こちらの記事が、ロシアの天然ガス独占体「ガスプロム」がこのほど2023年の決算を発表したが、四半世紀振りに赤字に転落したということを伝えているので、以下主要部分をまとめておく。
5月2日にガスプロムが発表した国際財務報告基準による決算によると、同社は2022年の1兆2,300億ルーブルの純利益に対し、2023年には6,291億ルーブルの純損失を計上した(上掲グラフ参照)。2023年の売上高は27%減の8兆5,400億ルーブル、営業費用は8%減の8兆5,800億ルーブルだった。売上総利益は、2022年の1兆9,000億ルーブルの黒字に対し、2023年は3,637億ルーブルの赤字。税引前利益は2022年の2兆2,000億ルーブルの黒字に対し2023年は6,591億ルーブルの赤字となった。2023年の設備投資額は11%増の2兆4,000億ルーブルとなった。
国際財務報告基準で、21世紀に入って初めて赤字となった。前回の赤字は1999年の952億ルーブルであった。ガスプロムは1998年から国際財務報告基準決算を発表している。同社は、2023年の財務指標の悪化について理由を説明していない。
2023年にガスプロムの事業の中で不採算だったのはガス部門であり、その損失は1兆2,000億ルーブルの赤字となった。 他方、石油部門は7,650億ルーブル(前年比11%増)、電力部門は508億ルーブル(同35%減)の利益を計上した。
2023年のガス販売収入は3兆1,000億ルーブルと前年から半減した(物品税と関税を含めると4兆1,000億ルーブル)。国内ガス販売からの収入は14%増の1兆2,000億ルーブルとなった。
専門家によれば、ガスプロムの収入減は、海外へのガス供給量が減少したことと、輸出価格が下落したことが原因である。ガスプロムはパイプラインガスの輸出権を独占しているため、海外市場へのガス供給は伝統的にガスプロムの収益の大部分を占めている。例えば、2020年、ガスプロムのガス輸出による収入は合計2兆1,100億ルーブル、他方で総収入は6兆3,200億ルーブルであり、つまり輸出収入は同社の総収入の3分の1を占めた。2021年と2022年には、ガス輸出価格の急上昇により、それぞれ56%と63%に上った。
しかし2022年から2023年にかけて、ロシアからのガス輸出量は激減した。2022年、ノルドストリーム経由の供給が停止し、ウクライナ経由のEU諸国への供給が大幅に減少した。その結果、2022年の非CIS諸国(欧州、トルコ、中国)へのパイプライン・ガス供給量は1,009億立米となり、前年から45%ほど減少した。その結果、2022年にはガスプロムはガス生産量も20%減の4,126億立米に留まった。
輸出供給量の減少は2023年も続いた。エネルギー省によると、2023年のロシアからのパイプライン・ガス輸出量は約30%減の9,960億立米に落ち込んだ。しかも、ロシアのパイプラインガスの平均輸出価格は、2023年に61%下落し、1,000立米当たり305ドルとなった。
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