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 こちらのサイトで、毎度お馴染みのロシアの政治学者A.マカルキン氏が、ナヴァリヌィ氏がロシア国民の不満の受け皿になれるかといったことを論じているので、以下のとおり要旨を整理しておく。

 反体制派は現在、分裂し、多分に意気消沈し、無力感を感じている。反体制側に限らないが、現在のロシア社会では熱気というものが皆無であり、あらゆるリーダーに対して懐疑的である。

 ソ連時代には、国内の問題よりも、外国の問題の方を活発に議論し合ったものだったが、現在もそれに近い状況である。ソ連時代には、外国の出来事の方が意外な展開や競争があったので、人々は熱心に国際問題についての記事を読み、自分たちがいかんともしがたい国内問題についてはあまり熱心でなかった。現在も、ロシアの反体制派の間では、ユーリヤ・ガリャミナへの判決よりも、トランプのツイッターが削除されたといったことの方がより活発に議論されている。

 したがって、現時点では、政権側がナヴァリヌィを拘束することは、以前よりも容易である。問題は、拘束することよりも、その後必要な時に解放することの方が困難という点である。一方、ナヴァリヌィにとっては、拘束されている状態の方が、反体制派の中で一切批判を浴びなくて済む。反体制派が、拘束されている人間と明確に距離を置こうとしたら、あまりに不適切と受け取られるからである。

 一般大衆に関して言えば、ナヴァリヌィに関する否定的なイメージはない。オリガルヒであったホドルコフスキーについては、10年の収監を経てもなお許せない国民が多かったが、それとは違う。ナヴァリヌィは1990年代の民営化による蓄財などとは無縁だからである。ナヴァリヌィはむしろ、汚職と戦う闘士と見られている。もっとも、彼への支持率はあまり上がっていない。海外での仕事に関する非難が影響している。年配の世代はその情報を信じ、若い世代はそうでもないが、いずれにしてもナヴァリヌィについての評価に影響していることは事実である。

 それでも、コロナが明けたら、政権側は深刻な問題に直面するだろう。ウイルスの脅威が後退すると、年金、賃金、手当、失業といった社会・経済的不満がさらに増大する可能性がある。今でこそ「外国のエージェント」のレッテルを押されているナヴァリヌィだが、それが急速に「殉教者」に変わる可能性もあり、1980年代後半のような「体制側は悪玉、野党は善玉」という二元論に移行するかもしれない。


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