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 それにしても、個人的に、以前からウクライナの港のことを半ば趣味で調べていたのだが、その作業は自己満足に近く、世間様に見向きもしてもらえなくて当然だと思っていた。ウクライナがロシアに軍事侵攻されて、黒海への出口を塞がれかねず、翻ってそのことが世界の食料供給にとって深刻な不安要素になるといったことが、日本のニュースやらワイドショーで取り上げられる日が来るとは、思いもしなかった。

 まあ、なので、メディア出演した際には、これまで培ってきたオタク話をなるべく披露したいのだが、あまり細かい話は敬遠される。「ウクライナは穀物、ひまわり油の世界的な供給国。それを担っているのがオデーサ港」という話だけで終わってしまいがちである。

 ただ、厳密に言えば、話はもうちょっと複雑である。皆さん、オデーサ港と言うと、あのポチョムキン階段の先にある港のことを思い起こすであろう。その狭義のオデーサ港は、2021年の時点で、ウクライナ第4位の港にすぎない。オデーサ州の他の港、ピウデンヌィ(旧ユジネ)とチョルノモルシク(旧イリリウシク)の方が、貨物量は多いのである。ピウデンヌィ、チョルノモルシク、狭義のオデーサ港は、「大オデーサ港」と総称され、一体の港湾と見なせないわけではないが、実際には東京と横浜、千葉くらい離れている。正確には、区別して考えるべきだ。

 もう一つ重要な点は、オデーサの東にあるミコライウの港も、2021年の貨物量は全国2位であり、特に穀物・ひまわり油の輸出港として存在感が大きいことである。つまり、狭義のオデーサ港というよりも、オデーサ州の3大港およびミコライウ港がウクライナの海運、とりわけ穀物およびひまわり油の積出港として死活的な重要性を帯びているということである。

 そのあたりを私がまとめたのが、下表となる。階段下の狭義のオデーサ港は、穀物および植物油輸出国として大した存在ではないことがお分かりいただけるであろう。むしろピウデンヌィ、チョルノモルシク、ミコライウなのである。

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