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 それにしても、ロシア人というのは本当に「経済フォーラム」が好きな人種だと思う。ロシア国内で開かれる経済フォーラムの中では、以下のものが8大経済フォーラムと呼ばれている

  • ペテルブルグ国際経済フォーラム
  • 東方経済フォーラム
  • クラスノヤルスク経済フォーラム
  • ロシア投資フォーラム
  • ヤルタ国際経済フォーラム
  • ロシアコーリング!
  • ロシアビジネス週間
  • ガイダル・フォーラム

 なお、この現象につき、以前「なぜロシアはビジネス大イベントが好きなのか?」というコラムで私見を披露したので、よかったらご参照いただきたい。

 さて、昨晩出演したテレビ番組の中で、ロシアのとあるオリガルヒが、ロシアの資金は来年にも尽きると警告したという情報についてのコメントを求められることになった。そこで事前に調べたところ、今般開催されたクラスノヤルスク経済フォーラムにおいて、O.デリパスカが述べたことが記事として取り上げられ、一部で話題になっている様子だった。

 デリパスカの発言動画がこちら、それを取り上げた英語版フォーブスの記事がこちら、日本語版の記事がこちらである。日本語版から、関係個所を引用させていただくと、

 ロシアのオリガルヒ(新興財閥)であるオレグ・デリパスカ(55)は2日、外国人投資家を追い払っているロシアの当局を批判し、追加の資金がなければロシアは早ければ2024年にも資金不足に陥ると警告した。ウクライナでの戦争で支出がかさみ、ロシアが赤字のままいつまで持ち堪えられるかという疑問がある中、同国のビジネス環境に警鐘を鳴らしている。

 シベリアで開催されたクラスノヤルスク経済フォーラムで、デリパスカは「国家と企業が絶えず対立していることを常に心配している」と発言。さらにロシアのウクライナでの戦争が2025年までに沈静化することはないと仮定し、あと10年間は欧米の投資家がロシアを避ける可能性を指摘した。

 「来年には金が尽きるだろう。だからこそ、彼らはすでに我々を揺さぶり始めているのだ」とデリパスカは話し、ロシアが事業を継続するためには外国人投資家が「必要」だと付け加えた。デリパスカはロシアの複合企業Basic Element(ベーシック・エレメント)を創業し、アルミニウム生産で財を成した人物だ。

 全体として、翻訳はそれほど不正確ではない。しかし、日本語版のタイトルにあるように、「国の資金が来年尽きる可能性」と銘打たれていると、どうしても我々は、「国庫が払底して戦争を戦えなくなる」という意味だと解釈しがちである。そうではなくて、ここでデリパスカが言っているのは主に、シベリアの、ひいてはロシア全体の、経済活動を支えるための投資資金がなくなってしまうといった意味合いである。もちろん、それ自体きわめて重大なことだが、「戦費が尽きる」といったこととは別問題である。

 上掲の8大経済フォーラムには、それぞれの棲み分けがある。クラスノヤルスク経済フォーラムは、シベリアの地域発展がテーマだ。参加者の発言も、その文脈に沿ったものとなる。デリパスカは、そういう文脈で、応分の役割に則った発言をしている。

 ロシアでは、プーチン体制をイデオロギー的に批判したりしたら弾圧されるが、実務家が純粋に経済的に窮状を訴えたりするすることは、許容される傾向にある。今回のデリパスカ発言も、「戦争だけでなく、少しは経済のことも考えてよ」というアピールではある。しかし、デリパスカのような人物は、分をわきまえており、一線を越えた政権批判などはしないものである。


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