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 こちらのサイトで、セルゲイ・ヘスタノフという有識者(写真)が、直近で石油価格は持ち直しているものの、ロシアは非常に慎重に受け止めているということを論じている。

 ヘスタノフによると、ポストコロナの経済回復が意外に早いのではないかとの議論が出始めてはいるが、石油価格がコロナ以前の水準にすぐに戻るかという点については一連のリスクがあり、少なくともロシア政府はそれらの要因を非常に重く見ている。

 慎重姿勢の背景にあるのは、価格カルテルの本質的な不安定さである。1985年のOPECの経験も、2020年3月以降のOPEC+の事例も、いずれは造反する国が現れ、価格競争が始まることを物語っている。1980年代の価格競争はソ連経済の痛手となり、ソ連崩壊の一因となった。

 第2のリスクは、より長期的・戦略的なもので、それはエネルギーシフトである。CO2削減、化石燃料からの脱却という方向性は、今すぐではないが、将来的に強まっていくことは不可避である。ロシアの重要な石油・ガス輸出先であるEUでも、化石燃料を抑制する特別課税が2021年にも導入される可能性があり、最初は低い課税率でないにしても、将来的に引き上げられていくことになり、ロシアの輸出の一部が不安定化する恐れがある。

 ロシア政府がこのリスクを重く見ている証左として、リザーブ(注:国民福祉基金や外貨準備のことを総合して言っている模様)の利用にきわめて慎重になっている。そもそも、リザーブ自体、Xデーに備えて蓄えられているものだ。ロシアでは、コロナ禍の渦中の2020年8月に、国際的なリザーブがピークに達するという、特異な現象が起きた。ロシア政府の視点からすれば、本物のXデーはコロナ禍の現在なのではなく、まだ先にあり、そのために蓄えが必要ということである。ヘスタノフは以上のように論じている。


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