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 ベラルーシの政治情勢は、相変わらず膠着状態である。思うに、四半世紀をかけて、周到に権力・暴力装置を整えてきたルカシェンコが、力の行使により、最高権力者の地位にこれからも留まり続けること自体は、可能かもしれない。しかし、それは正常な意味で国を統治するというのとは異なる。国民の多数派は政権に服従せず、若者や有能な人材は国を離れ、経済は劣化していく。どこかで必ず、限界に直面するだろう。そんな不毛な事態になる前に、状況が打開されればいいのだが。

 そうした経済劣化の実例として、すでに動きが急なのが、IT産業である。IT産業については、以前のコラム「デジタル社会の反乱でつまずいた独裁者ルカシェンコ」で解説したとおりだ。ミンスクに開設されたベラルーシ・ハイテクパークを基盤に、ベラルーシはソフトウェア・アウトソーシングのメッカとなり、そのサービスが一躍ベラルーシ経済の有力な輸出産業として台頭していた。しかし、夏以降の政治危機の中で、ルカシェンコ政権側がたびたびインターネットの強制遮断のようなICT産業の基盤を脅かす措置をとったこともあり、多くの企業がベラルーシから撤退しつつある。周辺国のウクライナ、ポーランド、リトアニアなどは、ベラルーシのIT専門家を積極的に迎え入れる構えであり、政治危機が長期化すれば、ベラルーシのIT産業が本格的に空洞化していくことになりかねない。

 前置きがだいぶ長くなったが、NAVINY.BYのこちらのサイトに、ベラルーシが失おうとしているIT産業の重要性を示した図解・解説資料が出ていたので、それをチェックしておこうかと思った次第である。冒頭に示した図は、ベラルーシ、リトアニア、ラトビア、ポーランド、ロシア、ウクライナにおいて、GDPに占めるICT産業の比率がどのように推移しているかを見たものである。また、下図は、ベラルーシ経済の中で、IT部門の賃金水準が突出して高いことを示している。

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