こちらの記事が、ロシア領を通じて中国・欧州間でコンテナ貨物を鉄道輸送する「中欧班列」が、制裁の懸念にもかかわらず、経済的メリットから依然として選択されている事情について論じているので、以下抄訳しておく。なお、文中に出てくるロシア政府決定はこちらに出ているもののはずである。
中国~欧州間の鉄道貨物輸送は、依然としてロシア経由のルートに大きく依存している。しかし、EUの制裁、特にクレムリンが打ち出した新たな対抗制裁は、依然として障害となっている。イタリアの事業者は最近、中国~欧州間の鉄道で運ばれるコンテナの一部がここ数週間、ロシアで停止しており、同国の禁輸品目リストにある貨物が含まれていないことを確認するための検査を待っていると不満を表明している。
10月15日にロシア政府が採択した政府決定(10月19日発効)により、ロシアから禁止される商品リストが更新された。これに抵触するのは、主に木材製品と繊維製品であるという。この改正の結果、貨物の一部がロシア領内の通過が禁止または特別な条件下でのみ許可される二重使用品リストに追加された。
それに対し、ロシア税関では、中国からEUを最終目的地として搬入されたトランジット貨物に追加検査が行われたケースはいくつかあるが、それほどの広がりはないとしている。追加検査の対象となった貨物のほとんどは、すでにロシア国境を越えて輸送される許可を得ている。
ロシア関税が最近発表したところによると、ロシアは、鉄道貨物が自国領土を通過する際、そのような検査が必要でない場合には、追加検査なしで標準的な体制で通過することを継続している。
中国・EU間の鉄道によるコンテナ貨物の輸送は、2年間は深刻に停滞したが、今年に入り着実に回復している。ロシア運輸省によると、2024年上半期の伸びは前年同期比35%で、2024年下半期も同じ傾向が見られる。今年終了時には、危機以前の量(約40万TEU)に達する可能性が高い。
原因の一つは、フーシ派イスラム組織による攻撃の脅威が絶えない紅海の不安定さである。この点で、荷主は再びロシア・ルートに注目している。紅海でのフーシ派の攻撃後、ロシアを経由する鉄道輸送の発注は40%増加した。ロシア鉄道によると、このルートによる中国国境からEU国境への貨物配送の所要時間は5~7日であり、過去に比べ3~5倍速くなっている。
また、アナリストによれば、喜望峰周りのルートに変更することで、トランジット時間が平均10〜14日以上長くなり、コストが上昇し、アジアとヨーロッパを結ぶ主要貿易ルートのひとつでスケジュールが乱れた。このため、代替ルートの模索が必要となり、ロシア鉄道経由のトランジットが最も最適な解決策と受け止められている。
加えて、ロシアを経由する鉄道輸送は、他のルートよりもまだ便利である。中国とEUの貿易量がいまだ伸びている中で、カスピ海ルートにはそのような貿易量を処理するのに必要なインフラがまだ整っていない。加えて、そうした代替ルートを利用すると、荷主にとり30%割高となる。
中国からヨーロッパへの鉄道運賃が海上運賃の1.5~2倍であることを考慮すると、鉄道で運ばれる主な貨物は電子機器、自動車、自動車部品、機械設備、その他スピードが重要な貨物である。鉄道輸送の場合、平均12~25日であるのに対し、海上輸送では40~60日かかる。アナリストはまた、ほとんどの消費財は制裁や対抗制裁の対象ではないため、ロシアを経由するルートはEUにとって依然として有利であると指摘している。
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