899

 大した話でもなく恐縮だが、ロシア「世論基金」のこちらのページに、ロシア国民がベラルーシの最高権力者ルカシェンコをどのように評価しているかという調査結果が出ているので、これを拝見することにする。

 ロシアの回答者に、「貴方のA.ルカシェンコ氏に対する好き・嫌いはどうですか?」と尋ね、過去20年の同様の調査結果と対比しつつ示したのが、上図である。緑が好き、青がどちらでもない、赤が嫌い、オレンジがその人物を知らないという回答となっている。

 当然のことながら、この調査結果は、ロシア・ベラルーシ関係の関数である。

 2000年代終盤にロシア国民の対ルカシェンコ感情が悪化し、嫌いが好きを上回った時期があった。これは、当時ロシアがルカシェンコ体制への厳しい対応を打ち出し、バッシングを行ったことの影響だろう。とりわけ、ロシアのテレビ局「NTV」により、2010年7月から数回のシリーズで放映されたドキュメンタリー番組「クリョースヌィ・バチカ」が、ロシアの政権当局の指示にもとづくルカシェンコ批判キャンペーンであったことは疑いを容れず、巨大なインパクトを与えた。なお、「クリョースヌィ・バチカ」というタイトルは映画「ゴッドファーザー」のパロディーで、ルカシェンコのあだ名が「バチカ(おやじ)」であることから、「ファーザー」の部分に「バチカ」を当てたものである。

 その一時的な冷却期間を過ぎると、ロシア国民の対ルカシェンコ感情は改善し、とりわけ2015年に「好き」が跳ね上がる。これは、2014年にウクライナで親欧米志向の政変が起き、それと対照的なベラルーシの落ち着いた国情や親ロシア路線がロシア国民に好感されたことに加え、ベラルーシがドンバス和平の交渉舞台を提供したことも好影響を与えたはずだ。

 そして、直近では、2020年8月以降のベラルーシ情勢激変の影響が注目されるが、ロシア国民の対ルカシェンコ感情はやや悪化した程度だったようである。やはり、ロシア国民は政権当局の管理下にあるテレビの報道振りに影響されるところが大きく、2000年代終盤のようにロシアメディアがバッシングすればルカシェンコ人気は落ちるが、現在のようにいくらルカシェンコ体制が暴力的な本性をさらしても、ロシアメディアが擁護している限りロシア国民の対ルカシェンコ感情は決定的には悪くならないということなのだろう。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ