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 今日、ロシアで戦車を生産しているのは、スヴェルドロフスク州ニジニタギル市にあるウラルヴァゴンザヴォードと、その系列に入っているチェリャビンスク・トラクター工場だけと言われている。余談ながら、個人的に、ニジニタギルに調査出張に行った際に、街角からふと戦車だか装甲車両みたいのが表れて、ビックリしたことがある。たぶん、工場で作られた車両が、出荷されていくところだったのだろう。

 そして、ウクライナ侵攻が始まってから話題となったのは、実はウラルヴァゴンザヴォードでは部品不足から戦車の生産ができなくなっているのではないかという問題だった。それに対し、3月22日付のこちらの記事は、同社の広報がそうした観測を否定し、平常どおり軍需品の生産を続けていると強調したということを伝えていた。

 それに対し、今般4月15日付でウクライナ側のメディアに出たこちらの記事は、ウラルヴァゴンザヴォードの戦車生産はやはり停止しているということを指摘している。以下、要旨を整理しておく。

 4月15日、ウクライナ国防省情報本部は、T-72戦車を生産してきたウラルヴァゴンザヴォードの現在の稼働状況について報告した。それによると、国際社会から課せられた制裁のため、同社には平常どおりの操業を行うための資金もスペアパーツもないという。同社では、以下のような原因により、危機が発生している。

  • 制裁措置の発動により、ロシアの銀行システムに問題が生じたことによる資金調達問題。
  • 装甲鋼材の価格高騰。
  • ここ数年、ロシア政府が発表している「輸入代替」が、実際には進捗しなかったこと。

 新型戦車T-72と、T-14「アルマータ」は、政府との契約に基づいて生産されており、それに対し工場は100%の前払い金を要求している。その資金は、新型戦車の部品購入に充てられるはずであった。しかし、やはり世界からの制裁を受けているため、それらを調達することができない。

 したがって、この工場は現在、ウクライナでの戦闘中に破壊されたロシア軍戦車・車両の修理にのみ従事しているというのが、ウクライナ国防省の結論である。


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