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 伝統的な鉄鋼立国のウクライナだが、斜陽化が進んでいる。そして、今般のロシアの侵略により、ウクライナの鉄鋼業は丸ごと消滅してもおかしくない事態に直面している。

 ウクライナの工場ごとの鉄鋼(粗鋼)生産量をひとまとめに示したような便利な資料はないので、私が断片的な報道などから数字を拾って、作ったグラフが上掲となる。工場単位ではアルセロールミタル・クリヴィーリフが最大だが、企業グループ単位で見るとR.アフメトフ氏率いるSCM財閥傘下のメトインヴェストが最大勢力であり、グラフではそれを青で示している。2021年にはメトインヴェストがウクライナ全体の69.2%を占めていた。

 問題は、今般のロシアによる攻撃で、マリウポリに所在する2つの巨大製鉄所が、破壊を受けたことである。アゾフスターリは全壊し、イリチ記念冶金コンビナートも詳細は不明ながらおそらく復旧は不可能だろう。グラフではそれを格子のパターンで示した。そもそも、マリウポリの街が、今後もウクライナに帰属し続けるのかも定かでない。要するに、ウクライナの既存の鉄鋼生産のうち、すでに40%が失われ、ウクライナがそれを取り戻すことはもう不可能と考えられるのである。


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