去年の今頃のことを思い返すと、ロシアが全面軍事侵攻を開始し、ウクライナの首都キーウも陥落するかもしれないという中で、私が職業的な観点から危機感を抱いたのは、もうウクライナの経済統計が入手できなくなるかもしれないということだった。そこで、ウクライナ統計局のウェブサイトにアクセスし、私がよく使う貿易関係をはじめ、必死にデータをダウンロードしまくったものだった。そうして入手したデータを使って書いたレポートには、「これが最後でないと祈りたいウクライナ貿易統計」などというタイトルをつけた。

 それから1年が経ち、ウクライナ全土が占領されることも、政府が機能不全に陥って統計が編纂できなくなることも、統計局のサーバーが爆撃されてアクセス不能になることも、結局なかった。かくして、2022年の貿易統計もこのほど無事に発表されることとなった。

 しかし、ロシアによる侵攻後のウクライナの貿易統計では、大まかな(HSコードの2桁レベルの「類」による)商品構成こそ発表しているものの、相手国の数字は発表しない方針のようだ。これはやはり国家安全保障上の考慮によるものだろう。まあ、これは仕方がない。

 というわけで、輸出入の大分類の表だけ、とりあえず作成してみたので、お目にかける。輸出・輸入とも、戦争をやっていて、黒海海運が死んだわりには、意外と取引が行われているなという印象もあるが、開戦前の1~2月の取引による分もあり、何とも言えない。

 まず、ウクライナの輸出が、下表のとおり。総額441億ドルで、前年比35.1%減だった。海路を失い、鉄鋼・鉄鉱石などの輸出が壊滅する中で、国連主導の輸出回廊創設が奏功し、農産物の輸出が一人気を吐く形となった。かくして、ウクライナの経済・輸出は、ますます農産物一本足打法と化しつつある。

uatradeex

 次に、ウクライナの輸入が下表のとおり。総額553億ドルで、前年比24.1%減だった。個人的に、理解できていないのは、国際的な軍事支援、人道支援などがどう扱われているかである。たとえば、ドイツがヘルメット100万ユーロ分をウクライナに無償供給した場合、それは無償なので通関統計には計上されないのか、それとも通関統計に輸入100万ユーロと計上した上で、国際収支上は別の項目に100万ユーロをプラスして相殺するのか、そのあたりが良く分からない。それによって2022年の輸入統計の読み方が全然変わってくる。判明したらそのうちまた報告したい。

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