c

 昨日書いたとおり、2月11~12日に開催された全ベラルーシ大会に合わせて、2021~2025年のベラルーシ社会・経済発展プログラムが採択されようとしている。ルカシェンコ五ヵ年計画の中身に関心を寄せたりすると、何やらルカシェンコ政権の正統性を認めているようで嫌な感じがするが、この政策枠組みは以前から私がずっと研究してきたものなので、今回のプログラムについても中身を一応確認しておくことは必須の作業であり、そうした観点から取り上げる。

 すでに発表されているプログラム概要の中でも、第7章の通商政策の部分が、とりわけ私にとっての中心的な研究分野なので、以下でその骨子を箇条書きでまとめておく。

  • 今後の五ヵ年で重点を置くのは輸出の質的な成長とその地理的多角化であり、それにより販路の拡大と外国貿易の安定が可能になる。
  • 外国市場の多角化においては、2つの課題を解決しなければならない。第1に、伝統的な販売市場におけるプレゼンスを低下させないこと。第2に、外国貿易の多ベクトル性を保持し、中国、EU、米国、さらにアジア・アフリカ・中南米諸国*への輸出を拡大し、世界市場の新たなニッチを開拓すること。(注 *原典ではстраны «дальней дуги»という言葉が使われているが、これはベラルーシ独特の表現であり、その定義についてはこちらの論考参照。)
  • 2025年までに輸出総額に占める中国向けの比率を5%にまで高め、またEU向けの比率は非原料輸出の拡大を優先しつつ30%にまで高める計画である。
  • 中国、シンガポール、トルコとの経済協力を拡大するための措置を講じる。その目的で、サービスおよび投資の自由取引に関する二国間協定*を締結する。(注 *モノのFTAはユーラシア経済連合の管轄分野だが、サービスの二国間FTAはベラルーシがユーラシア加盟国であっても独自に結ぶことができる。)
  • ユーラシア経済連合のレベルでは、国益を考慮しつつ、イスラエル、エジプト、インドとFTAを結ぶ。
  • インドネシア、モンゴル、アルジェリア、ペルシャ湾岸諸国などの国々および経済統合組織との交渉を通じて、新たな戦略的通商パートナーの発掘を活発化する。
  • 輸出構造多様化の主たるベクトルは、輸出に占めるハイテク製品の拡大であり、上図のように、2025年時点で5%以上を確保する。そのために、工業団地「グレートストーン」のポテンシャルを活用し、その入居企業による輸出を2025年までに4億ドル以上に高める。
  • 貿易促進のために輸出入庁を創設する。
  • 経済統合の面で、主たるベクトルとなるのは、国益を順守しつつ、連合国家創設条約にもとづき、ロシアとの二国間関係を深化させること。ユーラシア経済連合の枠内では、障壁・例外なきモノ・サービス・カネ・ヒトの自由移動を実現する。輸入代替の分野も含め、共同生産を活発化する。ベラルーシは(ユーラシア経済連合枠内での)中国との全面的な協力を引き続き拡大していく。CISの枠内ではFTAの形成を特に重視し、それをサービス、投資、政府調達、産業協力、デジタル化などの新たな分野にも広げていく。
  • こうした取り組みにより、2025年までに商品・サービス輸出を500億ドル以上に拡大し(上図参照)、その構造を多角化し、中身を高度化し、輸出入の均衡を保ち、ひいてはそれを国内の経済成長に繋げることが可能になる。

ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ