ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: その他の国

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 間際の告知になってしまいましたが、スラブ・ユーラシア研究センターで3月27日(月)16:00-17:30に、松澤祐介さん(西武文理大学)による「EU加盟20年目のスロバキア経済」と題する特別セミナーを開催いたします。対面とZoomのハイブリッドでの開催で、もちろん無料です。参加をご希望の方は、こちらまでお申し込みください。


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 ロシアの周辺諸国は、ロシアでの出稼ぎ労働収入に依存している場合が多い。そして、その収入を本国に個人送金する(いわゆるレミッタンス)ことが、各国の経済を支えているパターンがあるわけである。

 ロシアから外国への個人送金額は、たとえばこちらの記事に見るように、断片的に報道で伝えられたりする。しかし、もっと網羅的な情報源はないかと思って探してみたところ、何のことはない、ロシア中央銀行がウェブ上でそのデータベースを公開していることが判明した。判明したというか、そう言えば以前もこのデータベースを使った記憶があるが、その存在を失念していた次第である。

 というわけで、データベースで最新データを入手して、上掲のような表にまとめてみた。ロシアの景気低迷やコロナ禍などがあり、2019~2020年には個人送金額に見るロシアでの出稼ぎ労働はやや下火となったが、2021年には前年比17.1%増と久し振りに盛り返した。

 やはり、ロシア周辺の旧ソ連NIS諸国への送金が多く、2021年の場合、全体の90.4%を占めている。特に、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスの中央アジア3国が圧倒的に多い。同じ中央アジアでも、ロシアと同レベルの経済水準のカザフ国民がロシアに出稼ぎに行くことは稀で、閉鎖的なトルクメニスタンはほぼゼロに近い。

 一方、ウクライナ、モルドバの人々は、EU圏に出稼ぎに出ることが増え、ロシアで働くことは少なくなった。これが近年の両国の価値観の変化にも繋がっていると言える。一方、このデータで見るとベラルーシへの個人送金は少ないが、これはベラルーシ国民にとってロシアで働くことがあまりに身近で、いわば通勤感覚なので、統計に反映されにくいという事情による。


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 こんなご時世にマニアックな話題で恐縮だが、ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合と、アゼルバイジャンが接近か?という問題が一部で注目されているようである。

 こちらの記事の中で、I.マリニナ氏がその動きについて論じている。これによると、先日ユーラシア経済連合の最高評議会が開催された際に、連合の産みの親ともいうべきナザルバエフ・カザフスタン初代大統領が、アゼルバイジャンに対して、まずは連合のオブザーバー国となったらどうかと提案したということである。

 記事によると、アゼルバイジャンの専門家の中でも、本件に関する立場は分かれているという。たとえば、T.アッバソフは、アゼルバイジャンは、ロシア、カザフ、ベラルーシ、キルギスといった国と二国間の関係を発展させているので、多国間連合たるユーラシアと接近する必要性は特にないと主張している。それに対し、E.マメドフは、今日の国際経済の中で、何らかの統合に参加することは不可避だと説いている。

 アゼルバイジャンのユーラシア経済連合加盟の可能性については、スプートニクのこちらの記事で、そのメリットが図解入りで説かれている。ミュンヘン市場統合・経済政策研究所のYu.コフネル研究員が、そのような分析を発表したということである。それによれば、ユーラシア経済連合加盟はアゼルバイジャンの農産物・非石油輸出を拡大する効果をもたらし、それによってアゼルバイジャンのGDPは0.6%拡大、アゼルバイジャン国民は1人当たり1,013ドル豊かになる、ということである。

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 休日のよもやま話で、なおかつツイッターでつぶやいた話の使い回しで恐縮である。私が編集を担当している『ロシアNIS調査月報』では、ソ連解体30周年記念号を出す予定で、現在作業をしているところである。ただ、ソ連崩壊30周年ネタというのは、色んなところでやっていることなので、差別化を図るために、小誌ではロシア・ユーラシア各国の経済建設の軌跡に徹底的にフォーカスすることにした。

 それで、その号の表紙に使うために、上掲のようなコラージュ画像を自作した。誰でも考え付きそうな単純なものだが、12ヵ国の紙幣を、所定の3:4のタテヨコ比にまとめるのはなかなか骨が折れ、こんなものを作るのに半日ほど費やしてしまった。

 それで、この作業を試みて、2つほど困った国があった。

 まず、ベラルーシである。同国の場合には、解像度の高い紙幣画像が、ネット上にまったく上がっていないのである。多少なりとも解像度を求めると、「見本」という文字が入っていて、今回のようなデザインには向かない。たぶん、独裁国家なので、紙幣の高解像度画像をネットにアップしたりするのにも、厳しい規制があるのではないかと想像した次第だ。今回の作業では、ベラルーシについては低解像度画像で我慢した。

 もう一つ、今回困ってしまった国が、アゼルバイジャンだった。アゼルバイジャンの場合は、紙幣の高解像度画像がネットで出回ってはいるのだが、フォトショップでそれを加工しようとすると、操作ができず、「このアプリケーションでは、紙幣イメージの編集はサポートされていません」という表示が出てしまうのである。要は紙幣偽造対策だとは思うのだが、なぜロシア・ユーラシア諸国のうちアゼルでだけそういう規制がかかっているのかが不思議だった。

 なので、アゼルバイジャンのマナト紙幣については、現行の紙幣をコラージュに使うのは諦め、下に見るような旧札を使うことを余儀なくされた。

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 これは、とても残念なことである。というのも、最近のアゼルバイジャンの紙幣は、デザインが美しいことで定評があるからだ。それを表紙画像に使えないというのは、惜しすぎる。本当は、下に見るような10マナト札を使いたかった。バクー旧市街のデザインかな。

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 ちなみに、アゼルバイジャンは昨年ナゴルノカラバフ戦争に勝利し、下に見るような記念紙幣を発行したらしい。これも美しいが、ちょっと政治的にどうなのかとは思う。

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 ユーラシア経済連合は、2015年に5ヵ国になって以降、新規の加盟国は現れていない。中央アジアではカザフスタンとキルギスが加盟国であるものの、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンは非加盟となっている(ウズベキスタンはオブザーバー国)。

 これに関し、こちらの記事によると、カザフスタンの初代大統領でユーラシア経済連合の名誉議長でもあるN.ナザルバエフ氏は8月19日、連合を強化する必要があり、ウズベキスタン、タジキスタンといった我が国の隣国にも加盟してほしいし、さらにトルクメニスタンにも働きかけるべきであると発言した。さらに、キルギスのS.ジャパロフ大統領も同国独立30周年の演説で、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンがユーラシア経済連合に加盟してくれることを望むと発言した。

 上掲記事によると、本件につきロシアの政治学者P.ダニロフ氏がインタビューに応じ、以下のようにコメントした。ウズベキスタンに関しては、向こう2~3年でオブザーバー国から正式な加盟国となるであろう。一方、タジキスタンとトルクメニスタンは、近い将来にはオブザーバー国がやっとかもしれない。これら2国は経済問題がウズベキスタンより深刻だからだ。トルクメニスタンは永世中立国でもあり、ガスプロジェクト絡みでトルコと米国が自分たちの側に引き入れようとするだろう。タジキスタンの場合は、自国の経済を大統領が一元的に管理しており、それから脱してユーラシア経済連合諸国に開かれた市場になるのは困難だ。もっとも、同国にしても、時代の要請により、変化は必須となっている。ダニロフ氏は以上のように述べた。


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 こちらの情報は、日付が書いてないので分からないが、おそらく2020年のリリースだと思う。マイナーながら、私の関心分野なので、取り上げておくことにする。トヨタのロシア現地法人であるООО «Тойота Мотор»が、ロシア工場で生産した乗用車を、アルメニアに供給し始めたということである。アルメニアはロシアとはユーラシア経済連合で繋がっているので、合点の行く話だ。(最初、誤ってООО «Тойота Мотор»を現地生産会社と書いてしまったのですが、よく考えたら同社は販売会社で、現地生産会社はOOO “Toyota Motor Manufacturing Russia” でしたね。お詫びして訂正します。)

 上記情報によると、これまで同社はやはりユーラシア経済連合のベラルーシとカザフスタンへの輸出を手掛けてきたが、アルメニアはそれに次ぐ3番目の輸出市場となる。ペテルブルグ工場で組み立てられたカムリ、RAV4を、2020年中に450台アルメニアに輸出する予定であり、今後さらに供給を拡大していきたい。従来は両モデルを日本工場から供給していたが、ロシア工場に切り替えることにより、アルメニアでの販売価格が最大10%低下し、様々なバージョンの品揃えも豊富になる。また、これを機に、ООО «Тойота Мотор»がアルメニア領におけるトヨタ車のオフィシャル・ディストリビューターとなる。

 なお、上記情報によると、ロシア工場は2010年からベラルーシへの、2012年からカザフスタンへの供給を開始している。2019年には両国合計で8,863台のカムリおよびRAV4が輸出され、ロシア工場での生産量の12%を占めた。輸出の拡大は同社の優先課題と位置付けられている。

 という、(少なくとも個人的には)大変興味深い話題だったわけだが、この発表はもしかしたらナゴルノ・カラバフ戦争再燃の前のものだったのかな? だとしたら、もしかしたらその後、治安や輸送の困難に直面した可能性もある。予定していた450台が無事販売できたのか、気になるところだ。


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 GLOBE+に、「激動のキルギス情勢を読み解く3つの視点」を寄稿しました。

 旧ソ連のユーラシア諸国では、8月にベラルーシで発生した混乱がいまだに続いている上に、9月下旬にはアルメニアとアゼルバイジャンによるナゴルノカラバフ紛争の戦闘が再燃、さらにキルギスでは10月4日に投票が実施された議会選挙を機に政変が発生と、大事件が相次いでいます。10月11日投票のタジキスタン大統領選こそ無風かもしれませんが、11月1日投票のモルドバ大統領選は波乱含みであり、このエリアで大きな出来事はまだ続くかもしれません。筆者もそうですが、我が国の旧ソ連クラスタの皆さんは情勢を追うのに大忙しです。

 キルギス情勢はきわめて流動的です。近くやり直しの議会選挙があるはずですし、場合によっては大統領選挙も前倒しで実施されるかもしれません。ですので、今回のコラムではキルギスの政情に関し、目先の動きを追うのではなく、情勢を読み解く上で鍵となる3つの視点について解説してみたいと思います。


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 私がよく引用させてもらうベラルーシの政治評論家V.カルバレヴィチ氏が、こちらのサイトで、ベラルーシとキルギスの違いについて語っているので、以下のとおり抄訳しておく。

 キルギスがベラルーシとまったく異なっている点は、キルギスでは国民の民族・文化的な背景にもとづく2つの政治グループの間にバランスがあることである。ざっくり言えば、北部人と南部人というグループだ。両者間では、常に闘争があり、合意とバランスの保持が政治システムの重要な要素である。時折、そのバランスが崩れて、紛争に至り、武力を伴うこともある。

 ベラルーシでは権力維持のメカニズムがまったく異なり、派閥という仕組がない。派閥間、政治グループ間、オリガルヒ間の闘争というものが欠如している。民族的にも、地域的にも、かなり同質的である。ベラルーシの分裂は別のところにあり、それは政治的価値観、世界観によるものである。

 ベラルーシの政治体制は非常に強固であり、キルギスはそれとはまったく異なる。何だかんだで、キルギスの選挙では票が数えられる。多少の改竄はあるかもしれないが、その程度は、ベラルーシの比ではない。民主主義の要素は、キルギスの政治システムの方が、ベラルーシのそれよりもずっと多い。

 だが、結局のところ、旧ソ連空間に完全な民主的伝統が確立された国はない。それゆえ、様々な場所で、定期的に紛争が発生する。「純粋な民主主義」は旧ソ連のどの国にもない。ウクライナやアルメニアのような選挙が実施されている国でも、EU諸国あたりとは異なる要素があり、それが絶えず紛争を招いている。民主主義のメカニズムが上手く機能しない分、矛盾が街頭へと波及する。

 旧ソ連におけるもう一つの紛争の類型が民族紛争である。ソ連が崩壊した時点で、ジョージア、キルギス、ウズベキスタン、沿ドニエストル地域、クリミアで民族間紛争が噴出し、ナゴルノカラバフなどは古典的である。ソ連にはそれらの地雷が仕掛けられ、それが現在爆発している。

 多くの旧ソ連諸国がロシアに依存するようになり、このエリアにおいてロシアが突出した力を得ることになった。それゆえ、ロシアにはすべての紛争をコントロールしたいという願望が生まれる。ロシアは旧ソ連空間を自らの影響圏と見なし、ウクライナの例が典型的だったように、外務の勢力がこのエリアに影響力を行使しようとすることに拒絶反応を示す。ロシアは、自らがこのエリアに責任を負っていると認識しているので、ベラルーシの危機、カラバフの危機など、危機的な現象には何らかの反応を示さざるをえないのである。


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 以前からナゴルノカラバフの領有をめぐって対峙していたアルメニアとアゼルバイジャンの間で、昨日、本格的な武力衝突が始まってしまったようだ。

 それに関連して、以前書いた小文をリサイクルしてお目にかける。『ロシアNIS調査月報』の2016年6月号の表紙に上掲のような写真を使い、その紹介文として書いたものである。

 2015年9月、個人的に初めてアルメニアに現地調査に趣いた際に、有名なブランデー醸造会社のアララト社の工場を見学する機会があった。アルメニアの象徴とも言えるアララト社には、数多くの外国元首も訪れており、貯蔵されている多くの樽の中には、プーチン大統領の樽、ルカシェンコ大統領の樽といった具合に、VIPたちのキープ樽もあった。

 そして、これはかなり有名だと思われるが、見学コースには「平和の樽」というものも展示されていた。今号の表紙の写真は、それを撮影したものである。アルメニア人とアゼルバイジャン人が支配権を争ったナゴルノカラバフ紛争の解決を願って樽詰めされたものであり、同紛争が最終的に解決したあかつきに開けて飲むことになっているそうだ。樽の後ろに置かれているのは、向かって右からアルメニア、ナゴルノカラバフ、米国、ロシア、フランス、そしてアゼルバイジャンの旗(米・露・仏はナゴルノカラバフ紛争調停グループのメンバー)。なお、写っている人物は案内してくれた女性である。

 一聴すると美談のようだが、ナゴルノカラバフ紛争の最終的な解決とは、具体的に何を意味するのだろうか? 本気で紛争を解決するのであれば、アルメニアの側にこそ、努力すべき点が多いのではないか? 質問が喉まで出かかったが、ブランデーの甘い香りが漂う中で訊くのは無粋に思われ、やめておいた。


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 キルギスとカザフスタンの国境では、5月の末からカザフ側が国境管理を厳格化し、その結果、貨物を積んでユーラシア経済連合市場に向かうキルギス側のトラック300台ほどが、国境を通貨できずに列をなして停止している状態が続いている。

 こちらの記事によれば、キルギスはこれに反発し、ユーラシア経済連合に派遣している自国代表者の償還、さらには連合の活動のボイコットも辞さない構えだという。キルギス議会の外交委員会の席で、S.ムカンベトフ経済相が表明した。大臣によれば、現在、連合のルールの枠内で問題解決を図っているところだという。


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 櫻井映子(編著)『リトアニアを知るための60章』(2020年、明石書店)が発行されました。

 私も、1つの章だけですが、「第29章 ベラルーシとの関係――『リトアニア大公国』は誰のものか?」を執筆しました。


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 GLOBE+に、「アルメニアという方舟はロシアを離れ漂流を始めるのか」を寄稿しました。

 アルメニアは、EUとの連合協定は断念し、ロシア主導のユーラシア経済連合加入の道を選びました。しかし、実は同国は2017年11月にEUと「包括的拡大パートナーシップ協定」という踏み込んだ文書を結んでいます。2018年4、5月の政変の結果成立したパシニャン政権は、ロシアとは微妙な距離を置いています。今回は、そのあたりのアルメニアの国情について語ってみました。


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 コロナウイルスの問題、個人的に知見のないことにはなるべく口出ししないようにしているので、当ブログでも特に触れていないが、とにかく、早く収束に向かってほしいものである。

 さて、問題の震源地となってしまった中国の湖北省および武漢市。私はロシアの地理オタク、地域マニアなので、その延長上で、湖北省および武漢市がどんなところなのかというのは、非常に気になる。それで、自宅の本棚を何の気なしに眺めていたら、高橋基人『こんなにちがう中国各省気質』(草思社、2013年)という本が目に留まった。たぶん以前も当ブログで取り上げたことがあったと思うのだが、中国の31地域の特質や注目点を詳しく解説した本であり、私好みの素晴らしい内容なのである。

 そこで、本書で湖北省について解説されている中から、興味深いと思った点を抜粋して箇条書きにしてみる。

  • 湖北省は全国でも群を抜く教育レベルの高さを誇る。大学や教育機関の数は中国のトップレベル。住民は読書好きで、多くの学者も輩出している。
  • ただし、その反面、狡猾、悪賢いなどと指摘されることもある。
  • 気質は謙虚で、内省的で、勇敢。「能ある鷹は爪を隠す」を地で行く。
  • 武漢は、1911年に革命勢力の武装蜂起が初めて成功した都市で、辛亥革命の火の手はここから全国に広がった。
  • 武漢はそれなりの歴史があるが、都市として急発展したのは最近のこと。一昔前まで、在留邦人は、当地で売っている米に砂利が混じっているので、泣きながら砂利を取り除いていたが、それも今は昔。
  • 内陸部開発が国策となる中で、武漢への外資企業の進出が加速、日系企業は2000年代初頭は20社程度だったが、2010年には100社近くに。自動車メーカーに加え、物流会社も拠点。フォックスコンも武漢にアップル製品のEMS工場を設立。
  • 有名人としては、林彪が省南部の黄岡の生まれ。文革の混乱期、毛沢東暗殺を計画したが、失敗するやソ連への亡命を図り、飛行機が燃料切れでモンゴルに墜落、死亡した。

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 当ブログでも何度か取り上げたと思うが、中国と欧州の間を、主にカザフスタン・ロシア・ベラルーシというユーラシア諸国を経由する形でコンテナ貨物を鉄道でトランジット輸送するプロジェクトを、「中欧班列」と呼んでいる。このほど、こちらのサイトで2019年の中欧班列の運行・輸送実績が発表されたので、それを紹介してみたい。

 これによれば、2019年の中欧班列の運行列車数は8,225便で前年比29%増、輸送コンテナ数は72.5万TEUで前年比34%増であった。中欧班列の90%強がカザフスタンを経由したものとなっている。なお、従来2018年のコンテナ数を明確に示した資料が見当たらず、「約60万TEU」とする資料が得られる程度だったので、私もやむなくその数字を使っていたが、今般の前年比34%増という数字から逆算して、2018年のコンテナ数は54.1万TEUということにしておく。

 先日お伝えしたとおり、2019年のベラルーシ・トランジットは微増に留まったということで、今回の情報とやや整合しない。ベラルーシ以外のルートの活用がそんな急速に拡大しているのだろうか。


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 以前、「中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道」というエントリーをお届けしたが、こちらの記事がより新しく詳しいので、重要と思われる点を以下のとおりメモしておく。

 中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道の建設構想は20年以上検討されているが、ここに来てそれが動き出す可能性が出てきた。それは多分に、ロシアがFSに2億ルーブルを供出することに加え、プロジェクト実現に直接参加する用意があると表明したことによる。

 プロジェクトが最初に浮上したのは1990年代半ばで、中国が新疆ウイグル自治区鉄道の建設に着手し、中央アジア諸国にそれへの接続を提案したことに端を発する。1997年に中国、キルギス、ウズベクは3国作業委員会の設置に関する覚書に調印し、2002年には最初のFSが実施され上掲地図のようなルートが提案された。ゆえに、この268kmのルートがその後長らく、検討の基礎となってきた。

 しかし、時間が経つにつれ、この案はキルギスにとって不満の残るものであることが浮き彫りとなった。キルギスではソ連崩壊後、鉄道の改修が実質行われておらす、中国~中央アジア鉄道建設の枠内で自国鉄道を近代化したかったからだ。キルギスでアタンバエフ政権が成立すると、同国は中国~キルギス~ウズベクというルートには反対し、その代わりにタジキスタン~、キルギス~カザフスタン~ロシアというルートを推すようになった。ただし、当時はいずれの国からの賛同も得られなかった。

 これまでも、交渉を活発化しようという試みがなかったわけではない。数年前に中国が一帯一路を表明すると、中国~キルギス~ウズベク鉄道は、中国とイラン、トルコ、欧州を結ぶルートの中央部分の一環と位置付けられた。しかし、3国作業グループで、すべての対立点を解消する期限が2018年4月と明記されたにもかかわらず、進捗はなかった。2019年6月に習近平国家主席がキルギスを訪問した時ですら、鉄道建設を重視すると通り一遍に述べられただけで、文書が調印されるといった進展はなかった。それには以下のような原因がある。

 第1に、ルートおよびレール幅をめぐる立場の隔たりである。キルギスは自国にすでにある広軌を希望し、可能であれば国の南北の経済社会中心同士を連結したいという思惑があった。それにより、キルギスは国内問題を解決できるだけでなく、年間2億ドル以上の中国貨物トランジット収入が得られる。それに対し、中国が必要としていたのは、最短で経由地も少ないルートと、ウズベクのミングブラク油田など中央アジアの資源産地へのアクセスであった。また、中国は1,435mmの標準軌から1,520mmの広軌への積み替えを中国・キルギス国境ではなく、キルギス・ウズベク国境で行うことを主張し(つまりキルギス領に1,435mmの標準軌を建設する)、これは同鉄道を自国の鉄道網の一環と位置付けたいキルギスには不都合だった。ただ、キルギス鉄道幹部によれば、ここ数ヵ月中国の態度は軟化しており、標準機と並行する形で広軌レールを敷設しても構わないとしているという。

 第2に、資金の問題がある。当初の建設費見積もりは20億ドルだったが、2012年までには65億ドルに跳ね上がった。中国へのコンセッション、合弁の創設、資源と引き換えの投資、中国による融資など様々なスキームが検討されてきたが、折り合うに至っていない。ただ、これについてもキルギスと中国は官民パートナーシップによる合意に近付きつつあり、投資を誘致した側が運営権を獲得し、投資が回収できた段階でキルギスに引き渡すという青写真になっているという。

 第3に、プロジェクトの政治的な背景がある。ロシア、中国ともに中央アジアを自らの地政学的勢力圏と見なしており、自らの参加なしに当地で大規模プロジェクトが進展することは妨害しようとする。ロシアは2018年から中国~キルギス~ウズベク鉄道により大きな関心を示すようになり、キルギス鉄道とロシア鉄道間で同プロジェクトへのロシアの参加に関する協定が結ばれた。しかも、後に明らかになったところによると、ロシアは設計や資機材の提供のみならず、資金面での協力の可能性も示した。専門家たちは、まさにこれによりプロジェクトが動き出したと見ている。

 問題の鉄道は関係国にとって恩恵とリスクの双方がある。中国はウズベク、さらには欧州への輸送路が短縮される。キルギスは、自国の鉄道を近代化し、人口が密集したフェルガナ盆地を中国と結んで地下資源の開発を活発化させ、通商および運輸の活発化が期待できる。ウズベキスタンも然りである。

 一方、当該の鉄道は、以前キルギスが懸念していたように、国の南部だけを栄えさせ、南北分断を深刻化する恐れがある。また、キルギスが中国の債務の罠にはまり、将来的に自国の鉄道および天然資源の権益を中国に譲渡せざるをえなくなるかもしれない。キルギスは対中国5大債務国の一つであり、すでにGDPの30%を超えている。中国は債務を返せない国には容赦がない。

 それがゆえに、キルギスではくだんの鉄道プロジェクトにロシアが参加するとの情報を大歓迎しているのである。キルギスはロシアを中国に対抗する後ろ盾と見ているのだ。

 当該の鉄道は、ロシア領とは接していないが、ロシアがそれに関心を示すこともまた道理である。そうすることで、ロシアはその鉄道の建設だけでなく、運行にも影響を行使できる。ロシアはまた、くだんの新鉄道が、中国~ロシアまたは中国~カザフ~ロシアという既存ルートを脅かすほとに拡大することを抑制することもできよう。

 ロシアが当該のプロジェクトに参画すれば、ロシアは新たなルートでの輸送により本格的に参加できるだけでなく、この地域で中国のプレゼンスの増大にも対抗できる。ロシアの主たる動機は、まさに後者であろう。ロシアも、中国も、中央アジアの権益を相手に全面的に渡すつもりはないのだ。


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 昨年の12月4日のものだが、こちらの記事がトルクメニスタンの対中国天然ガス輸出、露中パイプライン「シベリアの力」稼働の影響につき論じているので、要旨を以下のとおりまとめておく。

 ロシアの中国向け天然ガス輸出パイプライン「シベリアの力」は12月2日に稼働した。2024年までには年間の輸送量が380億立米に達すると見られる。

 トルクメニスタンにとっては穏やかでない。中央アジア~中国パイプラインの最初のA列が2009年に稼働して以来、トルクメンは中国へのガス供給で主導的な地位にあった(上掲グラフでグレーが中国の輸入全体、ブルーがうちトルクメンから)。中国への輸出量は2010年の40億立米から2018年の330億立米へと急増し、中国のガス輸入全体の27%を占める最大の供給国となった。

 これで、トルクメンが価格交渉で優位に立ったと思われるかもしれない。しかし、トルクメンは公表していないものの、専門家によれば価格は非常に安いとされる。さらに言えば、トルクメンが代金をキャッシュで受け取っているのか、それとも中国の武器やガスインフラの提供とのバーターになっているのかも不明である。

 中国の需要は引き続き旺盛に伸びているので、シベリアの力が開通したからといって、トルクメンが直ちに脅威にさらされるわけではない。中国は2019年に2,800億立米のガスを消費したが、2030年には5,100億立米にまで伸びると予想されている。しかも、中央アジア~中国パイプラインはいまだフルに活用はされておらず、トルクメンは中国への年間供給量をさらに50億立米拡大することも可能である。

 それでも、シベリアの力は、それでなくても弱いトルクメンの交渉力をさらに低下させる。中国がトルクメンのガス輸出の80%を占めている状況では、ほぼ唯一の買い手としての中国の立場の方が強く、そこにロシアからのガスが流入すれば、中国のトルクメン依存度はさらに低下する。

 それがまさにシベリアの力がトルクメンにとって痛いところである。中央アジア~中国パイプラインの4本目のD列は、300億立米の輸送能力を追加し、2016年までに完成させる構想があったが、無期延期となっている模様である。南アジアに向かうTAPIパイプラインが進捗しているという確たる証拠もない。欧州向けの輸出構想は、不確実性に満ちている。


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 ロシアの『エクスペルト』誌(2019年12月16-22日号、No.51)が、アルメニアの最新情勢についてのレポートを掲載している(K.デニセンコ、P.スコロボガティ署名)。セルジ・サルグチャンが去り、ニコル・パシニャンが政権に就いた「ビロード革命」から1年半が経ち、その後の情勢について報告したものである。レポートの中から、重要と思われるところの要旨を以下のとおりまとめておく。

 パシニャンは2018年4~5月の国民の抗議行動を受け首相に就任し、その後の議会選挙で同氏の「我が歩み」は70.4%を得票した。現在でもパシニャンの支持率は高いが、公約をすべて直ちに実現するわけにはいかないので、徐々に低下しつつはある。また、パシニャンとその一派は、問題をすべて前政権の腐敗のせいにし、具体性のない公約を発するなど、「ポピュリスト」と呼ばれることもある。

 問題は、唯一の同盟国と言えるロシアとの関係である。革命の際には、特にロシアのマスコミなどは、パシニャンを米国派と呼んでいた。その後、「多角外交の政治家」と、若干穏便になったが。就任後、ユーラシア経済連合の会合などでの訪ロはあったが、パシニャンはロシアを一度も公式訪問していない。ブリュッセル、トビリシ、テヘランなどにはすでに行っているのにである。2020年前半には、初めてのロシア公式訪問が行われるという情報もある。一方、プーチンの側は2018年秋にエレバンを訪問して実り多い対話をしているので、両国関係の危機というほどではないのだが。

 パシニャンは米国との協力に熱心だが、それは歴代の政権と同じでもある。一つには、米国がナゴルノカラバフ紛争調停のためのミンスク・グループ共同議長であるという事情がある。また、米国には非常に強力なアルメニア・ディアスポラのロビーがあり、米国からの政治的・経済的支援を取り付けているからである。

 他方、ロシアは近年カスピ海地域での活動を活発化させ、アゼルバイジャンやトルコとの関係を強化しており、これはアルメニア・ロシア関係にとってはマイナスの要因である。また、パシニャンとプーチンの個人的な関係もスムーズではなく、これはパシニャンが革命的な方法で政権に就いたことにも起因しているだろう。また、ロシアはコチャリャン、サルグシャンといった歴代指導者と協力関係を築いてきたが、パシニャンが汚職を理由に前者を逮捕し後者を取り調べていることも、ロシアとの関係をぎくしゃくさせる。

 アルメニアの2019年の成長率は7.5%にも達しようとしており、これは欧州最高の数字である。もっとも、成長は2016年9月~2018年5月のカラペチャン首相の時から続いている現象である。カラペチャン時代の成長は対外借入とレミッタンスの賜物であり、パシニャン首相はそれを維持している形である。貧困率や失業率は依然として非常に高い。

 パシニャン首相はアルメニアの投資環境の悪さは前政権の腐敗のせいだとして、その関係者を厳しく訴追しているが、それがかえって外国人投資家にハイリスク国という警戒感を呼び起こし、投資が伸びない原因となっている。リンデン・インターナショナル社がアムルサルスコエ金鉱山の開発に3.5億ドルを投じながら、環境リスクを理由に採掘に待ったがかかっていることも、外資誘致の障害となっている。

 外国人投資家がパシニャン政府の様子見を続けている現時点で、最大の投資国となっているのはロシアであり、アルメニアへの投資の45%を占めている。アルメニアにはロシア資本の参加した企業が2,000社ほど存在する。


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 12月7日配信とやや古くなってしまった記事だが、今年のニュースは今年のうちにということで、軽くメモしておきたい。こちらの記事によると、トルクメニスタンで2020年に永世中立国25周年を祝う拡大閣僚会議が開催され、ベルディムハメドフ大統領が演説を行った。この中で大統領が外交政策の優先的なパートナーを挙げており(だいぶ総花的ではあるが)、ロシアと国連についてのみ「戦略的パートナー」という言葉を使ったことが注目されている。

 演説の中で大統領はまず、中央アジア、アフガニスタン、イラン、アゼルバイジャンといった近隣国との伝統的な善隣関係を強化することを掲げ、トルコとの関係拡大の方針にも触れた。

 そして、「数世紀にわたり友好関係を維持しているロシア連邦は、トルクメニスタンの戦略的パートナーである。両国の協力関係の歴史的経験に依拠し、我々は今後も政治・外交、通商・経済、文化・人道分野でのロシアとの協力を拡大していく」と述べた。

 天然ガスの輸出先として重要度の高まっている中国との関係に関しては、中国との実り多く意義深い協力を維持して、その関係を拡大するためにあらゆる可能性を利用すると述べた。

 大統領はさらに、トルクメニスタンの外交の優先国には、日本、韓国、マレーシア、インド、パキスタン、中東諸国などがあると指摘した。その後、大統領はさらに、欧州、米州、アフリカなどにも一通り言及した。

 国際機構に関しては、国連(戦略的パートナー)、OSCE、CIS、EU、非同盟諸国会議、イスラム協力機構という順で言及した。地域国際機構として、経済協力機構(10ヵ国の中東および中央アジアの非アラブ・イスラム諸国から成る国際組織)、上海協力機構、ユーラシア経済連合、ASEAN等と協力していく抱負を述べた。


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 12月20日にサンクトペテルブルグでユーラシア経済連合の首脳会議が開催された。こちらのページでその主な成果が論じられているので、主要部分を箇条書きしておくことにする。

  • 域内貿易の制限撤廃の例外措置となっている品目が、現時点で30以上存在し、しばしば加盟諸国の経済主体間で対立点となっている。2010年代初期には40以上あったので、縮小していることは事実だが、制限措置の撤廃に向けた作業を加速すべきであるということが強調された。
  • ルカシェンコ・ベラルーシ大統領は、ユーラシア経済連合とのFTAを希望している第三国は50カ国にも達すると指摘した。
  • 今回のサミットには、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、モルドバのドドン大統領が、オブザーバーとして出席した。両国はユーラシア統合に傾斜しつつあり、実際、モルドバはCIS自由貿易協定の加盟国だし、アゼルバイジャンも同条約に加わることを計画している。
  • 調印された重要な文章の一つが、ユーラシア経済連合における労働者の年金保障に関する協定だった。この協定により、今後連合域内の労働者は、自国で働いた期間だけでなく、ユーラシア経済連合の他の加盟国で働いた期間に対しても、年金が受け取れるようになる。なお、各加盟国は、自国の法律にもとづいて、年金を支払う。今回のルールには大部分の種類の年金と、それに付随する給付金が含まれる。協定は2020年に発効する予定である。
  • 2025年から電力共同市場を始動させるための優先的措置の計画が承認された。国をまたぐ電力網の発展、これらの電力網への接続契約の形式、中央化された取引(電子形態も含む)のルールなどを盛り込むこととなる。これにより、発電所の側は販路を全ユーラシア市場に拡大し、需要家および売電会社は最適な価格でユーラシアのパートナーから電力を購入できるメリットが生じる。
  • 単一サービス市場を機能させるための作業を活発化させることでも合意した。2015年から現在までのところ、サービス市場の60%に当たる53分野で単一市場が機能している。2022~2023年までにすべての分野での単一市場を成立させるべく、近日中に提案を取りまとめることになった。
  • 電力のみならず石油、天然ガス、石油製品の単一市場の形成も加速していくことになった。それを可能にしたのは、2018年に加盟各国がそれらの単一市場を形成するための共通化された国家プログラムを採択し、2019年には共通電力市場形成の条約に調印したということがある。
  • ユーラシア経済委員会の閣僚は4年ごとに交代しており、首相職には、アルメニアのサルキシャン氏に代わって、2020年2月1日からベラルーシのミャスニコヴィチ氏が就任することになった。

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 こちらのコラムが、ここに来てアゼルバイジャンがロシアとの関係を重視するようになっている旨論じている。ロシア人が書いたロシア目線のテキストという感じもなきにしもあらずだが、要旨をまとめておく。

 アゼルバイジャンは優先順位を見直してロシアとの関係を重視するようになっており、それは最近の両国間の高官の往来にも表れていた。アゼルバイジャンは、運輸・エネルギーのプロジェクトで繋がりの深いトルコとの戦略的関係を保持しつつも、ロシアとの既存および計画されているプロジェクトにも関心を強めている。

 アゼルバイジャンのそうした変化の一因は、EUが新たなパートナーを受け入れる熱意が低いことである。アゼルバイジャンにとってそのことは、不利な連合協定の締結を迫られながら、その結果得たのはEUからの輸入増大やいつまで続くかも不確かなビザ免除協定だけだったという隣国ジョージアの教訓からも明らかである。

 先日、アゼルバイジャンのメフリバン・アリエヴァ第一副大統領がロシアを訪問し、国家元首でもないのにプーチン大統領が直々に会談し、二国間関係に尽したとして勲章まで与えた。一部の専門家は、プーチンはメフリバンを「未来の大統領」として受け入れたと論評した。マスコミ等では、イルハム・アリエフ大統領は次期大統領選に出馬せず、妻のメフリバンにその座を譲るという観測が絶えないからである。ただ、そのことの真偽は定かではなく、確かなのは、両国関係が拡大しているという事実である。

 アゼルバイジャンの専門家によれば、最近行われた機構・人事改革の結果、政権におけるメフリバン・アリエヴァ第一副大統領の役割は高まっており、国際舞台で国を代表する役割を与えられ、それには対ロシア関係も含まれ、今般のロシア訪問団を第一副大統領が率いることになったのもまさにそのためだった。昨年、アゼルバイジャン・ロシア経済協力二国間委員会のアゼル側の共同議長にM.ジャバロフ経済発展相が就任したが、同氏はメフリバン第一副大統領のチームの一員であるという。アゼルバイジャンはロシアとの関係で社会・経済分野を重視しており、今回のロシア訪問団にも同分野の高官が多く参加していた。そして、それらの分野の機関を束ねる役割を果たしているのがメフリバン第一副大統領である。

 ここ数年、二国間の貿易は順調に伸びており、すでに25億ドルを超え、本年は30億ドルの達成も見込まれる。経済関係における投資の役割が高まっており、しかも投資は双方向となっている。特にアゼルバイジャン企業が石油精製をはじめるとするロシアの加工部門に投資をしており、たとえば国営石油会社SOCARはロシアのアンチピノ製油所の株式を取得、実質的にロシアの石油精製市場におけるプレーヤーに躍り出ている。一方、アゼルバイジャンは同国が第三国で実施するプロジェクトにロシアの参画を得ており、たとえばSOCARがトルコに開設したスター製油所に供給される原油の半分ほどがロシア産となっている。さらに、アゼルバイジャンとトルコはガスパイプラインTANAPおよびTAPが輸送するガスの一部もロシア産とすることを検討しており、ガスプロムと交渉している。

 対するロシアは、自身が主導する国際的枠組みにアゼルバイジャンの参加を得ることを目指しており、それにはアゼルバイジャンがユーラシア経済連合に加入する可能性も含まれる。現に、プーチン大統領はアリエフ大統領をモスクワでのユーラシア経済連合サミットに招待した。


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 Radio Free Europe/Radio Libertyによる上掲の動画が、中央アジア諸国の中国に対する債務の問題を取り上げている。旧社会主義圏の自由化を唱道する同機関なので、「中央アジア諸国にとって、欧米や国際金融機関と異なり、民主化や人権といった条件を付けない中国からの資金調達は手っ取り早い。その代わり中国は中国の設備や労働力の利用といった経済的条件を付けるのだ」といったことを指摘している。国別の債務額などは以下のとおりだという。

  • カザフスタンの中国に対する国家債務は123億ドル。中国はカザフに50以上の工場を建設している。カザフの石油生産の20%は中国系企業によるもの。
  • キルギスの中国諸銀行に対する国家債務は17億ドル。債務の40%以上が中国に対するもの。
  • タジキスタンの中国に対する国家債務は12億ドル。対外債務の48%強が中国に対するもの。金鉱山の80%以上が中国資本参加企業により採掘されている。
  • ウズベキスタンの中国に対する国家債務は78億ドル。
  • トルクメニスタンの詳細は不明だが、大規模なガルクィヌィシ天然ガス鉱床の開発のためにトルクメニスタンが中国から調達した融資は8億ドルに上る。トルクメン産のガスの90%は中国に供給されているが、その価格は世界価格の3分の1となっており、これによってトルクメンは債務を支払っている。

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 GLOBE+に、「ベルリンの壁崩壊から30年(前編) 激動に飲み込まれたかつての日本人留学生はいま何を思うか」を寄稿しました。

 ベルリンの壁が崩壊したのは、1989年11月9日。それから30年の歳月が流れました。当連載では、今回と次回の2回にわたって、この歴史的大事件に関連した記事をお届けします。前編では、特別ゲストにご登場いただきます。私の元同僚である芳地隆之さん(現在は「生涯活躍のまち推進協議会」事務局長)が、壁の崩壊当時、東ベルリンに留学しており、その経験を綴った著書も発表しておられますので、インタビューに応じていただきました。今回は、そのインタビューの模様をお届けいたします。


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 上の画像があまりにも良かったので、こちらの記事を取り上げたくなった。キルギスの対外債務、なかでも対中国債務の問題を取り上げたものである。

 記事によると、キルギスでは対外債務の問題は常に意識されてはいたが、このところ中国に対する債務が増大し、それが喫緊の問題になっているという。確かに、下のグラフに見るとおり、キルギスの公的対外債務(黒の線)は過去10年ほどで目立って増大しており、それは中国輸出入銀行に対する債務(赤の線)の拡大と見合っている。

 これに関し、現状で債務はGDPの48%の水準だが、危機的水準は80%なので、今のところそれまでには至っていないと、S.ムカンベトフ経済相が発言した。また、「このままでは中国への債務を支払えなくなり、領土で払うはめになるのではないか」との憶測が飛び交う中、K.ボロノフ副首相は、我が国はしかるべく支払を行うと、その不安を打ち消す発言をした。

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 恥ずかしながら、アルメニアの鉄道に関して、これまで個人的に認識していない点があった。安直ながら、ウィキペディアのこちらこちらのページによると、2008年からアルメニア鉄道はコンセッション契約により、ロシア鉄道に経営が委ねられているということである。2008年2月13日にエレヴァンにおいてロシア鉄道とアルメニア側とのコンセッション契約が期間30年で締結され(延長の可能性もあり)、ロシア鉄道が設立した100%現地法人の「南カフカス鉄道」がその経営に当たっているということだ。

 ただし、契約から十余年を経過し、このコンセッション契約は必ずしも上手く行っていないようである。南カフカス鉄道側が投資や納税の義務を怠っているとしてアルメニア側が不満を示せば、ロシア側も2019年9月になって運輸省が本来の契約期限前の撤退の可能性をほのめかすなど、隙間風が吹いている。

 他方、アルメニアは敵対的な国と隣接する内陸国であり、鉄道の国際路線が発達していないという問題がある。ソ連崩壊後、対立するトルコ、アゼルバイジャンとの鉄道路線は廃止された。現時点では、アルメニアの国際鉄道路線は、ジョージアのトビリシに伸びるものだけである。他方、以前は、トビリシからさらにアブハジア経由でロシアまで行けたものの、現在はジョージアとアブハジアの敵対関係により寸断されている。ロシア鉄道としては、子会社を作ってアルメニアにテコ入れしても、ロシア~アルメニア間は鉄道では繋がれていないということになっているわけである。

 そうした中、こちらの記事によれば、先日ロシア鉄道のベロジョーロフ社長とアルメニアのパシニャン首相が会談し、両者の協力拡大で合意、特に黒海をフェリーで運航することを検討することになったという。詳しいことは書かれていないが、要するに、エレヴァンからトビリシに向かった列車が、黒海沿岸の港(おそらくポチあたり)に進み、そこからフェリーで黒海を通り、ロシアのクラスノダル地方のいずれかの港に着いて、アルメニアからロシアまでの一貫輸送を実現しようということだと思う。

 さらに、こちらによれば、両者は南カフカス鉄道の業務を「正常化」する問題についても討議したという。「正常化」ということは、近年それだけただならぬ状況に陥っていたということなのだろう。


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 ユーラシア経済連合の話題が続いて恐縮である。ユーラシアとイランの間では、2018年5月に暫定FTAが締結され、それが本年10月27日に発効することになっている。それで、こちらの記事によると、イランとしてはそれに飽き足らず、ユーラシア経済連合の加盟国になることに前向きな姿勢を示しているということである。このほどイランのエネルギー相が、テヘランで記者団に対して、「ユーラシア経済連合はイランに対して、正式な加盟国になるための3年間の期間を与えた」と発言したという。

 ユーラシア経済連合は、旧ソ連諸国による経済統合を想定した統合機関であり、実際に現加盟5か国もすべて旧ソ連諸国。もし仮にイランの加盟が実現すれば、ユーラシアにとってまったく新たな展開となる。

 しかし、こちらの記事によると、ユーラシア諸国、特にカザフスタンは、イランを加盟国として受け入れることに後ろ向きである。FTAはともかく、米国の厳しい制裁下にあるイランを正式加盟国として受け入れるようなことは時期尚早である。イランが加盟すれば、ユーラシア経済連合が政治化し、反西側同盟のように映ってしまい、このことは石油輸出先や生産プロジェクトで欧米に依存するカザフスタンにとってまずい事態だからである。カザフ国内にはユーラシア懐疑派がおり、イランの加盟はそうした風潮を強めることになる。


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0075

 GLOBE+に、「インドと比べればロシアも普通? 2つの新興大国の関係と比較」を寄稿しました。

 先日のウラジオストクにおける東方経済フォーラムでは、初登場したモディ・インド首相が完全に主役となり、ロシア・インドの経済協力が大いにプレーアップされました。今回のコラムは、それに触発され、昨年12月に行ったインドでの調査の雑感を述べたものです。


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201906

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2019年6月号の中身を、どこよりも早くご紹介。令和最初の号ですが、毎年6月号は、ロシア以外のNIS諸国をまとめて詳しく取り上げることが恒例となっており、今回もNIS総論特集となっております。その際に、ここ1年あまりの間に、NIS諸国は重要な選挙があったり、大統領・首相が代わったりしているところが多いので、その点に着目して「特集◆転換点に差し掛かるNIS諸国」と題してお届けしております。それにしても、3月にナザルバエフ・カザフスタン大統領が突然「終活」を始めたのには驚きましたが、今回、宇山智彦先生にご寄稿いただいた論考は、この問題に関する決定版とも言うべき考察になっております。

 私自身は、「2019ウクライナ大統領選挙の顛末 ―異例の政権交代はなぜ起きたのか」、「第4期プーチン政権下の政策進捗状況」というレポートを書いたほか、2018年のロシア・NIS諸国全般、ウクライナ、ジョージアの経済パフォーマンスについてのレビューを執筆。

 本来の発行日は5月20日ですが、今号は大型連休のしわ寄せで、4~5日ほど遅れることになりそうです。ご容赦ください。


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0056

 GLOBE+に、「石油が枯渇してもアゼルバイジャンは生き残れるか? 転機を迎える『第二のドバイ』」を寄稿しました。


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 こちらのサイトで、アゼルバイジャンの非石油部門の実質経済成長率というグラフが目に留まった。一般に産油国というのは、石油以外の産業も育てて経済を多角化しようとするものだが、アゼルバイジャンはすでに石油の生産がピークを過ぎたと見られるだけに、他の産油国以上に他産業の育成が急務である。しかし、現実には非石油部門の成長率は上図・下記のように推移しており、力強い成長とは言えない。

2014年:6.5%
2015年:1.0%
2016年:▲5.0%
2017年:2.8%
2018年:2.1%
2019年予測:2.8%

 これを見て浮き彫りとなるのは、アゼルバイジャンでは非石油部門が自律的に発展を遂げるというよりは、同部門もまた石油部門の好不調に左右されて浮き沈みしているということである。石油価格が底だった2016年には、非石油部門も5.0%のマイナスを記録した。これはつまり、アゼルバイジャンにおいては、石油部門がドナーとなって、同部門の収益が他部門に(主に政治的な裁量によって)投資されるという構図があるからだと考えられる。むろん、石油部門が他部門にとっての需要を創出するという側面もあるだろう。石油部門が衰退しても大丈夫なように他部門を育成したいのに、実際には石油がコケると他部門もコケるという、悩ましい状況にある。


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20180417

 深い意味はないのだけれど、IMFのデータにもとづき、最新の2018年のロシア・NIS諸国の国民1人当たりGDPを比較したグラフを作ってみたので、お目にかける。

 気付きの点としては、一時ロシアがカザフスタンを下回るような局面があったのだけれど、ロシアがだいぶ盛り返し、カザフスタンを抜いて再びこのエリアのトップに立った。ロシア・ルーブルがある程度持ち直したことが大きいだろう。

 アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージアの南コーカサス3国は、国としての方向性がかなり異なっているが、結果的にだいたい同じくらいの経済水準だというのが面白い。

 ウクライナが、モルドバをも下回り、欧州最貧という位置付けとなっている。実際にウクライナに行ってみると、そんなに身なりは悪くなく、高級自動車なども走っているわけだが、今や国外出稼ぎ労働が外貨の稼ぎ頭のようになっており、出稼ぎ収入はGDPには計上されないので(GNPにはされる)、それほど極貧ではないのに統計上の国民所得は伸びないということになる。

 今回最も目を引いたのは、ウズベキスタンであり、何とキルギスを下回ってしまった。ウズベキスタンは直近の経済パフォーマンスが悪いわけではないのだが、為替の自由化が通貨安に繋がり、ドル換算のGDPが急激に低下してしまったものだろう。


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