以前からナゴルノカラバフの領有をめぐって対峙していたアルメニアとアゼルバイジャンの間で、昨日、本格的な武力衝突が始まってしまったようだ。
それに関連して、以前書いた小文をリサイクルしてお目にかける。『ロシアNIS調査月報』の2016年6月号の表紙に上掲のような写真を使い、その紹介文として書いたものである。
2015年9月、個人的に初めてアルメニアに現地調査に趣いた際に、有名なブランデー醸造会社のアララト社の工場を見学する機会があった。アルメニアの象徴とも言えるアララト社には、数多くの外国元首も訪れており、貯蔵されている多くの樽の中には、プーチン大統領の樽、ルカシェンコ大統領の樽といった具合に、VIPたちのキープ樽もあった。
そして、これはかなり有名だと思われるが、見学コースには「平和の樽」というものも展示されていた。今号の表紙の写真は、それを撮影したものである。アルメニア人とアゼルバイジャン人が支配権を争ったナゴルノカラバフ紛争の解決を願って樽詰めされたものであり、同紛争が最終的に解決したあかつきに開けて飲むことになっているそうだ。樽の後ろに置かれているのは、向かって右からアルメニア、ナゴルノカラバフ、米国、ロシア、フランス、そしてアゼルバイジャンの旗(米・露・仏はナゴルノカラバフ紛争調停グループのメンバー)。なお、写っている人物は案内してくれた女性である。
一聴すると美談のようだが、ナゴルノカラバフ紛争の最終的な解決とは、具体的に何を意味するのだろうか? 本気で紛争を解決するのであれば、アルメニアの側にこそ、努力すべき点が多いのではないか? 質問が喉まで出かかったが、ブランデーの甘い香りが漂う中で訊くのは無粋に思われ、やめておいた。
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