こちらのサイトで、ベラルーシの政治評論家V.カルバレヴィチ氏(写真)が、9月14日のソチ会談後のベラルーシ情勢について論評しているので、以下のとおり抄訳しておく。


get_img

 今年の大統領選前までは、ルカシェンコは国民の支持に依拠していたが、今ではロシアに依拠するようになり、ロシアはベラルーシへの影響力を強めた。しかし、ロシアによるバックアップは、ルカシェンコにとって心許ないものであることが、徐々に明らかになっている。

 9月17日にロシアのS.ラヴロフ外相はロシアのRTVI局のインタビューに応じ、次のように発言した。「ルカシェンコ大統領自身、自分は長く政権に留まりすぎたのかもしれないと発言している。大統領が言っているように、憲法改革を経て、彼は前倒しの議会選・大統領選を宣言するかもしれない。これは、国民対話が完全な形で実施される枠組みを示している。重要なのは、ベラルーシ社会のすべての国民層が憲法改革のプロセスに参加し、この改革が完全に合法ですべての国民にとって分かりやすい形になることに尽きる。さらに、いつ、どこで、どんな形でこのプロセスが始まるかという具体的な提案が必要である。」

 かくしてラヴロフは、プーチンがソチで示したクレムリンの立場を、明らかにしたわけである。それはすなわち、ルカシェンコは5年の任期を待たずして早期に退陣すべきだというものである。

 しかし、ルカシェンコはこうしたシナリオに同意はしていない。もしかしたら、ソチでは反論はしなかったのかもしれない。しかし、帰国後は、ソチでの話を実質的に反故にしている。

 ソチ会談直後、ルカシェンコは全政権幹部を招集した。ソチでの会談で、ルカシェンコがプーチンにあまりにへりくだった態度を示したことが、ベラルーシのエリートたちに好ましくない印象を残していたので、ルカシェンコとしては早急にそれを打ち消す必要があったのだろう。

 ルカシェンコはこの席で、次回大統領選挙は憲法に沿って実施されると発言した。現行憲法に従うならば、それは2025年となり、前倒し大統領選などはなくなることになる。

 ラヴロフは国民対話について述べたわけだが、ルカシェンコが実際にやっていることは対立を煽ることだけである。くだんの政権幹部会合でルカシェンコは、大規模な抗議運動はベラルーシに対する世界的な陰謀によるものであると主張した。なぜ過去26年作動しなかったカラー革命のテクノロジーが突如として稼働したのかということにつき、ルカシェンコは説明しなかったが、いずれにせよルカシェンコの語り口は、すべての敵対者に対する敵意、内戦のレトリックであった。

 ラヴロフの要求に反し、ルカシェンコはフィクションにすぎない「全ベラルーシ大会」で憲法を討議するとしている。また、ルカシェンコは、まずは政権幹部を、次に女性大会を招集したが、憲法改革の具体的な日取りは明らかにしていない。彼は時間稼ぎをしており、状況に応じて次の手を打とうとしている。今の時点で憲法採択の、増してや前倒し選挙の日程を発表したら、レームダック化してしまう。もしもベラルーシのエリートやシラビキたちが、ルカシェンコが退陣する時期を知ったら、彼らの忠誠心が低下することになる。

 他方、ルカシェンコは、プーチンがルカシェンコを守る以外にどうしようもないということを、確信している。クレムリンにとっては、ベラルーシでカラー革命が起きるという恐怖の方が、強いからだ。

 その間、ベラルーシの西側ベクトルは、状況が悪化する一方である、ベラルーシ外交が長年にわたり目指してきた欧米との関係正常化の試みは、水泡に帰しつつある。9月17日の女性大会でルカシェンコは、西側との関係は壊滅の一歩手前だと述べ、戦争の危険について指摘し、ポーランド、リトアニア、ウクライナの首脳のことを「愚かな政治家たち」と呼んだ。

 その上でルカシェンコは、リトアニアおよびポーランドの国境を閉鎖し、ウクライナとの国境は警備を厳重にした。その結果、バルト三国から貨物を運んでくるトラックが厳重にチェックされるようになり、通過ポイントで数時間の遅れが発生している。ロシアはリトアニアからの貨物到着が最大で5日遅れるようになったとクレームをつけ始めている。ベラルーシ当局はまた、国籍に関係なく、自国民も含め、これらの国境を通過する人々を厳重にチェックするようになった。

 これらの問題は、ベラルーシの外交と経済にとって長期的なダメージとなる。ベラルーシはトランジット立国であり、そのことが外交および経済面で多大な恩恵をもたらしている。トランジットを実際に止めるのはもちろん、制限すると表明しただけで、国にとってはマイナスである。輸送会社は迂回路を探すことになる。ベラルーシは欧州地図における「ブラックホール」になりかねない。

 9月18日にはV.マケイ・ベラルーシ外相が、もしもEUがベラルーシ指導部に対する制裁を導入したら、ベラルーシはEU加盟諸国との外交関係を断絶するかもしれないと述べた。マケイはさらに、ベラルーシに対する何らかの制裁が採択されたら、ベラルーシ国家は国内政治に関連したしかるべき措置をとるかもしれず、これは政治システムおよびベラルーシに駐在している外国のマスコミにかかわる可能性があると述べた。これを普通の言葉に翻訳したら、もしもEUが制裁を発動したら、ベラルーシの支配体制は国民に対する政治的抑圧をさらに強めるということになる。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ