私はしばらく前から、ロシアのプーチン政権がベラルーシのルカシェンコ体制を支える見返りとして、色々な譲歩を引き出そうとするはずであり、その一環として、ロシアが実施している欧米に対する対抗制裁に参加することを求めるのではないかとの予想を示していた。欧米の制裁に対抗して、ロシアは2014年夏以来、欧米からの主要な農産物・食料品の輸入を禁止しているわけだが、ベラルーシがその「抜け穴」となって、欧米産食品がベラルーシ経由でロシアに流入している現実もあり、ロシア側が問題視していた。ただ、ルカシェンコが欧米との関係拡大の夢を捨てきれなかった時期には、ベラルーシ側はロシアの禁輸への同調に抵抗を示していたはずである。

 今般、思わぬ形で、ベラルーシとロシアの足並みが揃うことになった。ベラルーシ自身が、欧米から厳しい制裁を受けるに至り、ベラルーシもそれへの対抗手段をとることとなった。くしくも、ベラルーシが選択したのは、ロシアと同じ食品禁輸だったというわけである。

 くだんの決定は、2021年12月6日付のベラルーシ閣僚会議決定によりなされ、2022年1月1日から施行された。なお、2022年1月27日付のベラルーシ閣僚会議決定により、対象国が2ヵ国(リヒテンシュタイン、セルビア)追加になった。

 そこで、私はロシアの禁輸品目とベラルーシの禁輸品目を整理・比較してみた。その結果、両国の禁輸品目は、細部の差はあれ、ほぼほぼ同じリストということが確認できた。ただ、ベラルーシはロシアと違い魚の輸入は禁止しておらず、これはベラルーシは内陸国の割には魚加工産業が盛んなので(ブレストのサンタブレモール社が代表格)、その利益を守ろうとしたからだろう。逆に、ロシアが禁止していない砂糖菓子、チョコレートをベラルーシが禁止したのは、ついでにコムナルカ、スパルタクといった国内製菓大手の利益を図ろうとしたからだろう。

 というわけで、ベラルーシの食品禁輸には、欧米の制裁に対抗するというのと、プーチン組長に右へ倣えをしたという2つの側面があるのではないか。

 ロシアとベラルーシによる食品禁輸の対象国も比べてみた。それが下表で、まあだいたい同じであり、末尾の色付きで示したところだけが違う。これは、ロシアもベラルーシも、自国に制裁を導入した国への対抗措置として発動しているので、それによって対象国が違ってくるのだろう。セルビアは、ロシアもベラルーシも加盟するユーラシア経済連合とFTAを結んだりしているのだが、ベラルーシ側の禁輸では対象になった。

 肝心な点は、ベラルーシはウクライナを対象に加えなかったことだろう。ベラルーシ・ウクライナは、過去1年ほどで政治的には取り返しがつかないほど敵対してしまったが、経済的にはお互いに依存している部分があり、まだその紐帯が持ちこたえている形である。

 ベラルーシの政府決定によれば、禁輸品目に関しても、特段の事情がある場合には、関税割当制により、欧米からの輸入が限定的に認められるケースもあるようである。

 こちらの記事によれば、2021年1~10月にベラルーシは欧米から5.3億ドルの農産物・食品を輸入し、今後はその大部分が禁止の対象となる。輸入代替生産を奨励し、また友好国からの輸入を図ることで、ベラルーシ国内市場の需給が崩れないよう努めると、ベラルーシ政府は説明している。

202202-2

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