pr

 ロシアの主力産地であるヤマル半島と、中国市場を結ぶ新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設構想が、しばらく前から取り沙汰されていながら、中国側が最終合意を渋っており、結局今般の習近平訪ロの際もそれが正式に発表されるには至らなかった。プーチンとしては、「我が国は欧州市場なしでもやって行けるのだ」と、ど派手に花火をぶち上げたかったはずだが、またしても寸止めを食らった。

 そのあたりの背景につき、こちらの記事の中で、ロシア政府付属金融大学エキスパートのI.ユシコフ氏が語っているので、少々認識が甘い感じもするが、以下発言要旨を整理しておく。

 パイプラインのルート、輸送量、技術的仕様などはだいぶ前に合意している。これだけ長くかかっている、最大の要因は、価格ということになる。中国側は、ガスプロムが欧州市場で苦戦している分、我が国にとって有利であり、好条件の契約を取り付けるべきだと考えている。それにロシアが難色を示すという構図である。

 今般の習近平訪ロを経ても、いまだに契約が調印されていないのには、原因が2つ考えられる。

 第1に、中国はまだ、より有利な価格条件を求め、粘る時間があると考えていること。

 第2に、中国は新契約をプーチン訪中の際に結びたいと考えていること。中国にとっては、中国側がガスを求めてロシア詣でするのではなく、逆であることが重要。実際、シベリアの力1が2014年に調印されたのも、北京においてだった。

 シベリアの力1は2014年に調印され、2019年12月に稼働したが、2は稼働までにそこまで時間がかからないのではないか。2は資源基盤がすでにあるので、1の時のように産地を一から開発する必要がなく、パイプラインを敷設するだけでいいからである。

 鋼管はロシア国内で生産できる。唯一の問題は、ガスコンプレッサーステーションに設置するガスタービン「ラドガ」の生産であり、タービン自体は国内生産できるものの、一部の部品が輸入であり制裁に引っかかる恐れがある。それでも、おそらくマックスの500億立米が一気に稼働するのではなく、毎年100億立米くらいずつキャパシティを拡大していくことになると思われるので、コンプレッサーステーションも段階的に増強すればよく、解決できるのではないか。

 確かに、2021年までは欧州市場に年間1,600億立米を供給していたわけで、シベリアの力2の500億立米が完成しても、全面的なアジアシフトはできない。それでも、本件は欧州からアジアへの初の転換に成功した例となり、意義は大きい(シベリアの力1は既存の欧州向けをアジアに転換したわけではなく、極東・東シベリアのガス田を新規開発して中国に供給するプロジェクトだった)。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ