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 日本人からするとピンと来ないところだが、現在危機に陥りつつあるロシアで今、真っ先に品不足になっているのが、砂糖である。元々ロシアは砂糖の消費量が多く、経済危機になったらまず砂糖の買い溜めに走るような消費行動があると言われる。

 ただ、ロシアは近年、砂糖の純輸出国となっている。また、こちらのレポートに見るとおり、かつてロシアは砂糖生産のためにサトウキビを輸入しており、上図のとおり生産の半分ほどはサトウキビ(青の部分)由来の年もあったが、最近ではほぼ全面的に国内で栽培されるテンサイ(サトウダイコン)に移行していた。なので、消費者の一時的なパニックで品薄になったりすることはあるものの、砂糖を自給すること自体には問題がないと、個人的には考えていた。

 ところが、それには盲点があったようだ。こちらの記事によると、ロシアの多くの作物は輸入品の種に依存しており、テンサイはその典型例なのだそうだ。テンサイの種にはF1種(ハイブリッド種)が使われ、一代限りのものなので、作物からとれた種を蒔けば翌年も収穫ができるというものではないらしい。

 記事によれば、テンサイの種子が多く生産されるのは、気候的に適した南フランスと北イタリア。クリミア の一部にも似たような環境があるが、深刻な水問題がある。ロシア本土には生産性の高い種子を生産できる場所がほとんどない。かつてのソ連は1970年代からテンサイ交配種の選抜や遺伝に関する作業を一切行わなくなり、ロシアはそのダメージを引きずり、2000年代初頭には種子生産を断念してしまった。技術や人材などの問題もあり、多額の投資をしても、ロシアが多くの作物で先進国の種生産に追いつくことはきわめて困難である。

 以上が記事の伝えるところだが、個人的に完全に盲点だった。もちろん、現時点のロシアの砂糖生産は昨年収穫されたテンサイを使っているはずで、テンサイは春に種まきされるはずだから今年の種はすでに輸入済みだったのではないかと想像する。なので、向こう1年くらいなら砂糖の生産を続けられるのではないかと思うわけだが、欧米による制裁が長期化すればこの産業も追い詰められることとなろう。


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