
「ベラルーシへの核配備:プラスとマイナス」という記事(S.ニコルキン署名)が気になったので、以下のとおり抄訳しておく。
11月30日、ベラルーシの最高権力者ルカシェンコは、「ロシヤ・セヴォードニャ」のインタビューで、ロシアの核兵器をベラルーシに配備する可能性を表明し、プーチン大統領に提案すると述べた。ただし、これはポーランドにも同様のNATOシステムが配備され場合であるとされた。なぜポーランドなのか? 11月19日(欧州におけるNATOの主要な核兵器が置かれているドイツの首相が交代するタイミングで)、NATOのストルテンベルグ事務総長が、ベルリンが米国の新型核兵器の受け取りを拒否した場合、同盟はその核兵器を「東側」に配備すると述べたことがあった。つまり、ポーランドということになる。
タス通信の軍事専門家V.リトフキンは、次のように指摘する。「ポーランドへの核兵器配備は、ベラルーシへの直接的な脅威である。それは、ベラルーシ領内への核攻撃のリスクであり、それに要する時間はわずか数分である。ベラルーシとベラルーシ人を消滅させ、その地域に放射能汚染という形であらゆる破壊をもたらす脅威がある。ルカシェンコの発言は、欧州がNATOを支持し、米国がヨーロッパや対ロシア国境に核兵器を配備するのを阻止しないと、ロシアやベラルーシによる核攻撃の標的になりかねないという、ヨーロッパへの警告である。」
他方、ロシアがベラルーシで戦術核兵器を配備する際の選択肢が、NATOがヨーロッパで配備しているものよりも格段に多いことは明らかである。公開情報によれば、欧州にはB61核爆弾しか配備されていないが、ロシアには核爆弾、核搭載の戦術ミサイルシステム、さらには火砲の核弾薬や核地雷の選択肢がある。したがって、ベラルーシの専門家によれば、ロシアはこの戦域で核兵器を迅速に使用する可能性がNATOよりも格段に多いという。
リトフキンによれば、ベラルーシに配備される可能性があるイスカンダルMは、最大500kmの射程で射撃し、核弾頭を搭載することができる。米国がヨーロッパに中距離ミサイルを配備し、ルーマニアやポーランドに核弾頭を搭載したトマホークを搭載するならば、ベラルーシでは「カリブ」の地上複合施設もあり得る。「3K95 キンジャール」を搭載したミグ31などの爆撃機を配備することも可能。それらも核弾頭を搭載できる。ポーランドに核兵器が配備された場合、ベラルーシにとって現実的な軍事的脅威となるため、この措置は正当化されると、リトフキンは考えている。
現在のところ、ロシアがベラルーシに核兵器を供与するということではない。なぜなら、それは1968年に締結された「核兵器の不拡散に関する条約」に違反し、両国の国際的な威信に好ましくない結果をもたらすかもしれないからである。また、ベラルーシには核爆弾の製造・保守のための独自のインフラや、戦略核戦力の戦闘統制システムがない。したがって、仮にベラルーシに核兵器が配備されるとしても、それはロシアの管理下に置かれることになり、ベラルーシ当局が核兵器の使用に影響を与えることはないのである。
ソ連崩壊時、ベラルーシ共和国は世界で8番目に多くの核兵器を保有していた。しかし、当時も(今も)、核兵器に伴う共和国のリスクを十分に認識していた。例えば、1991年11月15日の最高会議で、ベラルーシにおける核兵器使用の妥当性について議論した際の、A.コステンコ・ベラルーシ軍管区司令官の発言からも伺える。
一方で、ポーランドに対抗するという意味においては、ロシアがベラルーシに核兵器を配備する特別な必要性はない。ロシアの軍事専門家M.ホダリョーノクは、「ベラルーシは東西約650kmであり、核兵器の戦闘使用のための現代技術、特に戦略ミサイル部隊と長距離航空(DA)の観点からは、この距離が状況に深刻な影響を与えるとは認められない」と指摘する。つまり、仮にベラルーシの領土に核兵器が配備されたとしても、ロシアに作戦上・戦略上の優位性を与えることはないが、モスクワにとっての政治的影響は非常にネガティブなものになる可能性があるということだ。
中には、ロシア下院国際問題委員会の委員であるA.シハゴシェフ氏のように、「ベラルーシは他人(ロシア)のふんどしで相撲をとろうとしている」という、不適切な表現もある。
現在ベラルーシ領には、ヴィレイカにある弾道ミサイル搭載潜水艦通信用アンテイ局(ロシア海軍第43通信センター)と、ガンツェヴィチ近郊にあるミサイル警報システム「ヴォルガ」の固定レーダー局という、ロシア軍の2つの軍事施設がある。2020年9月以降、ロシアはベラルーシ空域から戦略爆撃機によるミサイルや爆弾の攻撃を訓練している。この攻撃をより確実なものにするために、ベラルーシでは防空体制の強化、ロシアのS-400の配備などが進められている。
ベラルーシの領土にロシアの核兵器を配備する外的な理由付けは、ストルテンベルグの11月28日の声明を受けて、弱まった。ストルテンベルグはこの日、「ドイツは今後も核共有に参加するので、これはもはや問題ではない」と述べ、11月19日の発言を軌道修正したのである。
注目すべきは、ルカシェンカ発言と時を同じくして、11月30日に(ベラルーシとロシアの両国が加入する)集団安全保障条約機構がこう表明したことである。いわく、核兵器を保有する核不拡散条約の締約国は、核兵器を国外に配備することなく自国内での配備に限定し、非核保有国の領土に核兵器を迅速に展開することを可能にするすべてのインフラを排除するよう求める、と。
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