ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: 学問のすゝめ

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 正確に言うと、この本は昨年の暮れに出てすぐに読んだので、実際には冬休みに読んだ本なのだが、当ブログで取り上げそびれていたので、「夏休みに読んだ本シリーズ」の一環として遅ればせながら取り上げる次第である。宇都宮徹壱(著)『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』 (集英社インターナショナル、2023年)である。

 日本を代表するサッカーライターの一人である宇都宮さんは、サッカーの戦術的な側面を掘り下げるよりも、サッカーを取り巻く土着的な背景や歴史などを深掘りし紡いでみせる点が持ち味である。そのために膨大な取材を積み重ね、現場主義を貫く。それは、昨今流行りのウェブメディアにおけるPV至上主義や、Xでの反応を寄せ集めただけの「コタツ記事」の対極を成す。

 そして、本著『異端のチェアマン』では、Jリーグの組織論という新しい領域に挑戦した。以下Amazonの紹介文を引用させていただく。

 開幕から20年を経て、人気低迷と経営悪化の泥沼に陥っていたJリーグ。この最悪の時期にチェアマンを引き受けた村井満は抜本的な改革に取り組むが、そこに差別・ハラスメント問題、度重なる災害、新型コロナ禍が次々追い打ちをかける。とくに新型コロナ禍においてリーグ清算さえ覚悟したという村井が、いかに事態を打開したのか。知られざる危機への対応を、多くの証言と共にドキュメンタリータッチで描き出す。

 本書は、宇都宮さんのこれまでの仕事が結実した一つの集大成であり、組織としてのJリーグ論、リーダーとしての村井満論の、決定版と言える。日本のサッカー史、スポーツ史を振り返ったりする時に、必ず参照しなければならない必読書であり、一般的な企業・組織論としても秀逸である。私も文章を書く人間の一人として、一生に一度はこんな凄い本を書いてみたいと思わされるような充実作だ。

 ただ、褒めてばかりだとつまらないので(笑)、本書を読んで若干引っ掛かった点を3点挙げて、ミニツッコミをしてみたい。

 第1は本としての編集方針に関して。宇都宮さんのアイデンティティの半分は写真家であるはずなのに、なぜか本書に掲載されている写真はごく少ない。人物が大勢登場するので、その人の写真が出ていればイメージが膨らむのに、なぜかそうなっていない。本書で文字のポイントが大きく読みやすいのは好印象だが、私としては文字は一回り小さくてもいいのでもっと写真を入れてほしかった。おそらく、著者本人にも葛藤があったのではないかと推察する。

 第2は、DAZNに関してである。DAZNは2016年、Jリーグと2017年からの10年間、合計2,000億円に及ぶ放映権契約を結んだ。それ以前のスカパー!との契約と比べると確かにビッグディールであり、「巨額契約」ともてはやされた。本書でも、この契約を勝ち取ったことが村井チェアマンの代表的な業績として扱われている。しかし、本書脱稿後に成立した契約ではあるが、我々はもう、「大谷が10年で1,000億円」という数字を知っている。DAZNの「巨額契約」は、言ってみれば、アスリート2人分である。本書の問題点というわけではないが、大谷が10年で1,000億円という数字を知ってしまった以上、Jリーグが10年で2,000億円というのは本当に望みうる最大値なのか、その価値を上げていくためにはどうしたらいいのかというのを、我々は真剣に問い続けなければならない。

 第3は、村井チェアマン退任後のJリーグという組織についてである。宇都宮さんも最近よく、現在の野々村体制のJリーグの対応振りに関し、改善の余地があるという意見を述べられている。また、村井体制を支えた人材たちが、一人また一人とJリーグ本部から去っていると聞く。ここで想起されるのは、宇都宮さんとも親しいカターレ富山の左伴社長が、本当に優れたリーダーというものは、自分なき後の体制も盤石になるようにお膳立てして去るものだというような話を述べていたことである。挑発的な言い方をすれば、自分の退任後に、Jリーグの組織が劣化してしまったとしたのなら、村井前チェアマンは本物の名君ではなかったのではないか? このあたり、ぜひ続編で論じてほしいものである。


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 先日、「夏休みに読んだ本シリーズ」と題し、この夏になぜか米国に関係した本ばかりを読んだという談義をしたが、その番外編。やはり夏休みに読もうと思ってKndleでダウンロードしたのだが、その時は他の本を優先したので後回しとなり、今般ようやく読み終えた本の話である。スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(著)・三浦みどり(訳)『戦争は女の顔をしていない(岩波現代文庫)』がそれである。

 というのも、『戦争は女の顔をしていない』を、これまでなぜか読んだことがなかったのである。アレクシエーヴィチの他の作品はいくつか読んだが、なぜかデビュー作にして代表作のこれを素通りしてきてしまったのだ。最近、うちのセンターで迎え入れた米国の政治学者のO.ニコラエンコさんが戦争・革命における女性の役割という研究をしていて、もちろんウクライナでの戦争もあり、あるいはモルドバでもしかしたらサンドゥ大統領が戦争指導者になってしまうかもしれないとか、戦争と女性というテーマにつき考えさせられることが多く、遅れ馳せながら本作を読んでみたというわけだ。

 それで、読んでみた『戦争は女の顔をしていない』は、正直言うと、かなり私の想像と違っていた。私はタイトルから何となく、女性ならではの博愛的な立場から戦争の悲惨さを訴え、反戦的なメッセージを打ち出しているのではないかと想像していた。

 実際には、本書は反戦の書というわけではない。むろん、戦争の悲惨さは随所で描かれている。しかし、ナチス・ドイツがなだれ込んできて自分たちの街や村で殺戮や破壊を始めたわけで、ソ連の人々には銃をとって戦うしか選択肢がなかった。大祖国戦争はそうした戦いであり、戦争に賛成とか反対とかそういう次元の事柄ではない。私が事前に本書に抱いていたイメージは、いかにも日本人的な甘いものだったと、反省した。

 また、これも日本人の感覚だと、軍への徴集は国の側が(多分に一般市民の意に反して)強制的に行うものだというイメージがあると思うが、本書の筆致からは、大祖国戦争時のソ連では祖国を守るために多くの市民が自発的に軍隊に身を投じた様子が伺える。そして、本書の主人公である独ソ戦に従軍した女性たちも、ほとんどが、居ても立っても居られなくなり、その義務もないのに、あるいな年齢条件も満たしていないのに、自発的に軍に志願したり、極端な場合には勝手に現場に赴いて部隊に加わったりしたのである。

 したがって、戦争そのものや、女性従軍の是非を論じることが、本書の目的ではない。問題は、多分に男性の論理で成り立っている戦争に、女性が参加した場合、やはり不自然な適応を迫られ、それが従軍時だけでなく、その後の人生にも影を落とすことだろう。そして、戦後に彼女らを待ち受けていたのは、いわれのない偏見や中傷だったというのが、とても辛い。『戦争は女の顔をしていない』が描いているのは、そのような矛盾であった。


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 夏休みになぜか米国に関連した本をいくつか読むことになったので、そのネタを使って出張中のブログをしのいでいるわけだが、最後はちょっとこじつけ。Matt Weiland and Sean Wilsey (eds), State by State: A Panoramic Portrait of America という本を紹介したいのだが、これは今回の夏休みに読んだというよりは、しばらく前に購入して、チラホラと眺めている程度なのである。

 この本は、全米50州について、それぞれにゆかりのある作家がエッセイを寄せ、それを1冊にまとめたものである。実を言うと、英語に慣れるために、AmazonのAudibleという朗読版で聴くのに何か良い素材はないかと思って探した時に、目に留まったのがこの作品で、KindleとAudibleを購入した。

 しかし、もっと各州の概要を中立的に紹介してくれるような内容を期待していたのに、蓋を開けてみると、各作家のご当地身の上話のような内容が多く、正直言って期待外れだった。

 まあ、せっかく買ったので、せめて2~3州くらいは、じっくり読んだり聴いたりしてみたいと思い、どこか良い州はないかと物色しているところである。今のところマサチューセッツ州がちょっと使えるかなと感じた程度。というわけで、夏休みに読んだアメリカ本シリーズはこれでお終い。

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 橘玲氏の本は、ノンフィクションも、小説も、だいたい読むようにしている。小説で、必ずと言っていいほど登場人物がむごたらしい死に方をするのは勘弁してほしいが。

 さて、夏休みの読書が、米国論というお題になりつつあるなと感じ、米シリコンバレーの天才富豪たちに焦点を充てたこの本の存在を思い出し、Kindleで買って読んでみた。しかし、米国の国家性、地域性とはほとんど関係がなく、あくまでも「テクノ・リバタリアン」という人種についての考察であり、その彼らが米シリコンバレーという場に引き寄せられているだけであって、夏休み読書の統一テーマからは少々外れてしまった。

 Amazonから本書の紹介文をコピーさせていただくと、以下のとおり。

 アメリカのIT企業家の資産総額は上位10数名だけで1兆ドルを超え、日本のGDPの25%にも達する。いまや国家に匹敵する莫大な富と強力なテクノロジーを独占する彼らは、「究極の自由」が約束された社会――既存の国家も民主主義も超越した、数学的に正しい統治――の実現を待ち望んでいる。いわば「ハイテク自由至上主義」と呼べる哲学を信奉する彼らによって、今後の世界がどう変わりうるのか?

 ハイテク分野で活躍する天才には、極端にシステム化された知能をもつ「ハイパー・システマイザー」が多い。彼らはきわめて高い数学的・論理的能力に恵まれているが、認知的共感力に乏しい。それゆえ、幼少時代に周囲になじめず、世界を敵対的なものだと捉えるようになってしまう。イノベーションで驚異的な能力を発揮する一方、他者への痛みを理解しない。テスラのイーロン・マスク、ペイパルの創業者のピーター・ティールなどはその代表格といえる。社会とのアイデンティティ融合ができない彼らは、「テクノ・リバタリアニズム」を信奉するようになる。自由原理主義(リバタリアニズム)を、シリコンバレーで勃興するハイテクによって実現しようという思想である。

 それで、個人的に興味深いと思ったのは、本書の以下のくだりである。

 ハイパー・スステマイザーは、他者との共感をうまく構築できないのだから、アイデンティティ融合が難しい。……この現象は当事者のあいだで、「高知能の呪い」と呼ばれている。なぜ周囲のひとたちが、野球やサッカー、アメリカンフットボール(あるいはアイドル)などに熱狂するのかわからず、デートをしても相手と話がまったく合わないのなら、人生を楽しむことができるだろうか。

 確かに、米国のIT長者がスポーツチームを買収したという話は、あまり聞いたことがない。ただ、それで思ったのだが、日本の場合にはむしろ、IT長者がスポーツチームを買収したりするケースが、非常に多い。これが意味するのは、シリコンバレーのそれと違って、日本のIT長者は、特異な天才としてのハイパー・スステマイザーではないのだろう。日本の成功者は、真にイノベーションを切り開いていているというよりも、外国で開発されたIT技術を、日本の社会・経済に上手く落とし込んで儲けた人々なのだろう。それに加えて、日本の場合、特にサッカーチームは、買収するにも「冗談のように安い」という要因もあるかもしれない。


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 夏休みに読んだ本シリーズ、それもなぜか米国ものの本ばかりだが、今回は、しばらく前に買いながら時間がなくて読めなかった大島隆(著)『「断絶」のアメリカ、その境界線に住む ペンシルベニア州ヨークからの報告』(2022年、朝日新聞社)。

 2020年大統領選で注目された激戦区ペンシルべニア州の小さな町ヨークに住み始めた記者。そこで目にしたのは、お互いに交わらない人々──黒人と白人、貧富、共和党と民主党、都市と郊外。「分断」から「分離」へと深刻化したアメリカ社会の亀裂の理由を探る。

 という内容である。この本、もっと大衆受けしそうなどぎついタイトルをつけてもよさそうなところ、割と説明的なタイトルになっており、私などはそれに惹かれて興味を持った。

 本書のタイトルにある「その境界線に住む」というのは、比喩的な意味ではなく、著者がペンシルベニア州ヨーク市で低所得層・マイノリティが集中するインナーシティに住みつつ、その向こう側はもう高所得層のエリアで、実際に著者自ら断絶の境界線に住んでみたという、文字通りの意味である。

 日本の外交官にしても、大企業の駐在員にしても、そして大手マスコミの特派員にしても、治安に配慮して、一定水準以上の住宅に住むのが当たり前である。スラムのような家を選んだら、お咎めがあるのではないか。そうした中、著者の大島氏が、決して治安の良くないヨーク市内のタウンハウス(日本で言うと風呂・トイレ共同木造アパートみたいなところ)に居を構え、米社会に密着した取材活動を試みたという点に、まず敬服する。

 本書の取材時期は、2020年から2022年5月くらいまでとなっており、コロナ禍と重なるとともに、トランプがバイデンに敗れた前回の大統領選の時期を含んでいる。どんな土地であっても、定点観測には意味があると思うが、ペンシルベニア州は選挙の激戦区であり、その中でも一つの典型例であるヨークに居を構えて粘り強く取材した成果が、本書に結実している。すでに取り上げた『ヒルビリー・エレジー』以上に、トランプ現象を読み解く上での必読書と言えそうだ。


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 夏休みに読んだ本シリーズ。今年の米大統領選で、トランプと組み、共和党の副大統領候補として選挙戦を戦うことになったJ.D.ヴァンス氏。その半生を綴ったのが、本書『ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~』である。

 このヴァンス自伝は本国でベストセラーになったが、トランプが勝利した2016年大統領選との関連で注目を集めたことは間違いないだろう。トランプが強固な支持を獲得したのは、斜陽化する重工業地帯「ラストベルト」であって、ヴァンスの自伝はその中でも絶望度の高いアパラチア地方の物語である。

 ただ、今回読んでみて、『ヒルビリー・エレジー』をトランプ現象解明の解説書みたいに使おうとしても、無理があるかなと感じた。ヴァンスは、自らの境遇であるアパラチアの環境を自分なりに解明しようと考察を試みてはいるが、社会科学的な分析ではなく、あくまでも自伝である。ヴァンス自身の人間関係、直面した薬物や暴力の問題など、具体的であるがゆえに真に迫ってはくるが、正直言うと、一人の人間の人生をここまで克明に知りたいとは思わない。ヴァンスが副大統領候補になったということで、日本の大型書店でも本書が平積みで売られたりしているが、日本人が読むのには冗長すぎるなというのが、個人的な偽らざる感想である。

 本書から判断すると、ラストベルトの問題と、アパラチア地方の「ヒルビリー」の問題は、重なり合う部分は大きいにしても、イコールではないように思われる。ヒルビリー現象は、単に構造不況の問題ではあるまい。構造不況に、独特の住民気質が重なり、貧困の沼から抜け出せない現象のように思えた。そうした中で、ヴァンスは良きメンターに恵まれ、並外れた努力をした結果、沼から抜け出たのである。ヴァンスは、心がけ次第でチャンスはあると主張しているが、読んでみた偽らざる感想としては、沼からの脱出は奇跡に近いように思えた。

 トランプは、ラストベルト、つまり構造不況製造業の代表者としてヴァンスをパートナーに抜擢したような捉え方があった。しかし、本書を読んだ限り、ヴァンスはラストベルトの利益代表者というよりは、その一類型であるアパラチア現象を克服した人物のように思える。甘言を用いラストベルトで票を稼ぐトランプと、ヒルビリーの呪縛から解き放たれたヴァンスの組み合わせは、控え目に言っても「変」だなと感じた。


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 何かと忙しく、普段、読書をする時間がない。自分の研究に直接関係する文献に目を通すことはあるが、それは楽しんだり視野を広げたりするための読書とは似て非なるものである。そこで、8月中旬にとった夏季休暇では、読書に重点的に励もうと考えた。他方、今回のロンドン出張中、旅先ではブログを書く余裕があるとは限らないので、夏休みに読んだ本の感想を書き溜めておいて、ロンドン出張中のブログネタにしようと考えた。今日からそれをお届けするが、今回読んだ本は、くしくもすべて米国論となっている。

 まず、堀越豊裕(著)『日航機123便墜落 最後の証言』(2018年、平凡社新書)から。新刊ではないのだが、墜落事故の起きた記念日の8月12日頃に、Xで「これは決定的な名著で読むべき」といったポストを目にし、読んでみるかと思い立ったものだった。

 私にとって日航機墜落事故は、青春時代の記憶と重なっている。大学2年の時、静岡に帰省して、焼津の花火大会に出かけた。確かそれが、墜落事故の当日か、あるいは前日だったのではないかと思うのだ。他方、本書に示された上掲地図に見るとおり、日航機は焼津上空で進路を内陸に変え、惨劇へと進んでいった。なので、「自分が見たあの空に、もしかしたら墜落した日航機がいたのではないか」という気がして、それが同機に搭乗していた坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」のイメージとも重なり、自分の中で一つながりのものとして定着してしまっているのだ。ただ、事故が起きたその日に花火大会があったのなら、伝説として語り継がれそうだが、(昔のことなのでネット検索しても事実関係が確認しにくいとはいえ)そういう情報が見当たらないところを見ると、花火大会は事故の前日だったのかもしれない。とにかく私の中ではそういうワンセットのイメージとして出来上がってしまっているのである。

 さて、本書『日航機123便墜落 最後の証言』が、なぜ米国論になるのかというと、米運輸安全委員会、ボーイング社の幹部といった米国側の関係者への聞き取り取材が、本書の中核を成しているからである。それによって、事故の真相に迫るとともに、航空事故をめぐる日米の文化差を浮き彫りにしている点が、本書のハイライトである。なお、タイトルに「最後の証言」とあるのは、米国側の関係者も物故したりだいぶ高齢になったりして、今回著者が試みた取材がおそらく最後のチャンスだったという意味である。

 さて、日航機墜落の原因に関し、定説となっているのは圧力隔壁の破損であり、それを引き起こしたのは米ボーイング社の修理ミスだったというものであり、著者もそれを受け入れている。こうした場合、日本であればボーイングが記者会見をして平謝りに頭を下げ、マスコミや世間は大バッシングを浴びせ、当事者は酷い場合には自殺に追い込まれたりする。しかし、米国での反応はまったく異なるというのが、本書を読んで私が最も強く印象付けられた点だった。

 日本では、結果的に多数の死者を出したのだから、ボーイングやその修理担当者は業務上過失致死に問う流れになるだろう。それに対し、米国では悪意、犯意がない限り、罪には問われない。むしろ、悪意のない過失は積極的に免責し、その代わり起きた問題をすべて明らかにして、今後の事故防止に繋げようというのが、米航空業界の常識なのだという。この文化差が原因で、日航機墜落事件でも、日米間の齟齬が生じたようだ。

 著者が米国流の責任の取り方に共感しているのは、文面から伝わってくる。ただ、それでは航空産業における責任追及に関し、日本は米国流を取り入れるべきと著者が主張しているかというと、必ずしもそうではないという点が興味深かった。

 そんなわけで、ふとしたきっかけで読んでみた本であったが、確かに新書ながら決定版と言える手応えの一冊であった。


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 ロシア・ウクライナ戦争勃発後、我が国で刊行された関連本の中で、最大の話題作と言っていいのが、松里公孝著『ウクライナ動乱:ソ連解体から露ウ戦争まで』(ちくま新書1739, 2023年, 512 ページ)ではないでしょうか。このほど私がその書評を執筆し、最新の『ロシア・東欧研究』に掲載されました。こちらから無料で閲覧可能ですので、よかったらどうぞ。


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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「帯にまつわるエトセトラ」です。よかったらご笑覧ください。


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 ロシア入国を禁止されてしまった中村逸郎先生へのお見舞い企画として、私が過去に書いた先生の著作の書評を再録するシリーズ。3回目の本日で最終回となるが、『シベリア最深紀行 ―知られざる大地への七つの旅』(岩波書店、2016年)を取り上げる。

 現代ロシアについて独創的な切り口から多くの研究を発表している中村逸郎氏の最新刊。テーマはシベリアだが、私の理解するところ、本書も一種のロシア論だと思う。つまり、ロシアを論ずるにあたって、そのメインストリームではなく、地理的な辺境、非ロシア人、非正教徒、正教徒の中でも異端派などにあえてフォーカスすることによって、いわばそこから逆照射するような形でロシアというものの本質を浮かび上がらそうとしているように、私には思える。ロシアのことをこれから知りたいという初学者が、まず本書を手に取ったら戸惑うことになるだろうが、一定以上のロシアの知識のある方が、より深くロシアを理解しようと思ったら、本書から得られるところはきわめて大であろう。

 と、若干お堅いことを申し上げてしまったが、単純に旅行記として読んでも、本書はとても面白い。私もロシア研究者の端くれなので、できることなら80以上あるロシアの地域をすべて訪問してみたいという夢があるが、実現は至難の業である。中でもシベリアの奥地にあるような諸地域を訪問するのは、まず無理だろうと諦めている。その点、本書におけるヤマロ・ネネツ自治管区、トゥヴァ共和国、ザバイカル地方などの訪問記は、非常に貴重だ。しかも、私は普段ロシアの地方を訪れる時、州都と、せいぜい州の第2の都市くらいの訪問で済ませてしまうことが多いが、著者は都市というよりも、シベリアの村に分け入っていく。とりわけ、タイガの奥地に潜む古儀式派の村を訪問するくだりには、鬼気迫るものがあった。

 本書の中でとりわけ白眉と言えるのが、トゥヴァ共和国訪問の記録だろう。驚くようなエピソードのてんこ盛りであり、本当に逆立ちして世界を見たような変な気分になる。実はこの最貧共和国の幸福度がロシアで一番高いというのにも驚いたが、我々経済関係者が注目しているトゥヴァの鉄道建設に関しては、地元民は必ずしも歓迎していないという。トゥヴァ共和国の医療施設には常勤のシャーマンがいるそうで、医療行為に加えて祈祷や生活相談も施されているというから、驚きだ。ただ、著者が実際にシャーマンの治療を受けてみたところ、何とも人間臭いやり取りも。トゥヴァではシャーマニズムと仏教が奇妙な形で共存しているそうで、ロシア人が推し進めるロシア正教とも相まって、一筋縄では行かない宗教模様となっている。

 複数の宗教が奇妙に共存しているのは、ザバイカル地方も同じであり、チタはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の共存ゆえ「第2のエルサレム」とも称されているのだそうだ。ところが、ここにはチベット仏教も根を張っており、実はロシア正教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒が自らにとっての「2つ目の宗教」として仏教を受け入れるケースが多いのだそうだ。大学生が選択する「第二外国語」というのはよく聞くが、「第二宗教」などというのは、個人的にも初耳だ。

 私自身は、現代文明にどっぷり浸かった人間であり、本書の著者のようにシベリアの道なき道を進んだりするのは無理だし、辺境の民と同じ目線で対話をしたりすることはできない。本当に、本書によって得がたい疑似体験をさせてもらった。


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 ロシア入国を禁止されてしまった中村逸郎先生へのお見舞い企画として、私が過去に書いた先生の著作の書評を再録するシリーズ。2回目の本日は、『虚栄の帝国ロシア ―闇に消える「黒い」外国人たち』(岩波書店、2007年)を取り上げる。

 最近ロシアで外国人労働者を見かけることが本当に多くなった。そうしたなか、周辺諸国からロシアに押し寄せる出稼ぎ労働者に焦点を充て、この問題を通じて「内なる帝国」としてのプーチンのロシアに迫ろうとしているのが、本書『虚栄の帝国ロシア』である。

 一体ロシアにはどれくらいの数の外国人労働者がいて、民族別の内訳はどうなっているのか? こうした点について、信頼できる情報はなかなか得られない。それもそのはずで、ロシアで働いている外国人の9割以上は不法就労者だという。本書では、まず第1章において、現地の報道などにもとづき、この問題を定量的に整理し、全体像を描くことを試みており、有益である。

 だが、本書の真骨頂は、現地での徹底したフィールドワークにある。著者は、「黒い労働者」、すなわち中央アジアやコーカサスをはじめとする旧ソ連諸国からロシアに仕事を求めてやってくる出稼ぎ労働者たちに密着し、その実態を明らかにしていく。それのみならず、「黒い労働者」を使用する側のロシア人にも長期取材を試み、その本音とからくりをあぶり出しているのだ。いつものことながら、著者の独自の着眼点と、それをとことんまで突き詰める仕事振りには、敬服せざるをえない。

 このように徹底した取材・調査の結果浮かび上がる外国人労働者の実態、ロシア社会の病理は、実にショッキングである。と同時に、タジク人と、キルギス人と、モルドバ人で、誰が一番働き者かといった興味深い話題もちりばめられており、教えられるところが多い。

 そして、こうした研究結果にもとづき著者は、プーチン政権が「旧ソ連構成国のなかで、いわばロシアを突出させ、そこに周辺国の労働力を吸収しようと」しており、「そのような政策をとおして、ロシアの旧ソ連圏にたいする支配力を確立することをめざし」ていると主張する。「プーチン政権はロシア国内において周辺民族を収奪する内なる帝国を打ち立てようとしている」と結論付けている。

 ただ、評者は個人的に、この主張は刮目に値するものの、やや一面的ではないかと感じた。私見によれば、人口減・労働力不足に直面しているロシアに、石油ブームが到来したら、誰が大統領でどんな政策をとろうとも、周辺の貧困国から出稼ぎ労働者が集まるのは必然である。結果的に「内なる帝国」を思わせるような構図が生じているのはそのとおりだし、現実に起きている人権問題は看過できないが、その原因をもっぱらプーチンの政策に帰することには慎重であるべきではないか。

 このように、個人的には若干引っかるところもあったが、迫真のルポルタージュとしての本書の価値は、いささかも減じるものではない。秀逸なロシア論、そしてNIS諸国論として、ぜひ一読をお勧めする。


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 昨日ロシアが、制裁への対抗措置として、今後ロシア入国を禁止する人物リストを発表したことが話題になっている。リストの末尾に掲載されていたのが、中村逸郎・筑波学院大学教授だった。

 テレビの面白コメントの印象が強すぎ、色眼鏡で見ておられる方もいるかもしれないが、中村先生はものすごく立派なロシア研究者である。綿密な現地調査に基づいた迫真の研究書を何冊も上梓されており、特に岩波書店から出た一連の書籍は必読である。私などが逆立ちしても書けないような本ばかりだ。個人的には、岩波の書籍での中村先生こそが本物であり、テレビの中村先生はサイボーグではないかと疑っている。ああいう調査手法からして、ロシアに渡航できなくなるのは大打撃のはずで、気の毒でならない。

 岩波書店で中村先生を担当した編集者は、私もお世話になった方だった。その縁で、中村先生の著作の書評を3回ほど書いたことがある。そこで、過去に書いた書評を当ブログで再録することにしたい。1回目は、『帝政民主主義国家ロシア ―プーチンの時代』(岩波書店、2005年)である。

 本書のタイトルを見て、私は最初、最近よくあるパターンのプーチン政治論なのかなと思った。つまり、プーチン政権下で強権的な中央集権化が進んでいることを告発調に論じたり、サンクトペテルブルグ出身者や旧KGB関係者などの人脈・派閥、さらにはプーチン自身のパーソナリティなどを分析したりと、そういう内容なのだろうと勝手に想像したのである。ところが、実際に読んでみると、かなり違っていた。もちろん、本書もプーチン政権下での中央集権化・強権化について論じているし、その点こそが議論の根底にある。だが、本書の真価は、そうした政治を支えている一般庶民の生活実態、心理、行動様式などに鋭く切り込んでいる点にある。それにより、単なるプーチン政権分析にとどまらず、骨太なロシア論となっているのだ。

 この本の主たる舞台は、モスクワの中心部にある「ロシア大統領府住民面会所」である。面会所には、様々な問題を抱えたロシア市民が(実は他の旧ソ連諸国の市民も!)、大統領宛の直訴状を持参して、引きも切らずに訪れる。彼らの訴える問題の多くは、住宅の修繕といったような、本来であれば地方自治体や町内会のレベルで解決すべきものだ。にもかかわらず、なぜそれが大統領への「直談判」(もちろん実際に大統領の耳に届くわけではないが)に発展するのか。この問題に着目した著者は、いくつかの事例に密着取材を敢行し、現代ロシア社会・政治のジレンマを丹念に描いていく。

 そして、このような基盤のうえに成り立っているプーチン体制を、筆者は「帝政民主主義」と呼ぶわけだ。そこでは、帝政時代と同様、「信頼できる最高権力者を国家の頂点に配し、かれに権力を集中させることで民主主義が実現されると考えられている。最高支配者と民衆が直接的な関係で結ばれる一方で、代議制民主主義と社会の中間権力が弱体化している」(本書228頁)。このような分析自体はとくに目新しいものではないだろうが、とかく「ロシアはこういう国なのだ」と言いっ放しにしてしまう論者が多いなかで、地道な実証研究によってその構図を浮き彫りにした著者の議論には格別の説得力がある。常に独創的な切り口でソ連/ロシア政治研究に取り組んできた著者の面目躍如であろう。

 重いテーマを扱いながら、読み物として面白く読めるのがありがく、一気に読めてしまった。


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m202205

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』の中身をどこよりも早くご紹介。

  毎年5月号は、ロシア経済および日ロ関係に関する総論的な特集号と決まっております。今年も、定番のマクロ経済・財政レポート、日ロ貿易レポート、石油・ガス産業レポートなどが柱になっております。しかし、現状で、2021年の数字をまとめることだけでは意味がないので、その作業に加えて、ウクライナ侵攻以降のロシア経済をめぐる急激な情勢変化を可能な限り誌面に盛り込むことに努めました。 その結果、力作のレポートが集まり、過去最高レベルの142ページの大編成となっております。絶望的な情勢の中でも、小誌の誌面の充実だけは図るという矜持を示したつもりです。

 服部個人は、特集の枠内で「欧州市場を失うロシア鉄鋼業」を、枠外では「港湾はウクライナ経済の生命線」を執筆。「セヴァストーポリ攻防戦の慰霊碑」というフォトエッセイも。

 4月20日発行。お申込み・お問い合わせは publication@rotobo.or.jp まで。


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202202

 HP更新しました。マンスリーエッセイ「私が産湯を使ったリアリズムの国際政治学とは」です。ご批判は募集していません。


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m202203

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2022年3月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号では「ロシアの地域情勢から見えてくるもの」という特集をお届けいたします。昨年もそうでしたが、なぜかこの時期に地域特集を組むことが多いですね。今回は、やや拡大解釈的に、少しでもローカルな要素のある記事は特集の枠内に位置付け、単にトピックとして取り上げている地域を掘り下げるだけでなく、そこから今のロシアを探ってみようといった狙いを込めています。なお、当会らしく、極東成分の多い地域特集となっております。

 表紙の写真は、コンテナ貨物で溢れ返る極東のウラジオストク港の最新の様子を捉えたもの。

 服部個人は、特集の枠内で「ロシアの天然ガス東方シフトは可能か」というレポートを、枠外では「緊迫するウクライナの経済情勢はいかに」というレポートを執筆。

 2月20日発行予定。


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 先日のブログですでに触れましたが、日本貿易振興機構・アジア経済研究所に所属し、カザフスタンを中心とする中央アジア研究で活躍してきた岡奈津子さんが、急逝されたとのことです。改めて、HPに「さようなら岡奈津子さん」という小文を掲載しました。


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 中央アジア、特にカザフスタンの研究で活躍し、我が国における第一人者だった岡奈津子さんが急逝されたとのことです。つい1ヵ月ほど前に連絡をとりあった時には変わった様子はなかったので、信じられない思いです。

 岡さんと言えば、中央アジアの民衆のひだに分け入ったような研究スタイルを持ち味とし、特に2019年に上梓された『〈賄賂〉のある暮らし:市場経済化後のカザフスタン』(白水社、2019年)は大きな評価を獲得しました。

 以前当ブログに掲載した紹介文を再掲載させていただきます。心よりご冥福をお祈りいたします。

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 これはとんでもない本が出た。カザフスタンだけでなく、ロシア・ユーラシア諸国にかかわる者全員にとっての、必読書と断言できる。岡奈津子『〈賄賂〉のある暮らし:市場経済化後のカザフスタン』(白水社、2019年)である。Amazonから内容紹介を拝借すれば、以下のとおり。

 ソ連崩壊後、独立して計画経済から市場経済に移行したカザフスタン。国のありかたや人びとの生活はどのような変化を遂げたのだろうか。独立前からカザフ人のあいだにみられる特徴のひとつに「コネ」がある。そして、市場経済移行後に生活のなかに蔓延しているのが、このコネクションを活用して流れる「賄賂」である。経済発展がこれまでの人びとの関係性を変え、社会に大きなひずみが生じているのだ。本書は、市場経済下、警察、教育、医療、ビジネス活動など、あらゆる側面に浸透している「賄賂」を切り口に現在のカザフスタンをみていく。賄賂は多かれ少なかれ世界中の国々でみられる現象だが、独立後のカザフスタンは、それが深刻な社会問題を生み出している典型的な国のひとつである。ここから見えてくるのは、人びとの価値観の変容だけでなく、ほんとうの「豊かさ」を支える社会経済システムとはどのようなものかという問題だ。豊かさを追い求めた、この30年の軌跡。

 この本を読んで、「自分が今まで見てきたつもりでいたカザフスタンは、何だったのか?」と、愕然とさせられた。自分が断片的にでも知っているつもりでいた、公式的な存在としてのカザフスタンという国とは別に、まるでパラレルワールドのように、もう一つのカザフスタンが存在したのだ。そして、どうも、そちらのカザフスタンの方が、本物のようなのである。

 本書は、カザフスタンおよび旧ソ連全般の地域研究を縦糸、政治・経済・社会学的な腐敗論を横糸とし、その両方の関心に見事に応えるものとなっている。カザフという国を知るための本であるのはもちろん(他の旧ソ連諸国のヒントも)、カザフそのものに興味がなくても、腐敗、途上国・新興国の社会、移行経済などについて大いに考えさせられる。2,420円と、この種の本としては手頃な価格でもあり、ぜひご一読をお勧めしたい。


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 今般、産経新聞出版より、一般財団法人国際経済連携推進センター(編)『コロナ禍で変わる地政学 ―グレート・リセットを迫られる日本』が発行されることになり、そこに拙稿「コロナワクチン開発では先行したロシアが抱える3つの弱み」が載録されています。

 1月20日発行。

 10月中旬に執筆したものなので、ロシアの最新情勢とは行きませんが、同国がコロナ危機で露呈した弱点を、ワクチンの問題を通して考察したものです。

 1年余り前に、やはり一般財団法人国際経済連携推進センター(編)『コロナの先の世界 ―国際社会の課題と挑戦』(産経新聞出版、2020年)に、「コロナ危機であらわになったプーチン・ロシアの国家体質」と題する拙稿を掲載していただきましたが、その続編という位置付けになります。


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202112

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年12月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号では「ロシア経済の新トレンドを読み解く」と題する特集をお届けしております。要するにあまり明確なテーマ性はなく、ロシア経済に関するものなら何でもありという特集ではあるのですが、結果的に、ロシア経済の今を様々な角度から切り取ることができ、有意義な号になったという手応えを感じています。

 服部自身は、特集の枠内で「にわかに政治性を帯びるロシア肥料産業」、枠外では「史上最高の豊作に沸くウクライナ」というレポートを執筆。「輸出量世界第2位のウクライナ産はちみつ」と題するミニコラムも。

 11月20日発行。


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202109

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年9-10月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

  今号では、「パンデミック下の医療保健・製薬業」と題する特集をお届けしております。医療分野が日ロ経済協力プラン8項目の1つとなり、そこにコロナ危機が重なったことから、私どもロシアNIS貿易会の情報発信でも医療分野に関するものが増えています。小誌ではすでに、2020年7月号で「コロナ危機に負けない」、2020年9-10月号で「ポストコロナの医療・医薬品産業」という特集を試みており、今号はその続編・最新版ということになります。

 服部個人は、「コロナワクチンで勝ち切れなかったロシア」、「プーチンはウクライナ論文で何を語ったのか」というレポートを執筆。「不憫だったモスクワ・オリンピックに思いを馳せる」というミニエッセイも。

 8月20日発行予定。


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m202108

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年8月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

 今号は、2020年の貿易統計を網羅的にお伝えすることに主眼を置いたロシア貿易特集となっております。2020年の最大のトピックは、新型コロナウイルスのパンデミックと、それがもたらした世界経済の変調だったと思います。ただし、昨今ではタイトルにやたら「コロナ禍」と入れる人が増え、先日所内でもタイトルに「コロナ禍」を入れるのを禁止する布告を出したばかりですので、今号の特集タイトルではあえて「コロナ」を使うのは避け、「激変する環境下のロシアの貿易」といたしました。

 服部個人は、特集の枠内では、「2020年のロシアの貿易統計」、「ロシア・ベラルーシ石油協業の落日」、「ウクライナ・ロシアの貿易戦争は続く」を執筆。枠外でも、「戦略的安定に道筋をつけた米ロ首脳会談」を執筆しています。

 7月20日発行。


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 こんな新刊が出ました。S.アレクシエーヴィチ・鎌倉英也・ 徐京植・沼野恭子『アレクシエーヴィチとの対話: 「小さき人々」の声を求めて』(岩波書店)です。皆様もよろしかったら、ぜひ。


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m202107

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。今号では、「特集◆今こそあえて石炭を語ろう」をお届けいたします。2011年8月号で「ロシア・NIS諸国の石炭産業」と題する特集を組んで以来、ほぼ10年振りの石炭特集ということになります。昨今では、地球温暖化防止の観点から石炭には厳しい目が向けられており、もちろんそういうことは重々承知の上でというニュアンスを、特集のタイトルに込めました。もしかしたら、これが最後の石炭特集かもしれませんが、ロシア経済および日ロ経済関係に石炭が果たしている役割はかえって高まっており、またそのうちお鉢が回ってくるかもしれません。

 服部個人は、特集の枠内では「悩み深きウクライナの石炭・電力業」を、枠外では「ロシアの非原料・非エネルギー輸出目標の見直し」を執筆しています。

 6月20日発行予定。


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 商売柄、自分の研究分野についての新刊などは常にチェックするようにしている。その際に、安直だが、Amazonの検索で、「本」のジャンルを選び、「ロシア」というキーワードで検索をしてみるというのが、常套手段である。

 ところが、実を言うと、Amazonの検索はこの用途では使いにくく、最近ますます酷くなってきたように感じる。ロシアというキーワードで検索すると、ロシア美女のセクシー写真集の類がやたら数多くヒットする。また、当方は「本」のジャンルで検索しているのに、ロシアのカレンダーくらいまでは許せるとしても、「ロシア産ほっけの開き」の類まで表示されてしまう。最近、さらに困ったことに、「ロシア」というキーワードで、ロシアで発行されたロシア語の本までもが大量に表示されるようになってしまった。そんなこんなで、Amazonの検索は、ちょっとでも関連するあらゆるものを表示するので、「日本で発行されたロシアについての最新書籍を検索したい」というニーズには、甚だ不向きになっていると実感している。

 私が至った結論は、単純な検索という用途には、楽天ブックスの方がはるかに向いているということである。楽天ブックスで「ロシア」と入れて、「新しい順」に設定すれば、ずばり私の知りたい「日本で発行されたロシアについての最新書籍」が秩序立って表示され、大変結構である。

 似たような話だが、今般、私は「地経学」という術語について学びたいと思い、まずはAmazonで書籍検索してみた。私は、そのものズバリ、タイトルに「地学」と入っている本を知りたいのだけれど、Amazonは頭が良すぎるというかお節介というか、むしろ「地学」というタイトルの本を推してくる。中でも、北岡伸一・細谷雄一(編著)『新しい地政学』(東洋経済新報社、2020年)が一押しという雰囲気だった。チェックしてみたところ、この本には田所昌幸「武器としての経済力とその限界ーー経済と地政学」という章もあるので、本全体のタイトルには入っていないが、本の随所で「地経学」という術語の言及もあるのだろうと想像し、電子版を購入してみた。ところが、実際にはこの本には「地経学」という言葉は一箇所も出てこなかった(電子書籍を文字列検索したので、間違いはないだろう)。この本自体はむろん非常に学ぶところの多い有益なもので、買って損はなかったが、Amazonで「地経学」というキーワードで商品検索し、上位に表示された書籍に、実際には「地経学」という言葉が一箇所も出てこないというのは、ちょっと考え物ではないかと思ってしまった。

 それに対し、ここでも、楽天ブックスで検索した方が、本のタイトルに「地経学」と入っているものを素直に並べてくれるので、個人的にはその方が助かる。


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202101

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2021年1月号の中身を、どこよりも早くご紹介。

  雑誌の上ではもう2021年に突入し、新色のオレンジ色の装いも新たにお届けいたします。そして、今号の特集は、「政情不安に揺れるNIS諸国」。小誌としては異色の内容ですが、8月に発生したベラルーシの脱ルカシェンコ運動を皮切りに、秋にかけその他のNIS諸国でも選挙をきっかけにした政治変動が発生、さらにはナゴルノ・カラバフで本物の戦争が勃発するに至って、これはNIS諸国の今後を左右するだけでなく、ロシアの行く末にも大きく影響する現象であり、やはり正面から受け止めて特集を組むべきだと判断しました。

 いつもは表紙をお目にかける程度ですが、今回の「政情不安に揺れるNIS諸国」は渾身の特集ですので、特集記事のタイトルと執筆者を以下のとおりご紹介します。

  • 2020年ベラルーシ大統領選挙の顛末 ―人々は恐がることを止めた―(友繁弥寿志)
  • モルドバ大統領選挙の争点とロシアの影響力(六鹿茂夫)
  • 第2次ナゴルノ・カラバフ紛争 ―凍結された紛争の再燃―(立花優)
  • 2020年ジョージア総選挙 ―コロナ禍・米大統領選・カラバフ戦争の嵐の中で―(前田弘毅)
  • 混迷極めるキルギス第3次革命(中馬瑞貴)
  • ロシアとの関係強化を模索するウズベキスタン(中馬瑞貴)
  • タジキスタンの盤石な政治体制と脆弱な経済(中馬瑞貴)
  • ウクライナで実施された奇妙な国民意識調査(服部倫卓)
  • ロシア国民は周辺国の事件をどう見ているか(服部倫卓)
  • サンタ・ブレモルはルカシェンコの味方か敵か(服部倫卓)
  • ナゴルノカラバフ、見えない未来(小熊宏尚)

 以上です。12月20日発行。


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202011

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年11月号を、どこよりも早くご紹介。今号は、「転換期のロシア極東経済」と題する特集号となっております。ここ数年の日ロ経済関係では、9月にウラジオストクで開催される東方経済フォーラムが、1年の最大の山場となっており、小誌でもそれに合わせて11月号でフォーラムと極東経済の特集を組むのが恒例となっていました。今年はフォーラムがなくなってしまいましたが、極東の重要性に変わりはありませんので、今回の11月号は極東特集と相成りました。

 なお、今号より、大橋巌さんの「シリーズ 工業団地探訪」、ミナト国際コンサルティングさんの「HOW TO ビジネス実務」と、2本の新連載がスタートしましたので、ご期待ください。

 服部自身は今号では、特集の枠外で、「ロシアはベラルーシをどう『処分』するのか」、「様変わりするウクライナのエネルギーバランス」と2本のレポートを書いております。

 10月20日発行。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年8月号の中身を、いち早くご紹介。今号では、毎年恒例の貿易統計レポートを軸に、「ロシアの貿易の試練と挑戦」と題する特集をお届けしております。

 服部個人は、「2019年のロシアの貿易統計」というメインのレポートのほか、「ロシア肥料産業は外需と内需の両にらみ」、「激化するウクライナとロシアの貿易戦争」、「国内市場の不振を補うロシアの自動車輸出」、「戦勝75周年記念式典から改憲国民投票へ」を執筆。

 7月20日発行予定。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。7月号は、「コロナ危機に負けない」という特集号となっております。

 しばらく前から、月報に掲載する記事で新型コロナウイルスの問題に言及するケースが増えてはいましたが、ついにそれを正面に掲げる特集と相成りました。今年の初め頃には、まさかこんなに気の滅入るテーマの号を作る羽目になるとは、想像だにしませんでした。ただ、単に「感染が増えて大変だ」という話だけでなく、いかにして危機を乗り切り、本来の経済・社会活動を取り戻していくかという視点にこだわったつもりです。

 服部自身は、「ロシア財政・金融政策に変更はあるか」、「ウクライナ労働移民の流れは変わらず」、「奮闘を続ける『ミンスクの台所』」と、短いものを書いただけです。むしろ、月報は今回より印刷の方式が変わるので、それへの対応の方が大変でした。

 6月20日発行予定。


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20200530

 HP更新しました。マンスリーエッセイ「『専門家』を疑え」です。よかったらご笑覧ください。

 コロナ危機で、自宅待機を余儀なくされる人が増え、流行ったものの一つに、「ブックカバーチャレンジ」というものがありました。ただ、私は友達がいないせいか(笑)、誰からもオファーを受けませんでした。そこで、誰にも頼まれてもいないのに、勝手に一冊紹介してみたいと思います。永井陽之助『現代と戦略』(文藝春秋、1985年)です。この名著から、新型コロナウイルス拡大防止策への教訓を引き出してみたいと思います。


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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年6月号の中身をご紹介。毎年6月号は、ロシアではなく、それ以外のNIS諸国が主役となる特集号です。今年は貿易に関するレポートが集まりましたので、「特集◆NIS経済・貿易の最新動向」と題しお届けしております。

 服部自身は、「2019年のロシア・NIS諸国の経済トレンド」というメイン記事の中で、「ロシア・NIS全般:まだら模様の成長と迫り来るコロナ危機」、「ウクライナ:穀物収穫・輸出が顕著に伸びる」、「アルメニア:欧州で最高の7.6%成長を記録」、「ジョージア:試練に直面する観光立国」と、4つのパートを担当。それ以外にも、「ウクライナの鉄鋼輸出はほぼ現状維持」、「予想外の展開をたどった戦勝75周年」というレポートを執筆しています。

 5月20日発行予定。


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