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 最近ロシアやウクライナのことが忙しくてベラルーシのことを追えていなかったが、同国が直面している難局が解決したわけではない。とりわけ、「連合国家」という枠組みを通じてベラルーシ支配を強化しようとしているプーチン・ロシアとの関係はどうなるのか? こちらの記事に出ている、ベラルーシの政治評論家P.ウソフ氏の見解を以下のとおりまとめておく。

 「連合国家」を通じたロシアの目的は最初から、完全な政治支配の確立、ロシアが主導権を握る超国家機関の創設、より深く構造化された政治組織を形成することである。つまり、ソ連時代の統治方式の要素への回帰である。経済統合に主眼はなく、支配の結果にすぎない。

 ロシアの優先課題は、旧ソ連諸国への戦略的影響力を確立することであり、この目標を達成する上で、経済はそれほど重要な意味を持たない。モスクワが主導権を握るので、ベラルーシは非常に不利な立場に立たされている。

 ロシアの全地政学的パワーはウクライナ戦争に集中しているが、それが終われば、クレムリンは次にベラルーシをどうするか決めるだろう。ベラルーシはロシアが戦争を始めるための踏み台として機能しているのだから、統合プロセスや対等性を語るのは馬鹿げている。

 2月24日の開戦後も、ベラルーシ・ロシア関係に本質的な変化はない。形式的にも、新しい文書への署名などがないので、同様である。クレムリンの目的は、ベラルーシを戦略的資源として利用することである。この点では、連合国家の本質と内容は変化している。一方では、ベラルーシはロシアの文化的、情報的課題に支配された植民地として認識されるようになった。他方では、ベラルーシは戦略的資源と認識されるようになり、ベラルーシの主権・国益を損なう形で利用されている。

 ベラルーシは、以前のルカシェンコ体制では政治主体だったが、それが、ロシアの政治的意思を推進するための単なる客体へと変質している。ベラルーシの主体性はなく、ロシアの利益がベラルーシに押し付けられるのみである。

 「国民投票を実施してベラルーシをロシア連邦に組み入れよう」という、馬鹿げた、しかし至極もっともな発言が頻繁に聞かれるようになった。ロシア下院のトルストイ議員はすでにそう明言しており、今後そうした提案はどんどん増えていくだろう。乗っ取りと領土奪取のプロセスが始まる。

 ロシアがとりうるアプローチは、2つ考えられる。第1に、ソ連をモデルとして「連合国家」を創設し、そこに他の非承認国家を加えることである。しかし、このプロセスには抵抗が伴う。カザフスタンのトカエフ大統領も、自称ドネツクおよびルガンスク人民共和国の承認を拒否した。

 そして、第2の帝国的シナリオも考えられる。住民投票などの正式な手続きを踏まずとも、押さえるべきものはすべて吸収し、ロシアに併合するというものである。今ウクライナで進んでいるように、領土を奪い、拡大し、国家を破壊することである。ロシアは「ウクライナ問題」を解決しており、「カザフ問題」が焦点になってくる。

 ベラルーシにとっては、どちらのシナリオも、ベラルーシという国家が破壊され、ロシアの植民地状態に陥ることを意味し、悲劇的である。このような脅威は、ロシアが地政学的な存在として滅びでもしない限り、存在し続けるだろう。

 そして、ルカシェンコはクレムリンに対抗する術を持たない。このような状況で、モスクワと距離を置こうとすれば、ルカシェンコは引きずり降ろされる。


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