soyuz

 こちらのサイトに、今般のベラルーシ大統領選を受けたベラルーシ・ロシア関係、両国による統合枠組み「連合国家」の現状と見通しに関する論考が掲載されているので(O.デルクル署名)、以下のとおり要旨をまとめておく。なお、分析のすべてに私が同意しているわけではないので(特にベラルーシでの反体制運動における外部からの影響力を大きく見る点)、悪しからず。

 これまでの選挙で、ルカシェンコが西側の扇動を仮想敵にしていたのに対し、今回の選挙ではロシアをベラルーシの安定にとっての主たる脅威と見立てることになった。ロシアの侵攻からベラルーシの独立を守る守護者をもって任じれば、無敵だという思いがあった。そうすることによって、伝統的な親欧米野党や、V.ババリコ、V.ツェプカロといった出馬を目指したエリートと同じ立ち位置に立とうとしたのである。ちなみに、ババリコやツェプカロは、ベラルーシのCIS集団安保機構、ベラルーシ・ロシア連合国家からの脱退、ロシアによって建設されたベラルーシ原発の封鎖、欧米との関係発展を主張していた。S.チハノフスキーはより過激な反ロシア姿勢を示していたが、その逮捕後は妻のS.チハノフスカヤが夫に代わり選挙を戦うことになった。

 ルカシェンコは「マイダン」(ウクライナ型の民衆暴動による政変)に対抗してきたわけだが、近年は西側とも関係を構築しようとし、多元外交を志向してきた。そこで、ロシアおよびユーラシア統合への反対という路線を我が物とし、反体制側の基盤を奪うとともに、西側から選挙結果の承認を取り付けようとしたのである。しかし、選挙後の様子を見ると、ほとんど効果はなかった。

 他方で、ロシアとの関係は、特にベラルーシ側が民間軍事会社「ワグネル」の所属とするロシア市民33名が逮捕されて以降、完全に冷え切っている。ロシア外務省のM.ザハロヴァ報道官は、彼らの罪は一切示されておらず、この芝居に関して言えば、彼らに問題はないし、ベラルーシ側もそれは承知の上だと指摘した。ルカシェンコとプーチンの電話会談でも、紛争の解決には至らず、8月4日の教書演説ではルカシェンコが「南に移動した別の分隊についての情報があった。ベラルーシ情勢を爆発させないでほしい」とまで述べている。ルカシェンコが、ドンバス紛争で戦ったロシア市民についてはウクライナ側に引き渡す用意があると発言したのは、非常にきわどい場面だった。

 反ロシア的な言辞を軸とした戦略により、ルカシェンコは政治的孤立という窮状に陥った。ロシアの選管は監視員の派遣を断った。欧米の支援を期待するのは虫が良すぎるだろう。ロシアの対外戦略の中核が、カラー革命を阻むことである事実を考えれば、「ロシアがマイダンを組織しようとしている」と非難するのも、まったく理屈に合わない。

 政治評論家のYe.ミンチェンコは、次のように指摘する。ベラルーシの抗議行動に、ロシアの影響を見るのは、ナンセンスである。これは米国スタイルであり、ソーシャルメディアやメッセンジャーアプリを使った動員も米国式だ。技術的な準備が万端であることが見て取れる。2019年に香港のために特別に作成されて利用されたプログラムが使われている。当局が携帯電波を遮断してもブルートゥースでデータをやり取りできるようになっている。これによって、近くにいる参加者たちが自分たちの動きを調整できるようになっている。組織的に良く準備され、資金も豊富なことは、今回のデモの参加者に、非常に良く出来た手引書が出回っていることからも分かる。

 別の政治評論家のS.マルコフは、次のように指摘する。ベラルーシのデモには、ウクライナの時のように米国ではなく、ポーランドの影がちらつき、そしてそれにウクライナの特務機関も関与している。ただ、全体を仕切っているのが米国の特務機関であるのは当然。鎮圧を招き、犠牲者が出て、それをロシアやワグネル、さらにはルカシェンコのせいにするというシナリオ。しかし、ロシアの特務機関がウクライナ機関のこの計画を暴いた後、用意されていたこの計画が実行されるかどうかは不明だ。

 ただし、米国ではルカシェンコの処遇につき、まだ表面化はしていない2つのシナリオも用意されている。第1に、ジェイムスタウン基金によるものであり、ルカシェンコをスターリンと戦ったユーゴスラビアのチトーのような存在にするというものである。第2に、ランド研究所によるものであり、これまで米国が追求してきたベラルーシにおけるルカシェンコ体制を終わらせるという目標は、現在かつてなく喫緊であり、なぜならそれによりベラルーシをユーラシア経済連合発展を阻むために利用できるから、というものだ。

 現在のところロシアは抑制された立場をとっている。そうした中で、ロシアの下院議長であり、ロシア・ベラルーシ連合国家の議会総会議長であるV.ヴォロジンは、連合国家は両国国民の利益にかなうものであり、それを一層発展させることが引き続き両国の優先課題であると強調した。

 しかし、ルカシェンコの側は連合国家を疑問視している立場をほのめかしている。ウクライナのD.ゴルドン氏とのインタビューの中でルカシェンコは、「この統合は、もう不可能である。たとえ私がベラルーシにとって最も有利な条件での統合に賛成したとしても、ベラルーシはもはやそれを受け入れない。国民が、もう受け入れることはないのではないか。国民は成長したのだ。20年前、あるいはソ連が崩壊した25年前なら違ったかもしれないが」と述べている。

 『コムソモリスカヤ・プラウダ』のベラルーシ特派員V.ヴォルソビンは、ベラルーシ国民は過去四半世紀、「ロシアはオリガルヒ、ギャングの支配する国だ」と吹き込まれてきたので、連合を形成する国民投票を行ったら賛成するのは半分、一国への統合は10%にすぎない、と指摘する。

 結局のところ、ルカシェンコは連合国家の枠組みだけでなく、ユーラシア経済連合、CIS、集団安保の枠組みでも、ロシアとの対話を続けざるをえない。対外政策の大転換のためには、それらから正式に脱退しなければならない。ルカシェンコはそこまでのことはできないだろう。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ