石油関連施設がウクライナから攻撃を受けたことなどで、ロシア国内の石油製品の供給体制にまた不安が持ち上がっている。そうした中、同盟国のベラルーシには2箇所の製油所があり、ベラルーシがロシアにガソリン等の燃料を供給する動きに注目が集まっている。この問題に関し、ベラルーシ側の専門家であるA.ハリトンチク氏がこちらのインタビュー記事で見解を述べているので、以下その発言要旨を整理しておく。
最近ベラルーシがロシアに供給したとされる3,000tのガソリンなど、まったく微々たるものだ。ロシアでは毎週75万~80万tのガソリンが生産されているのである。
ベラルーシの製油所で生産された石油製品は、年間600万tがベラルーシ国内に供給され、900万tが輸出される。それから比べても、3,000tはとるに足らない量である。
これから増える可能性もあると言うが、第1に、少なくとも現時点では、ロシア側が特に必要としていない。ロシアにおけるガソリンの生産減は、たとえば3月18~24日の1週間で、前週比7%減にすぎなかった。しかも、すべてがウクライナのドローン攻撃による減産ではない。季節的要因や、プラントの計画的な修繕もあるだろう。
ロシアはガソリンの10%を輸出していたが、3月から輸出を停止しており、国内市場で10%の不足が生じても、輸出していた分を回せば、自ら補える。
現在の問題はむしろ輸送にある。被害を受けたロシアの製油所は欧州部に位置しており(元々ロシアの製油所が欧州部に偏重)、そこでの生産が縮小したということは、別の地域から原料を運んでこなければならない。ところが、中国との貨物が増えた関係で、鉄道では輸送キャパシティや貨車の不足が生じている。
それではこうした状況でロシアがベラルーシからガソリンの供給を受けるのが有利かというと、ここでもやはり輸送の問題がある。ベラルーシも(欧州との対立で)たとえばカリ肥料にしても鉄道で中国向けの供給を増やしており、ロシア向けにガソリンを供給するための貨車を調達できるかという問題がある。
もう一つ、価格の問題がある。現在ベラルーシの石油製品はロシアの港を経由してUAEまで運ばれ、そこから第三国に向かう。このスキームは、ロシアに供給するよりも収益性が高い。
いずれにしてもベラルーシがロシア市場を埋めるのは物理的に無理である。ロシアは年間4,500万tのガソリンを生産する。一方、ベラルーシの製油所は昨年、1,600万tの石油を精製し、1,500万tの石油製品を生産し、うち850万~900万tを輸出したと見られる。フル操業なら2,400万tを精製でき、国内消費分を除けば、1,500万~1,600万tの石油製品(ガソリンだけではない)の輸出余力がある。
そのすべてをロシアに向けるためには、当然価格に合意する必要がある。しかし、それは理論上の可能性にすぎない。結局のところ、肝心なのは輸送だからだ。そして、輸送はロシアとベラルーシの双方にとって深刻な問題である。
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