こちらの記事が、中国側の通関統計にもとづき、ロシアから中国へのアルミニウム輸出が急増しているということを伝えているので、以下骨子をまとめておく。
中国側の通関統計によれば、2023年1~9月のロシアの中国向けアルミ輸出は、数量ベースで前年同期から約3倍拡大し、80.6万tとなった。上図に見るとおり、中国のロシアからのアルミ輸入は2022年下半期には顕著に伸び始め、12月になるとそれが加速。通年では前年比59%増の46.2万tだった。今年に入り、すでに1~9月だけで、2022年通年の数字を74%上回ったことになる。
中国のアルミ輸入量全般が大きく伸びており、1~9月には前年同期から2.6倍の95.6万tに上った。ロシアのシェアは圧倒的であり、昨年の76.1%から、今年に入り84.3%に伸びている。国別の輸入量は下図のとおりで、ロシア以下、インド、イラン、オーストラリア、バーレーン、インドネシアと続いている。
EUおよびその他の非友好諸国は、ロシア産のアルミ輸入を禁止はしていないし、ルサール社も直接は制裁の対象としていない。それでも、2023年1~8月に、EUはロシアからのアルミ地金の輸入を前年同期の3分の1にまで縮小させた。ユーザーがイメージの問題でロシア産を敬遠している。また、米国がロシア産アルミと、ロシア産アルミを使って生産された第三国の製品に対し、2023年3月に200%もの高関税を導入した影響も大きい。
こうして、ロシアから中国へのアルミ輸出が拡大しているのは、非友好国市場から友好国市場への強いられた転換である。ルサールの商品が非友好国による制裁の対象になるのも時間の問題であり、EUの第12次制裁パッケージでも検討されている。
他方、ルサールが中国との長期的な協力関係の構築に動いていることも事実であり、10月に中国のアルミナ供給者である河北文豊新材料(Hebei Wenfeng New Materials)に30%出資したのもその表れである。中国は、自身が世界生産の6割を占めるアルミ大国であるが、消費量も膨大なので不足が生じ、ロシアから輸入もしているわけである。
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