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 マニアックな話で恐縮だが、現時点で、ウクライナで最大の貨物量を誇る港は、ピヴデンヌィ港である。そのシェアは年々拡大しつつあり、2019年にはウクライナ全体の39%を占めた。なお、昔はユジネ港と言ったのだが、しばらく前にピヴデンヌィに名前が変わったようだ(昔からピヴデンヌィ・ターミナルというのはあったが、港全体の名前がピヴデンヌィに変わった)。

 ちょっと用事があり、2019年のピヴデンヌィ港の貨物構造を示した上のような表を作成した。この中で、「トランジット」というのは、外国に代わってその国の貨物を処理する業務のことであり、ウクライナの場合は実質的に、ロシアの港では処理し切れないロシアの輸出向け貨物を、代わりに輸出用に船積みしてあげるサービスだと理解していい。ウクライナの港のトランジットは、ウクライナ・ロシア関係の悪化に伴い縮小の一途を辿っているのだが、注目すべきことに、ピヴデンヌィ港ではいまだにその業務がかなりのボリュームで残っている。

 上の表を見ていただくと、トランジット貨物は、鉱石と液体化学品という2品目に集中していることがお分かりいただけるだろう。具体的に言えば、鉱石は、ロシア最大の鉄鉱石生産者であるメタロインヴェスト社の鉄鉱石であることが知られている。一方、液体化学品は、ロシアのトリヤッチアゾト社からパイプラインで運ばれてくる液化アンモニアを、ピヴデンヌィ港の敷地内にあるオデッサ臨港工場で積み出しているものである。

 興味深いのは、こちらに見るように、2019年9月に、ウクライナの鉄鉱石生産・輸出企業であるメトインヴェスト(オーナーはR.アフメトフ)とFerrexpo(オーナーはK.ジェヴァホ氏)が連名で、ウクライナの港にロシア産鉄鉱石のトランジットを止めさせるよう、V.ゼレンスキー大統領に直訴していることである(こんなものを「興味深い!」と色めき立つのは私だけかもしないが)。その直訴状の中で主張されているのは、以下のような点である。いわく、2019年に入り、ウクライナ領を経由して輸送されるロシア産鉄鉱石が急増しており、ピヴデンヌィ港方面に運ばれている。その結果、港湾および鉄道のキャパシティが限定され、ウクライナの鉄鉱石生産者が貨物の処理を依頼しても断られるような状況が生じている。ウクライナの生産者としては代替のルートはないのに、ロシア産鉄鉱石にキャパを奪われている。しかも、ウクライナ鉄道はトランジット輸送に値引き料金を適用し、ウクライナ企業を不利な立場に陥れ、ロシア企業にますますウクライナ・ルートを活用することを促している。ウクライナ港湾管理局とウクライナ・インフラ省も、トランジット貨物を輸送する船舶の港湾利用料に特別値引きを提供し、ここでも国内生産者は差別を受けている。大統領は本件に介入し、内閣がこの問題を早急に見直すよう指示してほしい。ロシア産鉄鉱石のトランジットは、ウクライナ生産者の輸送ニーズがすべて満たされた上で認めるようにしてほしい。直訴状では、このように訴えられていた由である。


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