カテゴリ: その他の国
ウクライナの出稼ぎ依存が拡大
このほど世銀は、2018年の世界各国のレミッタンス、すなわち国外での出稼ぎ等による外国からの個人送金額の推計値を発表した。データはこちらのページからダウンロードできる。概況に関する解説はこちらのページに出ている。
この統計を使って、上表のとおり、私の関心地域であるロシア・NIS諸国のデータをまとめてみた。ロシア・NIS圏において、国外出稼ぎ労働は、エネルギー等の資源を持たざる国の現象と言える。世銀の解説では、2018年にウクライナのレミッタンス受入が特に大きく伸びたことを強調している。労働移民を受け入れる側のロシアの経済が一定の回復を果たしたことが、周辺諸国のレミッタンス受入額を拡大させる結果となったが、ウクライナの場合には、統計の方法論を変更したことも額が拡大した一因だという。
下の図には、2018年のレミッタンス受入額がGDPの10%を超えている国を整理した。NIS諸国の部分を濃い赤で塗っており、特にキルギスやタジキスタンは世界屈指の出稼ぎ依存国であることが分かる。
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中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道
必ずしも私の主たる研究エリアではないが、こちらの記事が、中国~キルギス~ウズベキスタンというルートの鉄道路線プロジェクトについて、キルギスの視点から伝えている。記事の大意はざっと以下のとおり。
キルギス領を通過して中国とウズベキスタンを鉄道で結ぶという構想は1990年代半ばからあり、いくつかのルート案が検討された結果、上掲の地図のようなルートが選択され、2006年にキルギス政府も承認した。新たな路線は全長268kmで、山岳地帯ゆえに難工事が予想される。問題は、このルートにはキルギス自身にとってのメリットがなく、キルギスの貨物は輸送容量の5%程度にしかならず、どちらかというと中国とウズベキスタンの利益に奉仕する格好になることである。現在、キルギスにある鉄道路線は、カザフスタンおよびウズベキスタンと繋がる行き止まりの路線しかなく、国全体を結ぶような鉄道網が存在していない。キルギスにとっては、欧州化された北部と、伝統的でウズベク系住民が多く急速にイスラム化している南部との相克があり、国家的統合のためには国土を南北に繋ぐ鉄道の敷設が喫緊なのだが、そうした鉄道には逆に中国やウズベキスタンは興味を示さない。他方、中国は中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道の敷設につき、中国と同じ狭軌を用いることを主張しており、それでは旧ソ連の広軌と併存し、新たな車両の導入などの負担が発生するので、キルギス、ウズベキスタン側は難色を示している。こうしたことから、キルギスはプロジェクトにロシアが参加してくれることを希望している。このほど開かれたキルギス・ロシアの政府間会合で、キルギス側がロシアに提案し、ロシアも前向きな姿勢を示した。ロシアにとっても、中国とウズベキスタンの主導するこのルートの建設は、ロシアの地政学的、軍事戦略的、経済的利益に反する。以上が記事の大意である。
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オーストラリアはなぜ豊かなのか
オーストラリアが豊かな国だということについて、異論はないだろう。1人当たりのGDPの数字を見ると、だいたい世界で10位前後に位置付けられることが多く、日本をはじめとする下手なG7国よりも所得が高い。
ただ、個人的には、素朴な疑問をずっと抱えていた。オーストラリアの輸出産業で有名なのは、穀物、石炭、鉄鉱石など。つまり、一般論としては付加価値が高いとは言えない一次産品が主力であり、産業構造としてはウクライナあたりとそっくりに思える。それなのに、ウクライナは欧州最貧レベルで、オーストラリアが豊かなのは、一体なぜなのか? そのような疑問を覚えていたのだ。
それで、先日ある会合で、駐日オーストラリア大使館で商務官を務めている日本人の方と同席する機会があった。そこで、年来の質問をぶつけてみた。その方いわく、確かにオーストラリアは地理的・気候的な条件から一次産品に恵まれた「幸運な国」である。他方、製造業などはほとんど存立していない。ただ、オーストラリアの場合には、一次産品の上にあぐらをかくのではなく、経済を高度化させている。実はGDPの9割はサービス産業になっている。それゆえに、たとえば一次産品の価格が変動しても、それに左右される度合いは相対的に小さい、ということだった。
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インド現地調査で学んだ2つのこと
アルメニアはユーラシア経済連合入りを強要された
日本でも報道されているように、アルメニアのセルジ・サルキシャン首相が4月23日に辞任した。サルキシャンは2008年から本年まで2期10年間大統領を務めたが、大統領権限の多くを首相に移す憲法改正を経て、4月17日に自らその首相に就任したばかりだった。これは事実上の政権長期化を意味し、それに抗議する大規模なデモが続いていた。ラルキシャン首相の辞任を受け、当面の首相代行にはカレン・カラペチャン氏が就任した。
さて、個人的に気になるのは、今回の政変により、アルメニアの政策路線、とりわけ対ロシア/EU関係をはじめとする対外政策が変わるのかどうかである。その関連で注目されるのが、反政府デモを主導したとされるニコル・パシニャン氏(後掲写真)の動きである。同氏はYelkというリベラル政党の党首。こちらの記事によると、パシニャンは2017年10月、「アルメニアは(ロシア主導の)ユーラシア経済連合に、自発的にではなく、強要されて加入した」という見解を示した由である。
私の知る限りでも、アルメニアがユーラシア入りをロシアに強要されたというのは、限りなく真実に近い。議会では体制側が多数派のようで、Yelkは少数勢力にすぎないようではあるが、いずれにしても、長期政権のサルキシャン氏が権力の座を追われ、ロシアと距離を置こうとする野党勢力が勢い付いたとしたら、ロシアにとっては不利な状況となろう。
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中央アジアの労働移民問題
こちらのサイトに、S.リャザンツェフという人が書いた中央アジアからロシアへの労働移民の問題に関する論文が出ており、上のような図も出ていて便利だったので、忘れないようにメモしておく次第である。ウズベキスタンは総人口が多いので、国外に出稼ぎ労働に出かける国民の数も120万~250万人と最も多い。ただし、経済活動人口に占める国外出稼ぎ労働者の比率という指標では、25.4~46.6%のタジキスタンが最も出稼ぎ依存度が高い国ということになる。
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ロシア・NIS諸国の経済成長率と今後の見通し
IMFがこのほど発表したWorld Economic Outlookの2017年4月版に掲載されているロシア・NIS諸国の経済成長率の推移と、今後の見通し。
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ロシア・NIS諸国の経済にとっての出稼ぎ収入の重要性
世銀のこちらのページに、世界各国の国民による国外出稼ぎ収入の各種統計が掲載されている。ここではその中から、2015年のロシア・NIS諸国の国外出稼ぎ収入が、各国のGDPに対してどれだけの比率を示しているのかという数字をピックアップし、上掲のようなグラフを作成してみた。特に新たな驚きはなく、既知の構図が再確認できる。タジキスタン、キルギス、モルドバといったNISの低開発な小国は、国外出稼ぎ収入への依存度が世界的に見てもかなり高いことが知られている。ウクライナやウズベキスタンも、大量の国外出稼ぎ労働者を送り出しているが、この両国の場合には自国の経済・人口規模がそれなりに大きいので、対GDP比ということでは若干数字が下がる。ロシアやカザフスタンは、むしろNIS諸国から労働移民を受け入れる側であり、この指標はごく小さい。ただし、ロシア人やカザフ人が出稼ぎとまったく無縁というわけではなく、たとえばロシアの地方の人たちがモスクワなどの自国の大都会に働きに出るような国内出稼ぎ現象は、広範に見られるはずだ。
なお、ウクライナの国外出稼ぎ収入の推移は下図のとおり。最大の出稼ぎ先がロシアだったので、その景気悪化と両国関係の対立で、収入は低下を辿っている。
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アルメニア、議院内閣制へ移行
最新の情報というわけでもないはずだが、個人的には初めて知ったので、メモしておく。こちらの記事によると、アルメニアは、大統領の権限が強い半大統領制から、首相・議会の権限が強い議院内閣制に移行しようとしているということである。大統領という役職は残るものの、名目的な国家元首となり、儀典的な役割を果たすだけとなる。それに伴い、たとえばユーラシア経済連合やCIS集団安保機構の首脳会合に出席するのも、大統領ではなく、首相になる予定だという。セルジ・サルキシャン現大統領の任期満了に伴い、新たな政治体制に移行する。上掲写真はカレン・カラペチャン首相。
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激動の世界をゆく:バルト三国ロシアとヨーロッパのはざま
先日NHKのBSで「激動の世界をゆく:バルト三国ロシアとヨーロッパのはざま」が放送された。某筋からの圧力でメインニュースの司会を降ろされてヒマになったのか(?)、大越健介キャスターがバルト三国を実際に訪れて丹念に取材し制作されたドキュメンタリー番組で、時宜にかなった内容だった。
ただ、番組は前後半に分かれていたのだが、一般向けなのでやむをえないとはいえ、前半はちょっと陳腐すぎたかな。大国に翻弄されてきた苦難の歴史、とりわけ20世紀にはソ連・ロシアの苛烈な支配に苦しみましたという、まあ確かにその通りではあるのだが、あまりにも一面的な描き方のような気がした。バルト三国の歴史の本質を知る上では、以前当ブログで紹介した書籍の方が、ずっと複眼的で優れている。
今回のドキュメンタリーで面白かったのはむしろ後半で、今日のバルト三国の直面している様々な問題が描かれていた。特に、人口減に苦しむエストニアがITに活路を見出し、優秀なIT開発関係の人材を輩出しているだけでなく、国としても「電子市民」という取り組みをしているという話は面白かった。外国人が簡単にエストニアの電子市民権を取得でき、そうすることによって同国で起業や銀行口座開設などもエストニア市民と同等にできるようになるというのだ。いわば、バーチャル・オフショアみたいな存在になりつつあるらしい。まあ、当然、そうなるとマネーロンダリングなどに悪用される可能性も出てくるわけで、ゆえに、実際に銀行口座を開設するためには意外と面倒な手続きが必要という情報もあり、実際のところは良く分からない。ともあれ、現実に近年エストニアが好調な経済成長を遂げていることも事実のようで、ひょっとしたら欧州のシンガポール的な存在として化けるような可能性もあるのかなと感じた。
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『バルト三国の歴史 ―エストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』
今般編集作業が終わった『ロシアNIS調査月報』2017年1月号では、「ソ連解体から四半世紀を経たロシア・NIS」という特集を組んでいる。ロシア・NISのすべての国を個別のレポートで詳しく論じるという意欲的な号になっているので、楽しみにしていただきたい。12月20日発行予定。
さて、エストニア、ラトヴィア(私は通常は「ラトビア」と表記しているが)、リトアニアのバルト三国は、両大戦間期に独立国だった実績があるので、旧ソ連のいわゆる「新興独立諸国(NIS)」の範疇には含まれない。2004年にEU加盟を果たしたことを受け、2006年に私どもロシアNIS貿易会の事業対象からも外れてしまった。しかし、今回の月報の特集テーマであるソ連解体とその後の歳月、若き独立諸国の歩みを考える上で、バルト三国は避けて通れない。そこで今回の特集号では、せめて書評コーナーでこれら三国を取り上げることにした。明石書店の世界歴史叢書のシリーズから出たアンドレス・カセカンプ著、小森宏美・重松尚訳『バルト三国の歴史 ―エストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』を紐解いてみた。以下、その書評を当ブログでもお目にかける。
◆
実は、バルト三国の歴史を総合的に論じた書籍というのは、あまり多くないらしい。というのも、エストニアとラトヴィアが歴史的に共通のコースを辿ってきたのに対し、リトアニアの歴史はだいぶ異なっており、三国を網羅した通史を描くのは至難の業だからだ。その点、本書はバランスが良く、翻訳も丁寧で大変に読みやすい。バルト三国について本邦で得られる最良の入門書と断言できる。
バルト三国がソ連体制下で苦難を味わい、ソ連解体の際に急先鋒の役割を果たしたことは、良く知られている。したがって、これらの民族は終始一貫して反ソ連的、反ロシア的なのではないかというイメージを、つい抱いてしまう。しかし、歴史的には必ずしもそうではなく、エストニア人・ラトヴィア人にとっては、中世から20世紀初めに至るまで、現地の支配層であるバルト・ドイツ人こそが、克服すべき存在であった。また、中世にリトアニア大公国で栄華を極めながら、16世紀にポーランド王国に取り込まれたリトアニア人にとっては、ポーランドと一線を画し自己確立することが鍵であった。エストニア人・ラトヴィア人・リトアニア人がこれらの課題を解決し、国民国家として自己形成していく上で、ロシアは意外と肯定的な役割を果たしたことが、本書からは伝わってくる。
むろん、ロシアは善意からバルト三国の民族・国家形成に協力したわけではない。私が本書で最も強い印象を受けたのは、ロマノフ王朝時代、「バルト・ドイツ人もロシア人官僚も、エストニア人およびラトヴィア人に民族としての未来や可能性はなく、間違いなく同化されると信じていた。唯一の問題は、エストニア人およびラトヴィア人がロシア化するのか、ドイツ化するのかという点にあったのである」(143頁)というくだりだった。別のシナリオを辿れば、エストニア人やラトヴィア人は、モルドヴィア人あたりと同じように、ロシア語を話してロシア正教を信仰する、ロシアの中の小民族といった存在になっていたかもしれない。そのような歴史の「イフ」や大いなる逆説を、小さき民族たちが語りかけてくれるのが、本書『バルト三国の歴史』である。
いずれにしても、生れ落ちるに至ったバルト三民族が、ソ連解体のドラマにおいて主役級の役割を果たしたわけである。当時話題になったキーワードや事件名を挙げるだけでも、歌う革命、人間の鎖、人民戦線、血の日曜日事件、主権宣言など、枚挙に暇がない。本書では、「ソ連解体の結果としてバルト三国の独立が達成されたと言われることが多い。だが、その逆の方が真実に近い。バルト三国の民衆運動がソ連国内の民主化を加速し、ソヴィエト帝国の屋台骨を揺るがしたのである」(279頁)と指摘されており、まさにその通りだろう。
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ガスプロムがアルメニアを扶養する
正直言って認識していなかったが、2016年9月13日にアルメニアの首相に就任したカレン・カラペチャン氏は(上掲写真)、ロシア・ガスプロム社系の人物のようだ。2001年にアルムロスガスプロム社の社長に就任したのを皮切りに、2011年にガスプロムバンクの第一副社長、2012年にガスプロム・メジュレギオンガスの副社長、2015年にガスプロム・エネルゴホールディング副社長と、ガスプロム・グループで要職を歴任してきた。
そして、最新のこちらの記事によると、アルメニアが2017~18年に議会選挙および大統領選挙を控えている中で、最近アルメニアではガス代金の高価格も一因となって反政府運動が活発化していることから、ガスプロム・アルメニア社では2017年1月1日から国民向けのガス価格を引き下げることになったということである。値下げにより国民は134億ドラム(約280万ドル)の便益を得る。
つまり、その分、ガスプロム子会社が取りはぐれるということであり、ロシアの国益を体現するガスプロムがロシアにとってのコーカサスの要衝たるアルメニアを扶養するという構図が浮き彫りとなる。
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キルギス、ユーラシアの衛生植物検疫に不満
こちらのニュースによると、キルギスのジェエンベコフ首相はこのほど、同国が加入したユーラシア経済連合の衛生植物検疫への不満を表明した。キルギスがユーラシア経済連合に加盟して1年半経つのに、ユーラシアの衛生植物検疫により、キルギスはその市場に農産物・食品を輸出できないでいる。キルギス・カザフスタン国境での衛生植物検疫措置が残っており、そこで貨物が遮断されている。キルギスがユーラシア諸国と同等の衛生植物検疫体制を整備しているにもかかわらず、パートナー諸国はそれを認証しようとせず、国境での検査が残っており、ユーラシア共同市場への輸出が制限されてしまっている。最初は多国間の問題だったのが、二国間関係に回され、その後カザフは「本件は多国間マター」として交渉を拒否している。ジェエンベコフ首相はこのように不満を述べた。
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アゼルバイジャンとベラルーシが砂糖輸出の双璧
統計を調べていたら、CIS諸国の中で、アゼルバイジャンとベラルーシが、砂糖(HS1701)輸出の双璧だということに気が付いた。輸出ということで言えば、テンサイ(サトウダイコン)の産地というイメージの強いロシア、ウクライナ、モルドバあたりよりも、この2カ国の方がずっと上である。ベラルーシの砂糖産業は知っていたけど、アゼルバイジャンは認識外だったなあ。
ただし、やや古いがこちらの記事によると、アゼルバイジャンはサトウキビ由来の原料糖を輸入し、それを精糖に加工して輸出するというビジネスのようだ。そして、ベラルーシもサトウキビ由来の原料糖を輸入しているという(ただしベラルーシの場合は輸入原料糖に加え、自国で採れたテンサイも原料にしているはず)。
同じ記事で興味深いくだりは、サトウキビを原料とする精糖工場とテンサイを原料とする精糖工場には違いがあり、前者がサトウキビを絞った残りカスを燃やして燃料として使えるのに対し、テンサイではそのような利用が不可能という話である(いずれの砂糖工場も蒸気と電力を大量に使うため自家発電をしている)。
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アゼルバイジャンのユーラシア加入「ありえないわけではない」
こちらの記事などによると、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領はこのほどロシア・メディアのインタビューに答え、アゼルバイジャンではユーラシア経済連合の動向を注視しており、アゼルバイジャンのそれへの加盟の可能性をまったく排除するわけではない旨発言した。ただし、我が国としては現在の状況に自信を持っており、ユーラシア経済連合の成り行きを見守った上で、メリットがあるかどうかを判断したいと、慎重な姿勢を改めて示した。
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アジア開銀、中央アジア経済見通しを引き下げ
こちらの記事によると、アジア開発銀行は中央アジア5ヵ国の本年2016年の経済成長見通しを、4月発表の2.1%から、1.7%へと引き下げた。来年2017年の見通しについても、前回発表の2.8%から2.7%へと引き下げられた。資源価格、とりわけ石油ガス価格の低迷と、ロシア経済停滞の影響で同国からの出稼ぎ送金が低下することが影響するという。
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タジキスタン、近くユーラシア入りを表明か
こちらの記事が、タジキスタンのユーラシア経済連合加入の可能性について伝えている。これによると、タジキスタンがユーラシア加入を目指していることは公然の秘密だったが、これまで同国指導部がその方針を正式に表明したことはなかった。しかし、最近生じた出来事から判断して、タジキスタンはついにユーラシア加入方針を正式に発表することになるだろう。7月3日には石油製品供給に関するロシア・タジク政府間協定を批准する法律にプーチン大統領が署名、これによりタジキスタンへの石油製品の輸出は(タジク側の輸入?)関税なしで行われることになった。ロシア下院のレオニード・スルツキーも、タジキスタンは本年中にユーラシア加入の意向を明確にするだろうと発言。スルツキーによれば、タジク経済は今のところユーラシア加入の準備ができていない(!)が、それでも加入すれば同国の経済を浮揚させ、タジク人出稼ぎ労働者の諸問題が軽減されるはずだという。また、先日プーチンがユーラシアとインド、イラン、パキスタン、CIS諸国のより広範なパートナーシップの創設を唱えたことで、タジキスタンがユーラシアへの関心を強めた可能性もあると、スルツキーは指摘した。
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カモミールのアゼルチャーイ
先日申し上げたとおり、職場で飲んでいたアルメニアのハーブティーが払底してしまったので、今度は、自宅にまだストックが残っていたアゼルバイジャンのハーブティーを職場に持ってきた。アゼルバイジャンでは4種類ほどのハーブティーを買ったが、その一つ、日本でもよく飲まれているカモミール。カモミールってロシア語で「ロマーシカ」っていうのか、知らなかった。
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アルメニア、ユーラシア経済連合の恩恵強調
昨年の9月にアルメニアに現地調査に行った際に、自分用のお土産として、ハーブティーの大容量パックを買って帰ってきた(上に見るように小分けされたティーバックになっていた)。ものすごく大量にあり、職場で夕方に飲むのが習慣だったが、今般ついに最後のやつを飲んでしまい、なくなってしまった。名残惜しい。アゼルバイジャンで買った「アゼルチャーイ」はまだ自宅に大量にあるけど(笑)。
閑話休題。こちらの記事によると、このほど開催された「ユーラシア経済連合・アルメニア協力」と題する経済フォーラムで、アルメニア国際経済統合・改革省のS.カラヤン次官は、ユーラシア経済連合への加盟はアルメニア経済に肯定的な影響を及ぼしていると強調した。次官いわく、ユーラシアに加盟したアルメニアは、EUと連合協定を結んだジョージアやモルドバを、輸出入額で追い越した。アルメニアでは2016年第1四半期に経済活動(GDP?)が6%拡大しており、周辺国でこのような事例は皆無である。アルメニアは貿易取引の容易さを比較した世界ランキングで58位から29位に順位を上げた。次官は以上のように述べた。
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ロシアからキルギスへの投資倍増
こちらの記事によると、ロシアからキルギスへの投資は2015年に倍増し、1億1,820万ドルに上った。これはキルギスが外国から受け入れた投資全体の15%に相当した。キルギスのO.パンクラトフ副首相が明らかにした。副首相によれば、キルギスがユーラシア経済連合に加入してからの1年間で、キルギスは期待していたような恩恵を受けることができ、具体的にはキルギス人労働者がロシアおよびカザフスタン領で完全な権利を保証されたり、キルギス産品がユーラシア市場全域に障壁なしに進出できるようになった点が挙げられる、という。
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IMFの世界経済見通しの最新版
月報の編集作業が終わったばかりで、ぐったりしているところなので、簡単なブログで勘弁願いたい。IMFの『世界経済見通し』の最新版が4月12日に発表された。こちらから各国語のレポートをダウンロードできる。その中から、私の守備範囲であるロシア・NIS諸国の主要指標の表だけ、上のように抜き出してみた。クリックすると拡大する。すぐに詳しく吟味する余裕がないが、報道によればロシアもウクライナも2016年の成長見通しが引き下げられたと伝えられている。
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ロシア・NIS諸国の外貨準備の動向
少々古いが、『ベラルーシ実業新聞』のこちらのページに、ロシア・NISおよび中東欧主要国の金・外貨準備の動向を比較したレポートが出ていて便利なので、これを参照してみたい。この中から、2015年の1年間にロシア・NIS主要国の金・外貨準備がどれだけ増減したかというデータをピックアップして、上掲の図を作成してみた。
エネルギーおよび資源価格の下落、ウクライナ危機などで、2015年にロシア・NIS諸国は総じて厳しい経済情勢だったので、当然のことながら金・外貨準備も縮小基調だった。そうした中、ウクライナの準備高が突出して増えているが、これは国際収支のパフォーマンスが改善したというよりも、IMFの資金が入ったことによるものだろう。2015年のロシアは経済的には散々な年だったが、同国中銀は2014年11月に自由フロート制に移行してから実は為替市場にほとんど介入しておらず、ゆえに外貨準備の減少も小幅だった。それに比べると、カザフスタンやアゼルバイジャンといったNISの産油国の方が、通貨防衛のための介入で準備高を減らした側面が大きい(むろん、それでも為替は切り下がっている)。ベラルーシは、ロシアから輸入した原油を加工する石油精製業が主産業になっているという意味で、今や半ば産油国のような経済になっており、しかも景気が悪化するとロシア以上にダメージを受ける。
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ユーラシア経済連合の労働移民面のメリット
「ユーラシア分析クラブ」というサイトがあり、ユーラシア空間における統合に関する情報発信を手掛けているということである。
それで、同サイトのこちらのページに、ユーラシア経済連合が労働移民にどのような影響を及ぼしているかを論じたレポートが掲載されている。同サイトの立ち位置からして容易に想像されるように、ユーラシア経済連合に加入することによるメリットを強調する論旨となっている。とりわけ、中央アジアやコーカサスの低所得国にとっては、より豊かなロシア(カザフスタンもそれに準ずる位置を占めるが)での出稼ぎ労働収入が、死活的な重要性を帯びている。今回のレポートには、ロシアから中央アジア・コーカサス諸国への送金額を四半期別に跡付けたデータが掲載されているので、それを用いて上掲のようなグラフを作成してみた(まだ通年の数字が出ていないらしく、1~9月という中途半端なデータになってしまうが)。ロシアは2015年に景気後退に見舞われた上に、通貨が大幅に下落したので、ドル換算した送金額が減っているのは当然である。ただ、そうした中でも、カザフスタン、キルギス、アルメニアというユーラシア経済連合加盟諸国は、ロシアからの送金の落ち込みを比較的小幅に留めることに成功している。一方、ユーラシア経済連合に加盟していないその他の国々では、ロシアからのドル換算送金額がより大幅に減っていると、そのような傾向が確かに見て取れる。
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ユーラシア幹部、アルメニアにとっての恩恵協調
ベラルーシ出身のS.シドルスキー氏という政治家・官僚がおり(上の写真)、2003年12月から2010年12月までベラルーシの首相を務めたあと、ユーラシア経済連合の事務局であるユーラシア経済委員会に活動の場を移し、2012年2月からその産業・農業大臣を務めている。
こちらの記事によれば、そのシドルスキー大臣がこのほど開かれた国際会議の席で、ユーラシア経済連合のアルメニアにとっての恩恵を強調した。大臣によれば、アルメニアは有利な気候条件や安いガス価格などを活かし、その農産物がユーラシア市場において価格競争力を発揮できる。アルメニアのトマト、キュウリ、野菜はベラルーシやロシアのそれより安い。以前はアルメニアの農産物はロシア・ベラルーシ・カザフスタンの市場(ルィノク)にしかなかったが、今では小売チェーンにも浸透している。アルメニアの農産物は、南の国々、特に制裁対象となっているトルコのそれを駆逐した。ロシアがアルメニアに提供しているガス価格は、ベラルーシ向けと同じで、最も安いものだ。シドルスキー大臣は以上のように述べた。
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中央アジアにとって最大の貿易パートナーはEU
大国の思惑が入り乱れ、様々な地政学的プロジェクトがうごめいている中央アジアであるが、こちらの記事によると、実は最大の貿易パートナーはEUということである。上の図の、赤がEU28ヵ国、黄が中国、グレーがロシア、黒が米国である。
ただし、下図に見るとおり、2014年の時点で、中央アジア5ヵ国のEU28ヵ国向け輸出は、85%が原油だという。その他、石油製品が7%、随伴ガスが1%ということであり、合計93%もが石油・ガスによって占められているわけである。
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中央アジア・コーカサス諸国の成長見通し
こちらの記事が、IMFが中央アジアおよびコーカサス諸国の経済成長見通しに関するレポートを発表したということを伝えている。調べてみたところ、当該のレポートはこちらのサイトにある「新たな凡庸を避ける:中東および中央アジアにおける長期的成長の浮揚」というもののようであり、同サイトからフルテキストをダウンロードできるようになっている。
熟読している余裕はないが、コーカサスおよび中央アジア諸国の経済はエネルギー価格の低下、ロシア経済の落ち込み、ウクライナ危機に起因して苦境に立っている、といったことが指摘されているようである(これだけ聞くと、あまり新味がないような気もするが)。
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『コーカサスを知るための60章』
もう10年ほど前に出た本だけど、明石書店の「エリアスタディーズ」の一環である『コーカサスを知るための60章』。今般、用事があって、改めて通読したので、特に印象に残った点だけメモしておく。
まず、コーカサスは基本的に、南コーカサスに位置するアゼルバイジャン、アルメニア、ジョージアという3つの独立国家と、ロシアの一部である北コーカサスから成る。しかし、民族の数となると数十に及び、言語や宗教と相まって、狭いエリアに複雑なモザイクを織り成している。したがって、本書『コーカサスを知るための60章』も、大半がその複雑な民族・言語・宗教・文化・歴史模様を描くことに費やされており、国民国家単位であることが多い本エリアスタディーズのシリーズにあって、異色の巻となっている。
久保友彦「第2章 栽培植物起源地としてのコーカサス」は、個人的にまったく門外漢な分野であるだけに、とりわけ興味深い。小麦、リンゴ、ブドウといった人類にとってきわめて有用な作物が、コーカサス起源であるというのは、知っておいて損はないだろう。
前田弘毅「第10章 神話世界の中のコーカサス」は、非常に示唆に富んでいる。その末尾にある一節が、特に強く印象に残った。「こうして考古学など民族の神聖な過去を探求する歴史学はまさに『エリート』の学問となり、政治的な影響を強く受けるような構造が定着してしまう。ソ連が崩壊し、歯止めを失ったコーカサスの民族主義のリーダーとなった人物に歴史学者が多いのは偶然ではない。豊潤な古代史と彷徨する民族の歴史は、そのまま現代の不毛な民族間戦争につながってしまっている。」
森田稔による「第41章 山々にこだまする男声合唱の響き」、「第48章 西洋との接触から生まれたコーカサスの国民音楽」は、見事としか言いようのない論考である。同様に、松田奈穂子「第49章 舞台舞踊としての表象」、「第57章 兄弟の歌」にも教えられるところが大きく、とりわけモイセーエフ舞踏団についてのくだりはとても勉強になった。
家森幸男「第51章 コーカサスの長寿食文化」は、民族料理の話なのだが、それをグルメ情報的な切り口にするのではなく、医学者による栄養学的な観点の議論として取り上げている点が、なかなか斬新であり、コーカサスならではだなと感じた。もちろん、これはこれで重要な論考だが、ただ一般の読者からすると、もうちょっと代表的な料理とか、もっと言えば当世レストラン事情なども別途あったら有難かっただろう。
というわけで、知り合いの研究者が書いた現代事情などに関する章よりも、やはり自分の知らない分野の章の方が、新鮮な発見が多かった。グルジアがジョージアに変わったことだし、そろそろ改訂版でも、どうですか。
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ロシアの支援で生きるキルギス
こちらの記事で、キルギスがロシアから受けている支援の状況が伝えられている。これによれば、ロシアは過去数年、様々な形でキルギスに財政的・物質的支援を与えている。2010年から2015年までにキルギスの国家予算を支援するために1.85億ドルを無償で提供した。また、ロシア・キルギス開発基金の活動のために、ロシアは5億ドルを拠出し、同基金はさらに5億ドルを融資という形で調達する予定である。同基金は2014年に調印された二国間政府協定にもとづいて発足し、キルギス領における有望事業に低利融資を提供することを通じて、キルギス企業がユーラシア経済連合の諸条件に適応していくのを支援する役割を果たす。もう一つ、実質的にロシアがキルギスを支援する形となっているのがロシアで働くキルギス人出稼ぎ労働者の要因。2013年には22億ドルが、2014年には21億ドルが送金されたが、2015年1~6月には3.25億ドルに留まった。さらに、2012年9月に達成されたキルギス・ロシア間の合意により、4.89億ドルの債務が棒引きになっている。
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中国主導の一帯一路でTRACECAは終焉?
内陸の中央アジアおよびコーカサス諸国を、主にジョージアの黒海港湾を経由して、EUをはじめとする諸外国の市場と結び付けることを目標に据えたトラセカ(TRACECA: Transport Corridor Europe-Caucasus-Asia)という国際プログラムが存在する。ただ、現在までのところ大きな成果が挙がっているとは言えない。そうした中、中国主導の一帯一路(新シルクロード)構想が脚光を浴び、それが描くルートがTRACECAのそれとずれていることから、ここに来てTRACECAの位置付けがますます微妙になっているようである。
ロシアのこちらのサイトに掲載された論考では、次のように論じられている。すなわち、かつてTRACECAを新シルクロードと吹聴していたEUだったが、最初から大規模建設投資には後ろ向きで、2009年には資金拠出を完全に打ち切った。一方、中国は、当初はロシアを迂回して中央アジア・コーカサス・トルコ経由で欧州との輸送路を構築することに関心を抱いていたので、TRACECAにも歩調を合わせていた。しかし、ルートに当たる国々のまちまちな政治・行政リスクに直面し、ロシアと協力した方が簡単だと、中国は判断した。EUは認めたがらないが、現在TRACECAは崩壊の手前まで来ており、EUが関心を高めなければ、コーカサス諸国や中央アジアはアジア開銀・中国・日本などとの協力にシフトするだろう、ということである。
日本語版人民日報のこちらのコラムでは、「欧州のTRACECA(欧州-コーカサス-アジア輸送回廊)計画も同様に中央アジア諸国がロシアへの依存を脱するためのものだ。中国の『1ベルト1ロード』には排他性はなく、いかなる国と地域も希望さえすれば参加でき、発展成果を共有できる」として、後者の優位性が強調されている。
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