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 戦争になり、すっかり取り上げる機会は少なくなってしまったが、近年のロシアが目標に掲げていた政策目標の一つに、石油・ガスをはじめとする資源・エネルギーに偏重した輸出構造から脱し、「非原料・非エネルギー商品」の輸出を拡大するという点があった。以前は国策企業のロシア輸出センターHPに、非原料・非エネルギー輸出の統計が出ていて有益だったものの、開戦後のロシアが貿易統計を公表しなくなった関係もあり、それも途絶え、またその輸出をカウントする方法論にも変化があったこともあり、本件の進捗は非常に分かりにくくなってしまっていた。

 そうしたところ、こちらに見るように、本年9月9日付のロシア政府指令により、「2030年までの、また2035年までの期間を視野に入れたロシア連邦の製造業発展総合戦略」が修正されており、そのテキストの中にロシアの非原料・非エネルギー輸出に関し有益な情報が含まれていたので、以下ではそれを抄訳しておきたい。第6項「競争力」のところにそのくだりがあり、公式文書の中でこうした数字が挙げられているのを個人的に初めて見た。

 製造業の諸部門は、国内市場における製品の競争力の伸びを実証している。輸入代替政策の結果、工業製品の国内市場における輸入品のシェアは、2014年の49%から2021年初めには39%に減少した。

 コロナの影響にもかかわらず、2020年の非原料・非エネルギー商品の輸出総額は1,613億ドルで、前年から4%増加した。競争力のある工業製品の輸出総額は1,310億ドルで、前年から1.16%(?)増加した。

 多くの工業製品の輸出において価格変動が大きすぎることを考慮し、指標を算出する上での方法論に修正が加えられた。金および芳香族化合物の扱いが変わった。それを踏まえると、2020年の非原料・非エネルギー輸出の総額は1,413億ドル、工業輸出の総額は1,107億ドルとなる。

 2021年には、2020年価格では、非原料・非エネルギー輸出総額は、前年比4%増の1,468億ドル、工業製品の輸出総額は前年比6%増の1,175億ドルとなった。ただし、2021年価格では、非原料・非エネルギー輸出総額は1,920億ドルで、これは前年比35%増となる。

 制裁が導入された2022年には、非原料・非エネルギー輸出は1,258億ドル(2020年価格)、工業製品の輸出量は968.9億ドルとなったが、2022年価格では1,890億ドルに上っており、前年からの低下は1.6%に留まる。


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