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 今般の英国出張中、ロンドン中心部を歩いていたところ、王立芸術院付属の美術館で、「In the Eye of the Storm:Modernism in Ukraine, 1900–1930s」という企画展をやっているのが目に留まった。美術に関しては完全な素人ながら、地域研究者として観ておくべきだろうと思い、後日時間を見付けて見学してみた。

 王立芸術院のこちらのページに、展示の趣旨・概要は出ている。説明を抄訳しておくと、

 1900年代から1930年代にかけてウクライナで制作された画期的なモダニズム芸術に驚嘆せよ。

 ウクライナのモダニズム運動は、崩壊する帝国、第一次世界大戦、独立の戦い、そして最終的なソビエト・ウクライナの成立を背景に展開された。このような大変動にもかかわらず、この時期は大胆な芸術的実験が行われ、ウクライナの芸術、文学、演劇が真に繁栄した時代となった。

 この時代にウクライナに存在した様々な芸術様式と文化的アイデンティティを紹介するこの展覧会は、ウクライナの現代美術に関する英国で最も包括的な展覧会になる。油絵、スケッチからコラージュ、劇場デザインまで、65点の作品をご覧いただきたい。作品の多くはウクライナ国立美術館とキーウのウクライナ演劇・音楽・映画博物館から貸し出されたものである。

 カジミール・マレヴィチ、ソニア・ドローネ、アレクサンドラ・エクスター、エル・リシツキーといったアーティストから、オレクサンドル・ボホマゾフ、ミハイロ・ボイチュークといったあまり知られていないアーティストまで、それぞれがこの国の芸術と文化に忘れがたい足跡を残した。

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 私としては、やはりウクライナ国民史という観点からの関心となる。個人的には、過去に存在したものを、なんでもかんでも、今日のウクライナ・ナショナリズムに結び付けるようなアプローチには、疑問を覚える。それでも、かつてこの地に存在した芸術運動と、それが秘めていた可能性を掘り起こすことには、意味があるだろう。この企画展は、声高に政治的な主張をするのではなく、作品に語らせることで、ウクライナの問題を問うているように思えた。

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