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 プーチン・ロシアはウクライナ侵攻によって、これまでドンバスのルハンシク州、ドネツク州の全域占領を目指すとともに、ヘルソン州のほぼ全域をすでに手中に収め、ザポリージャ州の南部も支配している。

 プーチン・ロシアが最初からこういう地域を重点的に占領しようとしていたのかは、定かでない。ドンバスは当然、最重点だったとは思うが、ドンバス以外のウクライナ全土に関しては、首都キーウ、ハルキウなども含め広域(全土?)を支配下に置こうとしたものの、結果的に南部だけがとれたという気がしないでもない。

 今般の戦争では、開戦当初、ロシアがいわゆる「ノヴォロシア」という言説に訴えることは、あまりなかった印象がある。18世紀末にエカテリーナ2世が獲得した歴史的なロシア領土の奪還というニュアンスは、それほどなかったはずだ。しかし、結果的に占領できたのがヘルソン州、ザポリージャ州だったので、後付け的に、最近になりむしろノヴォロシア言説が盛んになってきた感じがする。

 余計なことを言うと、このように後付けでノヴォロシア言説が盛んになり、さらにその後付けとして、ロシアがオデーサ攻略にこだわるようなことがなければいいのだが。当然、ロシア側が抱くノヴォロシア空間に、オデーサは欠かせないものだろうから。

 最近、個人的に愕然としたのは、愛読誌のロシア『エクスペルト』が、まさにノヴォロシア特集を組み、上掲のとおり、「ヘルソンの復帰」といった破廉恥な見出しを掲げていたことである。『エクスペルト』は経済誌として、元々はリベラルな姿勢だったはずだが、ロシアの領土拡張主義の旗振り役を買って出るようなこんな特集を組むとは、幻滅である。

 その中には、下に見るように、「ドンバスとノヴォロシアの主要経済アセット」という地図が掲載されていた。ザポリージャ州は、まだロシアが占領したわけでもない州都ザポリージャ市まで含んでいる。まるでロシアがこれらのアセットをもう手中に収めたかのような誌面である。

 ただ、地図にはマリウポリのアゾフスターリだけが載っていない。再建するつもりはないということか。

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