ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: 学問のすゝめ

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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「帯にまつわるエトセトラ」です。よかったらご笑覧ください。


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 ロシア入国を禁止されてしまった中村逸郎先生へのお見舞い企画として、私が過去に書いた先生の著作の書評を再録するシリーズ。3回目の本日で最終回となるが、『シベリア最深紀行 ―知られざる大地への七つの旅』(岩波書店、2016年)を取り上げる。

 現代ロシアについて独創的な切り口から多くの研究を発表している中村逸郎氏の最新刊。テーマはシベリアだが、私の理解するところ、本書も一種のロシア論だと思う。つまり、ロシアを論ずるにあたって、そのメインストリームではなく、地理的な辺境、非ロシア人、非正教徒、正教徒の中でも異端派などにあえてフォーカスすることによって、いわばそこから逆照射するような形でロシアというものの本質を浮かび上がらそうとしているように、私には思える。ロシアのことをこれから知りたいという初学者が、まず本書を手に取ったら戸惑うことになるだろうが、一定以上のロシアの知識のある方が、より深くロシアを理解しようと思ったら、本書から得られるところはきわめて大であろう。

 と、若干お堅いことを申し上げてしまったが、単純に旅行記として読んでも、本書はとても面白い。私もロシア研究者の端くれなので、できることなら80以上あるロシアの地域をすべて訪問してみたいという夢があるが、実現は至難の業である。中でもシベリアの奥地にあるような諸地域を訪問するのは、まず無理だろうと諦めている。その点、本書におけるヤマロ・ネネツ自治管区、トゥヴァ共和国、ザバイカル地方などの訪問記は、非常に貴重だ。しかも、私は普段ロシアの地方を訪れる時、州都と、せいぜい州の第2の都市くらいの訪問で済ませてしまうことが多いが、著者は都市というよりも、シベリアの村に分け入っていく。とりわけ、タイガの奥地に潜む古儀式派の村を訪問するくだりには、鬼気迫るものがあった。

 本書の中でとりわけ白眉と言えるのが、トゥヴァ共和国訪問の記録だろう。驚くようなエピソードのてんこ盛りであり、本当に逆立ちして世界を見たような変な気分になる。実はこの最貧共和国の幸福度がロシアで一番高いというのにも驚いたが、我々経済関係者が注目しているトゥヴァの鉄道建設に関しては、地元民は必ずしも歓迎していないという。トゥヴァ共和国の医療施設には常勤のシャーマンがいるそうで、医療行為に加えて祈祷や生活相談も施されているというから、驚きだ。ただ、著者が実際にシャーマンの治療を受けてみたところ、何とも人間臭いやり取りも。トゥヴァではシャーマニズムと仏教が奇妙な形で共存しているそうで、ロシア人が推し進めるロシア正教とも相まって、一筋縄では行かない宗教模様となっている。

 複数の宗教が奇妙に共存しているのは、ザバイカル地方も同じであり、チタはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の共存ゆえ「第2のエルサレム」とも称されているのだそうだ。ところが、ここにはチベット仏教も根を張っており、実はロシア正教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒が自らにとっての「2つ目の宗教」として仏教を受け入れるケースが多いのだそうだ。大学生が選択する「第二外国語」というのはよく聞くが、「第二宗教」などというのは、個人的にも初耳だ。

 私自身は、現代文明にどっぷり浸かった人間であり、本書の著者のようにシベリアの道なき道を進んだりするのは無理だし、辺境の民と同じ目線で対話をしたりすることはできない。本当に、本書によって得がたい疑似体験をさせてもらった。


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 ロシア入国を禁止されてしまった中村逸郎先生へのお見舞い企画として、私が過去に書いた先生の著作の書評を再録するシリーズ。2回目の本日は、『虚栄の帝国ロシア ―闇に消える「黒い」外国人たち』(岩波書店、2007年)を取り上げる。

 最近ロシアで外国人労働者を見かけることが本当に多くなった。そうしたなか、周辺諸国からロシアに押し寄せる出稼ぎ労働者に焦点を充て、この問題を通じて「内なる帝国」としてのプーチンのロシアに迫ろうとしているのが、本書『虚栄の帝国ロシア』である。

 一体ロシアにはどれくらいの数の外国人労働者がいて、民族別の内訳はどうなっているのか? こうした点について、信頼できる情報はなかなか得られない。それもそのはずで、ロシアで働いている外国人の9割以上は不法就労者だという。本書では、まず第1章において、現地の報道などにもとづき、この問題を定量的に整理し、全体像を描くことを試みており、有益である。

 だが、本書の真骨頂は、現地での徹底したフィールドワークにある。著者は、「黒い労働者」、すなわち中央アジアやコーカサスをはじめとする旧ソ連諸国からロシアに仕事を求めてやってくる出稼ぎ労働者たちに密着し、その実態を明らかにしていく。それのみならず、「黒い労働者」を使用する側のロシア人にも長期取材を試み、その本音とからくりをあぶり出しているのだ。いつものことながら、著者の独自の着眼点と、それをとことんまで突き詰める仕事振りには、敬服せざるをえない。

 このように徹底した取材・調査の結果浮かび上がる外国人労働者の実態、ロシア社会の病理は、実にショッキングである。と同時に、タジク人と、キルギス人と、モルドバ人で、誰が一番働き者かといった興味深い話題もちりばめられており、教えられるところが多い。

 そして、こうした研究結果にもとづき著者は、プーチン政権が「旧ソ連構成国のなかで、いわばロシアを突出させ、そこに周辺国の労働力を吸収しようと」しており、「そのような政策をとおして、ロシアの旧ソ連圏にたいする支配力を確立することをめざし」ていると主張する。「プーチン政権はロシア国内において周辺民族を収奪する内なる帝国を打ち立てようとしている」と結論付けている。

 ただ、評者は個人的に、この主張は刮目に値するものの、やや一面的ではないかと感じた。私見によれば、人口減・労働力不足に直面しているロシアに、石油ブームが到来したら、誰が大統領でどんな政策をとろうとも、周辺の貧困国から出稼ぎ労働者が集まるのは必然である。結果的に「内なる帝国」を思わせるような構図が生じているのはそのとおりだし、現実に起きている人権問題は看過できないが、その原因をもっぱらプーチンの政策に帰することには慎重であるべきではないか。

 このように、個人的には若干引っかるところもあったが、迫真のルポルタージュとしての本書の価値は、いささかも減じるものではない。秀逸なロシア論、そしてNIS諸国論として、ぜひ一読をお勧めする。


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 昨日ロシアが、制裁への対抗措置として、今後ロシア入国を禁止する人物リストを発表したことが話題になっている。リストの末尾に掲載されていたのが、中村逸郎・筑波学院大学教授だった。

 テレビの面白コメントの印象が強すぎ、色眼鏡で見ておられる方もいるかもしれないが、中村先生はものすごく立派なロシア研究者である。綿密な現地調査に基づいた迫真の研究書を何冊も上梓されており、特に岩波書店から出た一連の書籍は必読である。私などが逆立ちしても書けないような本ばかりだ。個人的には、岩波の書籍での中村先生こそが本物であり、テレビの中村先生はサイボーグではないかと疑っている。ああいう調査手法からして、ロシアに渡航できなくなるのは大打撃のはずで、気の毒でならない。

 岩波書店で中村先生を担当した編集者は、私もお世話になった方だった。その縁で、中村先生の著作の書評を3回ほど書いたことがある。そこで、過去に書いた書評を当ブログで再録することにしたい。1回目は、『帝政民主主義国家ロシア ―プーチンの時代』(岩波書店、2005年)である。

 本書のタイトルを見て、私は最初、最近よくあるパターンのプーチン政治論なのかなと思った。つまり、プーチン政権下で強権的な中央集権化が進んでいることを告発調に論じたり、サンクトペテルブルグ出身者や旧KGB関係者などの人脈・派閥、さらにはプーチン自身のパーソナリティなどを分析したりと、そういう内容なのだろうと勝手に想像したのである。ところが、実際に読んでみると、かなり違っていた。もちろん、本書もプーチン政権下での中央集権化・強権化について論じているし、その点こそが議論の根底にある。だが、本書の真価は、そうした政治を支えている一般庶民の生活実態、心理、行動様式などに鋭く切り込んでいる点にある。それにより、単なるプーチン政権分析にとどまらず、骨太なロシア論となっているのだ。

 この本の主たる舞台は、モスクワの中心部にある「ロシア大統領府住民面会所」である。面会所には、様々な問題を抱えたロシア市民が(実は他の旧ソ連諸国の市民も!)、大統領宛の直訴状を持参して、引きも切らずに訪れる。彼らの訴える問題の多くは、住宅の修繕といったような、本来であれば地方自治体や町内会のレベルで解決すべきものだ。にもかかわらず、なぜそれが大統領への「直談判」(もちろん実際に大統領の耳に届くわけではないが)に発展するのか。この問題に着目した著者は、いくつかの事例に密着取材を敢行し、現代ロシア社会・政治のジレンマを丹念に描いていく。

 そして、このような基盤のうえに成り立っているプーチン体制を、筆者は「帝政民主主義」と呼ぶわけだ。そこでは、帝政時代と同様、「信頼できる最高権力者を国家の頂点に配し、かれに権力を集中させることで民主主義が実現されると考えられている。最高支配者と民衆が直接的な関係で結ばれる一方で、代議制民主主義と社会の中間権力が弱体化している」(本書228頁)。このような分析自体はとくに目新しいものではないだろうが、とかく「ロシアはこういう国なのだ」と言いっ放しにしてしまう論者が多いなかで、地道な実証研究によってその構図を浮き彫りにした著者の議論には格別の説得力がある。常に独創的な切り口でソ連/ロシア政治研究に取り組んできた著者の面目躍如であろう。

 重いテーマを扱いながら、読み物として面白く読めるのがありがく、一気に読めてしまった。


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m202205

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』の中身をどこよりも早くご紹介。

  毎年5月号は、ロシア経済および日ロ関係に関する総論的な特集号と決まっております。今年も、定番のマクロ経済・財政レポート、日ロ貿易レポート、石油・ガス産業レポートなどが柱になっております。しかし、現状で、2021年の数字をまとめることだけでは意味がないので、その作業に加えて、ウクライナ侵攻以降のロシア経済をめぐる急激な情勢変化を可能な限り誌面に盛り込むことに努めました。 その結果、力作のレポートが集まり、過去最高レベルの142ページの大編成となっております。絶望的な情勢の中でも、小誌の誌面の充実だけは図るという矜持を示したつもりです。

 服部個人は、特集の枠内で「欧州市場を失うロシア鉄鋼業」を、枠外では「港湾はウクライナ経済の生命線」を執筆。「セヴァストーポリ攻防戦の慰霊碑」というフォトエッセイも。

 4月20日発行。お申込み・お問い合わせは publication@rotobo.or.jp まで。


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202202

 HP更新しました。マンスリーエッセイ「私が産湯を使ったリアリズムの国際政治学とは」です。ご批判は募集していません。


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m202203

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2022年3月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号では「ロシアの地域情勢から見えてくるもの」という特集をお届けいたします。昨年もそうでしたが、なぜかこの時期に地域特集を組むことが多いですね。今回は、やや拡大解釈的に、少しでもローカルな要素のある記事は特集の枠内に位置付け、単にトピックとして取り上げている地域を掘り下げるだけでなく、そこから今のロシアを探ってみようといった狙いを込めています。なお、当会らしく、極東成分の多い地域特集となっております。

 表紙の写真は、コンテナ貨物で溢れ返る極東のウラジオストク港の最新の様子を捉えたもの。

 服部個人は、特集の枠内で「ロシアの天然ガス東方シフトは可能か」というレポートを、枠外では「緊迫するウクライナの経済情勢はいかに」というレポートを執筆。

 2月20日発行予定。


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20220130

 先日のブログですでに触れましたが、日本貿易振興機構・アジア経済研究所に所属し、カザフスタンを中心とする中央アジア研究で活躍してきた岡奈津子さんが、急逝されたとのことです。改めて、HPに「さようなら岡奈津子さん」という小文を掲載しました。


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 中央アジア、特にカザフスタンの研究で活躍し、我が国における第一人者だった岡奈津子さんが急逝されたとのことです。つい1ヵ月ほど前に連絡をとりあった時には変わった様子はなかったので、信じられない思いです。

 岡さんと言えば、中央アジアの民衆のひだに分け入ったような研究スタイルを持ち味とし、特に2019年に上梓された『〈賄賂〉のある暮らし:市場経済化後のカザフスタン』(白水社、2019年)は大きな評価を獲得しました。

 以前当ブログに掲載した紹介文を再掲載させていただきます。心よりご冥福をお祈りいたします。

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 これはとんでもない本が出た。カザフスタンだけでなく、ロシア・ユーラシア諸国にかかわる者全員にとっての、必読書と断言できる。岡奈津子『〈賄賂〉のある暮らし:市場経済化後のカザフスタン』(白水社、2019年)である。Amazonから内容紹介を拝借すれば、以下のとおり。

 ソ連崩壊後、独立して計画経済から市場経済に移行したカザフスタン。国のありかたや人びとの生活はどのような変化を遂げたのだろうか。独立前からカザフ人のあいだにみられる特徴のひとつに「コネ」がある。そして、市場経済移行後に生活のなかに蔓延しているのが、このコネクションを活用して流れる「賄賂」である。経済発展がこれまでの人びとの関係性を変え、社会に大きなひずみが生じているのだ。本書は、市場経済下、警察、教育、医療、ビジネス活動など、あらゆる側面に浸透している「賄賂」を切り口に現在のカザフスタンをみていく。賄賂は多かれ少なかれ世界中の国々でみられる現象だが、独立後のカザフスタンは、それが深刻な社会問題を生み出している典型的な国のひとつである。ここから見えてくるのは、人びとの価値観の変容だけでなく、ほんとうの「豊かさ」を支える社会経済システムとはどのようなものかという問題だ。豊かさを追い求めた、この30年の軌跡。

 この本を読んで、「自分が今まで見てきたつもりでいたカザフスタンは、何だったのか?」と、愕然とさせられた。自分が断片的にでも知っているつもりでいた、公式的な存在としてのカザフスタンという国とは別に、まるでパラレルワールドのように、もう一つのカザフスタンが存在したのだ。そして、どうも、そちらのカザフスタンの方が、本物のようなのである。

 本書は、カザフスタンおよび旧ソ連全般の地域研究を縦糸、政治・経済・社会学的な腐敗論を横糸とし、その両方の関心に見事に応えるものとなっている。カザフという国を知るための本であるのはもちろん(他の旧ソ連諸国のヒントも)、カザフそのものに興味がなくても、腐敗、途上国・新興国の社会、移行経済などについて大いに考えさせられる。2,420円と、この種の本としては手頃な価格でもあり、ぜひご一読をお勧めしたい。


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 今般、産経新聞出版より、一般財団法人国際経済連携推進センター(編)『コロナ禍で変わる地政学 ―グレート・リセットを迫られる日本』が発行されることになり、そこに拙稿「コロナワクチン開発では先行したロシアが抱える3つの弱み」が載録されています。

 1月20日発行。

 10月中旬に執筆したものなので、ロシアの最新情勢とは行きませんが、同国がコロナ危機で露呈した弱点を、ワクチンの問題を通して考察したものです。

 1年余り前に、やはり一般財団法人国際経済連携推進センター(編)『コロナの先の世界 ―国際社会の課題と挑戦』(産経新聞出版、2020年)に、「コロナ危機であらわになったプーチン・ロシアの国家体質」と題する拙稿を掲載していただきましたが、その続編という位置付けになります。


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202112

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年12月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号では「ロシア経済の新トレンドを読み解く」と題する特集をお届けしております。要するにあまり明確なテーマ性はなく、ロシア経済に関するものなら何でもありという特集ではあるのですが、結果的に、ロシア経済の今を様々な角度から切り取ることができ、有意義な号になったという手応えを感じています。

 服部自身は、特集の枠内で「にわかに政治性を帯びるロシア肥料産業」、枠外では「史上最高の豊作に沸くウクライナ」というレポートを執筆。「輸出量世界第2位のウクライナ産はちみつ」と題するミニコラムも。

 11月20日発行。


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202109

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年9-10月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

  今号では、「パンデミック下の医療保健・製薬業」と題する特集をお届けしております。医療分野が日ロ経済協力プラン8項目の1つとなり、そこにコロナ危機が重なったことから、私どもロシアNIS貿易会の情報発信でも医療分野に関するものが増えています。小誌ではすでに、2020年7月号で「コロナ危機に負けない」、2020年9-10月号で「ポストコロナの医療・医薬品産業」という特集を試みており、今号はその続編・最新版ということになります。

 服部個人は、「コロナワクチンで勝ち切れなかったロシア」、「プーチンはウクライナ論文で何を語ったのか」というレポートを執筆。「不憫だったモスクワ・オリンピックに思いを馳せる」というミニエッセイも。

 8月20日発行予定。


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m202108

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年8月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号は、2020年の貿易統計を網羅的にお伝えすることに主眼を置いたロシア貿易特集となっております。2020年の最大のトピックは、新型コロナウイルスのパンデミックと、それがもたらした世界経済の変調だったと思います。ただし、昨今ではタイトルにやたら「コロナ禍」と入れる人が増え、先日所内でもタイトルに「コロナ禍」を入れるのを禁止する布告を出したばかりですので、今号の特集タイトルではあえて「コロナ」を使うのは避け、「激変する環境下のロシアの貿易」といたしました。

 服部個人は、特集の枠内では、「2020年のロシアの貿易統計」、「ロシア・ベラルーシ石油協業の落日」、「ウクライナ・ロシアの貿易戦争は続く」を執筆。枠外でも、「戦略的安定に道筋をつけた米ロ首脳会談」を執筆しています。

 7月20日発行。


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 こんな新刊が出ました。S.アレクシエーヴィチ・鎌倉英也・ 徐京植・沼野恭子『アレクシエーヴィチとの対話: 「小さき人々」の声を求めて』(岩波書店)です。皆様もよろしかったら、ぜひ。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。今号では、「特集◆今こそあえて石炭を語ろう」をお届けいたします。2011年8月号で「ロシア・NIS諸国の石炭産業」と題する特集を組んで以来、ほぼ10年振りの石炭特集ということになります。昨今では、地球温暖化防止の観点から石炭には厳しい目が向けられており、もちろんそういうことは重々承知の上でというニュアンスを、特集のタイトルに込めました。もしかしたら、これが最後の石炭特集かもしれませんが、ロシア経済および日ロ経済関係に石炭が果たしている役割はかえって高まっており、またそのうちお鉢が回ってくるかもしれません。

 服部個人は、特集の枠内では「悩み深きウクライナの石炭・電力業」を、枠外では「ロシアの非原料・非エネルギー輸出目標の見直し」を執筆しています。

 6月20日発行予定。


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 商売柄、自分の研究分野についての新刊などは常にチェックするようにしている。その際に、安直だが、Amazonの検索で、「本」のジャンルを選び、「ロシア」というキーワードで検索をしてみるというのが、常套手段である。

 ところが、実を言うと、Amazonの検索はこの用途では使いにくく、最近ますます酷くなってきたように感じる。ロシアというキーワードで検索すると、ロシア美女のセクシー写真集の類がやたら数多くヒットする。また、当方は「本」のジャンルで検索しているのに、ロシアのカレンダーくらいまでは許せるとしても、「ロシア産ほっけの開き」の類まで表示されてしまう。最近、さらに困ったことに、「ロシア」というキーワードで、ロシアで発行されたロシア語の本までもが大量に表示されるようになってしまった。そんなこんなで、Amazonの検索は、ちょっとでも関連するあらゆるものを表示するので、「日本で発行されたロシアについての最新書籍を検索したい」というニーズには、甚だ不向きになっていると実感している。

 私が至った結論は、単純な検索という用途には、楽天ブックスの方がはるかに向いているということである。楽天ブックスで「ロシア」と入れて、「新しい順」に設定すれば、ずばり私の知りたい「日本で発行されたロシアについての最新書籍」が秩序立って表示され、大変結構である。

 似たような話だが、今般、私は「地経学」という術語について学びたいと思い、まずはAmazonで書籍検索してみた。私は、そのものズバリ、タイトルに「地学」と入っている本を知りたいのだけれど、Amazonは頭が良すぎるというかお節介というか、むしろ「地学」というタイトルの本を推してくる。中でも、北岡伸一・細谷雄一(編著)『新しい地政学』(東洋経済新報社、2020年)が一押しという雰囲気だった。チェックしてみたところ、この本には田所昌幸「武器としての経済力とその限界ーー経済と地政学」という章もあるので、本全体のタイトルには入っていないが、本の随所で「地経学」という術語の言及もあるのだろうと想像し、電子版を購入してみた。ところが、実際にはこの本には「地経学」という言葉は一箇所も出てこなかった(電子書籍を文字列検索したので、間違いはないだろう)。この本自体はむろん非常に学ぶところの多い有益なもので、買って損はなかったが、Amazonで「地経学」というキーワードで商品検索し、上位に表示された書籍に、実際には「地経学」という言葉が一箇所も出てこないというのは、ちょっと考え物ではないかと思ってしまった。

 それに対し、ここでも、楽天ブックスで検索した方が、本のタイトルに「地経学」と入っているものを素直に並べてくれるので、個人的にはその方が助かる。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年1月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

  雑誌の上ではもう2021年に突入し、新色のオレンジ色の装いも新たにお届けいたします。そして、今号の特集は、「政情不安に揺れるNIS諸国」。小誌としては異色の内容ですが、8月に発生したベラルーシの脱ルカシェンコ運動を皮切りに、秋にかけその他のNIS諸国でも選挙をきっかけにした政治変動が発生、さらにはナゴルノ・カラバフで本物の戦争が勃発するに至って、これはNIS諸国の今後を左右するだけでなく、ロシアの行く末にも大きく影響する現象であり、やはり正面から受け止めて特集を組むべきだと判断しました。

 いつもは表紙をお目にかける程度ですが、今回の「政情不安に揺れるNIS諸国」は渾身の特集ですので、特集記事のタイトルと執筆者を以下のとおりご紹介します。

  • 2020年ベラルーシ大統領選挙の顛末 ―人々は恐がることを止めた―(友繁弥寿志)
  • モルドバ大統領選挙の争点とロシアの影響力(六鹿茂夫)
  • 第2次ナゴルノ・カラバフ紛争 ―凍結された紛争の再燃―(立花優)
  • 2020年ジョージア総選挙 ―コロナ禍・米大統領選・カラバフ戦争の嵐の中で―(前田弘毅)
  • 混迷極めるキルギス第3次革命(中馬瑞貴)
  • ロシアとの関係強化を模索するウズベキスタン(中馬瑞貴)
  • タジキスタンの盤石な政治体制と脆弱な経済(中馬瑞貴)
  • ウクライナで実施された奇妙な国民意識調査(服部倫卓)
  • ロシア国民は周辺国の事件をどう見ているか(服部倫卓)
  • サンタ・ブレモルはルカシェンコの味方か敵か(服部倫卓)
  • ナゴルノカラバフ、見えない未来(小熊宏尚)

 以上です。12月20日発行。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年11月号を、どこよりも早くご紹介。今号は、「転換期のロシア極東経済」と題する特集号となっております。ここ数年の日ロ経済関係では、9月にウラジオストクで開催される東方経済フォーラムが、1年の最大の山場となっており、小誌でもそれに合わせて11月号でフォーラムと極東経済の特集を組むのが恒例となっていました。今年はフォーラムがなくなってしまいましたが、極東の重要性に変わりはありませんので、今回の11月号は極東特集と相成りました。

 なお、今号より、大橋巌さんの「シリーズ 工業団地探訪」、ミナト国際コンサルティングさんの「HOW TO ビジネス実務」と、2本の新連載がスタートしましたので、ご期待ください。

 服部自身は今号では、特集の枠外で、「ロシアはベラルーシをどう『処分』するのか」、「様変わりするウクライナのエネルギーバランス」と2本のレポートを書いております。

 10月20日発行。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年8月号の中身を、いち早くご紹介。今号では、毎年恒例の貿易統計レポートを軸に、「ロシアの貿易の試練と挑戦」と題する特集をお届けしております。

 服部個人は、「2019年のロシアの貿易統計」というメインのレポートのほか、「ロシア肥料産業は外需と内需の両にらみ」、「激化するウクライナとロシアの貿易戦争」、「国内市場の不振を補うロシアの自動車輸出」、「戦勝75周年記念式典から改憲国民投票へ」を執筆。

 7月20日発行予定。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。7月号は、「コロナ危機に負けない」という特集号となっております。

 しばらく前から、月報に掲載する記事で新型コロナウイルスの問題に言及するケースが増えてはいましたが、ついにそれを正面に掲げる特集と相成りました。今年の初め頃には、まさかこんなに気の滅入るテーマの号を作る羽目になるとは、想像だにしませんでした。ただ、単に「感染が増えて大変だ」という話だけでなく、いかにして危機を乗り切り、本来の経済・社会活動を取り戻していくかという視点にこだわったつもりです。

 服部自身は、「ロシア財政・金融政策に変更はあるか」、「ウクライナ労働移民の流れは変わらず」、「奮闘を続ける『ミンスクの台所』」と、短いものを書いただけです。むしろ、月報は今回より印刷の方式が変わるので、それへの対応の方が大変でした。

 6月20日発行予定。


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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「『専門家』を疑え」です。よかったらご笑覧ください。

 コロナ危機で、自宅待機を余儀なくされる人が増え、流行ったものの一つに、「ブックカバーチャレンジ」というものがありました。ただ、私は友達がいないせいか(笑)、誰からもオファーを受けませんでした。そこで、誰にも頼まれてもいないのに、勝手に一冊紹介してみたいと思います。永井陽之助『現代と戦略』(文藝春秋、1985年)です。この名著から、新型コロナウイルス拡大防止策への教訓を引き出してみたいと思います。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年6月号の中身をご紹介。毎年6月号は、ロシアではなく、それ以外のNIS諸国が主役となる特集号です。今年は貿易に関するレポートが集まりましたので、「特集◆NIS経済・貿易の最新動向」と題しお届けしております。

 服部自身は、「2019年のロシア・NIS諸国の経済トレンド」というメイン記事の中で、「ロシア・NIS全般:まだら模様の成長と迫り来るコロナ危機」、「ウクライナ:穀物収穫・輸出が顕著に伸びる」、「アルメニア:欧州で最高の7.6%成長を記録」、「ジョージア:試練に直面する観光立国」と、4つのパートを担当。それ以外にも、「ウクライナの鉄鋼輸出はほぼ現状維持」、「予想外の展開をたどった戦勝75周年」というレポートを執筆しています。

 5月20日発行予定。


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 このほど、こんな本を読了した。藤巻健史『日本・破綻寸前 自分のお金はこうして守れ!』(2020年、幻冬舎)である。単行本は2,059円だが、Kindleだと1,158円なので、Kindleで読んだ。というか、私の場合、値段が同じでも、電子書籍を選ぶが。

 Amazonから本の内容をコピーさせていただくと、以下のとおり。

 日本経済は年々悪くなっているのに、日銀はお金のばらまきをやめず、社会保障費なども増加する一方で、日本財政がよくなる兆しはまったくない。「日本の財政が破綻する日(=Xデー)はいつ起きてもおかしくない」と著者。Xデーが起きたとき、政府は守ってくれないし、自分のお金は自分で守るしかない。本書では著者の資産運用法を公開し、読者にも、ハイパーインフレが起きても大丈夫な手法を具体的に伝授。

 私は財政タカ派であり、このブログでも過去に何度か、日本の財政危機に関する書籍を取り上げている。なので、藤巻さんの論旨についても同意するし、本書を読んで改めて危機感を新たにした。

 あまたある日本の財政危機に関する書籍の中で、本書の特徴は、著者が金融マンとして国際金融市場の第一線で活躍した経験があるだけに、その実務家としての経験を踏まえたエピソードなどが非常に興味深い点、またXデーに備えて具体的にどのような資産選択をしたらいいかという指南が語られていることだろう。ただ、個人的にはその指南の方向性はやや上級者というか富裕層向けという感じがして、必ずしも自分のような庶民には当てはまらないかもしれないとは感じた。

 コロナ危機で、日本政府も財政出動を迫られ、その財源問題などが議論の的となっている。本書には、一応その言及もあるものの、問題が本格化する前に上梓されたので、残念ながらコロナ財政出動に関する記述は充分とは言えない。それでも、コロナパニックに直面し、日銀はお金を刷って刷って刷りまくれ、それを国民に配れば万事解決といった無責任な議論も横行する中で、ぜひ読んでおきたい一冊だと思う。


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202005

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年5月号の中身をいち早くご紹介。今号では、毎年5月号で恒例となっているロシアの総論特集をお送りしております。世界がコロナウイルスの感染拡大で騒然とする中で、石油価格が下落しても、それでもロシアとしてはエネルギーを武器にこの難局に立ち向かっていかざるをえないだろうということで、「特集◆動揺する世界とエネルギー大国ロシア」と題しお届けする次第です。

 特集にマッチする表紙写真がないかと思って探したものの、手持ちには良いものがなく、ちょっと特集の方向性とは違う、むしろ楽し気なものになってしまいました。以前、自動車関係の見本市で撮影したロスネフチのブースであり、主に自動車オイルをPRしていたものですが、かろうじてエネルギー繋がりということで、ご容赦ください。

 今号は服部自身は脇役で、「足元で急変するロシア経済」、「2019年のウクライナの貿易実績」という短い記事を書いただけ。発行日は4月20日ですが、今号はお届けがちょっと遅れるかもしれません。


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19

 ツイッター界隈で、ディープラーニング翻訳のDeepLというのが話題になってたので、「使用頻度の高い英和とかはともかく、ロシア語はどうなのかな?」と思い、冷やかしてみた。そしたら、ちゃんとロシア語も使え、しかも予想以上の完成度で、驚かされた。グーグル翻訳を軽々と抜き去っている。

 たとえば、冗談で、以下のような日本語を放り込んでみる。

 私の名前は服部です。もちろんあだ名に決まってます。出身は静岡県って知ってました? 貿易促進団体に勤務しています。私の趣味はサッカー観戦と音楽鑑賞です。行け、ディナモ・キエフ! この翻訳ツール、優れものだな。でも、結局カネをむしりとられるのではないかという心配も、あるとかないとか。

 これを、Google翻訳で訳すと、以下のようになる。

 Меня зовут Хаттори. Конечно, прозвище решено. Знаете ли вы о префектуре Сидзуока? Work Я работаю в организации по продвижению торговли. Мои хобби - смотреть футбол и слушать музыку. Иди, Динамо Киев! Этот инструмент перевода великолепен. Но не стоит беспокоиться, что деньги будут сняты.

 一方、DeepLでは、以下のようになる。

 Меня зовут Хаттори. Это, конечно, прозвище. Ты знаешь, что я из префектуры Сидзуока?  Я работаю в организации по содействию торговле. Мои увлечения - смотреть футбол и слушать музыку. Вперед, Динамо Киев! Этот инструмент перевода отлично подходит. Однако есть опасения, что в конце концов у них могут отобрать деньги или нет.

 どうだろう、全体的にDeepLの方が個々の語句ではなく文脈を捉えて、的確なロシア語にしてくれていることが分かる。たとえば、Googleで「決まってます」を「решено」と単に単語を対応させているだけなのに対し、DeepLはちゃんと文意を捉えて訳している。特にぐっと来るのはディナモ・キエフのくだりで、Googleの「Иди」という直訳に対し、DeepLでは「なるほど、これはスポーツチームの話だな」とAIが読み取って、スポーツの応援でよく使われる「Вперед」にしてくれているわけである。最後はわざと「あるとかないとか」なんて曖昧な日本語を使ってAIの精度を試してみたが、やはりDeepLの方が破綻は少ない。

 うーむ、自動翻訳が、しかも日露ですら、ここまで来ちゃったのか。何人か、仕事を失う知り合いの顔が浮かぶ。


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 こんな新刊のご紹介をいただいたので、取り急ぎこちらでも共有させていただく。稲垣文昭・ 玉井良尚・ 宮脇昇(編)『資源地政学: グローバル・エネルギー競争と戦略的パートナーシップ』(法律文化社、2020年)。

 「地政学的観点から資源をめぐる国際政治動向を学ぶ。「接続性」概念から地政学的経路や障壁を俯瞰したうえで、資源貿易が政治体制や民族問題の構図にどのような影響を与えているのかを考察し、世界で起こっている資源をめぐる争いのダイナミズムを捉える視座を提供する。」という内容。

 余力があれば、後日、中身についてもうちょっと詳しくコメントさせていただきたいと思う。


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 田畑伸一郎・後藤正憲(編著)『北極の人間と社会 ―持続的発展の可能性(スラブ・ユーラシア叢書14)』(北海道大学出版会、2020年)については、先日すでに簡単に取り上げたが、このほど月報用に書籍紹介文を書いたので、それをここで共有する形で改めて紹介させていただく。

 北海道大学出版会から今般、「スラブ・ユーラシア叢書14」として、『北極の人間と社会 ―持続的発展の可能性』が刊行された。

 我が国においては、2015年度から文部科学省の「北極域研究推進プロジェクト(ArCS)」が開始され、国際共同研究を推進するための8つのテーマ(サブプログラム)の一つとしてテーマ7「北極の人間と社会:持続的発展の可能性」が設定された。本書は、主にこのテーマ7に取り組んだ研究者たちがその成果を発表すべく、企画されたものということである。

 本書では、急変する北極域の気候変動と環境変化が、人間社会にどのような影響をもたらすのか、また、人間はそれにどのように対応するべきかを、経済発展、環境と社会、国際関係とガバナンスの視点から検討し、北極域の持続的発展の可能性を探ろうとしている。具体的には、以下のような構成となっている。

序 章 持続的発展を目指して(田畑伸一郎・後藤正憲)
第1部 北極の経済開発
第1章 北極海航路(大塚夏彦)
第2章 石油とガス(田畑伸一郎・本村眞澄)
第3章 漁業(成田大樹・平譯享)
第2部 環境と人間の相互作用
第4章 凍土と文化(後藤正憲・中田篤・飯島慈裕)
第5章 変化と適応(藤岡悠一郎・高倉浩樹・田中利和・S.グリゴリエフ)
第6章 先住民とモニタリング(近藤祉秋)
第3部 北極のガバナンス
第7章 国際関係(大西富士夫)
第8章 北極評議会(稲垣治・幡谷咲子)
第9章 国際法に基づく秩序づくり(柴田明穂)
第10章 開発と先住民族(高橋美野梨)

 『ロシアNIS調査月報』の中心的な読者層である実務家諸氏にとっては、第1部で論じられている北極海航路、石油ガス開発、漁業の各章が、とりわけ直接的な関心事となろう。特に北極海航路を扱った第1章は単独の執筆者によるものでありながら、輸送の需要とコスト、船舶の構造、航行の安全性、環境への影響など、きわめて多面的な分析が施されており、学ぶところが大きい。

 ところで、本書序章の中では、北極研究において直面した自然科学系と人文・社会科学系の研究者同士の相互理解の難しさが吐露されている。ArCSにおいては、それまで自然科学系の独壇場であった北極研究に、人文・社会科学系の研究者が参入してテーマ7が設けられた点が画期的だったのだが、超克すべき両者のギャップは大きかったということだ。

 今般完了したArCSに続いて、本年からはその続編となるプロジェクトが始動する予定と伺っているので、より一層の成果に期待したい。


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202004

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年4月号の中身を、いち早くご紹介。今号では、「ロシア極東・シベリア・北極の経済発展」と題する特集をお届けしております。

 小誌ではこれまでも、極東の特集、シベリアの特集、北極の特集、全部やったことがありましたが、その3つをいっぺんにやる欲張りな特集は、もちろんこれが初めてです。今回の特集の地理的範囲は、何とロシアの国土の81%。もちろん、そこにはロシアの人口の21%しか住んでいませんが、地域総生産の27%、鉱工業生産の31%、特に鉱業生産の68%がここで生み出されています。思いのほかバラエティ豊かな記事も集まり、充実した特集になったかと思います。

 服部自身は、「ロシアの新たな北極政策文書」、「ウクライナ内閣は半年しか持たず交代」という短いレポートを執筆したほか、田畑伸一郎・後藤正憲(編著)『北極の人間と社会 ―持続的発展の可能性』の書評を担当。

 3月20日発行予定。


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 櫻井映子(編著)『リトアニアを知るための60章』(2020年、明石書店)が発行されました。

 私も、1つの章だけですが、「第29章 ベラルーシとの関係――『リトアニア大公国』は誰のものか?」を執筆しました。


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 我が国にウクライナという国の「ファン」がどれくらいいらっしゃるかは分からないが、その酔狂たちのバイブルになりそうな本が出版された。平野高志『ウクライナ・ファンブック』(パブリブ、2020年)である。

 パブリブと言えば、最近世界のマニアックな地域に関する新感覚の書籍を、意欲的に出しているところである。本書、224頁とそれなりにボリュームもあり、全編カラー印刷なのに、価格は2,300円+税と、ずいぶん良心的なものになっている。

 ウクライナにお出向きになる際には、当方の編集した『ウクライナを知るための65章』とあわせて(笑)、本書『ウクライナ・ファンブック』もお手に取られると、予習バッチリであろう。


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