向について伝えているので、以下で記事を抄訳しておく。

 ウズベキスタンからロシアへの労働移民が4分の1に減少したと、ウズベキスタンのSh.アサドフ大統領報道官が明らかにした。同氏によると、2016年当時は400~600万人だったが、それが現在は100万人に減少しているという。アサドフ氏はこの減少を、ウズベクで進行中の「経済改革の効果」と説明した。

 ただし、移民問題の専門家V.コジェノフは、確かに改革の効果はあるが、数字が現実に一致していないとして、異を唱える。コジェノフによると、ウズベクからの移民の数は年々減少している。おそらく2017年から2018年にかけてがピークで、250万人程度だった。その後、大統領が交代し改革が進められ、経済は成長し始めた。そして、パンデミックの後、ウズベクからロシアに来た市民の数は、毎年10万~15万人程度減少しているが、激減というほどではない。なお、ウズベク市民がロシア国籍を申請する数が半減しており、つまり彼らはロシア・パスポートにあまり興味を示していない。以前どおり、現在も200万人近くのウズベク人がロシアに来て働いている。一方、ウズベクの人口は3,300万人で、ロシアに出向いているのはその7~8%に当たる。キルギスからなどと違って、ウズベクからは女性はあまり積極的に来ておらず、ほとんどが男性であると、コジェノフは指摘する。

 昨今では、ウズベクからの出稼ぎはヨーロッパ、トルコ、中東に行くことを好む。そこでは給料が高いからだ。ロシアの給料は、タシケントのそれと変わらないと、サンクトペテルブルグのウズベキスタン民族文化自治会長のS.アブドゥラヒモフは言う。同氏によると、今日ウズベキスタンは非常に発展しており、給料はロシアと遜色ない。ロシアでは、ある事件の後、警察との関係が悪くなった。そして、下院議員でさえも、移民にはデメリットしかないと声高に言う人が多い。実際には、300万人近くが、5,000ルーブルの個人所得税を払っているのだが。これはロシアが移民だけで毎月150億ルーブルを稼いでいることになる。還付可能とされているが、実際には5%も還付されていない。個人所得税については、185日間働かなければならず、その後であれば還付を受ける権利があるが、登録が正しく行われていなかったり、給与が正しく支払われていなかったりするため、実際には還付されない。サウジアラビアは現在、100万人の移民を求めており、給与は1,500ドルで、他の経費はかからず、住居、食料、すべて与えられ、正味1,500ドルの収入を得られると、アブドゥラヒモフは言う。


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 ちょっと用事があって、世銀のデータベースを眺めていたら、ドキっとした。ウクライナの総人口が、わずか3,800万人とされていたのである。ウクライナは独立後、一貫して人口を減少させていたわけだが、さすがに4,000万人の大台を割り込んだ数字を見るのは初めてだった。

 当然、それをもたらしたのは、戦争に他ならない。上図に見るとおり、2022年にガクっと減っている。一番大きい要因は、現状で600万人以上の国民が外国に避難していることだろう。なので、戦争が終わり避難民が帰国すれば、ウクライナの人口もある程度回復することは期待できる。

 旧ソ連で、最大国のロシア以外で、人口の多い国と言えば、ウクライナとウズベキスタンだった。ウクライナとは対照的に、ウズベキスタンでは人口増加が続いている。ウクライナの戦争、避難生活、領土の行方はまだ見通せないものの、場合によっては、ウクライナとウズベキスタンの総人口が逆転するような日が遠からず訪れるかもしれない。


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 こちらの記事が、ウズベキスタン外交の急展開につき伝えている。

 これによると、12月6日にウズベキスタンのミルジヨエフ大統領とカザフスタンのトカエフ大統領が、両国の「連合関係」に関する宣言に調印した。従来両国の関係は「戦略的パートナーシップ」というものだったが、そのレベルが引き上げられたことを意味するという。

 同時に両国間で一連の文書が調印され、これが両国関係に新たなインパクトを与えることが期待されている。両大統領は、二国間の貿易額をまずは50億ドルに、さらには100億ドルに高めることでも合意した。

 ちなみに、これに先立っては、ミルジヨエフ大統領がロシアを訪問してプーチン大統領と会談、18の文書が結ばれた。12月2日にはウズベキスタンのクチカロフ副首相が第2回ユーラシア会議に出席して、「ウズベキスタン政府はユーラシア経済連合加盟に向けて大掛かりな準備作業を進めている」と発言した。また、ウズベキスタンのユーラシア開発銀行加盟も間近だという。

 以上が、記事のあらましである。従来、旧ソ連空間における再統合が進まない大きな要因としてカリモフ時代のウズベキスタンの独自路線と、ウズベキスタンとカザフスタンのライバル関係というものがあったと思う。それが、ウズベキスタンとカザフスタンが「連合関係」を宣言するとは、隔世の感がある。ちなみにこの場合の「連合関係」はロシア語でсоюзническе отношенияであり、連邦とも同盟ともちょっと違うだろうから、やはり「連合」くらいが訳語としていいと、個人的には思う。


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 ユーラシア経済連合は、2015年に5ヵ国になって以降、新規の加盟国は現れていない。中央アジアではカザフスタンとキルギスが加盟国であるものの、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンは非加盟となっている(ウズベキスタンはオブザーバー国)。

 これに関し、こちらの記事によると、カザフスタンの初代大統領でユーラシア経済連合の名誉議長でもあるN.ナザルバエフ氏は8月19日、連合を強化する必要があり、ウズベキスタン、タジキスタンといった我が国の隣国にも加盟してほしいし、さらにトルクメニスタンにも働きかけるべきであると発言した。さらに、キルギスのS.ジャパロフ大統領も同国独立30周年の演説で、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンがユーラシア経済連合に加盟してくれることを望むと発言した。

 上掲記事によると、本件につきロシアの政治学者P.ダニロフ氏がインタビューに応じ、以下のようにコメントした。ウズベキスタンに関しては、向こう2~3年でオブザーバー国から正式な加盟国となるであろう。一方、タジキスタンとトルクメニスタンは、近い将来にはオブザーバー国がやっとかもしれない。これら2国は経済問題がウズベキスタンより深刻だからだ。トルクメニスタンは永世中立国でもあり、ガスプロジェクト絡みでトルコと米国が自分たちの側に引き入れようとするだろう。タジキスタンの場合は、自国の経済を大統領が一元的に管理しており、それから脱してユーラシア経済連合諸国に開かれた市場になるのは困難だ。もっとも、同国にしても、時代の要請により、変化は必須となっている。ダニロフ氏は以上のように述べた。


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 私は、ロシアの地場自動車メーカーである(ルノー=日産アライアンス傘下だが)AvtoVAZ社が、身近なCIS市場にLADAブランド車を供給するビジネスに興味を持っており、このブログでも過去に何度かそういった話題を取り上げた。そうしたところ、こちらにウズベキスタンでの現地生産に関する話題が出ていたので、紹介する。

 記事によると、ウズベキスタンでLADA車は人気があり、2020年には5,000台あまりが販売された。そうした需要を受け、ウズベキスタンのジザク経済特区に所在するADM Jizzakh自動車工場で、LADA車の人気モデルの現地生産が始まった。LADA Vesta SW、LADA XRAYといったモデルはもう出荷準備が整い、近くそれにLADA Largusも加わることになる。このアセンブリは、AvtoVAZ側が要求する設備、工程、品質管理の条件をすべて満たす形で立ち上げられた。ウズベキスタンはAvtoVAZにとって重要な輸出市場の一つであり、現地生産化によりさらに消費者が買い求めやすくなると、ディーラーのRoodell社は狙いを説明した。


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 こちらの記事がなかなか興味深かった。旧ソ連各国の国民が、ロシアという国とどう向き合っているかを、国ごとに寸評したものである。旧ソ連の所得水準の低い国から、ロシアに大量の出稼ぎが流れていることなどは良く知られており、人数や送金額といった数字が取り沙汰されることは多いが、このテキストはそこに潜む国別のニュアンスみたいなものを描き出していて、参考になる。

 たとえば、ウズベキスタン国民とロシアの関係については、以下のように述べられている。

 ウズベク人はロシアで主に低賃金労働に従事している。これは単に、ウズベキスタン国内の情勢が芳しくなく、ロシアでのどんな仕事でも我慢しなければならないということではない。ウズベク人がロシアで月に1万~2万ルーブルを稼げば、ウズベキスタン国内ではロシアでよりもずっと多くのものを買えるのである。ウズベキスタンでは、物価、気候、生活費と、何もかもが異なる。こうした低賃金労働者の場合には、家族はウズベキスタンに残り、ロシアから家族に送金をして、稼いだ後はウズベキスタンに戻り、悪くない生活を送ることができる。一方、ロシアで運良く高賃金の仕事を見付けられたウズベク人は、家族とともにロシアに定住する。


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 こちらなどが伝えているとおり、12月11日に「ユーラシア最高経済評議会」の会合がリモートで開催された。これは、ユーラシア経済連合に加盟している諸国の首脳による定期会合である。

 その結果、「2025年までのユーラシア経済統合発展の戦略的方向性」が承認された。その他、ユーラシアの共同エネルギー市場の形成に向けた決定もなされた。

 また、かねてから検討されてきたように、ウズベキスタンとキューバにユーラシア経済連合のオブザーバー国という資格を与えることも、正式に決定された。


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 GLOBE+に、「底辺で喘ぐ旧ソ連の出稼ぎ労働者 安住の地はロシアか?EUか?」を寄稿しました。

 いつの頃からか、モスクワをはじめとするロシアの大都市では、外国人労働者の姿を頻繁に見かけるようになりました。ロシア国民は、清掃や建設作業のようなきつい仕事を敬遠し、それらが外国人労働者によって担われるようになったのです。そうした中で襲い掛かってきたのが、今般の新型コロナウイルス危機でした。このウイルスが、人の移動や接触を伴わざるをえない出稼ぎ労働の大敵であることは、言うまでもありません。しかも、経済がほぼストップしてしまうわけですから、踏んだり蹴ったりです。今回のコラムでは、中央アジアおよびウクライナの労働移民の境遇について、取り上げてみました。


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 はっきり言ってウズベキスタンの議会制度のこととか良く分からないのだが、Законодательная палатаというのは、同国議会の下院のことだろうか。こちらの記事によれば、おそらくその下院が、ユーラシア経済連合にオブザーバー参加することを承認したということである。採決は賛成86、反対32、棄権14だったということであり、ウズベク議会というのはこんなに票が割れたりするものなのだろうか? そのこと自体が意外だ。

 これでウズベク国内の手続きがすべて完了したのかということも不案内につき分からないが、仮にそうだとすると、ウズベキスタンが意向を通知した30日以内に、加盟各国がユーラシア経済委員会に自国の立場を表明し、最終的な決定はユーラシアの首脳会談に当たる最高評議会で下されるということである。


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 昨年秋からユーラシア経済連合加盟が取り沙汰され、今年1月にミルジヨエフ大統領がその検討を指示していたウズベキスタンだったが、こちらの記事によると、このほど同国政府は、当面はユーラシア経済連合のオブザーバーに留まることが適切との結論に達したということである。ウズベキスタン政府がその旨の文書を作成し、議会に諮ることとなった。これに先立っては、関係省庁の代表者から成る作業部会が設置され、16の産業部門への影響が検討されたほか、コンサルや研究機関、内外の専門家からの聞き取りも行われた。

 ウズベキスタンとしても、過去3年改革開放政策を実施し、経済の一層の発展と輸出増のためには、ユーラシア経済連合とのより緊密な連携が喫緊の検討課題となっていた。ウズベキスタンの輸出の80%はロシア、カザフスタン、キルギスというユーラシア諸国をトランジットして行われており、また完成品の50%は同諸国に輸出され、品目によっては80%に達するものもある。

 今回浮上したオブザーバーという方式は、最もシンプルな協力形態であり、経済主権の一部を超国家機関に移譲したりする必要はない。オブザーバーになることで、ウズベキスタンは連合の会合に代表者が出席し(むろん採決には参加できないが)、採択された文書(機密文書以外)へのアクセスを得て、ユーラシア経済委員会と恒常的にコンタクトができる。オブザーバー資格の期限は設けられていない。今回ウズベキスタンとしては、差し当たりオブザーバーの資格を選択することで、自国のどんな製品がユーラシア市場に輸出するのに有望かの情報を得て、輸出促進をしやすくなる。なお、将来的な加盟の可能性は、あるとしても遠い将来であり、専門家筋によればその可能性は10%もない、ということである。


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 EUは、西NIS諸国および南コーカサス諸国を対象に「東方パートナーシップ」という政策を適用し、そのうちウクライナ、モルドバ、ジョージアとは連合協定を締結した。中央アジア諸国は、東方パートナーシップの対象にはなっておらず、あまり関係が深くないような先入観を抱きがちである。

 しかし、実は、カザフスタンは2015年12月にEUと「拡大パートナーシップ・協力協定」を結んでおり、キルギスも現在同様の協定を交渉中である。

 それで、今般伝えられたこちらの記事によれば、ウズベキスタンもEUと拡大パートナーシップ・協力協定を交渉中であり、そのプロセスを加速して、本年中に締結にこぎ着けたいとの意向である由である。今般、ウズベキスタンのA.カミロフ外相が明らかにした。ウズベキスタン・EU関係の基本文書となっているのは、1999年から発効しているパートナーシップ・協力協定だが、新協定ができればそれを置き換える形となる。交渉は2019年2月に開始された。ウズベク側は、本年に予定されているSh.ミルジヨエフ大統領のブリュッセル訪問の際に早くも協定が調印される可能性がある、としている。


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 こちらの記事によると、ロシアのラヴロフ外相(この時点では代行)がウズベキスタンを訪問し、ウズベキスタンのユーラシア加入の問題につき交渉したということである。

 記事によると、ウズベキスタン側は、ユーラシア経済連合に加入する場合の、2つの条件を要請した。第1に、ロシアの出入国法に違反してロシアへの入国が禁止になっている数十万人のウズベク市民につき、再びロシアに入れるように、恩赦を与えること。現在も同じくらいの数のウズベク市民が違法状態にあり、再びロシアに来れないかもしれないと恐れて、ロシアを離れられないでいる現状がある。第2に、ウズベクの諸産業につき、最大で10年ほどの移行期の優遇措置を認めることである。なお、ラヴロフのウズベク訪問に先立っては、ウズベク大統領府付属経済研究改革センターの専門家たちがユーラシア加盟のプラスマイナス両面を評価する初めての報告書を提出しており、ウズベクの実業界にとっては加盟が経済的にメリットがあることが指摘されている。


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 中央アジアのウズベキスタン・キルギス・タジキスタンからは、大量の出稼ぎ労働者がロシアに流入している。そのうち、キルギスはロシア主導のユーラシア経済連合に加入しているので、キルギス人労働者もロシアにおいて法律上はロシア人労働者と同等の権利を保証されることになっている。問題は、今のところユーラシア入りしていないウズベキスタンとタジキスタンであり、その問題についてこちらの記事が論じているので、以下のとおり要旨をまとめておく。

 ロシアは2019年4月17日にモスクワでタジキスタンとロシアでの一時的な労働に従事するタジク市民を組織的に募集する協定を結び、このほど12月28日にプーチン大統領がその批准法に署名した。実は、同様の協定をロシアはウズベキスタンとも2017年4月に結んでいるのだが、今のところその成果はほぼ皆無であり、当面その見込みもない。

 12月26日に駐ウズベキスタン・ロシア大使が述べたところによると、ロシア側の統計によれば、2019年上半期の時点でウズベキスタンからロシアへの労働移民数は150万人であり、一方ウズベク側は200万人の自国民がロシアで働いていると見ている。労働移民の4分の1は不法移民状態にある。こうしたなか、協定にもとづき組織的に募集されてロシアに向かったウズベク人は、1年間でわずか2,000人しかいなかった。

 ロシアのいくつかの地域は、組織的募集方式を利用して移民をめぐる状況を正常化しようとしたが、それらの経験からも、組織的募集方式の問題点が浮かび上がる。サンクトペテルブルグ市では、2018年に5万人のウズベク人を組織的に募集する計画だったが、実際に受け入れたのは2,000人とも500人とも言われる。大多数の労働移民は自分でペテルブルグにやってくる。サンクトペテルブルグが2018年に労働許可証を発行したウズベク市民は10万3,500人にも上っていたわけで、組織的な募集に切り替えるという構想が破綻したことを物語っている。

 一見、素晴らしいことのように思える組織的な募集方式が、現実には上手く行かないのは、現行の方式ではそれが雇用主にも移民にも利益にならないからである。雇用主にとっては、法的、資金的な厄介ごとが増し、その割には特別なメリットがない。労働移民を雇う最大の利点は人件費の節約だが、その可能性が失われてしまう。企業が人材の養成に真剣に取り組むなら、ロシアで人材を選んだ方が得策である。

 労働移民の側にも、弊害がある。ユーラシア経済連合に加盟していないCIS諸国(ウズベキスタン、タジキスタンがそれに該当する)の市民がロシアにおいてビザなしで合法的に就労するためには、パテントという滞在許可証の取得が必須である。地域によって違うが、多くの地域では月額4,000ルーブル程度を支払わなければならない。モスクワではこの1月から7%上がって5,350ルーブルになった。この金額を毎月支払うのはしんどいので多くの移民は強制送還、もうロシアに入れないブラックリストに載るリスクにもかかわらず、不法就労状態を選択しがちである。個人所得税を払いたくないという事情もある。なお、ブラックリストに載ってしまった労働移民たちへの恩赦適用は、近年ロシア・タジキスタン間の重要な交渉テーマとなっている。

 また、移民たちは、すでにロシアにいるか行った経験のある親類、隣人、知人たちのネットワークを通じて、ロシアで求職する。雇用主も労働者も課税を避けるために賃金を非公式な形で支払う慣行が広がっていることもあり、公式的なチャンネルで求職するよりも、知り合いのネットワークの方が機能しやすいのである。長い時間をかけて形成されてきた非公式なネットワークを、組織的な募集方式によって置き換えるのは、一筋縄では行かない。

 ウズベキスタンにとって、労働移民問題の解決になるのは、ユーラシア経済連合への加盟である。しかし、ロシア側から見れば、それは問題をこじらせるだけである。経済連合の枠内でウズベク市民は共同労働市場のメリットをフルに活かし、雇用契約がある限り、ずっとロシアに留まることができるからである。そうなれば、もはや組織的な募集などは必要なくなる。

 キルギスの経験からすると、ウズベクがユーラシア経済連合に加わった場合、ロシアにおけるウズベク人移民が少なくとも20~25%増えることになる。ウズベクは、キルギスの5倍もの人口を有する国であり、それがロシアの労働市場に及ぼす影響は多大なものとなる。今後数年で、CIS南部諸国からの移民を制限せざるをえなくなり、具体的にどんな方法かが問われる。もしも移民が組織的な募集でしかロシアに入ってこれなくなるなら、組織的募集方式はより上手く機能するかもしれない。


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 当ブログで何度かお伝えしたように、中央アジアのウズベキスタンは従来は経済ブロックには属さずに独自路線を貫いていたが、ミルジヨエフ現大統領に代わってから改革開放路線に転じ、昨年秋にはロシア主導のユーラシア経済連合加盟を検討していることが明るみに出た。

 しかし、こちらなどが伝えるところによれば、昨年の11月頃、米国で米・ウズベキスタン・ビジネスフォーラムが開催され、それに出席したロス米国務長官が、ウズベキスタンのロシア接近を牽制する発言をしたということである。ロス長官は、ウズベキスタンがユーラシア経済連合加盟を目指すと、同国のWTO加盟手続きが複雑化し、ウズベキスタン指導部が設定しているWTO加盟目標期限を超過してしまう恐れがある、ただしそれでも米国は通商と投資を通じてウズベキスタンの成長と開発を図る上で戦略的パートナーに留まることにコミットする、と発言した由である。


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 以前、「中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道」というエントリーをお届けしたが、こちらの記事がより新しく詳しいので、重要と思われる点を以下のとおりメモしておく。

 中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道の建設構想は20年以上検討されているが、ここに来てそれが動き出す可能性が出てきた。それは多分に、ロシアがFSに2億ルーブルを供出することに加え、プロジェクト実現に直接参加する用意があると表明したことによる。

 プロジェクトが最初に浮上したのは1990年代半ばで、中国が新疆ウイグル自治区鉄道の建設に着手し、中央アジア諸国にそれへの接続を提案したことに端を発する。1997年に中国、キルギス、ウズベクは3国作業委員会の設置に関する覚書に調印し、2002年には最初のFSが実施され上掲地図のようなルートが提案された。ゆえに、この268kmのルートがその後長らく、検討の基礎となってきた。

 しかし、時間が経つにつれ、この案はキルギスにとって不満の残るものであることが浮き彫りとなった。キルギスではソ連崩壊後、鉄道の改修が実質行われておらす、中国~中央アジア鉄道建設の枠内で自国鉄道を近代化したかったからだ。キルギスでアタンバエフ政権が成立すると、同国は中国~キルギス~ウズベクというルートには反対し、その代わりにタジキスタン~、キルギス~カザフスタン~ロシアというルートを推すようになった。ただし、当時はいずれの国からの賛同も得られなかった。

 これまでも、交渉を活発化しようという試みがなかったわけではない。数年前に中国が一帯一路を表明すると、中国~キルギス~ウズベク鉄道は、中国とイラン、トルコ、欧州を結ぶルートの中央部分の一環と位置付けられた。しかし、3国作業グループで、すべての対立点を解消する期限が2018年4月と明記されたにもかかわらず、進捗はなかった。2019年6月に習近平国家主席がキルギスを訪問した時ですら、鉄道建設を重視すると通り一遍に述べられただけで、文書が調印されるといった進展はなかった。それには以下のような原因がある。

 第1に、ルートおよびレール幅をめぐる立場の隔たりである。キルギスは自国にすでにある広軌を希望し、可能であれば国の南北の経済社会中心同士を連結したいという思惑があった。それにより、キルギスは国内問題を解決できるだけでなく、年間2億ドル以上の中国貨物トランジット収入が得られる。それに対し、中国が必要としていたのは、最短で経由地も少ないルートと、ウズベクのミングブラク油田など中央アジアの資源産地へのアクセスであった。また、中国は1,435mmの標準軌から1,520mmの広軌への積み替えを中国・キルギス国境ではなく、キルギス・ウズベク国境で行うことを主張し(つまりキルギス領に1,435mmの標準軌を建設する)、これは同鉄道を自国の鉄道網の一環と位置付けたいキルギスには不都合だった。ただ、キルギス鉄道幹部によれば、ここ数ヵ月中国の態度は軟化しており、標準機と並行する形で広軌レールを敷設しても構わないとしているという。

 第2に、資金の問題がある。当初の建設費見積もりは20億ドルだったが、2012年までには65億ドルに跳ね上がった。中国へのコンセッション、合弁の創設、資源と引き換えの投資、中国による融資など様々なスキームが検討されてきたが、折り合うに至っていない。ただ、これについてもキルギスと中国は官民パートナーシップによる合意に近付きつつあり、投資を誘致した側が運営権を獲得し、投資が回収できた段階でキルギスに引き渡すという青写真になっているという。

 第3に、プロジェクトの政治的な背景がある。ロシア、中国ともに中央アジアを自らの地政学的勢力圏と見なしており、自らの参加なしに当地で大規模プロジェクトが進展することは妨害しようとする。ロシアは2018年から中国~キルギス~ウズベク鉄道により大きな関心を示すようになり、キルギス鉄道とロシア鉄道間で同プロジェクトへのロシアの参加に関する協定が結ばれた。しかも、後に明らかになったところによると、ロシアは設計や資機材の提供のみならず、資金面での協力の可能性も示した。専門家たちは、まさにこれによりプロジェクトが動き出したと見ている。

 問題の鉄道は関係国にとって恩恵とリスクの双方がある。中国はウズベク、さらには欧州への輸送路が短縮される。キルギスは、自国の鉄道を近代化し、人口が密集したフェルガナ盆地を中国と結んで地下資源の開発を活発化させ、通商および運輸の活発化が期待できる。ウズベキスタンも然りである。

 一方、当該の鉄道は、以前キルギスが懸念していたように、国の南部だけを栄えさせ、南北分断を深刻化する恐れがある。また、キルギスが中国の債務の罠にはまり、将来的に自国の鉄道および天然資源の権益を中国に譲渡せざるをえなくなるかもしれない。キルギスは対中国5大債務国の一つであり、すでにGDPの30%を超えている。中国は債務を返せない国には容赦がない。

 それがゆえに、キルギスではくだんの鉄道プロジェクトにロシアが参加するとの情報を大歓迎しているのである。キルギスはロシアを中国に対抗する後ろ盾と見ているのだ。

 当該の鉄道は、ロシア領とは接していないが、ロシアがそれに関心を示すこともまた道理である。そうすることで、ロシアはその鉄道の建設だけでなく、運行にも影響を行使できる。ロシアはまた、くだんの新鉄道が、中国~ロシアまたは中国~カザフ~ロシアという既存ルートを脅かすほとに拡大することを抑制することもできよう。

 ロシアが当該のプロジェクトに参画すれば、ロシアは新たなルートでの輸送により本格的に参加できるだけでなく、この地域で中国のプレゼンスの増大にも対抗できる。ロシアの主たる動機は、まさに後者であろう。ロシアも、中国も、中央アジアの権益を相手に全面的に渡すつもりはないのだ。


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2019-12-04-Kaz

 こちらのサイトで、アネット・ボアという専門家が、カザフスタンの対外政策、とりわけウズベキスタンを中心とした中央アジア諸国への働きかけについて論じているので、要旨を以下のとおり整理しておく。

 ナザルバエフがカザフスタンの大統領職から退き、後任がトカエフとなって、この間の注目すべき動きとして、中央アジア域内の協力関係が拡大していること、カザフの新体制が地域対話を改善しようとしていることが挙げられる。

 カザフは長らく、中央アジア固有のプレーヤーというよりも、ロシアと中央アジアを取り持つユーラシア国家としての自意識を形成してきた。しかし、2017年以降、それまで弱かった中央アジアの周辺国との協力関係強化を模索するようになった。それは多分に、ウズベキスタンという大きな市場の自由化の賜物だったが、それ以外の要因もある。

 その要因の一つは、カザフがロシアの対応を新植民地主義的なものと見なすようになっていることである。その一例がロシア主導のユーラシア経済連合であり、カザフはその実態に満足しておらず、この経済同盟に強固に縛り付けられることは望んでいない。モスクワから適度に距離を置くためにも、カザフは中央アジアの地域的な枠組みに関心を示すようになっている。

 石油依存を軽減する狙いもあり、カザフはユーラシア統合における運輸・テレコム・投資のハブになることを目論んでいる。中央アジアにおける輸送のリードタイムは世界の他地域に比べて大きいので、カザフのこの路線は中央アジア域内貿易を活性化する効果がある。

 さらに、カザフにおける人口トレンド、教育の民族主義的な方向へのシフトにより、同国指導部は中央アジア全体との紐帯を重視するようになっている。ウズベキスタンでミルジョエフ大統領が誕生し、カザフ側は両国の地理的近接性、経済的補完性、文化・歴史の繋がりなどをより意識するようになった模様である。

 また、中央アジアでは、孤立主義的なトルクメニスタンもある程度含め、域内貿易はお互いにとって利益であるという認識が広がっている。ロシアの抱える経済的問題を考えれば、なおさらである。カザフ・ウズベク関係が強化されるにつれ、中央アジア全体の域内協力が動き出し、2018年には中央アジア域内貿易が前年比35%増加した。

 ただし、カザフもウズベクも、中央アジア・レベルでの統合、機構化の議論はないとしている。以前の試みはロシアによって横取りされ、中央アジア独自の調整機構はできなかったという教訓があるのだろう。

 カザフもウズベクも、健全な競争が、外国投資の獲得など、両国経済のためになるという認識である。ただし、カザフの民間専門家の中には、ウズベクの台頭を、カザフから投資を奪ってしまうものとして、潜在的な脅威と見なす向きもある。ウズベク側はすでに一回政権交代を経験したという意味で有利なのに対し、カザフにはナザルバエフが完全に姿を消したらどうなるか分からないというハンデがある。ウズベクの人口はカザフの1.3倍で、製造業も一定の発展を見ており、安全保障面においては地域のリーダーである。その代わり、ウズベクのGDPはカザフの3分の1であり、キャッチアップ過程にある。

 カザフの貿易全体に占める中央アジア諸国のシェアは5%以下であり、ロシア、中国、欧州などの取引とは比べ物にならない。したがって、カザフは今後も、中央アジア地域のリーダーというよりは、グローバルなプレーヤーとしての立ち位置を重視し続けるだろう。


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 当ブログでも過日お伝えしたように、ウズベキスタンがユーラシア経済連合に加入するのではないかとの見方が、一部で取り沙汰されている。これに関し、こちらの記事の中で、F.ルキヤノフという有識者がコメントしているので、要旨を整理しておく。

 ルキヤノフ氏いわく、ウズベキスタンがユーラシア経済連合に加入するにはコストも要するが、プラスの方がはるかに大きく、同国にとっては条件をすべて精査し、最大限の利益を引き出すことが得策だろう。全体として言えることは、この地域においては統合が不可避ということである。行動の自由を確保しつつ、国が発展していく上での立ち位置を固めなければならない。ウクライナやモルドバにとってとは異なり、ウズベキスタンにはEUという選択肢はない。他方、中国は結局のところ自国の国益を志向しており、他の国の発展には関心を示さない。そうした中で、ユーラシア経済連合は大いに受入可能な枠組みである。

 いずれにしても、政治的決定を下すのはウズベキスタン自身であり、すべてのプラスを考慮し、必要な経済セクターを保護しようとするだろう。参加という判断が下されるにせよ、すぐにではなく、加盟条件が肝となる。ユーラシア経済連合では、共通の規定や原則はあるものの、加入条件は国ごとに異なる。加盟国の経済はまちまちで、交渉力も異なっており、厳しい駆け引きが不可避だ。EUでも、ポーランドが自国の立場を守り通したのに比べ、チェコの加入条件は不利だった。ウズベキスタンの場合、もしもユーラシア加入の条件が折り合えば、すべての国にとって得になるだろう。ルキヤノフは以上のようにコメントした。


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 当ブログでは先日、ウズベキスタンがユーラシア経済連合加盟を検討しているとの情報をお伝えした。こちらの記事が、続報と、専門家のコメントを伝えているので、簡単にまとめておく。

 マトヴィエンコ・ロシア上院議長が本件について発言した2日後、ウズベキスタン側のサファエフ上院議長が記者会見でこの問題について発言した。サファエフ議長によれば、マトヴィエンコ発言には特に驚くべきことはなく、というのもウズベキスタンがユーラシア経済連合に加盟するという計画はウズベキスタンにおいて過去3年間検討されていたものだからである。ただし、決定を下すためには、まず詳細な分析が必要である。これに関して、外部からの圧力などはなく、ウズベキスタンという国もミルジョエフ大統領も圧力に屈したりはしない。ウズベキスタンはプラスとマイナスをすべて考慮してプラグマティックに決める。たとえばEUなどはユーラシアよりずっと進んでいるが、EUでは一部の国家主権を移譲しなければならないのに対し、ユーラシアではそれがないので、我々が決定を下す際にはそうした側面を重視すると、サファエフ議長は述べた。他方、ロシアのムハメトシン上院国際問題委員会委員長は10月7日、ウズベキスタンは2020年にユーラシアのオブザーバーになる可能性があると発言している。

 上掲の記事に掲載されている専門家のコメントは以下のとおり。まず、「ユーラシア・エクスパート」のS.レケダ氏によれば、ウズベキスタンがユーラシア統合に参加するにしても、それは段階的なものとなろう。仮に加盟という決定があるにしても、現時点で一気に正加盟ということにはならない。ウズベク側はまずはオブザーバーという資格を選ぶかもしれない。様々な協力形態がありえるし、理論的にはFTAもありうる。ウズベクにとってユーラシア入りは貿易障壁の撤廃、労働移民の条件改善に加え、長期的には何らかの地経学的なブロックに加わることによって近代化が触発されるという効果を持つ。

 一方、サンクトペテルブルグ国立大のYe.トレシチェンコフは、ウズベキスタンのユーラシア経済連合入りといった話は時期尚早であって、事務局のユーラシア経済委員会抜きで議論することは無意味であり、同経済委のレベルで専門家グループを設置しなければ具体的な議論は始まらないとコメントした。


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 カリモフ時代には独立独歩の外交路線を歩み、ロシア主導のユーラシア経済連合に加入する素振りも見せなかったウズベキスタンだが、ミルジョエフ現大統領になってからは、ロシアとの協力にも割と前向きになってはいた。そうした中、こちらの記事が伝えるように、ウズベキスタンがユーラシア経済連合加入を検討しているという情報が、唐突に伝えられた。タシケント訪問中のロシアのマトヴィエンコ上院議長が10月2日にその旨を明らかにしたものである。

 また、こちらの記事によれば、ユーラシア経済連合側は、仮にウズベキスタンが加入した場合の条件、リスクなどを検討する作業を2019年末までに終える予定ということであり、これもマトヴィエンコ議長が述べた。ユーラシア側は検討のための作業部会を設け、ロシア政府ではシルアノフ第一副首相が代表を率いるということである。マトヴィエンコ議長は、「ウズベキスタンの大統領は、経済統合組織への参加は今日の現実であるということを理解している。最終決定を下す前に、本格的な条件分析、経済に害がないかどうか、雇用に影響がないかを分析することが大事だということを、彼は正しく理解している」と述べた。さらに、マトヴィエンコ議長によれば、CIS集団安保機構も、ウズベキスタンの復帰の問題につき検討する用意があるということである。

 以上が、報道の伝えるところである。きわめて注目に値することは間違いないが、個人的には今のところ本件が本当に進展するかについては、半信半疑だ。ウズベキスタンの首脳ではなく、ロシアの政治家(しかもマトヴィエンコという微妙な立ち位置の人物)が表明したというところが気になる。


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 カザフスタンとウズベキスタンは、中央アジアの盟主の座を争うような間柄であり、大々的に対立しているわけではないが、波長の合わない時代が長く続いてきた。しかし、ウズベキスタンでカリモフ大統領が死去してから3年が経過しようとしており、同国は経済面で改革開放に着手するなど、だいぶ風向きが変わってきたのであろう。カザフスタンとの関係拡大にも、より前向きになっているのかもしれない。

 こちらのニュースが、そんな両国関係の拡大、とりわけ交通・観光分野での協力について伝えている。駐カザフ・ウズベク大使がインタビューに応じたということであり、その内容を伝える記事である。

 大使いわく、特に観光面での協力について述べておきたい。両国への観光客の流入を数倍に拡大するような観光クラスターの形成を提起したい。シルクロードの歴史を学ぶためにウズベクを訪れたような人々が、カザフも訪れるようにすれば、シルクロードについてのより完全な理解が得られるだろう。その逆も然りである。ロシアには「黄金の環」というものがあるが、ウズベクとカザフは共同で「黄金の正方形」とでもいうべき観光ルートの整備を検討している。現在ヌルスルタン~タシケント間にはそれぞれ週6本の直行便が運行されており、アルマトィ~タシケント間では10本に上る。鉄道でもタシケント~アルマトィ~ヌルスルタン列車が開設され、バスもある。両国は経済面で相互補完的で、共同で中央アジア全域の協力な経済空間を形成できる。大使は以上のように語った。

 なお、大使が言った「黄金の正方形」というのは、1930年代から1940年代にかけてイラクで活動したイラク王国陸軍の4人の将校からなる集団「黄金の方陣」から名をとったものと思われる。


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 必ずしも私の主たる研究エリアではないが、こちらの記事が、中国~キルギス~ウズベキスタンというルートの鉄道路線プロジェクトについて、キルギスの視点から伝えている。記事の大意はざっと以下のとおり。

 キルギス領を通過して中国とウズベキスタンを鉄道で結ぶという構想は1990年代半ばからあり、いくつかのルート案が検討された結果、上掲の地図のようなルートが選択され、2006年にキルギス政府も承認した。新たな路線は全長268kmで、山岳地帯ゆえに難工事が予想される。問題は、このルートにはキルギス自身にとってのメリットがなく、キルギスの貨物は輸送容量の5%程度にしかならず、どちらかというと中国とウズベキスタンの利益に奉仕する格好になることである。現在、キルギスにある鉄道路線は、カザフスタンおよびウズベキスタンと繋がる行き止まりの路線しかなく、国全体を結ぶような鉄道網が存在していない。キルギスにとっては、欧州化された北部と、伝統的でウズベク系住民が多く急速にイスラム化している南部との相克があり、国家的統合のためには国土を南北に繋ぐ鉄道の敷設が喫緊なのだが、そうした鉄道には逆に中国やウズベキスタンは興味を示さない。他方、中国は中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道の敷設につき、中国と同じ狭軌を用いることを主張しており、それでは旧ソ連の広軌と併存し、新たな車両の導入などの負担が発生するので、キルギス、ウズベキスタン側は難色を示している。こうしたことから、キルギスはプロジェクトにロシアが参加してくれることを希望している。このほど開かれたキルギス・ロシアの政府間会合で、キルギス側がロシアに提案し、ロシアも前向きな姿勢を示した。ロシアにとっても、中国とウズベキスタンの主導するこのルートの建設は、ロシアの地政学的、軍事戦略的、経済的利益に反する。以上が記事の大意である。


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 これは、ここ1~2年ほど顕著になっている傾向だが、中央アジアのウズベキスタンは、ロシア主導の「ユーラシア経済連合」に加入していないにもかかわらず、ベラルーシなどと比べてもはるかにロシアとの経済協力の実を挙げており、ユーラシア経済連合加盟国=ロシアとの経済協力に前向きな国、という線引きが怪しくなってきた印象がある。

 そして、こちらの記事によれば、今般ロシアとウズベキスタンの経済協力が、さらに加速することになったようである。ウズベキスタンのタシケントで、第1回ロシア・ウズベキスタン地域協力フォーラムが開催された。フォーラムはプーチン・ロシア大統領が10月18~19日にウズベキスタンを訪問したのに合わせて開催された。同フォーラムの枠内で、両国間で800以上の契約・MOUが結ばれ、その総額は270億ドルに上る。具体的には、通商・経済協力の合意が609(62億ドル)、投資協力が202(208億ドル)となっている。新たに79の合弁企業、23の商社、20の卸売・物流センターが創設されることになった。金融・銀行分野では6の合意(8.6億ドル)が成立した。

 まあ、こういうイベントの成果は、盛大に盛られるものではあるが、それにしても両国の経済協力機運が高まっていることは事実なのであろう。


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 こちらの記事によると、ウズベキスタンは本年中にソブリン格付けを取得し、同国初となるユーロ債を起債する意向である。T.イシメトフ中銀第一副総裁が発表した。財務省が格付け取得に当たってのコンサルタントを選定しているところである。イシメトフは起債予定額を明らかにしなかったが、以前の情報では2億~10億ドルといった額が取り沙汰されていた。なお、2018年第1四半期終了時点で、ウズベキスタンの金外貨準備は285億ドル、対外債務は147億ドルとなっている。


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 9月末と少々古い情報になってしまったが、こちらによれば、ウズベキスタンは現在、ソブリン債の信用格付けを取得する準備を進めている。クチカロフ副首相が9月27日に明らかにした。クチカロフ副首相は、現在は格付け取得に向けた作業の初期段階にある、Citibankをコンサルタントに起用する意向、本件に関しては大統領の最終的な承認を待っている状況、目的は外国から資金を調達する調達先を多様化する点にある、ソブリン債を取得するといっても市場で資金を借り入れるわけではなく、格付けが一種のベンチマークとなり、外国からの直接投資が促されることを期待している、ソブリンに続き大企業や銀行も格付けを取得する可能性がある、などと説明した。


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 ウズベキスタンのシャヴカト・ミルズィヤエフ大統領がロシアを訪問し、4月5日にプーチン・ロシア大統領との首脳会談が開催され、両国間で39本もの文書が調印されたということである。そのリストはこちらのサイトで閲覧できる。以前、「ロシアとウズベク、労働移民に関する協定締結へ」というエントリーをお届けしたが、その時に言及していた労働移民問題に関する政府間協定も結ばれた。

 中央アジアの低開発国からはロシアに大量の労働移民が出稼ぎに出ており、キルギスなどの国にとっては本件がロシアを盟主とするユーラシア経済連合に参加する最大の動機となっている。しかし、今回ウズベキスタンは二国間協定でその問題に決着をつけた形であり、逆説的な状況である。ロシアがベラルーシのようなユーラシア経済連合加盟国と対立を重ねている今となっては、逆にウズベキスタンのようなある程度距離を置いている国の方が、ロシアと友好的な関係を築けたりするのかもしれない。


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 こちらの記事によると、ロシアとウズベキスタンの両国政府は来たる4月に、労働移民問題に関する2本の協定を結ぶことを予定しており、現在条文の調整作業が進んでいる。ウズベキスタン労働省の高官が明らかにした。特にそのうちの1本は、ロシアでの一時的な労働に従事するためにウズベク市民を組織的にリクルート・雇用する旨の内容である。もう1本は、労働移民に関連した業務を実施する代表部を相互に開設するとの内容である。4月にミルズィヤエフ・ウズベキスタン大統領が訪ロする際に調印予定である。なお、推計によれば、ロシアを中心に、現在一時的に国外で働いているウズベク市民は、300万人に上る。


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 こちらの記事によれば、ウズベキスタンのシャフカト・トゥリャガノフ対外経済関係・商業省次官はこのほど記者会見で、同国は旧ソ連空間における経済統合の進展を慎重に見極めており、当面はユーラシア経済連合加入は我が国にとって得策でないと判断していると発言した。次官いわく、ウズベキスタンは自国の国益を最優先して統合組織への参加を決めている。最も優先順位が高いのは、我が国の政策決定に影響を及ぼすような組織には加盟しないことである。ウズベキスタンはCIS自由貿易圏、CISの加盟国であるが、それは我が国が通商関係等の交渉を円満に行う上で役に立つ。我が国専門家が徹底的に調査した結果、現在のところユーラシア経済連合または関税同盟に加盟することは、ウズベキスタンにとってメリットがなく、逆にいくつかの点で不利益があることが判明している。我々はその発展動向を注意深く見守っており、もしも経済的に問題が生じないということになれば、我が国は加盟を検討することになろう。ただし、我が国には独自の路線、決定があり、現在のところ新たな統合組織に加わるつもりはない。このことは12月4日の大統領選後も変わらない。すべての大統領候補は、対外経済政策はカリモフ大統領の時代と同じ路線になると表明しているからだ。トゥリャガノフ次官は以上のように述べた。


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 ウズベキスタンのカリモフ大統領が亡くなって、個人的な興味は、これからウズベクの対ロシア関係がどうなるか、とりわけ個人的に研究しているユーラシア経済連合にウズベクが加入するようなことがあるのか?という点だ。これに関し、こちらの記事の中で、ウズベクのアジャル・クルトフという有識者が示している分析を、簡単に紹介しよう。

 クルトフ氏いわく。ウズベキスタンで新たな指導者が登場することに伴い、対ロシア関係の改善は、より現実味を帯びることになる。カリモフの主たる功績は、独立国としてのウズベクの存在を確立したことである。新たな指導者は、同じことをしても自分の功績とは見なされないので、新たな分かりやすい路線を模索して、自らのイメージを高めようとするだろう。ウズベクのCIS集団安保機構への復帰、ユーラシア経済連合加盟が、そうした新基軸になることは、充分に考えられる。その結果、ウズベクはカリモフ時代に特徴的だったような、通商面をはじめとする国際的な孤立を、打破できるかもしれない。以上がクルトフ氏の見立てである。


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 こちらの記事によると、ロシアの携帯キャリアMTSが、中央アジアのウズベキスタン市場から撤退することになった。MTSはかつてウズベクにウズドゥンオルビタ社という事業子会社を有していたが、2012年にウズベク政府からライセンスを剥奪された。2014年末に和解が成立し、Universal Mobile Systems(UMS)社の株式50.01%を無償で取得、残り49.99%はウズベキスタン情報技術・通信発展省付属の無線通信・ラジオ・テレビ放送センターの所有となった。しかし今回、MTSは持ち株を合弁パートナーの無線通信・ラジオ・テレビ放送センターに売却し、撤退を決めたものである。これに先立っては、2014年に米司法省が、ロシア系のVimpelcomおよびMTSがウズベク大統領の娘グリナラ・カリモヴァの筋に賄賂を支払っていたと告発する動きがあった。専門家らは、今回のMTSの決定は、ウズベク市場のリスクを考えればうなずけるものだと指摘している。一方のMTSは、撤退は米司法省の告発とは無関係だとコメントした。


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 本ブログでは年末年始に、ロシア・NIS諸国の2015年のまとめと2016年の見通しというのを延々とやっていて、「もういい加減にしろ」と言われそうだが、あとちょっとだけ。

 ウズベキスタンのuz24というサイトのこちらのページに、2015年の同国にとっての重要事件というのが出ている。整理すると、以下のとおりである。掲載順は基本的に時系列のようである。

  • 1月、米ニューヨーク・タイムズに誤って「Kyrzbekistan」という国名が載り、同紙は後に謝罪。
  • 3月29日、大統領選挙で現職のイスラム・カリモフが得票率90.39%で再選を決める。
  • 4月18日、ロシアの音楽コンテストでウズベク出身アーティスト2人が勝利。
  • 6月11日、潘基文国連事務総長がタシケント訪問。
  • 7月、愛国的行事への不参加理由に、一連のアーティストがライセンス剥奪される。
  • 8月、プーシキン像の移動が物議を醸す。
  • 9月、先端的な自動車学校「アフトテスト」がタシケントに開校。
  • タシケントのナヴォイ劇場が新装オープン。10月の除幕式には日本の安倍首相も。
  • 11月1日、ケリー米国務長官がウズベキスタン初訪問。
  • 秋、品不足の噂からタシケントなどでガソリンスタンドに長い行列。
  • タシケントの国立演劇劇場でシェークスピア劇団「グローブス」によるハムレットが上演される。
  • 12月5日にカリモフ大統領が2016年を「母子健康の年」とすることを提案。
  • 12月、タシケント市が治安対策理由に集合住宅での監視カメラ設置を決める。
  • 11~12月にかけて地震が続く。
  • サッカーの著名なウズベク人レフリーであるラフチャン・イルマトフ氏、2015年の世界最優秀審判賞を受章、12月27日に授賞式。

 そして、こちらのページには、2016年にウズベキスタンで期待・予想される主な出来事が出ているので、それも整理しておく。

  • 上海協力機構の議長国をウズベキスタンが務める。9月にタシケントで同サミット。
  • タシケントのHyatt Regencyホテルの建設、7月1日までに完了する予定。
  • タシケントで新たな路面電車路線開設へ。
  • タシケントの空港近くにで建設中の立体交差点、秋までには完成予定。
  • GMウズベキスタン、新モデル「Aveo」投入を計画。
  • タシケント旧市街のヌラフション通りに20棟のマンション完成。
  • アングレン~パプ鉄道が7月に完成予定。

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