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 先日、UEFAフットサル選手権がアムステルダムで開催され、2月5日の準決勝でウクライナとロシアが対戦した。UEFAでは2014年以来、サッカーの試合でロシアとウクライナが対決することを基本的に回避しており(代表レベルも、クラブレベルも)、予選リーグの組み合わせなどでは両者が同組にならないように配慮している。しかし、お互いに決勝トーナメントに勝ち上がったりすれば、どこかでぶつかる可能性もある。まあ、普通のサッカーではロシア・ウクライナとも最強豪というわけではないので、今まで対戦はなかったようなのだが、実はロシア・ウクライナともフットサルでは世界屈指の強国であり、ついに今回の欧州フットサル選手権の準決勝でぶつかることになったというわけである。

 結果から言えば、この試合にロシアは3:2で勝利し、決勝に進んだものの、ポルトガルに敗れ準優勝となった。ロシアに屈したウクライナは、3位決定戦でもスペインに敗れ、4位に終わった。

 ハイライト動画などで見る限り、ロシアとウクライナの準決勝は好ゲームで、両国の国家対立を反映して選手たちが乱闘を起すでもなく、試合そのものは好印象だった。

 試合の最大の山場は、残り1分10秒というところでロシアがペナ内でファウルを犯し、ウクライナにPKが与えられたものの、これをロシアのゴレイロ、D.プチロフが見事な反応でストップした場面だった。

 さて、試合そのものというよりも、コート外に視点を移すと、準決勝ではロシアのサポーターもそれなりにいたが、ウクライナのそれの方が数で大幅に優ったということである。会場がアムステルダムということで、ウクライナが西欧に多くの労働移民を送り出していることが関係しているのかもしれないし、また昨今の政治情勢ゆえウクライナ人の方が応援に力が入ったということかもしれない。ロシア代表にとっては実質アウェーの環境だったようだ。

 こちらのインタビュー記事の中で、ロシア側のA.ニヤゾフ選手がインタビューに答えており、「我々にとって敵の観客がこれだけたくさんいたことは、ロシアチームをかえってタフにしてくれた。我々は、絶対に勝たなければならないということを、より一層確信した」ということを述べている。

 こちらの記事によると、準決勝でウクライナ側のサポーターがロシア代表に対して政治的な内容で民族的憎悪を煽り、とりわけロシア市民の殺害を求めるような攻撃的な言葉を唱えたととして、ロシア・サッカー協会がUEFAに問題を提起し、UEFAが本件に関し事実確認を行うことになった。

 試合そのものがほぼ平穏に実施されたことを受け、こちらの記事によると、ロシアの元代表選手のA.モストヴォイは、「試合前は緊張もあったが、選手たちは立派だった。彼らに関して言えば、挑発などはなかった。もちろん、フットサルとフルサッカーは違うが、いずれにしても喜ばしい。フルサッカーでも近いうちに両国の対戦が見られると嬉しい」とコメントした。スポーツキャスターのD.グベルニエフも、「スポーツが前面に出たことが喜ばしい。こういう試合はどんどんやるべきで、フルサッカーでもスパルタク・モスクワとディナモ・キエフの対戦、代表同士の対戦があって然るべきだ」と述べている。

 一方、こちらの記事では、同じロシアのスポーツ関係者でも、D.エゴロフという記者は、今回の準決勝におけるウクライナ側サポーターの態度で裏付けられたように、両国のサッカーの対戦は世界にとって危険をもたらすだけであり、全面的に禁止すべきだと主張している。


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