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 こちらの記事が、ベラルーシが主力のカリ肥料輸出を思うようにできなくなり、財政が窮地に陥っているということを論じているので、以下要旨をまとめておく。

 EUは2021年にベラルーシのカリ肥料を輸入禁止としたが、それは一部品目だけだった。ノルウェーのYara社は、ベラルーシカリ社の製品10~15%を買い上げて世界市場に転売していたが、同社が世論に押されてようやくその取引を停止したのは今年の初めだった。

 しかし、ここに来てようやく、ベラルーシのカリ輸出は大きな障害に直面している。従来、リトアニアのクライペーダ港がベラルーシ産カリの大部分を積み出していたが、リトアニアはその業務を拒絶した。ルカシェンコ体制は、難民騒動などで近隣諸国との敵対政策を採ってきたわけだが、プランBはないことが判明した。他方、ウクライナ当局はオデーサ港での積出を拒否し、ロシアの港にはキャパシティに余裕がなかった。

 戦争が始まると、EUはベラルーシからのカリのトランジット輸送を禁止し、米財務省は販社であるベラルーシカリ会社を制裁リストに加えるなど、その姿勢を鮮明にした。

 ベラルーシのゴロフチェンコ首相は6月3日、ベラルーシ産のカリはアフリカ、南米、中国などのアジアにシフトしており、自然発生的な輸出多角化が生じていると発言。ルカシェンコは6月17日、今年カリの輸出量は減るかもしれないが価格が上昇しているので金額面での喪失はないと強調した。だが、実際はどうだろうか?

 EUと米国の新たな制裁を受け、3月にルカシェンコはカリ輸出に関する大統領令に署名したが、うち2項目は機密扱いとなった。その後、ルカシェンコは武器輸出公団ベルスペツヴネシテフニカのA.スクラガ総裁をベラルーシカリ会社の新社長に任命、どうにかして制裁を回避したいとの思いをのぞかせた。

 それ以降、輸出実績は機密扱いとなっている。しかし、断片的な情報から、激減したことは間違いない。ベラルーシ産のカリはブラジル、インド、中国などが主な販路だが、その輸出はどうなっているだろうか。

 5月にベラルーシの駐ブラジル大使は地元紙に、双方が供給再開に向けて努力していると述べた。

 2月に報じられたところによると、インドは、ベラルーシが具体的な輸出ルートを明示するまで、輸入契約にサインしようとしなかったという。その後、本件の合意は伝えられていない。

 7月になりベラルーシの駐中国大使が、ベラルーシの対中国輸出に占める資源の比率が減り、カリ肥料が35%、食料品およびその他の商品が65%になっていると発言したが、それがどの期間のデータ化は明らかにせず、2月以降も中国向け肥料輸出が続けられているかは不明のままである。以前は中国向け輸出のかなりの部分がカリ肥料であった。

 リトアニアにトランジットを阻まれたベラルーシ当局は、あわててロシア指導部に輸出の支援を要請した。サンクトペテルブルグの近くにベラルーシの港を作る構想が浮上したが、完成には少なくとも数年、数億ドルを要し、資金源は不明である。

 ベラルーシカリは、輸出激減を受け、鉱山の改修作業に着手した。これがベラルーシの財政にどう影響するだろうか。

 1ヵ月ほど前、ベラルーシのテレビは、ベラルーシがロシアの港を通じたカリ積出を開始したと報じた。ただ、2023年末までに200万tを積み出す契約とされたものの、制裁前にベラルーシは年間1,100万~1,200万tを輸出していたのである。また、コメルサント紙によると、ベラルーシはロシアの港からカリを輸出する際に、国際価格から30~50%値引きして輸出しているという。

 その間に、ライバルたちはベラルーシのシェアを奪っており、それにはロシアも含まれる。EUはロシア産品の輸送への制裁で肥料を例外とし、米国もロシア産肥料のオペレーションについては制限を撤廃するライセンスを発給している。プーチンもブラジル大統領との電話会談で、「ブラジルの農家にロシアの肥料を途切れることなく供給する義務を果たすことを約束する」と確約した。

 2018~2020年の好調時には、ベラルーシカリは財政に年10億ドル以上を納入していた。最大の項目は輸出関税の7億ドルで、それは共和国予算に納入された。利潤税の支払いも約1億ドルに上り、これは主にミンスク州の地方財政に納入された。

 好調時のこの納税額はGDPの1.7%に相当する。統合財政はGDPの30%程度である。つまり、ベラルーシカリの直接的な納税が、統合財政歳入の5.7%ほどを占めていた。職員の所得税、取引相手との関係なども考慮すると、ベラルーシカリはがもたらす納税は少なくともGDPの2.5%、統合財政の8.3%に上った。また、ベラルーシカリ職員の賃金は平均よりも高く、「国民社会保護基金」への貢献も見逃せない。

 今日、唯一確かなことは、ベラルーシカリの財政への貢献が大幅に低下していることだ。しかし、規模はどの程度なのか、すでに深刻な予算上の問題が生じているのか、統計の隠蔽により、それらを知ることはできない。


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