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 しかし、政治的な事件というのは、観察者にとって都合の悪い時に起きてしまうものである(変な言い方だが)。以前、「ベラルーシ、やがて来る『その日』のために」というエッセイを書いたことがある。ベラルーシでも、いつの日か、ルカシェンコ大統領が政権の座から追われような日が来るかもしれないから、「その日」のために、日頃から情報を収集し、世の情報ニーズにお応えしようという想いを綴ったものだった。

 そして、8月9日投票のベラルーシ大統領選が迫り、かつての選挙に比べても、いつになく波乱の予感が漂ってきたわけだが。こんな時に限って、当方は多忙で、まったく身動きがとれない状態なのである。

 今年1月に、ロシアで内閣交代と改憲提案があった時も、「今は困る。今だけはやめてくれ」と途方に暮れたものだったが、夏になって再び、今度はベラルーシで、それ以上の焦燥を覚えている。

 まともに情勢をフォローできていないのだけど、大統領選で、台風の目となっているのが、スヴェトラーナ・チハノフスカヤという女性候補である。良く知られているとおり、大統領選出馬を試みた夫が逮捕されてしまったので、いわば「弔い合戦」のような形で(もちろん夫は亡くなったわけではないが)、代わりに妻が出馬したものだ。むろん、政権としては「こんな素人には何もできない」と判断して候補者登録を認めたのだろうが、思いのほか注目の的となり、今ではルカシェンコ政権側は後悔しているのではないかという指摘もある。

 下に掲げたテレビでの選挙演説の模様を視聴してみた(ウクライナ関係のチャンネルにアップされているというところが乙だが)。感想としては、非常に理知的で好印象である。これまでのベラルーシ野党の失敗の歴史に学び、どう訴えたらベラルーシの一般庶民に訴求するかということを、有能なブレーンと一緒に考えた内容なのだろう。当たり前と言えば当たり前だが、言語はロシア語(名前はベラルーシ語で表示されているが)。偉いのは、たとえば「EUとの統合」みたいな国民を分裂させかねない民主・民族野党にありがちな主張は控え、ルカシェンコ現政権と決別して国として出直すという一点に絞っていることである。そうした主張をヒステリックにやると、また国民の拒絶反応を招いたりしてしまうところを、冷静な語り口で、一つ一つ丁寧に述べているところが、とても良い。

 重要なファクターに、ベラルーシ国民の「マイダン」アレルギーがある。ルカシェンコ政権は、野党というのは(ウクライナで見られたような)暴力的な政権転覆を企図して国を混乱に陥れるものだというステレオタイプを吹聴している。それに対しチハノフスカヤは、我々が目指すのはマイダンではなく、国民の意思で国の舵取りを決めるという当たり前のことにすぎないと反論している。

 チハノフスカヤは、腕に白いリボンを巻いており、現体制への不服従の印として、国民にもそうするように訴えている。それを、今回の戦いでのシンボルにしようとしているわけである。この演説では着ている服も白であり、今回のベラルーシ国民の闘争では白がシンボルカラーになるのかもしれない。旧ソ連圏ではウクライナのオレンジ革命のようなカラー革命の系譜が知られ、卑近な例では小池百合子が緑色をシンボルカラーにしたケースなどもあるが、ベラルーシ国民が目指すのはさしづめ「ホワイト革命」か(もっとも、ベラルーシのこと、今後それが浸透すると、白い服を着ているだけで扇動罪で逮捕されたりする事態も考えられるが)。


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