昨日、「ドネツク・マリウポリの思い出」なんてのを書いたけど、そこで触れたように、今回のロシアによる侵略で最も激しい砲火を浴びているマリウポリには、巨大製鉄所が2つある。アゾフスターリとイリチ記念冶金工場であり、どちらもR.アフメトフ氏のメトインヴェスト傘下である。
そして、どうやら、製鉄所も攻撃を受け、壊滅状態らしい。少なくとも、こちらの記事などが伝えるとおり、アゾフスターリはもう全壊状態のようだ。イリチの方はそこまで具体的な情報がないのだが、おそらく同様なのではないかと思われる。
こうした状況を受け、こちらの記事でI.カリタ氏が、プーチンはなぜマリウポリの製鉄所を破壊したのかということを考察している。カリタ氏によれば、2つの解釈が考えられるという。
第1に、これらの製鉄所は年によってはウクライナのGDPの1%近くを占め、ウクライナの最重要輸出企業でもあった。ゆえに、一つの解釈は、ウクライナの経済に打撃を与えようとしたということが考えられる。その場合、自称ドネツクおよびルハンスク人民共和国(DNRとLNR)は元々の両州の版図奪回を目指すことになっていたわけだが、プーチンは最初からのその可能性を信じていなかったということになる。
第2に、もしもプーチンがDNRによるマリウポリ吸収を信じていたとしたら、アゾフスターリの破壊は別の意味合いとなる。それはDNRの将来的な産業基盤を意図的に清算してしまうことになるからだ。その場合、なぜそうしたのか、答えは明白で、ロシアはすでにDNRにある企業についてもどうしたらいいか困っているからである。DNRおよびLNRの企業を経営するため、最初はクルチェンコが、次にユルチェンコが呼ばれたりした。ドンバスの鉄鋼はロシア市場にはまったく不要だし、外国向けにはトルコあたりに二束三文で密輸するのが関の山だろう。今日では西側の制裁でロシアのセヴェルスターリやノヴォリペツクといった鉄鋼メーカーにすら居場所がないわけで、ドンバスのそれなどは論外だ。アゾフスターリが無傷で残ったら、住民はそれを稼働させられない責任を、プシーリンではなくプーチンのせいだと考えるかもしれず、戦争のどさくさに紛れて念のために破壊しておいたというわけである。
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