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 こちらに見るとおり、ベラルーシの最高権力者A.ルカシェンコは1月28日、年次教書演説を行った(私はルカシェンコを「大統領」と呼ぶことは避けているので悪しからず)。

 今回の教書演説では、2,500人の前で、ルカシェンコは2時間半にわたり演説を行い、そのあとさらに、質疑応答を1時間行ったそうである。

 2021年2月に開催された「第6回全ベラルーシ人民大会」につき、私はこちらのコラムで、「ルカシェンコは、4時間の基調演説をはじめとして、3度にわたり演説を行い、大会全体の半分以上でルカシェンコが演壇に立っていたそうです。お笑いに例えれば、とっくの昔に旬を過ぎた師匠の単独ライブを、2日間にわたってぶっ通しで見せられたようなものであり、支持者にとってもキツかったのではないでしょうか」と論評した。

 今回は、それよりは短かったとはいえ、旬を過ぎた師匠の独演会を延々と聞かされるという本質には、変わりあるまい。

 長くても内容があれば聞いたり読んだりするモチベも上がるのだが、何しろほぼ全編にわたってデマであり、商売柄、一応ざっと目を通したが、とにかく苦痛だ。

 自称大統領の教書演説なので、普通は、昨年のこの分野はこんな結果に終わりましたとか、我が国はこんな目標を掲げますとか、新たにこんな政策を導入しますとか、具体的な施政方針が示されるものだろう。仮にそれが粉飾であったり非現実的な目標であったとしても、一応は参照する価値はある。

 しかし、今回の教書演説には、そのような要素がほぼ皆無である。一番具体性のある話は、「(2020年の大統領選に際して、欧米により)ベラルーシ破壊のために60億ドルが投じられたことが、すでに正確に判明している」というくだりか。

 私の認識によれば、ルカシェンコは2021年には教書演説を行わなかったため、前回の教書演説となると、こちらに見る大統領選直前の2020年8月4日ということになるはずである。この中でルカシェンコは、ロシアのことを「我が国の最も近い同盟国であったし、今もそうだし、これからもそうである」とする一方で、ロシアとの関係は「嘆かわしいことに兄弟関係からパートナー関係へと変わった」と述べ、関係冷却化の事実を認めた。石油をめぐる関係については、「ロシアとの石油紛争で財政が15億ベラルーシ・ルーブル(約7億ドル)をとりはぐれた」と訴えた。その上で、ルカシェンコは、「今期(ルカシェンコ大統領の2005~2020年の任期という意味)の結果が物語っているのは、1ヵ国、2ヵ国への過度な依存は、控えめに言っても、我が国を脆弱な状況に陥れるということである」として、多元外交を強く志向する姿勢を見せた。当時は、ベラルーシでお縄となったロシアの民間軍事会社ワグネルの兵隊をウクライナに差し出すとか、そんな動きすら見せていたものである。

 それが、今回の年次教書では、だいぶ趣きが変わっている。2020年大統領選を前に、欧米の連中が足繁く我が国を訪問し、「ベラルーシ独立を維持するためです」などと甘言を弄してベラルーシに支援を申し出、NATOに引っ張り込もうとし、米国に至っては我々が全面的に石油を供給しようなどと働きかけていたが、それらはすべてベラルーシとロシアという兄弟国同士を仲違いさせるための策謀であることがその後明らかになっており、それに失敗した欧米はベラルーシで暴力的な政権転覆を企図したが失敗に終わり、ベラルーシ・ロシアの兄弟関係は雨降って地固まるとなった、などという都合の良いことを、今回ルカシェンコは臆面もなく主張している。


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